
不妊症の原因について!女性のみならず男性不妊や男女比も合わせて解説
公開日:2024.07.20更新日:2025.01.30
「なかなか赤ちゃんを授からない…」と悩んでいる方は少なくありません。実際、夫婦の約6組に1組が不妊に悩んでいると言われています(WHOの調査より)。
不妊症は女性が原因と思われがちですが、男性が原因となる場合も。この記事では、不妊症の原因について詳しく解説します。記事を読めば、不妊症の原因を理解し、適切な治療や生活習慣の改善方法を知ることが可能です。
不妊症について網羅的に知りたい方はぜひ以下の記事も合わせてご覧ください。
>>不妊症とは?定義やなりやすい人の特徴・割合についても解説

女性の不妊症の主な原因
女性の不妊症の原因は、大きく分けて下記の3つが挙げられます。
卵管の異常
卵管は、卵巣で育った卵子が子宮へ向かうための大切な管です。卵管が詰まったり炎症を起こしたりすると、卵子の通過が妨げられ、受精が難しくなります。子宮内膜症や過去に経験したクラミジア感染の後遺症があると、精子と卵子が出会いにくくなり、妊娠の確率が低下します。
卵管異常の原因や症状は以下のとおりです。
- 卵管閉塞:卵管が完全に閉じてしまう状態です。クラミジアなどの性感染症が原因で起こります。
- 卵管采癒着:卵管の先端にある卵管采(卵管の先端部分)が癒着してしまう状態です。子宮内膜症などが原因で起こります。
- 卵管水腫:卵管に水が溜まってしまう状態です。卵管の炎症などが原因で起こります。
排卵の異常
ホルモンバランスの乱れやストレス、過度なダイエットなどで、排卵が上手くいかなくなることもあります。ホルモンバランスが崩れると、排卵のサイクルに影響が出る可能性が高いです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
ホルモンバランスの乱れにより、卵巣に多数の小さな卵胞(卵子の入った袋)ができる病気です。排卵が起こりにくくなり、不妊の原因となります。PCOSは、卵巣がネックレスのように小さな卵胞をたくさん抱え込んでしまう病気で、排卵がうまくいかなくなることがあります。
高プロラクチン血症
母乳の分泌を促すホルモンであるプロラクチンが過剰に分泌される病気です。排卵が抑制され、不妊の原因となります。高プロラクチン血症は、赤ちゃんを授かっているときのような状態が続き、排卵が抑制されてしまう病気です。
子宮の異常
子宮は、受精卵を優しく包み込み、赤ちゃんを育むためのベッドのような場所です。子宮筋腫や子宮内膜症によって子宮内の環境が悪化すると、赤ちゃんが安心して成長できない可能性があります。子宮異常の原因や症状は以下のとおりです。
- 子宮筋腫
子宮の筋肉層にできる良性の腫瘍です。子宮内腔の形が歪んだり、受精卵の着床を妨げたりすることがあります。 - 子宮内膜症
子宮内膜に似た組織が、子宮の内側以外にできる病気です。卵巣や卵管などに癒着を起こし、卵管の動きを悪くしたり、排卵を妨げたりすることがあります。 - 子宮内膜ポリープ
子宮内膜の一部が過剰に増殖して、ポリープ状に飛び出した状態です。受精卵の着床を妨げたり、流産の原因となったりすることがあります。 - 子宮奇形
生まれつき子宮の形が通常とは異なる状態です。受精卵の着床や妊娠の継続が難しくなることがあります。
年齢を重ねるにつれて、卵子の質や数が低下していくことも不妊の原因の一つです。免疫の異常や原因不明な場合もあるため、医師に相談するのがおすすめです。
子宮筋腫・子宮内膜ポリープについては以下の記事に記載していますので、合わせてご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
>>子宮内膜ポリープは手術で治る?痛くない手術の実施方法や費用・保険適用有無について解説
男性の不妊症の主な原因
男性不妊症の原因も、女性と同様に多岐にわたります。
精巣機能の障害
「精巣で精子が作られない」「作られる数が少ない」状態です。精巣に異常があると精子が十分に作られなかったり、質が低下したりすることがあります。精巣機能に障害がある場合の原因や症状は、以下のとおりです。
- 精索静脈瘤
精巣から心臓に戻る静脈に血液が逆流することで、精巣の温度が上昇し、精子に悪影響を及ぼす病気です。精巣の血管が拡張して血流が悪くなる病気で、精子の質を低下させることがあります。 - 停留精巣
生まれつき精巣が陰嚢に降りていない状態です。精巣の温度が高くなるため、精子の産生が阻害されます。停留精巣は、精巣が本来あるべき場所に降りてこなかった状態で、精子の産生に影響が出ることがあります。 - クラインフェルター症候群
男性ホルモンの分泌不足や精子の産生障害を引き起こす遺伝子疾患です。クラインフェルター症候群は、男性ホルモンの分泌に影響を与える遺伝子の異常が原因で起こり、精子の産生を低下させることがあります。
精路の通過障害
「精子が通る道が詰まっている」「狭くなっている」状態です。管が詰まったり狭くなったりすると、精子はスムーズに進めず、体外に排出されにくくなります。
- 先天性精管欠損: 生まれつき精管の一部または全部が欠損している状態で、精子が通る道が閉ざされてしまっています。
- 精管閉塞: 精管が炎症や手術などによって閉塞している状態です。過去の手術や炎症などが原因で精管が詰まることがあります。
精子の運動率や形態異常
精子は卵子と出会うために、長い距離を泳いでいかなければなりません。精子の数が十分でも、運動能力が低かったり形が異常だったりすると、卵子にたどり着けません。加齢やストレス、喫煙、過度な飲酒、薬の副作用などが、精子の質や量に悪影響を与える可能性もあります。
精子の運動率・形態異常の原因や症状は、以下のとおりです。
- 乏精子症:精液中の精子の数が少ない状態です。
- 精子無力症:精子が全く運動していない、または運動能力が低い状態です。精子がほとんど動かないため、卵子までたどり着けません。
- 奇形精子症:形が異常な精子の割合が多い状態です。形が異常な精子が多いため、卵子と正常な受精が難しいです。
男女比に関するデータと傾向
不妊症は、決して女性だけの問題ではありません。不妊の原因は、男性側と女性側、両者に原因がある場合がそれぞれ約3割ずつとされています。男性の不妊症が増加傾向という報告も多いです。 晩婚化や生活習慣の変化などが影響していると考えられています。
不妊治療は、夫婦二人で協力して取り組むことが大切です。 まずは夫婦で産婦人科や泌尿器科を受診して専門医に相談しましょう。
不妊症の診断に使用される主な検査方法
不妊症は、約6組に1組の夫婦が経験すると言われていますが、適切な検査と治療によって妊娠率を高められます。それぞれの身体の状態を把握するために、いくつかの方法を組み合わせて検査します。
女性側の検査
女性側の検査には以下の方法があります。
- 基礎体温測定
毎朝、目覚めてすぐの体温を測ることで、ホルモンの働きや排卵の有無を知ることができます。低温期と高温期の移り変わりを見ることで、排卵のタイミングを予測することが可能です。 - ホルモン検査
血液検査で排卵に関わるホルモン(体の機能を調整する重要な役割)などを測定します。ホルモンバランスが崩れていると、排卵障害のリスクが高まります。 - 卵管造影検査
子宮の中に造影剤を注入し、レントゲン撮影をおこなうことで、卵管の状態を調べます。卵管が詰まっていないか、精子と卵子が出会うための道が正しく機能しているかを調べるものです。 - 子宮鏡検査
子宮の中に細いカメラを挿入し、子宮内腔の状態を観察します。赤ちゃんが安心して過ごせる状態かを調べるものです。子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど、妊娠を妨げる可能性のある異常がないかを確認します。
男性側の検査
男性側が行うのは精液検査です。精子の数や動き方、形などを調べることで、精子の状態を評価します。WHO(世界保健機関)の基準値より、精子の数が少なかったり運動率が低かったりすると、妊娠力が低下している可能性があります。
その他の検査
女性側や男性側で一般的に行われる検査以外にも、以下のような方法があります。
- 超音波検査: 超音波を用いて、子宮や卵巣の状態を観察します。臓器が健康な状態かどうかを調べ、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などがないか確認します。
- 腹腔鏡検査: お腹に小さな穴をあけてカメラを入れ、子宮や卵管・卵巣などを直接観察します。子宮内膜症や卵管の癒着など、他の検査では発見できないような病気が見つかる可能性が高いです。
不妊症を調べるための医療機関の選び方
不妊症の検査や治療をおこなう医療機関は数多く存在し、どこを選べば良いか迷うかもしれません。医療機関を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- 専門性
不妊治療専門のクリニックを選ぶようにしましょう。不妊治療専門のクリニックは、不妊治療に特化した専門知識と技術を持った医師やスタッフがそろっています。 - 実績
実際に妊娠・出産に至った症例数が多いクリニックを選ぶことも、一つの目安になります。実績は、そのクリニックの治療の質の高さを示す指標です。 - 通いやすさ
仕事帰りや休日に通いやすい場所にあるかどうかも重要なポイントです。不妊治療は、長期間にわたる場合もあるため、無理なく通院できるクリニックを選びましょう。 - 費用
不妊治療は保険適用外となる治療が多いです。治療費について、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。 - 雰囲気
病院の雰囲気も大切です。リラックスして治療を受けられるような、医師やスタッフとの相性が良いと感じるクリニックを選びましょう。
不妊症の検査結果において知っておくべきこと
検査結果は、医師から丁寧に説明を受けましょう。数値や結果だけでなく、結果が何を意味するのか、今後の治療方針はどうなるのかなどを相談することが大切です。検査結果や治療方針について、他の医師の意見を聞くこともできます。セカンドオピニオンを受けることで、より納得のいく治療法を選択できるでしょう。
不妊症の治療法と改善方法
不妊症の治療は、原因や症状、夫婦の状況に合わせて多岐にわたります。高度な医療技術を用いた治療法もあれば、生活習慣の改善や心のケアなど、ご自身で取り組めるものもあります。
不妊症を改善するための医療治療法
不妊症の医療治療は、大きく分けて以下の「タイミング法」「人工授精」「体外受精」の3つに分けられます。
- タイミング法
排卵日を予測して性交渉のタイミングを合わせる方法です。基礎体温を測ったり、排卵検査薬を使ったりすることで、より妊娠しやすいタイミングを特定します。普段から基礎体温をつけていると、低温期から高温期に移行する時期の把握が可能です。超音波検査で卵胞の大きさや状態を確認しながら、性交渉のタイミングを調整していきます。 - 人工授精
排卵のタイミングに合わせて、洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入する方法です。自然な妊娠よりも、精子と卵子が出会う確率を高めることができます。人工授精は、精子の運動率が低い場合や、子宮頸管粘液が少ない場合などに有効な方法です。 - 体外受精
卵子と精子を体外に取り出して受精させ、できた受精卵を子宮に戻す方法です。より確実に受精卵を子宮に戻すことができます。体外受精は、卵管が閉塞している場合や、男性不妊が重度の場合などに有効な方法です。
上記以外にも、原因に合わせて薬物療法や手術が行われることもあります。
タイミング法・人工授精・体外受精については、それぞれを記事で解説していますので合わせてご覧ください。
>>【不妊治療の入口】タイミング法とはどんな治療?流れや費用、成功率について詳しく解説
>>人工授精ってどんな方法? 成功率や費用、プロセスを解説
>>体外受精の基礎知識を解説!対象となる方や流れ、成功率、実態までがわかります

不妊症を改善するための生活習慣の改善方法
健康的な生活習慣は、妊娠しやすい体づくりの土台です。バランスの取れた食事: 葉酸やビタミンD、鉄分などは、妊娠に重要な栄養素となります。
- 葉酸:妊娠初期の胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減します。ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜に多いです。
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助ける働きがあり、鮭や鰯などの魚介類に多く含まれます。
- 鉄分:赤血球のヘモグロビンを作るために必要な栄養素であり、赤身の肉やレバーなどに多く含まれます。
軽い運動を習慣的に行うことも重要です。血行が促進され、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。喫煙や飲酒も卵子や精子の質を低下させる可能性があります。睡眠不足はホルモンバランスを乱す原因になるため、質の高い睡眠を取ることも意識しましょう。
不妊症を改善するための心のケアとサポート
不妊症の治療は心理的な負担が大きいため、心のケアが重要です。パートナーとは悩みを共有し、穏やかにコミュニケーションを取りましょう。家族や友人からのサポートを得ることで心が軽くなります。不調を感じたら、不妊治療専門のカウンセラーや精神科医と相談することもおすすめです。
まとめ
不妊症は、女性だけでなく男性が原因であることも多いです。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 女性の主な原因: 卵管や排卵、子宮の異常など
- 男性の主な原因: 精子の産生障害や精路の通過障害、運動率、形態異常
- 不妊症の男女比: 不妊の原因は男女ともに約3割ずつ
- 代表的な治療法: タイミング療法、人工授精、体外受精
- 生活習慣の改善: バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠、禁煙、禁酒など
不妊症は専門医の診断と治療が重要です。適切な検査と治療を受けることで、妊娠の可能性を高められます。一人で悩まず周りの人に相談して、専門機関のサポートを受けながら、治療していきましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、不妊治療に強みを持つクリニックです。不妊治療を検討している状況でも、専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
参考文献
Adriansyah RF, Margiana R, Supardi S and Narulita P. Current Progress in Stem Cell Therapy for Male Infertility. Stem cell reviews and reports 19, no. 7 (2023): 2073-2093.