不妊外来
不妊症とは
不妊症の定義は1年間、普通の夫婦生活を送り、妊娠に至らないこととされています。
しかし、実際は半年ほどで専門のクリニックに相談されるのが良いかと思います。自力での妊活は限界があり、その間に卵子・精子の質が低下してしまいますと、医学的な治療を行っても思った結果にならないことに繋がります。原因も多岐にわたるため、しっかりとした精査を行い、それぞれの原因に対応した適切な治療を早めにしていくことが成功への鍵です。
不妊症の原因
妊娠するには、女性側に受精可能な卵が排卵されること、男性側に受精可能な精子があること、タイミング良く両者が出会うことが必要です。通常、卵子と精子の出会いは、卵管膨大部ですので、この受精の場が正常である事が必要です。受精した卵は分割(細胞分裂)を繰り返しながら子宮に向かい、6日位で子宮内膜に着床し、これが妊娠の成立で以後胎児として、約280日間子宮内で育って分娩に至ります。人間の場合、10箇所位の関門があり、従ってこの中のどこかの段階に異常があっても不妊症となるわけです。
女性不妊の場合には図のどの部位でも不妊症の原因となり得るために検査治療が複雑化していきます。
男性不妊の大部分は、90%が精子を作る能力の低下(造精機能)であり、乏精子(数が少ないか、運動精子が少ないこと)が大部分で、これは喫煙などの環境因子や生活習慣によるところが多く、有効的な一般治療があまり多くないのが特徴です。
不妊全体では50%に男性側にも原因があり、必ずカップルでの検査治療が必要です。重症例では男性不妊専門の泌尿器科医との共同治療が必要となります(男性不妊の項を参照してください)。
まずは以下の5つのポイントが最初に検討される基本的な原因検索になります。
- 卵管は通過しているか、癒着はないか(卵管因子)
- 男性の精子が良好か、悪ければその原因は何か(男性因子)
- 性器に感染症がないか(感染因子)
- 子宮内膜症、子宮筋腫、子宮奇形がないか(子宮因子)
- 排卵があるか、内容の良い排卵か、黄体機能はどうか、卵巣の予備力(卵巣因子)
基本的な検査でお二人とも正常の場合は以下の原因を考えましょう
卵子の質の低下
最近では不妊患者さんの高齢化に伴って、加齢による卵子の質の低下、数の減少が盛んに言われています。残念ながら卵巣に保存された卵子は新しく作られ増加することはありません。すなわち人はストックされた卵子を使いながら、一生のうち400回ぐらいの排卵現象を繰り返して閉経に入るわけで、1回の生理周期では約1000個の卵子が消滅してゆきます。このため35歳を過ぎると急激に妊娠のチャンスは減るわけです。自分の残りの卵子数を知る方法としてAMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定が有効です。自分の卵巣年齢と残っている卵巣予備力を知って、早期に治療を開始しましょう。
中でも今までに原因不明不妊症といわれた方は要注意です。これは原因がないのではなく、その治療段階では原因がわからないという意味で、現在では本当に原因不明である例は8%ぐらいと少数です。その原因の究明にはそれぞれの知識と専門性を備えた生殖医療専門医の能力が重要になっていきます。
受精障害
原因不明とされた不妊症においては、ここに原因がある場合が大部分です。すなわち卵子に精子が進入できない場合や侵入しても卵子の活性化が起こらず受精しない場合などです。受精障害は体外受精・顕微授精・卵子や精子の活性化で対応できます。
着床障害
着床障害とは、受精卵を移植しても繰り返して着床しない症状のことを言います。着床障害の原因としては、受精卵の異常・子宮の異常・免疫の異常が挙げられます。
受精卵の異常・・・レーザーアシステッドハッチング法(受精卵の孵化を促進)や着床前診断(受精卵の染色体検査)で着床を促します。
子宮の異常・・・慢性子宮内膜炎治療や内膜ポリープ切除、子宮内膜胚受容期検査(ERA)、低周波レーザー(LWL)での血流改善、低周波レーザー刺激による内膜厚増強、再生医療を利用した内膜を厚くするPRPD療法などで着床を促します。
免疫の異常・・・母体の拒絶反応を抑える薬を内服し着床・妊娠維持を促します。