先進医療

当院では、以下の先進医療を実施しています。

タイムラプスインキュベーター

タイムラプスインキュベーターとは、顕微鏡の機能と高性能のカメラを搭載した培養器のことです。培養器内は子宮の中と同じような温度とガス濃度に整えられていて、この培養器の中で患者様の受精卵を大切に育てています。

従来のインキュベーターでは、受精卵の観察をするために一度培養器から外に取り出し顕微鏡で観察していました。外の環境は受精卵にとってストレスのかかる環境です。観察のたびに外に出すことで受精卵の成長に少なからず影響を及ぼす可能性がありました。

タイムラプスインキュベーターは、培養器内に顕微鏡とカメラが内蔵されているため受精卵を外に出さずに観察ができるので胚発生率の向上が期待できます。また、一定間隔で撮影をしているため動画のように観察することができるので、詳細な情報をもとに、より妊娠率の高い胚の選別も期待できます。

IMSI

IMSIとは、ICSI（顕微授精）を行う際に高倍率レンズを使用し精子頭部をより詳細に観察・選別する方法です。通常のICSIは倍率200〜400倍レンズを使用しますが、IMSIでは1200倍と高倍率なレンズを使用するので精子頭部内の空胞や形態異常精子を判別することができます。IMSIを実施することで受精率・胚発生率の向上・胚の染色体異常の減少が期待できます。

PICSI

PICSIとは、ICSIを行う際にヒアルロン酸を用いて精子を選別する方法です。通常のICSIでは運動性や形態の良好な精子を使用しますが、PICSIではヒアルロン酸に結合した精子を使用します。成熟したDNA損傷の少ない精子はヒアルロン酸に結合する特徴があります。ヒアルロン酸は卵子の膜にも含まれているのでより自然に近い精子選別法です。PICSIを実施することで胚発生率の向上、流産率の低下が期待できます。

Zymot

Zymotとは、特殊な膜構造を有するザイモートスパームセパレーターを使用した精子調整法です。従来の密度勾配遠心による精子調整法では、遠心による物理的なダメージや作業工程による精子DNAの断片化が起こりやすいと言われています。Zymotでは精子の運動性を利用し特殊な膜構造をくぐり抜け泳いできた運動性の良好な精子をダメージなく回収することができます。Zymotを使用することにより、受精率・胚発生率の向上が期待できます。

二段階胚移植

二段階胚移植とは、まず受精後2〜3日目の初期胚を移植して、さらに2〜3日後に受精後5〜6日目の胚盤胞を移植する二段階の胚移植方法です。子宮内膜は胚とのシグナル交換により着床に向けて環境を整えていくと考えられています。通常の胚移植法で着床が成立しない原因の一つとして、このシグナル交換がないために子宮内膜の環境が整っていないことが考えられます。初期胚で子宮内膜とのシグナル交換をし、より着床しやすい環境に整った子宮に胚盤胞を移植することで妊娠率の向上が期待できます。ただし、胚を2個移植することになるので多胎妊娠のリスクは上昇します。(当院ではまだ実施できません)

SEET法

SEET法とは、胚盤胞まで培養した培養液を一度凍結保存し、二段階胚移植の初期胚の代わりにその培養液を子宮内に移植し子宮内膜とのシグナル交換を促す方法です。胚盤胞まで培養した培養液の中には子宮内膜を整える因子が含まれていると考えられています。培養液で子宮内膜とのシグナル交換をし、より着床しやすい環境に整った子宮に胚盤胞を移植することで妊娠率の向上が期待できます。二段階胚移植とは異なり移植する胚は胚盤胞のみとなるので多胎妊娠を回避することができます。(当院ではまだ実施できません)

子宮内膜スクラッチ

子宮内膜スクラッチとは、着床の前にわざと子宮内膜に傷つける方法です。子宮内膜は損傷すると修復の過程で様々なサイトカインの分泌や血管新生が行われますが、胚が着床する環境でも同様の因子が分泌されます。故意的に子宮内膜に傷をつけ胚が着床しやすい環境を作り出すことで妊娠率の向上が期待できます。(当院ではまだ実施できません)

子宮内膜フローラ検査

子宮内フローラ（子宮内の菌環境）検査とは、膣または子宮内に存在する善玉菌・ラクトバチルス属菌の割合を調べる検査です。子宮内フローラが乱れ雑菌が増えると、子宮内膜で免疫が活性化し受精卵を異物として攻撃してしまう可能性があり、着床率が低下することが報告されています。結果次第では抗生剤やラクトフェリンなどで補充し、子宮内膜フローラを改善してから胚移植を行うことで妊娠率の向上が期待できます。