【不妊治療の入口】タイミング法とはどんな治療?流れや費用、成功率について詳しく解説
公開日:2024.04.30更新日:2024.12.12
タイミング法は、多くの夫婦が最初に選択する不妊治療です。自宅で自己流で妊活をするよりも、クリニックに通い排卵のタイミングを確実に見て治療した夫婦の妊娠率は格段に上がります。この記事ではタイミング法を行う際のスケジュールと費用を紹介しつつ、タイミング法から次の不妊治療へステップアップすべき時期についても詳しく解説します。
不妊治療における「タイミング法」とは
タイミング法とは、自己流ではなく医師の指導に従って、「妊娠しやすいタイミングで性行為を行う」不妊治療です。一般的に、妊娠しやすい期間は排卵日の前後数日と言われています。タイミング法では、排卵日の予測を基礎体温や病院の超音波検査・尿検査の結果を使って行います。タイミング法が不妊治療の入り口と言われる理由は、体への負担が少ない検査内容や、服薬があっても期間が短い点です。
タイミング法を受ける条件は「自然妊娠が可能であること」
「自然妊娠」が可能であることは、タイミング法で不妊治療するための最低条件です。排卵の有無や精液検査で問題がないかどうかを、以下の検査などで判断します。
- 排卵の有無:卵管造影検査や卵巣の超音波検査で排卵機能を確認します。重度の排卵障害、卵管の閉塞・狭窄があると自然妊娠は難しい場合があります。
- 精液検査:精液を採取して、総運動精子数(精液濃度×精液量×運動率)などを調べます。結果が基準値以下の場合、自然妊娠は難しいです。
夫婦の状況に合わせて必要な検査をするため、上記以外の検査をする場合もあります。
タイミング法で5周期目までに約50%の方が妊娠している
タイミング法で妊娠する確率は高く、5周期目までに50-60%の方が妊娠しています。
周期とは女性の月経周期を指し、月経1日目から次の月経開始の1日前までが「1周期」です。原因不明の不妊症の方でも、タイミング法を6周期まで継続した場合の累積妊娠率は50%で、その後24ヶ月までで妊娠率は60%と横ばいになります。
このようにタイミング法の妊娠率は周期を重ねるごとに低下し、5週期目からは変化が少ないため、タイミング法を6周期まで続けても妊娠しない場合は、不妊治療のステップアップも検討してください。
【4ステップ】「タイミング法」実施の流れ
「タイミング法」は一般的に以下の流れで実施します。
- 超音波検査で卵胞の大きさをチェックし、排卵日を予測する
- 性行為のタイミングを指導される
- 指導に合わせて性行為をする
- 妊娠が成立する
それぞれのステップで行う内容について解説します。
超音波検査で卵胞の大きさをチェックし、排卵日を予測する
排卵日が近くなったら、超音波検査で卵胞の大きさを測定します。卵胞は毎日約2mm成長し、18〜22mmくらいになると排卵されるため、排卵予定日の数日前に超音波検査をして排卵日を推測します。
排卵時期は、おりものの状態チェックも重要です。ホルモンの分泌が変化し、透明なおりものの量が増えます。
性行為のタイミングが指導される
超音波検査の結果やおりものの状態、尿中黄体形成ホルモン検査の結果を踏まえ、医師は性行為のタイミングを指導します。黄体形成ホルモンは排卵の10〜12時間前に分泌量が最大になるため、排卵日の推測に用いる検査です。
指導に合わせて性行為をする
医師から指導された日に性行為を行ってください。排卵日以降にクリニックで黄体ホルモンの採血、および超音波検査を行うことで、排卵のタイミングが予測通りだったか確認できます。ご自身で付けている基礎体温の変化で、排卵していたかどうかの推測ができます。
妊娠が成立する
予定日に生理が来ない場合、血液検査および尿検査でhCGホルモンの数値から妊娠判定します。妊娠5週目にあたるこの時期は、超音波検査で胎嚢を確認することでも判定できます。6週目前後で心拍の確認ができれば妊娠成立です。
タイミング法を受けるときに大切な3つのこと
タイミング法を受ける際は以下の3つを大切にしましょう。
- 性行為でストレスを感じないようにする
- 生活習慣を整えて精子の状態をよくする
- 妊娠しやすい体づくりをする
タイミング法は不妊治療の一つですが、妊娠方法は自然妊娠と同じです。日々の生活で意識すると良い点について紹介します。
性行為でストレスを感じないようにする
排卵日は妊娠率が高くなる日ですが、排卵日を意識し過ぎると、男性がストレスを感じて勃起不全(ED)を引き起こすケースもあります。
性行為は女性のホルモンバランスの安定に繋がると言われています。不妊治療において排卵日の性行為は大切ですが、夫婦関係を良好に維持するコミュニケーションとしても大切にしましょう。
生活習慣を整えて精子の状態をよくする
生活習慣が精子の状態に与える影響は大きいです。妊娠率に影響する「総運動精子数」は、精子の運動率・精子濃度・精子量から割り出されます。過去の研究で、運動時間が多い人ほど、精子濃度が高い傾向があるというデータがあります。
アルコール摂取と精子の状態に関する研究では、お酒が弱い人がアルコールを摂取すると、総運動精子数が低下する可能性があることが確認されました。
妊娠しやすい精子の状態を保つため、男性側にも適度な運動と休息、食生活の見直しが重要です。
妊娠しやすい体づくりをする
妊娠率を上げるためには、妊娠しやすい体づくりも大切です。過度な食事制限や偏った食生活では栄養素が不足する危険があります。食事は十分なタンパク質、良質な脂質、体内で合成されないビタミンやミネラルを摂るように意識してください。
また「冷え」にも注意が必要です。体温の低下は卵巣機能に影響を与える可能性があります。暖かい季節でも運動や湯船で体をしっかり温めて、体を冷やし過ぎないように注意してください。
適度な運動やストレスを溜めない生活習慣を心がけましょう。
タイミング法の費用は1周期およそ7,000円
タイミング法を1周期行う場合、おおよそ7,000円の費用がかかります。具体的な費用の内訳は以下の通りです。
生理3~4日目:3,000~3,500円
診察代やホルモン検査の費用です。排卵誘発の必要性も判断し、排卵誘発剤を服用する場合は薬代もかかります。
生理10~12日目:1,500~2,000円
超音波検査で卵胞の成長状態を確認し、排卵までの日数を予測します。必要に応じて注射して排卵を促す場合もあります。
生理16~23日目:1,500~2,000円
排卵が起こったかどうか超音波検査で確認します。必要に応じて、採血や高温期をアシストするような注射やお薬の処方を行います。
不妊治療が保険適用となってからタイミング法の費用負担は軽減されました。保険適用の範囲について詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。
>> 2022年4月から不妊治療が保険適用に!年齢・回数の制限やデメリットについて詳しく解説
タイミング法は助成の対象となる場合もある
タイミング法の費用を助成している自治体もあります。
東京都の場合、保険医療機関での不妊検査及び一般不妊治療(タイミング法含む)に助成があります。助成回数は夫婦1組につき1回で、支給上限は5万円です。
助成を受けるには、対象となる期間や申請期限、40歳未満など細かな条件があります。不妊治療を開始する前に、お住まいの自治体でどのような助成が受けられるか確認しましょう。
不妊治療を検討するときは産婦人科に相談しよう
タイミング法では、排卵日を精度高く予測し、医師指導の下で性行為を行います。他の不妊治療と比較して通院頻度や服薬・注射も少なく、身体的にも金銭的にも負担の少ない不妊治療です。
タイミング法を行う夫婦のなかで、妊娠率は5周期までに50-60%が妊娠している一方、6周期以降の妊娠率は低下する傾向があります。タイミング法をはじめとする不妊治療は、専門病院での検査や医師の指導が欠かせません。不妊治療を検討する際は、専門である産婦人科に相談しましょう。
>> 当院の不妊治療の流れ