卵子凍結のすべて|治療の目的や費用・流れについてもわかりやすく解説

公開日:2024.03.25
更新日:2024.04.13

女性の社会進出などにともない、現在は妊娠を希望していないけど、将来的に子どもが欲しいという方は増えています。そのような事情に対して、卵子を凍結保存しておくことは有効な手段のひとつです。この記事では、卵子凍結について治療方法や費用、デメリットなどくわしく解説します。

卵子凍結とは

卵子凍結とは、将来の妊娠に備えて、あらかじめ女性から卵子を採取して凍結保存しておくことです。卵子凍結することで、年齢を重ねたあとでも、妊娠の可能性が低くなるのを防いでくれる効果が期待できます。

病気や仕事などの理由で、現在妊娠・出産を考えていないが、将来的に出産を希望するご家庭にとって、有効な手段のひとつです。

卵子凍結は「社会的適応」か「医学的適応」の場合に行われる

卵子凍結は、主に社会的適応か医学的適応に当てはまる場合に行われます。

社会的適応とは、病気などの問題はないが、仕事やプライベートが忙しく、現在は妊娠を希望していない方に行われる場合が該当します。若くて生殖能力が高いうちに卵子凍結を行い、加齢などによって子どもができにくくなる状態に備えているのです。

医学的適応とは、がんなどの治療に使う抗がん剤の副作用、放射線治療の過程で卵巣機能が低下する可能性がある場合に行われます。治療前にあらかじめ卵子凍結しておくことで、病気から回復後に妊娠を希望することが可能になるのです。

卵子凍結の対象年齢は40歳前後まで

卵子凍結を行える年齢は、40歳前後にしているクリニックが多いです。なぜなら40歳前後で卵子の質は低くなり、妊娠する可能性が高くないからです。無事に妊娠しても、40歳以降の出産は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などを発症するリスクが増加し、母子ともに危険な状態になることがあります。

「未受精卵凍結」と「受精卵凍結」の違い

未受精卵凍結と受精卵凍結の違いは、凍結保存する前の卵子が受精しているかどうかです。

将来的に出産を希望する場合、卵子・精子をそれぞれ単独で凍結保存しておくよりも、受精卵の状態で凍結保存した方が妊娠しやすいです。パートナーがすでに決まっているが、現在は妊娠を希望していないカップルなどは受精卵凍結の方が良いかもしれません。

卵子凍結の目的は妊娠率と流産率の維持

妊娠率は年齢とともに低下していき、反対に流産率は年齢とともに上がっていきます。卵子は、凍結させた年齢の妊娠率と流産率の維持が期待できるので、卵子凍結することで妊娠しやすい期間の延長が可能です。

病気が原因による医学的適応時はもちろんですが、現在は男女ともに晩婚化が目立っています。仕事が充実していたり、良いパートナーと出会えていなかったりしますが、将来の妊娠に備えて、若くて質のよい卵子を残しておきたいという希望に応じて卵子凍結などの手段がとられます。

卵子凍結した場合の妊娠率と流産率

凍結保存した卵子は、使用するときには融解する必要があります。融解時に約半数の卵子は壊れて使用できなくなってしまうのです。解凍後に卵子が生存・受精しており、かつ受精卵の質が良い場合の卵子一個あたりの妊娠率は以下のように幅があります。

  • 34歳以下の妊娠率:35%前後
  • 31歳〜34歳の妊娠率:30%前後
  • 35歳~37歳の妊娠率:25%前後
  • 38歳~39歳の妊娠率:20%前後
  • 40歳以上の妊娠率:15%以下

排卵した年齢が上がるにつれて妊娠率が下がるだけでなく、無事に妊娠しても、流産してしまう可能性があります。自然流産率は30代前半で約10%、30代後半で約20%、40代になると41%以上に上がってしまいます。年齢を重ねるごとに妊娠率は低下していき、流産率は上がってしまうのです。

年齢を重ねると妊娠が難しくなる理由

卵子は生まれたときに作られて、その後新しく作られることはありません。年齢を重ねることで卵子の数は減少し、卵子自体も老化してしまいます。古くなってしまった卵子はカタチが悪く張りもなくなってしまうため、受精が難しくなります。

さらに、ダウン症などの障害を持った子どもが産まれる確率は年齢を重ねるにつれて上がってしまい、30歳に比べて40歳では10倍近く確率が上がってしまうのです。

卵子凍結の流れ

卵子凍結を検討している方に対して、まずは診察や検査などで卵巣機能やホルモン値、卵子の数などを調べます。卵子凍結が問題ないと判断されたら、実際の処置に進みます。

一般的な卵子凍結の流れは以下の3つです。

  1. 排卵誘発
  2. 採卵手術
  3. 凍結保存

状態の良い卵子を採取するために、内服薬や注射薬などを使って排卵を誘発させ、複数の卵子を育てます。

採卵手術では、膣から超音波器機を挿入して、エコー画像を見ながら卵巣内の卵胞(卵子が入っている袋)に専用の針を刺して、卵胞液とともに卵子を吸引して採卵します。採卵手術にかかる時間は10分〜15分程度です。採卵した卵子は、ガラス化法という方法を用いて、-196℃の液体窒素に入れて凍結保存します。

当院での具体的な治療の流れは以下のページに記載しています。相模原市を中心に、関東にお住まいで卵子凍結に関心がある方はぜひチェックしてみてください。
>>当院での卵子凍結の流れ

痛みを伴う処置もあるため事前に確認しておこう

卵子凍結には痛みを伴う処置がいくつかあります。採血や排卵誘発剤のために注射を複数回行いますし、検査や採卵のために膣にチューブを挿入したり、卵巣へ針を刺したりします。排卵誘発剤の副作用や採卵時の卵巣刺激に伴う卵巣の腫れなどが原因で、下腹部の痛みが出る場合もあるので注意が必要です。

卵子凍結には痛みを伴う処置があるため、不安な方は事前に医師へ確認しておきましょう。卵子凍結に関する痛みに関してよりくわしく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

卵子凍結にかかる費用

卵子凍結は保険適用外の処置のため、全額自己負担です。クリニックや処置内容によって差はありますが、診察から採卵・凍結まで25〜75万円程度かかります。

具体的な項目は以下の通りです。

  • 問診・スクリーニング検査
  • AMH検査
  • 超音波検査
  • 採卵費用
  • 凍結費用
  • 凍結卵子の保存料

このほかにも、卵子を使うときに融解する費用体外受精にかかる費用などもあります。患者さま一人一人の状況を確認したうえで、必要な検査・処置だけを行います。

当院で卵子凍結をする場合の費用は以下のページにて具体的に表でまとめているため、検討中の方は1つの例としてぜひお読みいただければと思います。
>>当院の卵子凍結の料金表

卵子凍結は保険適用外

卵子凍結は保険適用外の治療です。しかし自治体によっては、卵子凍結に関わる費用に関して一定額補助してくれる地域もあります。お住まいの市役所の窓口や不妊治療をしているクリニックへご相談ください。

卵子凍結はまだ保険適用外ですが、2022年4月から不妊治療に対して一部保険適用が認められるようにもなりました。回数制限や年齢制限もありますので、くわしく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

卵子凍結にはデメリットやリスクもあるので注意が必要

検査や採卵時には外科的な処置を行うため、麻酔の副作用や出血、腹腔内感染、腸などの臓器を損傷してしまうリスクがあります。自然分娩に比べて生殖補助医療の場合、周産期合併症(早産・低体重児・帝王切開・胎盤早期剥離・妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病など)の発生リスクが上がるという報告があります。

全額自己負担のため費用が高額ですが、卵子凍結をしたからといって将来必ず妊娠できるわけではありません。卵子凍結にはこのようなデメリットやリスクがありますので、注意が必要です。

卵子凍結のデメリットについては以下の記事で詳細を解説しているため、興味はあるけどリスクが気になっている方はぜひお読みください。
>>卵子凍結の5つのデメリットとは?リスクを最小限にする方法やメリットについても詳しく解説

卵子凍結を検討している方は産婦人科に相談しよう

卵子凍結は、さまざまな理由で現在は妊娠を希望していないが、将来的に出産を望む女性にとって妊娠率を下げないための有効な手段のひとつです。ただし、保険適用外のため治療には高額な費用がかかりますし、痛みや副作用などのデメリットもあります。

卵子凍結を悩んでいる方は、まずは一度専門の産婦人科へ相談してください。

ソフィアレディースクリニックでも患者様へわかりやすくご説明し、ご納得いただいた上で最適な治療法をご提案いたしますのでお気軽にご相談ください。