
不妊治療の成功率はどのくらい?治療法別の妊娠確率と押さえておくべきポイント
公開日:2024.07.29更新日:2025.10.28
不妊治療を考えている方や治療中の方、周りでサポートしている方で、不妊治療の成功率が気になる方は多いです。
「本当に赤ちゃんを授かることができるのか」「どれくらいの確率で成功するのか」といった疑問をお持ちではないでしょうか。不妊治療の成功率は、年齢や治療法、患者さんの状態などさまざまな要因が絡み合って決まります。
本記事では、統計データをもとに成功率を解説し、成功率を高めるための方法やリスク、費用面についても詳しく説明します。記事を読めば、正しい知識を得られ、より前向きに治療に取り組むことができるでしょう。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、不妊治療の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
不妊治療の成功率と要因
ここでは、不妊治療の成功率について、統計データと成功率を左右する要因を解説していきます。
不妊治療の成功率は約20〜30%
不妊治療(特に高度生殖医療)での成功率は確かに20〜30%前後ですが、年齢・治療法・体の状態によって大きく変動するため、あくまで目安と捉えるべきです。
日本産科婦人科学会のデータによれば、胚移植1回あたりの妊娠率はおおよそ34%前後に達している例も報告されています。年齢別で見ると30歳未満で約36.6%、31〜34歳で32.7%、35〜39歳で25.4%、40〜42歳で13.8%という数値も示されています(厚生労働省)。
ただし、誰でもこの数値が出るわけではないということを理解しておく必要があります。
治療を始める前には、自分の年齢・治療法・健康状態などを医師と詳しく確認し、「この治療でどれくらいの可能性があるか」「目標とする期間や方法」をしっかり共有しておくことが大切です。そして、成功率だけで一喜一憂せず、個々の状況や選択肢を踏まえて納得のいく進め方を選ぶことが、心理的にも身体的にも負担を軽くしてくれます。
不妊治療の成功率を左右する要素と考えられる要因
不妊治療の成功率は、年齢・治療法・身体の状態・生活習慣など、複数の要素が複雑に関わり合って決まります。妊娠の可能性を高めるには、これらの要因を理解し、できる範囲で整えていくことが重要です。成功率に影響を与える主な要因は以下のとおりです。
- 年齢による卵子の質と量の低下
- 選択する治療法の違い(タイミング法・人工授精・体外受精など)
- 基礎疾患の有無(子宮内膜症・卵管の異常・子宮筋腫など)
- 生活習慣やストレスによるホルモンバランスの乱れ
- 医療機関の技術力や医師の経験
特に年齢は大きな要因で、35歳を過ぎると妊娠率が下がり始め、40歳以降はさらに低下します。体外受精のような高度治療は成功率が高い一方で、費用や身体的負担も増えます。自分の状況に合った治療を選び、専門医と連携しながら最適な方法を見極めることが、不妊治療を成功へ導く鍵となります。
不妊治療を始める前に知っておきたいこと
不妊治療を検討している方にとって、いつから治療を始めるべきか、どんな検査が必要なのかは大きな関心事です。治療をスムーズに進めるためには、事前に基本的な知識を持っておくことが大切です。治療を始める前に押さえておきたいポイントとして、以下の3つを解説します。
- 不妊治療を検討するタイミング
- 初診時に行われる主な検査内容
- パートナーとの話し合いで確認すべき項目
不妊治療を検討するタイミング
不妊治療を始めるタイミングは、年齢や避妊をしていない期間によって異なります。一般的には、避妊をせずに1年以上妊娠しない場合に不妊症と定義されています。女性が35歳以上の場合は、卵子の質や数が年齢とともに低下するため、半年程度妊娠しなければ早めに医療機関を受診することが推奨されています。
月経不順や過去の婦人科疾患がある場合、パートナーに精子の問題が疑われる場合なども、早期の相談が望ましいです。「もう少し様子を見てから」と考えているうちに、治療開始が遅れてしまうケースも少なくありません。
迷っている場合は、まず専門の医療機関でカウンセリングを受けることから始めてみましょう。早期に適切な検査や治療を受けることで、妊娠の可能性を高めることができます。
初診時に行われる主な検査内容
不妊治療の初診では、不妊の原因を特定するためにさまざまな検査が行われます。女性の場合、ホルモン検査や超音波検査で卵巣の状態を確認し、卵管が詰まっていないかを調べる卵管造影検査などが実施されることがあります。基礎体温の記録や月経周期の確認も重要な情報となります。
男性の場合は、精液検査が基本となります。精子の数や運動率、形態などを調べることで、男性側の不妊要因を把握します。検査は1回だけでなく、複数回実施することで正確な状態を把握できます。
これらの検査結果をもとに、医師が最適な治療方針を提案します。検査内容や流れは医療機関によって異なる場合がありますので、初診時に詳しく説明を受けておくと安心です。検査には保険が適用されるものと自費診療になるものがあるため、費用についても事前に確認しておきましょう。
パートナーとの話し合いで確認すべき項目
不妊治療は一人で抱え込むものではなく、夫婦で方向性を共有し支え合うことが、長く続ける上での大切な基盤になります。
治療を始める前に、パートナーと現実的かつ前向きに話し合うことが重要です。感情的にならずに、お互いの考えや希望を整理しておくことで、治療中の迷いや衝突を防ぐことができます。以下のような点を話し合っておきましょう。
- 治療にかけられる期間と費用の上限を決めておく
- 仕事・生活とのバランスをどう取るか話し合う
- 治療の優先度を共有し、無理のないペースを確認する
- 治療がうまくいかなかった場合の選択肢も検討しておく
不妊治療は、身体的・精神的にも負担の大きいプロセスです。どちらかが一方的に頑張りすぎると関係に歪みが生じることもあります。治療を一時的に休む選択も含め、「二人でどう生きていきたいか」という視点を持つことも大切です。
定期的にコミュニケーションを取りながら、お互いの気持ちを尊重する関係づくりが、治療を前向きに続ける支えになります。
不妊治療にかかる費用と保険適用
ここでは、不妊治療にかかる費用と内容・保険適用について解説します。
不妊治療にかかる費用
不妊治療の費用は治療法や回数によって大きく異なり、計画的に進めることが経済的・精神的な負担を軽減する鍵です。
不妊治療は多くの医療機関で「ステップアップ方式」を採用しており、タイミング法から人工授精、体外受精へと進むにつれて費用が高くなる傾向があります。主な治療法と費用の目安は以下のとおりです。
- タイミング法:排卵日に合わせて性交を行う/約3,000〜1万円(保険適用3割負担)
- 人工授精:精子を子宮内に直接注入する/約1〜3万円(保険適用3割負担)
- 体外受精:卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮へ戻す/約6〜12万円(保険適用上限あり)
治療が長期化すると、採卵や薬剤費などの追加費用も発生します。そのため、治療を始める前に見積書を確認し、保険適用の範囲や自己負担額を明確にしておくことが重要です。医師やクリニックと相談しながら、無理のない範囲で治療計画を立てましょう。
不妊治療にかかる費用の詳細や、保険・助成制度の活用方法については、以下の記事でより詳しく解説しています。治療を始める前の費用計画の参考にしてください。
>>不妊治療の費用はいくら?治療内容別の費用と使える助成制度を詳しく紹介
不妊治療の保険は2022年4月から一部適用へ
2022年4月から、不妊治療の一部が保険適用となりました。経済的な負担を軽減し、より多くの人が不妊治療を受けやすくするための国の取り組みです。具体的には、タイミング法や人工授精、体外受精、顕微授精などが保険適用となっています。
保険適用を受けるためには、いくつかの条件があるので注意しましょう。夫婦であることや、法律で婚姻関係にあるもの(事実婚含む)、年齢や治療歴などの要件を満たしている必要があります。
保険適用となるのは、医療機関で認められた治療行為であり、自由診療で行われる治療は保険適用外です。保険適用や助成制度については、厚生労働省や各自治体のホームページで最新の情報を確認してください。

不妊治療のリスクと副作用
不妊治療には身体的・精神的な負担や副作用のリスクが伴うため、正しい知識とサポート体制を整えたうえで取り組むことが大切です。不妊治療は妊娠の可能性を高める手段ですが、治療の過程で体や心に影響が出る場合があります。
排卵誘発剤を使用する際には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあります。卵巣が腫れたり腹部に水が溜まったり、重症化すると血栓や呼吸困難を引き起こすこともあります。複数の卵子が受精することで多胎妊娠の可能性が高まり、母体への負担や早産のリスクも増加します。
精神的な負担なども軽減するために、以下のような対策が必要となります。
- 医師やスタッフと積極的にコミュニケーションを取る
- パートナーと治療方針や気持ちを共有し協力する
- 家族や友人に相談し、悩みを抱え込まないようにする
- 趣味や旅行などで気分転換を図る
- 必要に応じて専門のカウンセリングを利用する
不妊治療は「心と体の両方のケア」が欠かせません。リスクを正しく理解し、支え合える環境を整えることで、より前向きに治療へ取り組むことができます。
不妊治療の成功率を高める方法と対策
不妊治療は、体外受精などの高度生殖医療による治療を受けても妊娠に至らないケースも少なくありません。ここでは、タイミング法や人工授精、体外受精の場合において成功率を高める方法を紹介します。
タイミング法・人工授精の場合
タイミング法や人工授精による不妊治療では、まず自分の体のリズムを知ることが大切です。基礎体温や月経周期を記録し、排卵のタイミングを把握することで、妊娠の可能性を高めることができます。
治療中は、結果への焦りや将来への不安からストレスを感じやすくなりますが、ストレスはホルモンバランスを乱し、妊娠を妨げる要因にもなります。無理をせず、趣味やリラックスできる時間を意識的に取り入れましょう。
タイミング法で妊娠しにくい原因や、よりスムーズに進めるためのポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。治療を検討している方は参考にしてください。
>>タイミング法で妊娠できない原因とは?効果的な方法と注意点も合わせて解説
不妊治療における生活習慣の改善ポイント
不妊治療の効果を高めるためには、体の基礎を整える「ライフスタイルの改善」が欠かせません。日々の生活習慣を意識的に見直すことで、妊娠しやすい体づくりにつながります。健康的な生活を送ることは、ホルモンバランスを整え、卵子や精子の質を向上させるうえで非常に重要です。
特に不妊治療中は、次のポイントを意識して過ごしましょう。
- バランスの良い食事を心がける(緑黄色野菜や果物でビタミン・ミネラルを補給)
- 適度な運動を続ける(ウォーキングやヨガなど、血流を促す軽い運動)
- 十分な睡眠を取る(スマホ使用を控え、リラックスできる環境で休む)
- 禁煙を徹底する(タバコは卵子・精子の老化を早める原因)
- アルコールを控える(過度な摂取はホルモンバランスを乱す)
これらの生活習慣はすぐに大きな変化をもたらすわけではありませんが、体の基盤を整え、妊娠の可能性を高める重要なステップです。無理なく続けられる範囲から始め、心と体の両方を健やかに保ちましょう。
不妊治療における心のケアとサポート体制
不妊治療は身体的な負担だけでなく、精神的なストレスも大きいものです。治療が思うように進まないとき、周囲からの何気ない言葉に傷つくこともあるでしょう。こうした心の負担に対処するためには、適切なケアやサポートを受けることが欠かせません。治療中のストレスとの向き合い方や、利用できる相談窓口についてご紹介します。
治療中のストレスとの向き合い方
不妊治療中は、毎月の結果に一喜一憂したり、周囲の妊娠報告に複雑な感情を抱いたりすることがあります。こうした気持ちは決して特別なものではなく、多くの方が経験していることです。まずは自分の感情を否定せず、「つらいと感じてもいいんだ」と受け入れることが大切です。
ストレスを軽減するためには、治療以外の時間を充実させることも大切です。趣味を楽しんだり、リラックスできる時間を意識的に作ったりすることで、心に余裕が生まれます。一人で抱え込まず、誰かに話すだけでも心が軽くなることがあります。心のケアをしながら治療を続けることで、より良い結果につながる可能性が高まります。
利用できる相談窓口や支援制度
不妊治療は、専門の相談窓口や公的支援を上手に活用することで、精神的・経済的な負担を軽減しながら前向きに続けることができます。不妊治療は身体だけでなく、心にも大きなストレスがかかります。孤立感や焦りを感じやすいため、一人で抱え込まずに信頼できる相談先や支援制度を活用することが大切です。
主なサポートの種類は以下のとおりです。
- 不妊専門相談センターの活用(各都道府県に設置・医師や助産師、カウンセラーが無料で対応)
- 医療機関内の不妊カウンセラーへの相談(治療や夫婦関係の悩みを専門的にサポート)
- 自治体の助成制度の確認(治療費の一部が補助される場合あり)
これらの支援は、治療を「続けるための助け」だけでなく「心を保つための支え」にもなります。どんなに小さなことでも相談できる環境を持ち、無理をせず自分のペースで治療と向き合うことが、前向きな結果につながります。
治療の継続・中断を考えるとき
不妊治療は、すべての方がすぐに結果を得られるわけではありません。セカンドオピニオンを検討するタイミングや、治療の見直しを考える目安について解説します。
セカンドオピニオンを検討する場合
治療に行き詰まりを感じたときは、セカンドオピニオンを受けることで新たな治療の方向性や選択肢が見つかる可能性があります。不妊治療は、医師との信頼関係が大切ですが、思うような結果が得られない場合や方針に疑問を感じた場合には、別の医師の意見を聞くことが前向きな一歩となります。
セカンドオピニオンは「今後の治療をより良くするための判断材料」であり、決して担当医への不信を意味するものではありません。セカンドオピニオンを検討すべき主なタイミングは以下のとおりです。
- 同じ治療を複数回行っても妊娠に至らない場合
- 治療内容や方針に納得できない部分がある場合
- 医師とのコミュニケーションがうまくいかない場合
相談時には、これまでの検査結果や治療経過をまとめた資料を持参するとスムーズです。多くの医療機関では「セカンドオピニオン外来」を設けており、事前予約で安心して受診できます。新しい視点を得ることで、自分に合った治療方針が見えてくるでしょう。
治療の見直しを考える目安
治療を続けるかどうかを判断するタイミングは人それぞれですが、以下のような状況が一つの目安となります。
- 体外受精を複数回行っても妊娠に至らない場合
- 身体的・精神的な疲労が限界に達していると感じる場合
- 経済的な負担が大きく、継続が難しい場合
- 事前に決めた期間や費用の上限に達した場合
治療を中断することは失敗ではなく、心と体を休め、次の選択を冷静に考えるための時間です。見直しを考える際は、医師や不妊カウンセラーに相談し、今後の方針や別の治療法について意見を聞きましょう。何より大切なのは、夫婦で話し合い、納得して選ぶことです。それが前向きに次の一歩を踏み出すための第一歩となります。
不妊治療の成功率に関するよくある質問
不妊治療について、多くの方から質問が寄せられる以下の3つを解説します。
不妊治療はいつから始めるべき?
不妊治療を始めるタイミングは、年齢や健康状態によって異なります。一般的には、避妊をせずに1年以上妊娠しない場合に医療機関の受診を検討します。女性が35歳以上の場合は、妊娠する力が年齢とともに低下するため、半年程度妊娠しなければ早めに相談することが推奨されています。
月経不順や婦人科系の疾患がある場合、過去に骨盤内感染症や子宮内膜症の治療歴がある場合は、早期に検査を受けることが望ましいです。男性側も、精巣の手術歴や性機能に関する問題がある場合は、早めの検査が重要です。
「まだ若いから大丈夫」「もう少し様子を見てから」と考えているうちに、治療開始が遅れてしまうことがあります。少しでも気になることがあれば、早めに専門の医療機関で相談してみましょう。検査だけでも受けておくことで、今後の計画が立てやすくなります。

仕事と治療の両立はできる?
工夫次第で両立は可能ですが、治療の段階によって通院回数や時間的な制約が異なります。タイミング法や人工授精の段階では、月に数回の通院で済むことが多く、比較的スケジュールを調整しやすいです。
体外受精などの高度な治療に進むと、排卵誘発のための注射や頻繁な検査が必要になるため、通院回数が増えます。特に採卵日や胚移植日は日程の調整が難しいため、仕事との調整が必要になります。
両立のためには、職場への相談が重要です。職場に相談しにくい場合は、通院しやすい時間帯に診療を行っている医療機関を選ぶことも一つの方法です。
不妊治療に年齢制限はある?
不妊治療には法律で定められた年齢制限はありませんが、保険適用には年齢による条件があります。2022年4月から体外受精や顕微授精などの生殖補助医療が保険適用となりましたが、治療開始時の女性の年齢が43歳未満であることが条件です。43歳以上の方は自費診療となります。
保険適用で受けられる治療回数にも制限があります。40歳未満であれば最大6回まで、40歳以上43歳未満であれば最大3回までとなっています。年齢が上がるほど卵子の質や数が低下するため、治療の成功率は下がる傾向にあります。
年齢制限を過度に気にしすぎるのではなく、まずは医療機関で検査を受け、現在の状態を把握することが大切です。医師と相談しながら、自分に合った治療計画を立てましょう。
まとめ
不妊治療の成功率は個人差が大きく、一概に断言することはできませんが、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 年齢や治療法、患者さんの状態が大きな要因
- 高度生殖医療の一回あたりの妊娠率は約20~35%
- 治療を継続することで妊娠率が上昇する傾向あり
- 健康的なライフスタイルの維持が成功率向上に影響
- リスクや副作用、費用面についても理解が必要
焦らず、自分のペースで治療を進めることが大切です。不安な方は医師に相談してみるのがおすすめです。
参考文献
- 厚生労働省:「個別事項(その4)不妊治療」
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会:「2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」