
不妊治療の費用はいくら?治療内容別の費用と使える助成制度を詳しく紹介
公開日:2024.03.21更新日:2025.08.21
高額なイメージが強い不妊治療ですが、2022年4月から保険適用されています。不妊治療は種類が多く、治療の段階によっても費用に大きく差があります。この記事では、保険適用された不妊治療の種類と費用を解説します。制度を利用した治療費の軽減方法や、妊娠中から出産にかかる費用も紹介するので、ご自身が活用できる制度や保険を確認してください。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、不妊治療の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
不妊治療の費用:治療内容別の目安
不妊治療の費用は2022年4月に、全額自己負担(10割負担)から保険適用(3割)に変更されました。不妊治療の費用は治療内容によって差が大きく、保険適用でも1回の診療・治療につき数千円〜数百万円の治療費がかかります。
不妊治療は生理周期に合わせて治療や処置を行います。不妊治療の費用について、以下の5つを解説します。
- 人工授精の場合
- 体外受精の場合
- タイミング法の場合
- 顕微授精の場合
- 顕微鏡下精巣内精子採取術の場合
前回の生理開始から次回の生理開始日までの1周期あたりの治療内容と費用の概算を確認しましょう。
人工授精の場合
人工授精では、採取した男性の精液を病院で処理をし、女性の排卵時期に合わせ子宮内に注入して受精を促します。「人工」という言葉に抵抗感がある方もいますが、受精方法は自然妊娠と同じです。
人工授精は、精子の濃度や運動率が低い場合、勃起や射精がうまく機能しない場合にも行われます。1周期あたりの検査・受診にかかる費用は2〜3万円で、人工授精自体の費用は1回につき5,460円です。
体外受精の場合
体外受精は、精子と卵子を体外で受精させ子宮に戻す方法です。一般的な治療方法では、まず排卵誘発剤を使用し女性の体内で卵子を育て、成熟した卵子を複数個取り出します。取り出した卵子と精子を同じ容器の中に入れ受精を待ち、受精卵になったら数日間培養して子宮に戻します。
体外受精は、排卵誘発剤の使用や採卵が必須のため、女性の身体に負担が大きい不妊治療です。1周期の中に多くの処置が組まれるので、通院頻度が上がり女性側に時間的な負担も増えます。1周期あたりの検査・受診にかかる費用は、採卵から培養までで10〜15万円、移植が4〜6万円です。

タイミング法の場合
タイミング法とは、予測した排卵日に合わせて性交渉のタイミングを取る方法です。病院で超音波検査やホルモン検査を行い、卵巣内の卵子の成熟具合を確認することで、排卵日を推測します。性交渉を排卵日に合わせるだけでも妊娠する方は多いです。
最も妊娠しやすいタイミングは排卵日の2日前と言われています。精子の生存期間は72時間あるので、排卵日当日だけでなく排卵日の前から2〜3日に一度の性交があれば、さらに妊娠率は高くなる傾向です。
1周期あたりの検査・受診にかかる費用は数千円〜1万円です。排卵誘発剤を使用すると3万円程かかる場合があります。
顕微授精の場合
顕微授精では、採取した精子を顕微鏡観察下で卵子に直接注入して授精させます。精子の数が少ない乏精子症や、精液中に精子が見つけられない無精子症といった男性側に不妊の原因がある場合にも選択できる治療法です。女性側に問題がなくても、顕微授精のための通院や治療の負担は女性にかかります。
人工授精と同様に排卵誘発後に採卵し、顕微授精した受精卵を培養後、子宮に戻し妊娠を待ちます。検査・受診の費用は体外受精より数万円高く、1周期あたりの合計費用は14〜24万円程です。
顕微鏡下精巣内精子採取術の場合
顕微鏡下精巣精子採取術とは、精巣から精子を採取する手術です。乏精子症や無精子症の場合、精巣の中に精子が残っていれば、顕微鏡下精巣内精子採取術で精子を取り出し、顕微授精ができます。
顕微鏡下精巣精子採取術は、精子を作る働きが弱っている状態である無精子症の方に行われることが多い手術です。顕微鏡観察下で精巣の組織を拡大して、精子を作る能力が残っていそうな部分を見つけ出します。その中に精子が見つかり、採取できれば顕微授精の治療を選択できます。
顕微鏡下精巣内精子採取術も保険適用ですが、手術を受けるには医師の診断が必要です。
診断に必要な検査と手術費用が8.5万円程度、顕微授精時に追加で1.5万円ほどかかります。各病院の初診料や、手術前後に薬が処方されると、合計費用は11万円ほどです。
不妊治療費の自己負担を減らす3つの方法
不妊治療は保険適用でも、回数が増えるほど自己負担額は高くなります。不妊治療で自己負担額を減額するために、活用できる制度は以下の3つです。
- 高額療養費制度
- 民間の医療保険
- 医療費控除
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月あたりに支払った医療費が、上限を超えた場合に利用可能な制度です。上限金額は保険加入者の所得金額に応じて変わります。この金額を超えた医療費は申請後返還されます。
高額療養費制度では「適用期間」と「適用範囲」に注意が必要です。適用期間は1月なら1月1日〜1月31日で期間が区切られます。そのため、1月と2月にまたがって高額な治療を受けた場合、それぞれの月に上限が適用されます。不妊治療の中でも保険適応外の治療は、高額療養費制度の適用範囲外です。
オプション治療等は特に保険適用外の場合が多いので、各治療前に保険適応の治療範囲を確認してください。
民間の医療保険
「人工授精」「体外受精の採卵術」「体外受精の胚移植」は、保険適用に伴い「手術」に分類されました。民間医療保険に加入済みで、手術給付金が契約内容に含まれていれば、請求対象です。保険適用外の不妊治療でも、先進医療特約のついた民間の医療保険に加入していれば、先進医療給付金を請求できる場合があります。
詳しくは加入している民間保険の契約内容をご確認ください。
医療費控除
保険の適用・適用外に関わらず、治療目的の診療や施術は、不妊治療の費用として医療費控除の対象です。医療費控除とは、1月1日〜12月31日までに支払った医療費が一定の金額を超えると、所得控除を受けられる制度です。
医療費控除額の計算方法は、実際に支払った医療費から給付金や高額療養費制度で返還される金額を差し引き、さらに10万円を差し引いた額が控除対象額です。実際に戻ってくる金額は、所得税率によって変わります。医療費控除は、生計が同一の家族の医療費を合算して申請できます。
夫婦で不妊治療を受けた場合は、合算金額をどちらかが確定申告で申請すれば医療費控除を受けられます。
妊娠・出産にかかる費用は平均60万円
不妊治療と関係なく、通常の妊娠から出産までにかかる費用は平均60万円程と言われています。妊娠から出産までの間に予定される約14回の妊婦健診は1回あたり3,000〜1万円かかります。
出産時にかかる入院費用は、自然分娩の場合、平均で50万円ほどです。分娩時に無痛分娩を選択したり、入院中に個室を利用したりすれば、さらに費用は高額になります。入院費用は地域によっても差があります。里帰り出産等で妊婦検診を受ける病院と出産する病院が違う方は、妊娠初期から出産予定の病院のホームページで費用を確認しましょう。
妊娠・出産をサポートしてくれる制度や助成金
妊娠から出産までに活用できる主な制度は以下の3つです。
- 妊婦検診費の助成制度
- 出産育児一時金
- 医療費控除
妊婦検診費の助成制度を利用すると、住んでいる自治体から、母子手帳と同時に妊婦検診の補助券を受け取れます。助成金額は自治体によって差があり、補助券以外にも妊娠から出産に関わる助成制度が整った自治体もあるので、申請漏れが無いように注意しましょう。
出産育児一時金は、産まれた子ども1人につき50万円が健康保険または国民健康保険から給付される制度です。保険機関から病院へ出産一時金を直接支払う「直接支払制度」を利用すれば、退院時の出産費用から50万円を引いた差額のみの支払が可能です。
医療費控除を利用する場合、妊娠と診断されてからの定期検診や検査等の費用、通院費用も控除の対象になります。
2022年4月からの保険適用条件
2022年4月から不妊治療が条件付きで保険適用となりました。保険適用された不妊治療は、人工授精、体外受精、顕微授精です。適用条件は、治療開始時点で女性は43歳未満であること、治療適用の回数も年齢によって最大6回と規定されています。現時点で男性側に年齢制限はありません。
保険適用の年齢や回数について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
>> 2022年4月から不妊治療が保険適用に!年齢・回数の制限やデメリットについて詳しく解説
「特定不妊治療費助成制度」は2022年3月で廃止
不妊治療の保険適用に伴い、2022年3月で「特定不妊治療費助成制度」は廃止になりました。体外受精および顕微授精1回あたり30万円、条件が合わず受精を中止した場合でも1回10万円が給付されていました。この制度の特徴は実費ではなく、一律で30万または10万円の給付がされる点です。
体外受精の費用が40万円であれば、10万円の自己負担で済んでいた治療が、保険適用に伴い3割の12万円が自己負担となります。保険適用後の方が実際に支払う金額が増える場合があります。
2022年4月から不妊治療は保険適用になりましたが、治療内容によっては、以前の助成制度を利用していた場合よりも自己負担が増える場合があります。保険の対象外の治療もまだ多いので、治療方法を選ぶときは注意が必要です。

不妊治療でよくある質問
不妊治療でよくある質問は、以下の4つです。
- 不妊治療の費用は分割払いできる?
- 治療を途中でやめた場合の費用はどうなる?
- 男性不妊の検査や治療費用はどのくらい?
- 不妊治療専門クリニックと一般産婦人科の費用の違いは?
不妊治療の費用は分割払いできる?
多くの不妊治療クリニックでは、患者さんの経済的負担を軽減するため、分割払いに対応しています。体外受精や顕微授精などの高額な治療では、月々の支払額を抑えることで治療を続けやすくなります。クリニックによっては独自の分割払いシステムを用意していたり、医療ローンと提携していたりします。
クレジットカードでの支払いに対応しているクリニックも多く、カードの分割払い機能を利用することも可能です。分割払いを利用する場合は手数料がかかることがあるため、総支払い額が増える可能性があります。治療を始める前に、支払い方法や条件について詳しく相談しましょう。
治療を途中でやめた場合の費用はどうなる?
体外受精や顕微授精で、採卵前に治療を中止した場合は、それまでに行った検査や投薬の費用のみが請求されます。採卵後に治療を中止した場合は、採卵費用までが請求対象となります。
ほとんどのクリニックでは、実際に行った処置に対してのみ費用が発生するため、予定していた治療をすべて完了しなくても、全額を支払う必要はありません。クリニックによって料金体系が異なるため、治療開始前に中断時の費用について確認しておくと安心です。
保険適用の治療回数は、中断した場合でも1回としてカウントされることが多いので注意が必要です。
男性不妊の検査や治療費用はどのくらい?
男性不妊の検査は、基本的な精液検査であれば保険適用で数千円程度で受けることができます。より詳しい検査が必要な場合は、精子の機能を調べる検査や遺伝子検査などがあり、これらは1〜3万円程度かかることがあります。
治療については、軽度の男性不妊であれば薬物療法が中心となり、月額数千円程度の費用で済むことが多いです。重度の男性不妊の場合は、精巣から直接精子を採取する「TESE」という手術が必要になることがあり、10〜30万円程度の費用がかかります。
男性不妊の治療も一部が保険適用となっているため、泌尿器科や男性不妊専門外来で相談してみることをおすすめします。
男性不妊について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
>>【医師が解説】男性不妊になりやすい人とは?今すぐチェックしたい5つの特徴と対策
不妊治療専門クリニックと一般産婦人科の費用の違いは?
不妊治療専門クリニックと一般の産婦人科では、設備や専門性の違いにより費用に差が出ることがあります。専門クリニックでは最新の設備や技術を導入していることが多く、成功率が高い傾向ですが、費用も高めに設定されていることがあります。
一般の産婦人科では基本的な不妊治療は行えますが、高度生殖医療については専門クリニックへの紹介となることが多いです。保険適用の治療については、負担額に大きな差はありませんが、自費診療部分についてはクリニックによって料金設定が異なります。
治療を受ける前に、複数のクリニックで費用を比較検討し、自分に合ったクリニックを選ぶことが大切です。
まとめ
不妊治療の費用は、治療法によって大きく異なるため、治療を検討する際は不妊治療専門の産婦人科に相談することが大切です。産婦人科や不妊治療専門クリニックでは、初診時に詳しい検査を行い、結果をもとに適切な治療方針を提案してくれます。
費用についても具体的な見積もりを出してもらえるため、治療にかかる総額を事前に把握することができます。保険適用の範囲や、利用できる助成制度についても、詳しく説明してくれます。多くのクリニックでは無料相談会や説明会を開催しており、治療を始める前に疑問や不安を解消できます。
不妊治療は2022年4月から保険適用となりましたが、オプション治療には全額自己負担の場合や「特定不妊治療費助成制度」の廃止に伴って実費が増える場合もあります。
費用面での不安がある場合は、支払い方法についても相談に乗ってもらえます。適切な治療を安心して受けるためにも、まずは専門医に相談してみることから始めてみてください。
参考文献
厚生労働省:不妊治療に関する支援について(令和4年)