ソフィアレディスクリニック

体外受精の基礎知識を解説!対象となる方や流れ、成功率、実態までがわかります

公開日:2024.06.28
更新日:2024.06.28

体外受精がどんな治療かイメージできず、不安な気持ちを抱えていませんか?

タイミング法や人工授精で妊娠が難しい方が、次に検討する治療が体外受精です。不妊治療を受ける女性側・男性側の体の状態によっては、早めに体外受精に進んだ方が妊娠率を高められる場合もあります。この記事では、体外受精の対象となる方や治療の進め方、成功率やリスクについて詳しく解説します。

体外受精とは体内から取り出した卵子を、体外で精子と受精させる治療

体外受精とは、採卵手術により取り出した卵子と事前に採取した精子を体外で受精させる方法です。体外受精では、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、排卵がおこるぎりぎりまで卵胞を育てます。受精し分割した受精卵(胚)を子宮内に戻すことで、妊娠成立をめざす方法です。

体外受精の対象になる方は体内での受精が難しい方

タイミング法や人工受精などの一般不妊治療が無効な場合や、男女の一方もしくは両方に受精の過程で問題がある場合は体外受精の対象となります。以下のいずれかの状態にあてはまる場合には体外受精を検討します。

  • 卵管が詰まっている、卵管の周囲が癒着を起こしている
  • 精子の奇形率が高い、精子の数が少ない、運動性が乏しい
  • 女性側に精子に対する抗体*がある

*抗体・・・体内に入ってきた異物を認識して攻撃するたんぱく質

検査をしても原因がわからず、なかなか妊娠が成立しない方も体外受精を検討する場合があります。ここでは、それぞれの不妊の特徴や原因について詳しく解説します。

卵管性不妊

卵管は卵子と精子の通り道なので、卵管に異常があると妊娠しにくくなります。卵管のトラブルには以下のようなものがあります。

  • 骨盤内癒着:炎症などで子宮や卵管が周りの組織とくっついてしまい、排卵した卵子を卵管へピックアップするのが難しくなる状態
  • 卵管狭窄・卵管閉塞:卵管が狭くなったり詰まったりすることで、卵子と精子が出会いにくくなり、受精が難しくなる状態
  • 卵管水腫:卵管の閉塞した部分に膿や水が溜まり、その膿が子宮に流れ込んで炎症を起こし着床環境を乱す状態

骨盤内癒着や卵管狭窄が起こる主な原因は、クラミジアや淋菌などの性感染症、虫垂炎などお腹の手術、重度の子宮内膜症による炎症です。卵管にトラブルがある場合には自然妊娠が難しいため、体外受精の対象となります。

男性不妊症

不妊症の原因は女性だけでなく、約半数は男性にも原因があると言われています。男性不妊で一番多い原因は、精子をうまくつくることができない「造精機能障害」です。造精機能障害では、精子の奇形率が高い、精子の数が少ない、運動性が乏しいといった特徴がみられます。

WHOでは自然妊娠に必要な精子濃度を1600万/mL以上、運動率42%以上としており、基準を下回る場合には、体内での受精が難しいため体外受精の検討が必要です。造精機能障害のほかにも、勃起や射精がうまくできない性機能障害が男性不妊の原因になります。

免疫性不妊

女性の体内で、精子を外敵とみなし攻撃してしまう抗精子抗体や、精子の動きを止めてしまう精子不動化抗体が見つかった場合には、体外受精の対象となります。抗精子抗体が男性側で見つかった場合には、体外受精のうち顕微授精が推奨されます。精子に対する抗体を持っているかどうかは、治療計画に大きな影響を与えてしまうのです。

原因不明不妊症

不妊症の検査をしても明確な不妊の原因が見つからない場合もあります。今ある検査では見つけられないだけで、問題がないわけではありません。

現状では、主に以下の2つの原因が関わっていると考えられています。

  • 卵管内で精子と卵子が受精しない
  • 加齢により、精子または卵子の質が低下している

ヒトの卵子の質は30歳を過ぎると低下し始め、35歳を過ぎると急激に下降すると言われています。一度落ちてしまった卵子の質は元に戻せません。一般不妊治療をしてもなかなか妊娠にいたらない場合には、体外受精を視野に入れてください。

体外受精の流れやスケジュール

体外受精は採卵の周期で通院頻度が多くなり、仕事と不妊治療を両立する女性にとっては負担が大きくなります。事前に体外受精の基本的な流れを知っておき、職場と調整しておくことは治療をスムーズに進めるために大切です。体外受精の一連の流れは以下の通りです。

  • 医師からの説明・事前検査
  • 卵巣刺激・排卵誘発
  • 採卵・採精・受精
  • 胚培養・胚凍結
  • 胚移植・黄体補充
  • 妊娠判定

事前検査から妊娠判定までは、生理周期や卵胞の発育具合によって前後しますが約3ヶ月です。体外受精のスケジュールと選択肢を理解することで、納得して治療を進めることができます。

STEP1:事前検査

体外受精を始める前に、治療方針を決めるための検査を受けていただきます。女性側も男性側もそれぞれ検査します。

  • 血液検査:一般的な血液検査項目のほかに、甲状腺機能や卵巣予備能を調べる検査(AMH検査*)も行います。
  • ホルモン検査:卵胞の発育や排卵に関係するホルモン(FSH・LH・プロラクチンなど)の分泌状況を調べます。
  • 感染症検査:肝炎やHIV、クラミジアに感染していないか調べます。風疹抗体検査もあわせて行います。
  • 超音波検査:子宮や卵巣の状態をチェックして、子宮内膜症や子宮筋腫、卵管水腫がないか確認します。
  • 精液検査:精液に異常がないか調べます。

*AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査・・・卵巣内の卵子の在庫量を調べるための検査

事前検査の結果を受けて、医師と治療内容やスケジュールについて相談します。

STEP2:卵巣刺激など採卵に向けた準備

通常は1周期に1つの卵子のみが育ち排卵します。体外受精では、薬剤により卵巣を刺激することで複数個の卵子を育てる場合があります

卵巣刺激法は高刺激法・低刺激法・自然周期法がありますが、患者さんの年齢や卵巣機能に応じて選択します。当院で行っている卵巣刺激の特徴を以下の表にまとめました。

排卵誘発剤の使用採卵できる卵子数向いている方
高刺激法内服薬のほか注射薬や点鼻薬を使用10個以上をめざすAMH値や卵巣機能の条件を満たした方、採卵回数を減らしたい方
低刺激法卵巣刺激が緩やかな内服薬を主に使用1個〜3個卵巣刺激過剰症候群(OHSS)の方、AMH値が低い方
自然周期法排卵誘発剤を使用しない1個卵巣機能が低い方、難治性不妊症の方

SETP3:採卵・採精・受精

卵巣刺激により卵胞が十分な大きさまで育ったら、女性の卵巣内から卵子を採取します。採卵は経膣超音波を使って卵胞を確認しながら、膣から卵巣に採卵用の針を刺して、卵子が含まれる卵胞液を吸引します。採卵時には静脈麻酔または局所麻酔を行うクリニックが多いです。

精子の採取方法は、体外受精当日に採精する方法事前に採精して体外受精まで凍結保存する方法の2つです。採精した精子は前処理をして、運動能が高く、より良い精子を集めて体外受精に用います。

卵子と精子を受精させる方法はふりかけ法と顕微授精の2種類あり、違いなどは記事の続きで詳しく解説しています。

STEP4:胚培養・胚凍結

受精が確認できたら、2〜6日ほど培養を続けます。受精卵が4〜8個の細胞に分割すると初期胚となり、培養を続けると胚盤胞という段階まで発育します。胚の状態を見ながら、初期胚と胚盤胞のどちらを移植するかを決定していくのです。採卵周期で胚移植を行わずに、いったん胚を凍結して、別の周期で胚移植を行う場合(凍結融解胚移植)もあります。

STEP5:胚移植

子宮の中に胚を戻すことを胚移植といいます。胚移植には採卵した周期の胚を使用する場合(新鮮胚移植)と、凍結融解した胚を使用する場合(凍結融解胚移植)があります。多胎妊娠を防ぐために、移植に使用する胚の個数は原則としては1個だけです。ただし、35歳以上の女性または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などは、2個の胚移植を許容する場合もあります。

STEP6:妊娠判定

移植により着床が成立すると、形成された胎盤からhCGと呼ばれるホルモンが分泌されます。血液検査または尿検査でhCGホルモンを測定し妊娠判定を行います。胚移植後14日前後に妊娠判定することが多いです。

受精方法は2種類ある

体外受精には、ふりかけ法と顕微授精の2種類あります。ご夫婦の考えや過去の治療歴、卵子や精子の受精障害の有無でどちらかを選択したり、複数採卵できた場合には両方とも行ったりする場合があります。

それぞれの受精方法の仕組みや特徴を知っておきましょう。

ふりかけ法

卵子の入った培養容器の中に精子を一緒に入れて、精子が自力で卵子の中まで泳いで受精させる方法です。受精するには十分な精子の数と、精子の運動性が良いことが必要です。ふりかけ法はより自然に近い受精で、卵子に対してストレスが少ない方法となります。顕微授精と比べると費用は安いです。

顕微授精

培養士が形態・運動性の良い精子を選択し、顕微鏡で確認しながら細いガラス針を使って精子を卵子の細胞質の中に注入し受精させます。顕微授精は、精子の運動率が低い場合や数が少ない場合などに選択されます。精子の自然な力に任せるのではなく、培養士が卵細胞質内に確実に精子を注入する方法のため、精子の状態が不良でも受精が期待できる方法です。

ふりかけ法と顕微授精の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

顕微授精とは?体外受精のふりかけ法との違いやメリット・リスク・流れを解説

体外受精のリスクや実態

体外受精では、卵巣過剰刺激症候群や採卵による合併症、多胎妊娠、子宮外妊娠などのリスクがあります。女性の年齢が35歳を超えると、妊娠率の下がり幅が大きくなり流産率が上がるという報告もあります。体外受精のリスクや年代による成功率を理解して、適切なタイミングで体外受精に踏み出せるようにしましょう。

妊娠成功率は年代ごとに異なる

下のグラフは、日本産科婦人科学会から発表された妊娠率や流産率のデータです。年齢が高くなるほど妊娠率が下がり、年齢があがるほど流産率が高くなることがわかります。

(出典:日本産科婦人科学会2021年調査

上のグラフから、体外受精・胚移植の治療実績がわかります。年代別の胚移植周期あたりの妊娠率(青い線)を見てください。妊娠率は、30歳頃までは45〜50%程度で一定ですが、30歳を過ぎた頃から徐々に低下を始めます。35歳から妊娠率の下がり幅が大きくなり、30代後半では妊娠率30%〜40%、40代を過ぎると妊娠率は20%台となります。

年齢が上がるにつれて成功率は下がる

年齢を重ねると妊娠の成功率が下がる理由は、卵子の質の低下と数の減少が原因です。卵子のもととなる卵母細胞は、お母さんのお腹にいるときが一生の中で一番多く、その後閉経までだんだんと減っていきます。通常の細胞は細胞分裂によって常に生まれ変わっていきますが、卵子の場合は数が増えません。

女性の老化とともに卵子も老化が進み、受精に必要な減数分裂*がうまく行われないことがあります。減数分裂が正しく行われないと、受精したあとに胚盤胞まで育たず流産や染色体異常などのリスクにつながります。年齢が上がることによる卵子の質や数の低下は、妊娠率低下の要因になるのです。

*減数分裂・・・生殖細胞をつくるときに行われる、親の持っている情報(染色体)を半分にする分裂のこと

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症する可能性がある

体外受精では、多くの卵子を採取するために排卵誘発を行う場合がありますが、卵巣刺激による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に注意が必要です。卵巣が膨れ上がってお腹に水が貯まり、腹痛、腹部膨満感、血液濃縮、乏尿、血栓症を伴うことがあります。

治療を進める中で以下の症状がみられたら、すぐに病院に連絡してください。

  • お腹が張る
  • 吐き気がする
  • 急に体重が増えた
  • 尿量が少なくなる

OHSSは、年齢の若い方や多嚢胞性卵巣症候群の方、排卵誘発剤を使用して成熟卵胞が10個以上出現した場合に起こりやすいです。OHSSを予防するためには、低刺激の卵巣刺激を行ったり、血液検査でホルモン量を測定し、排卵誘発剤の量を調整したりするなどの工夫をします。

子宮外妊娠が起こる可能性がある

子宮外妊娠とは、子宮以外の卵管などで受精卵が着床して妊娠してしまう状態です。体外受精を受ける方は、もともと卵管に問題があることが多く、自然妊娠に比べると子宮外妊娠の頻度が少し高くなるとの報告があります。

ただし、凍結融解した胚盤胞移植を選ぶことで、子宮外妊娠の確率を少しだけ下げられるとの報告もあります。

気になる方は、事前に医師とご相談ください。

自然妊娠よりも多胎妊娠の可能性が高い

体外受精や顕微授精による妊娠では、1度に複数の胚を移植することにより多胎妊娠(双子や三つ子)の頻度が増加します。多胎は母体と胎児両方にとってリスクとなる状態です。

母体側は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を発症しやすくなったり、帝王切開や切迫早産の頻度が高くなったりする問題があります。胎児にとっては、低出生体重児が生まれやすく、先天異常による新生児の死亡率も高くなってしまうのです。

現在では多胎妊娠による母子のリスクを避けるために、体外受精における移植胚の数は原則1個とすることが推奨されています。しかし、頻度は1.4%ほどで少ないですが、移植胚の数を1個に制限した場合でも、子宮内で移植胚が分裂し一卵性の双子となることもあります。

体外受精を検討している人はまず病院へ

体外受精では、治療を始める前に男性・女性ともに事前検査を受けます。卵巣予備能や卵子、精子の状態を考えて、最も妊娠成功率が高い方法をとっていくためです。

一般不妊治療を繰り返しても妊娠が成立しない場合には、体内での受精が難しい何らかの理由が隠れているかもしれません。女性の妊娠成功率は、年齢を重ねるごとに確実に低下していきます。「もっと早く相談していればよかった」と後悔しないように、不妊治療がうまくいかず体外受精を考えたときは、まずは産婦人科に相談してみましょう。

AIボット
診療予約