ソフィアレディスクリニック

シリンジ法とは?やり方やメリット・デメリット、妊娠率を解説

公開日:2025.01.30
更新日:2025.01.30

不妊治療は高額で、精神的にも負担が大きいと感じている方は多いです。 実は、「シリンジ法」という自宅で手軽に始められる妊活方法があります。性交渉の代わりに針を使用しない専用の注射器で精子を注入し、性交痛や射精障害などで悩む夫婦の選択肢の一つになります。

シリンジ法のやり方やメリット・デメリット、そして気になる妊娠率まで、医師の視点も交えながら詳しく解説します。記事を読めば、シリンジ法の詳細がわかり、不妊治療の選択肢が広がります。

神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、不妊治療に強みを持つクリニックです。不妊治療を検討している状況でも、専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。

シリンジ法の基礎知識と手順

シリンジ法の基礎知識と手順について、以下の内容を解説します。

  • シリンジ法とは?針を使用しない不妊治療
  • シリンジ法に必要なもの
  • シリンジ法に適した人・適さない人

シリンジ法とは?針を使用しない不妊治療

シリンジ法とは、針を使用しない専用の注射器(シリンジ)を用いて、採取した精液を女性の膣内に直接注入する妊活方法です。性交渉の代わりにシリンジを使うことで、自然妊娠に近い過程で赤ちゃんを授かることを目指します。

シリンジはプラスチック製の小さな筒の形状で、針は付いていません。ドラッグストアなどで販売されている市販の妊活専用のシリンジキットを利用するのが一般的です。キットには、シリンジの他に、精液採取容器や注入をサポートする器具などが含まれている場合もあります。

シリンジ法は、以下の場合におすすめです。

  • 性交痛がある場合
  • 精神的な負担を感じてしまう場合
  • 男性側に射精障害がある場合

シリンジ法に必要なもの

シリンジ法を行うために必要なものは、主に以下の3つです。

  • シリンジキット
    精液を採取し、膣内に注入するために必要な器具一式です。インターネット通販やドラッグストアで購入できます。妊活専用のシリンジキットの使用が推奨されています。
  • 精液採取容器
    清潔な容器が適しています。シリンジキットに付属している場合もあります。
  • 排卵検査薬
    妊娠の可能性を高めるためには、排卵日を正確に把握することが重要です。排卵検査薬を使って、排卵日を予測しましょう。基礎体温計と併用することで、より正確な排卵日の特定に役立ちます。

清潔なタオルやティッシュペーパーなども準備しておくと便利です。

シリンジ法に適した人・適さない人

シリンジ法は、性交渉が困難な夫婦にとって有効な方法ですが、誰にでも適しているわけではありません。シリンジ法に適している人は以下のとおりです。

  • 性交痛や膣痙攣(けいれん)、性交恐怖症などの問題を抱えている女性
  • 射精障害などの問題を抱えている男性
  • 精神的な理由で性交が難しい夫婦
  • セックスレスの夫婦
  • その他、性交渉が困難な夫婦

シリンジ法に適さない人は以下のとおりです。

  • 女性に子宮や卵管の異常がある場合
    子宮筋腫や卵管閉塞があると、シリンジ法で精子を注入しても受精卵が着床できません。
  • 男性に重度の乏精子症などの問題がある場合
    精子の数が極端に少ない場合、シリンジ法では妊娠の可能性が低くなります。
  • 原因不明の不妊症が長期にわたって続いている場合
    長期間不妊治療を行っても妊娠しない場合は、他の不妊原因が隠されている可能性があります。高度な不妊治療が必要となるケースもあります。

シリンジ法に適さない人に該当する場合は、シリンジ法ではなく、人工授精体外受精などの他の不妊治療を検討する必要がある可能性があります。産婦人科を受診し、医師に相談してみましょう。

詳しくは以下の記事で解説していますので、合わせて確認ください。
>>人工授精と体外受精の違いとは?特徴と成功率、費用を徹底比較

シリンジ法と他の不妊治療との違い

シリンジ法は自宅で行うことが可能であり、医療機関を訪れる必要がないため、プライバシーが保たれます。手軽に実施でき、特別な医療機器や技術が不要で、精神的負担も少ないです。費用も安く、キット代のみで済みます。

人工授精と体外受精は病院で行われる治療法で、専門的な医療技術が必要です。人工授精は、精液を洗浄して濃縮し、女性の体内に直接注入する方法で、1回の治療に数万円かかります。妊娠率は自然妊娠よりも高くなります。

体外受精はさらに高い妊娠率を期待できる治療法で、卵子と精子を体外で受精させた後、受精卵を女性の体内に戻す方法ですが、治療1回につき数十万円と高額です。

治療法の違いを理解することで、各治療法の利点と制約を把握し、自身のライフスタイルや経済的状況に合った治療法を選択できます。

シリンジ法の具体的な手順

シリンジ法の具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 排卵日の把握
  2. 精液の採取
  3. 膣内への挿入

排卵日の把握

妊娠の可能性を高めるためには、女性の排卵日に合わせてシリンジ法を行うことが重要です。排卵日を予測するには、排卵検査薬を使用する方法と基礎体温を測定する方法があります。排卵検査薬は、尿中の黄体形成ホルモン(LH)の濃度を測定することで排卵日を予測します。

ドラッグストアなどで手軽に購入できます。基礎体温は、毎朝起床時に舌下で体温を測定し、記録していくことで排卵日を推定する方法です。排卵検査薬や基礎体温計を併用することで、より正確に排卵日を把握できます。

精液の採取

排卵日が予測できたら、シリンジ法を実施します。男性は精液を清潔な容器に入れます。精液を採取する際、性感染症を防ぐためにも、石鹸で手をよく洗うことが大切です。採取した精液は、粘性のある状態から、サラサラとした液状になるまで5~10分程度待ちます。液状化は、精子が活発に動き始めるために必要なプロセスです。

液状化して透明感が出てきた精液をシリンジに吸い取ります。シリンジは、針を使用しない専用の注射器で、妊活専用のキットが薬局やインターネットでも購入できます。精液をシリンジで吸い取る際は、空気が入らないように注意しながら、ゆっくりと行います。空気の混入は、注入時の不快感や精子の運動性を低下させる可能性があります。

膣内への挿入

精液を吸い取ったシリンジを女性の膣に挿入します。挿入の深さは、タンポンを使用する際とほぼ同じ程度で問題ありません。シリンジの先端からゆっくりと精液を注入し、注入後はシリンジを静かに抜きます。注入後、5~10分程度安静にすることで、精子が子宮頸部へと移動しやすくなります。お尻の下に枕などを置いて腰を高くすると、精液が膣外に流れにくくなり、妊娠の可能性を高める効果が期待できます。

一連の動作は、清潔な環境で行うことが重要です。不衛生な環境下では、感染症のリスクが高まる可能性があります。特に、膣内に異物を入れることになるため、清潔なシリンジを使用することはもちろんのこと、手洗いや器具の消毒にも気を配りましょう。

正しい手順を理解し、落ち着いて行えば、決して難しい方法ではありません。手順に不安がある場合は、医療機関に相談することも可能です。

シリンジ法の妊娠率

シリンジ法の妊娠率は、自然妊娠とほぼ同じと言われています。しかし、妊娠率は年齢や夫婦の状態によって異なります。35歳未満の女性のほうが妊娠率が高く、年齢が上がるにつれて妊娠率は低下する傾向があります

卵子の老化、つまり卵子の数や質の低下が大きく関係しています。加齢とともに染色体異常を持つ卵子の割合が増加し、妊娠しにくくなるだけでなく、流産のリスクも高まります。男性の精子の状態や女性の卵管の状態なども影響します。

性機能障害のある夫婦を対象とした研究では、夫の年齢が若い(36歳以下)、不妊期間が短い(3年以下)、精子の状態が正常な場合、3回以内のシリンジ法で妊娠する確率が約67%という結果も出ています。最大6回試行することで、妊娠率は約84%まで上昇するという結果も出ています。ただし、研究上の結果であり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。

妊娠率は一概に言えるものではなく、さまざまな要因が影響することを理解しておくことが大切です。年齢以外にも、子宮や卵管の状態、ホルモンバランス、生活習慣なども妊娠率に影響を与える可能性があります。

シリンジ法のメリット

シリンジ法の大きなメリットは、以下の3つです。

  • 手軽さ
  • 費用
  • 精神的負担の軽減

手軽さ

シリンジ法は病院に通院する必要がなく、自宅で、自分たちの好きなタイミングで行えることが大きなメリットです。必要なものはシリンジキットだけで、ドラッグストアやインターネットで購入できます。費用も1回あたり500〜1,000円程度と、他の不妊治療に比べて安価です。

人工授精のように、病院の予約に合わせて通院する必要もありません。仕事で忙しい方や、通院が難しい方にとって、手軽さは大きな魅力です。

費用

シリンジ法は、他の不妊治療と比べて費用が安価です。1回あたり数百円程度で済むため、経済的な負担が少ない点が大きなメリットです。人工授精の場合、1回あたり1.5〜5万円程度の費用がかかります。体外受精となるとさらに高額になり、数十万円かかる場合もあります。

経済的な理由で高度な不妊治療を受けるのが難しい方にとって、シリンジ法は経済的な負担を抑えながら妊活に取り組むことができる貴重な選択肢となります。

精神的負担の軽減

性交渉によるプレッシャーや抵抗感がある方にとって、シリンジ法は精神的な負担を軽減する効果が期待できます。性交痛のある女性にとって、性交渉は大きな苦痛を伴うものです。シリンジ法は、性交渉を伴わないため、性交痛がある女性にとって肉体的・精神的な負担を軽減し、妊娠への選択肢の一つとなり得ます。

男性側に射精障害がある場合も、シリンジ法は有効な選択肢となります。射精障害には、全く射精できない場合や、膣内ではなく体外に射精してしまうなど、さまざまな種類があります。パートナーとの性交渉にプレッシャーを感じている方や、セックスレスで悩んでいる夫婦にとっても、シリンジ法は、自分たちのペースで、リラックスした環境で妊活を進めることができるため、精神的なストレスを軽減しながら子供を持つ可能性を広げる一つの選択肢となります。

シリンジ法のデメリット

シリンジ法のデメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 感染リスク
  • 技術的な課題

感染リスク

シリンジ法を行う際には、衛生管理を徹底することが重要です。不適切な方法で行うと、感染症のリスクが高まります。清潔なシリンジキットを使用することはもちろんのこと、使用前後の手洗いをしっかり行うなど、衛生面に十分注意する必要があります。

精液を採取する際にも清潔な容器を使用し、雑菌の混入を防ぐことが大切です。不衛生な環境での実施は、膣炎などの感染症を引き起こす可能性があります。

技術的な課題

シリンジ法は、精液を膣内に注入する技術が必要です。初めて行う方には、シリンジの操作や注入のタイミングなどが難しく感じる可能性があります。

シリンジ法は、妊娠率は自然妊娠と同程度であること、感染リスクや技術的な課題が存在することを理解しておく必要があります。メリット・デメリットを踏まえて慎重に検討し、必要に応じて医師に相談しましょう。

まとめ

シリンジ法は、自宅で手軽にできる妊活方法で、費用も抑えられます。性交渉が難しい夫婦や、精神的な負担を軽減したい夫婦にとって、大きなメリットです。妊娠率は自然妊娠と同程度で、感染リスクや技術的な課題も存在します。メリットとデメリットをしっかり理解し、パートナーとよく話し合ってから検討しましょう。

シリンジ法を試しても妊娠に至らない場合は、他の不妊治療も検討してみましょう。専門の医療機関に相談することで、あなたに合った最適な方法が見つかります。焦らず、前向きに取り組んでみましょう。

参考文献

AIボット
診療予約