
シリンジ法とは?自宅でできる妊活方法のやり方・費用・成功率を解説
公開日:2025.01.30更新日:2026.02.25

不妊治療は高額で、精神的にも負担が大きいと感じている方は多いです。実は、「シリンジ法」という自宅で手軽に始められる妊活方法があります。性交渉の代わりに針を使用しない専用の注射器で精子を注入し、性交痛や射精障害などで悩む夫婦の選択肢の一つになります。
シリンジ法のやり方やメリット・デメリット、そして気になる妊娠率まで、医師の視点も交えながら詳しく解説します。記事を読めば、シリンジ法の詳細がわかり、不妊治療の選択肢が広がります。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、不妊治療の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。

シリンジ法の基礎知識と準備
シリンジ法の基礎知識と手順について、以下の内容を解説します。
- シリンジ法とは針を使用しない不妊治療
- シリンジ法に必要なもの
- シリンジキットの入手方法と選び方
- シリンジ法に適した人・適さない人
- 始める前は医療機関への相談が推奨される
シリンジ法とは針を使用しない不妊治療
シリンジ法とは、針を使用しない専用の注射器(シリンジ)を用いて、採取した精液を女性の膣内に直接注入する妊活方法です。性交渉の代わりにシリンジを使うことで、自然妊娠に近い過程で赤ちゃんを授かることを目指します。
シリンジはプラスチック製の小さな筒の形状で、針は付いていません。ドラッグストアなどで販売されている市販の妊活専用のシリンジキットを利用するのが一般的です。キットには、シリンジの他に、精液採取容器や注入をサポートする器具などが含まれている場合もあります。
シリンジ法は、以下の場合におすすめです。
- 性交痛がある場合
- 精神的な負担を感じてしまう場合
- 男性側に射精障害がある場合
シリンジ法に必要なもの
シリンジ法を行うために必要なものは、主に以下の3つです。
- シリンジキット
- 精液採取容器
- 排卵検査薬
シリンジキットは、精液を採取し膣内に注入するために必要な器具です。専用の注射などが含まれます。妊活専用のシリンジキットの使用が推奨されます。精液採取容器は、清潔な容器が適しています。シリンジキットに付属している場合もあります。市販の容器を使う場合は、よく洗浄し乾燥させたものを使用してください。
妊娠の可能性を高めるためには、排卵日を正確に把握することが重要です。排卵検査薬を使って、排卵日を予測しましょう。基礎体温計と併用することで、より正確な排卵日の特定に役立ちます。清潔なタオルやティッシュペーパーなども準備しておくと便利です。
シリンジキットの入手方法と選び方
シリンジキットは、インターネット通販や一部のドラッグストアで購入できます。Amazon・楽天などの大手通販サイトのほか、妊活専門のオンラインショップもあります。医療機関で取り扱っている場合もあり、不妊治療クリニックに相談するのもおすすめです。
滅菌済みで使い捨てタイプの製品を選ぶことが大切です。容量(一般的には5ml程度)や挿入部の形状、説明書のわかりやすさも確認しましょう。初めて使用する方向けに、複数回分がセットになった商品や、詳しいガイドブックが付属している製品もあります。
価格は1回分で数百円程度、複数回分で数千円程度が目安です。安全性と使いやすさを重視して、信頼できる販売元から購入しましょう。
シリンジ法に適した人・適さない人
シリンジ法に適している人は以下のとおりです。
- 性交痛や膣痙攣(けいれん)、性交恐怖症などの問題を抱えている女性
- 射精障害などの問題を抱えている男性
- 精神的な理由で性交が難しい夫婦
- セックスレスの夫婦
- その他、性交渉が困難な夫婦
シリンジ法に適さない人は以下のとおりです。
- 子宮や卵管の異常がある女性
- 重度の乏精子症などの問題がある男性
- 原因不明の不妊症が長期にわたって続いている人
女性に子宮筋腫や卵管閉塞があると、シリンジ法で精子を注入しても受精卵が着床できない可能性があります。男性の精子の数が極端に少ない場合、シリンジ法では妊娠の可能性が低くなります。長期間不妊治療を行っても妊娠しない場合は、他の不妊原因が隠されていることもあるため、注意が必要です。
当てはまる項目がある場合は、人工授精や体外受精などの他の不妊治療を検討する必要がある可能性があります。産婦人科を受診し、医師に相談してみましょう。
不妊症について知ることや不妊症のセルフチェックを行うことも、シリンジ法が適しているか判断する材料になります。
>>不妊症の原因とは?女性・男性別の主な要因と診断方法、改善のポイント
>>【妊活の第一歩】不妊症のセルフチェック方法と受診のタイミング

始める前は医療機関への相談が推奨される
シリンジ法は自宅で手軽にできる方法ですが、始める前に医療機関を受診することをおすすめします。不妊の原因が隠れている可能性があるためです。女性側に排卵障害や卵管の閉塞があったり、男性側に重度の精子異常があったりする場合などは、シリンジ法だけでは妊娠が難しいことがあります。
医療機関では、基本的な不妊検査を受けることができます。ホルモン検査・卵管造影検査、精液検査などです。問題がないことを確認して始めれば、より安心して取り組めます。医師から正しい方法や衛生管理についてアドバイスを受けることで、感染リスクを減らし、成功率を高めることも期待できます。

シリンジ法と他の不妊治療との違い
治療法の違いを理解することで、各治療法の利点と制約を把握し、自身のライフスタイルや経済的状況に合った治療法を選択しやすくなります。シリンジ法と他の3つの不妊治療との違いについて解説します。
- タイミング法との違い
- 人工受精との違い
- 体外受精との違い
タイミング法との違い
タイミング法は、排卵日に合わせて性交渉をする妊活方法です。一方、シリンジ法は性交渉を行わずに精液を直接腟内に注入する方法です。どちらも排卵日のタイミングを重視する点では同じですが、性交渉の有無が大きな違いです。
タイミング法では、男性の勃起や射精が必要なため、プレッシャーを感じて性交渉がうまくいかない夫婦もいます。精神状態や体調、仕事の都合に合わせて柔軟に対応できる点はシリンジ法のメリットです。
タイミング法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>不妊治療の第一歩|タイミング法の基本から流れ、費用、成功率まで詳しく解説
人工授精との違い
人工授精は、医療機関で専用の細い管(カテーテル)を使って、洗浄・濃縮した精子を子宮内に注入する方法です。シリンジ法は自宅で行い、精液を腟内に注入するのに対し、人工授精は医療機関で子宮内に注入する点が大きく異なります。
人工授精では、運動性の高い精子を選別し、不純物を取り除く処理を行います。精液をそのまま使用するシリンジ法と比べて精子の質が向上し、妊娠率も高くなることが期待できます。子宮内に直接注入するため、精子が卵子に到達する距離が短くなり、受精しやすくなります。
費用面では、人工授精は1回あたり数万円、シリンジ法は数百円〜数千円です。自宅で手軽に試したい場合はシリンジ法がおすすめです。人工受精について詳しく知ることで比較しやすくなります。
>>人工授精とは?方法・成功率・費用を詳しく解説
体外受精との違い
体外受精は、卵子を体外に取り出し、受精させて子宮に戻す方法です。高度な医療技術と設備が必要になり、1回で十数万円以上かかることが多いです。妊娠率は年齢や卵子の質によりますが、30代前半で30〜40%程度とシリンジ法よりも高くなります。
体外受精は、卵管の問題や重度の男性不妊など、他の方法では妊娠が難しい場合の選択肢となります。
体外受精については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひチェックしてください。
>>体外受精の基本がわかる!治療の流れ・対象者・成功率・リスクまで徹底解説

シリンジ法の具体的な手順
シリンジ法の具体的な手順は以下のとおりです。
- 排卵日の把握
- 精液の採取
- 膣内への挿入
排卵日の把握
妊娠の可能性を高めるためには、女性の排卵日に合わせてシリンジ法を行うことが重要です。排卵日を予測するには、排卵検査薬を使用する方法と基礎体温を測定する方法があります。排卵検査薬は、尿中の黄体形成ホルモン(LH)の濃度を測定することで排卵日を予測します。
基礎体温は、毎朝起床時に舌下で体温を測定し、記録していくことで排卵日を推定します。排卵日の2日前〜排卵日当日までに、シリンジ法を実施することで妊娠率を高める効果が期待できます。
正しく基礎体温を測定して排卵日を知ることは、効率よく妊活を進めるうえで重要です。基礎体温の測り方を、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
>>基礎体温の測り方とは?正しい測定方法と基礎体温表の見方、活用法も解説
精液の採取
排卵日が予測できたら、シリンジ法を実施します。男性は精液を清潔な容器に入れます。性感染症を防ぐためにも、石鹸で手をよく洗ってから行うことが大切です。採取した精液は、粘性のある状態から、サラサラとした液状になるまで5~10分程度待ちます。精子が活発に動き始めるために必要なプロセスです。
液状化して透明感が出てきた精液をシリンジに吸い取ります。空気が入らないように注意しながら、ゆっくりと行います。空気の混入は、注入時の不快感や精子の運動性を低下させる可能性があります。
精子は体外では時間とともに運動性が低下するため、採取から挿入までは30分以内が理想的です。精液は雑菌が繁殖しやすいため、再利用は避けましょう。
膣内への挿入
精液を吸い取ったシリンジを女性の膣に挿入します。挿入の深さは、タンポンを使用する際とほぼ同じ程度で問題ありません。シリンジの先端からゆっくりと精液を注入し、注入後はシリンジを静かに抜きます。注入後、5~10分程度安静にすることで、精子が子宮頸部へと移動しやすくなります。お尻の下に枕などを置いて腰を高くすると、精液が膣外に流れにくくなり、妊娠の可能性を高める効果が期待できます。
一連の動作は、清潔な環境で行うことが重要です。不衛生な環境下では、感染症のリスクが高まる可能性があります。特に、膣内に異物を入れることになるため、清潔なシリンジを使用し、手洗いや器具の消毒にも気を配りましょう。使い残した精液は必ず破棄してください。
正しい手順を理解し、落ち着いて行えば、決して難しい方法ではありません。手順に不安がある場合は、医療機関に相談することも可能です。
挿入後の過ごし方と注意点
シリンジで精液を注入した後は、しばらく横になって安静にすることをおすすめします。注入した精液が腟外に流れ出るのを防ぐためです。注入後10~15分程度、仰向けまたは腰を少し高くした状態で横になりましょう。枕やクッションをお尻の下に置くと、精液が子宮の方向に流れやすくなります。
挿入後すぐに入浴やシャワーを浴びると、精液が流れ出やすくなるため、1〜2時間は避けることをおすすめします。激しい運動や重い物を持つことも控え、体に負担をかけないよう心がけましょう。もし精液の一部が流れ出ても、必要な精子は子宮頸管内に入っていることが多いです。過度に心配する必要はありませんが、ストレスを感じない程度にリラックスして過ごすことが大切です。

シリンジ法の妊娠率を高めるには?
シリンジ法の妊娠率に影響する要因はさまざまです。妊娠率と成功率を上げるポイントを、3つに分けて解説します。
- シリンジ法の妊娠率
- タイミングと継続の目安
- 体質改善
シリンジ法の妊娠率
シリンジ法の妊娠率は、自然妊娠とほぼ同じと言われています。しかし、妊娠率は年齢や夫婦の状態によって異なります。35歳未満の女性のほうが妊娠率が高く、年齢が上がるにつれて妊娠率は低下する傾向があります。卵子の数や質の低下が大きく関係しています。加齢とともに染色体異常を持つ卵子の割合が増加します。
その結果、妊娠しにくくなるだけでなく、流産のリスクも高まります。性機能障害のある夫婦を対象とした研究では、夫の年齢が36歳以下、不妊期間が短い(3年以下)、精子の状態が正常な場合、3回以内のシリンジ法で妊娠する確率が約67%という結果も出ています。
最大6回試行することで、妊娠率は約84%まで上昇するという結果も出ています。ただし、研究上の結果であり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。男性の精子、女性の子宮や卵管の状態、ホルモンバランス、生活習慣なども妊娠率に影響を与える可能性があります。
タイミングと継続の目安
シリンジ法の妊娠率を高めるには、正確な排卵日の予測とタイミングが重要です。基礎体温だけでは正確な排卵日を特定できないこともあるため、排卵検査薬を併用したり、婦人科で卵胞チェックを受けたりすることで排卵日を把握しやすくなります。
シリンジ法は、6回(6周期)程度を目安に継続することが推奨されます。1年程試しても妊娠しない場合は、不妊の原因が隠れている可能性があるため、医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。
体質改善
男性側の精子の質や妊娠率に大きく影響します。禁欲期間が長すぎると精子の運動性が低下するため、2〜3日に1回程度の射精が理想的です。生活習慣の改善も大切です。十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を心がけましょう。食事やサプリメントで栄養バランスを整える(栄養療法)ことで、不妊が改善される可能性が高まるという報告もあります。喫煙や過度の飲酒を避けることも、精子の質が向上に繋がることが期待できます。
女性側は、冷え対策をして血流を良くすることを心がけることで、子宮内膜の状態が改善され、着床しやすくなります。葉酸などの栄養素を積極的に摂取することがおすすめです。ストレスも妊娠に悪影響を与えることがあるため、リラックスできる環境を整え、夫婦で協力しながら前向きに取り組むことが大切です。

シリンジ法のメリット
シリンジ法の大きなメリットは、以下の3つです。
- 手軽さ(自宅でできる・安価)
- 精神的負担の軽減
- プライバシーの保護
手軽さ(自宅でできる・安価)
シリンジ法は病院に通院する必要がなく、自宅で、自分たちの好きなタイミングで行えることが大きなメリットです。必要なものも少なく、ドラッグストアやインターネットで購入できます。人工授精のように、病院の予約に合わせて通院する必要もありません。仕事で忙しい方や、通院が難しい方にとって、手軽さは大きな魅力です。
費用も他の不妊治療と比べて安価です。1回あたり数百円程度で済むため、経済的な負担が少ない点が大きなメリットです。人工授精の場合、1回あたり1.5〜5万円程度の費用がかかります。体外受精となるとさらに高額になり、数十万円かかる場合もあります。
経済的な理由で高度な不妊治療を受けるのが難しい方にとって、シリンジ法は経済的な負担を抑えながら妊活に取り組むことができる選択肢の一つになります。
以下の記事では、不妊治療の費用について網羅的にまとめています。他の治療法との比較にぜひ役立ててください。
>>不妊治療の費用はいくら?治療内容別の費用と使える助成制度を詳しく紹介

精神的負担の軽減
性交渉によるプレッシャーや抵抗感がある方にとって、シリンジ法は精神的な負担を軽減する効果が期待できます。性交痛のある女性にとって、性交渉は苦痛を伴うものです。シリンジ法は、性交渉を伴わないため、性交痛がある女性にとって肉体的・精神的な負担を軽減し、妊娠への選択肢の一つとなり得ます。
男性側に射精障害がある場合も、シリンジ法は有効な選択肢となります。射精障害には、射精できない場合や、膣内ではなく体外に射精してしまうなど、さまざまな種類があります。シリンジ法は、自分たちのペースで、リラックスした環境で妊活を進めることができます。性交渉にプレッシャーを感じている方や、セックスレスで悩んでいる夫婦にとっても、精神的なストレスを軽減しながら妊活を続けられる有効な選択肢となります。
プライバシーの保護
自宅で完結するためプライバシーが守られることもメリットです。不妊治療のために病院に通うと、待合室で他の患者さんと顔を合わせたり、受付で不妊治療を受けていることを知られたりする可能性があります。
職場に治療のための休暇を申請する際も、理由を説明しなければならない場合があります。こうした状況にストレスを感じる方は少なくありません。シリンジ法なら、他の人に知られにくく、夫婦だけのプライベートな空間で妊活に取り組めます。

シリンジ法のデメリットと対策
シリンジ法のデメリットは以下の通りです。対策と合わせて解説します。
- 妊娠率が自然妊娠と同程度
- 感染リスク
- 技術的な課題
- 失敗しやすいケースと対策
妊娠率が自然妊娠と同程度
シリンジ法の妊娠率は、1周期あたり約数%程度と、自然妊娠(タイミング法)とほぼ同じ水準です。シリンジ法が精液を膣内に注入する方法であり、精子が自力で子宮頸管を通過し、卵管まで到達する必要があるためです。人工授精のように精液を洗浄・濃縮したり、子宮内に直接注入したりする医療的処置は行われないため、受精の確率が大きく向上するわけではありません。
1回の試行で妊娠する可能性は高くなく、複数回の継続が必要になります。一般的には6ヶ月〜1年程度を目安に試すことが推奨されます。それでも妊娠しない場合は、医療機関で検査を受け、人工授精や体外受精などを検討することが大切です。
感染リスク
シリンジ法を行う際には、衛生管理を徹底することが重要です。不適切な方法で行うと、膣炎などの感染症のリスクが高まります。使用するシリンジや容器は必ず滅菌済みの使い捨て製品を選び、再利用は絶対に避けてください。
実施前には手をよく洗い、清潔な環境で行うことが大切です。精液を採取する容器も清潔なものを使用し、シリンジの先端が他のものに触れないよう注意しましょう。また、女性側も挿入前に外陰部を清潔にすることが必要です。シリンジを挿入する際は無理に奥まで入れず、痛みを感じたらすぐに中止してください。
挿入後に異常な痛みや発熱、おりものの異常(悪臭、色の変化など)があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
技術的な課題
シリンジ法は、精液を膣内に注入する技術が必要です。初めて行う方には、シリンジの操作や注入のタイミングなどが難しく感じる可能性があります。特に、シリンジを適切な深さまで挿入すること、精液を漏らさずに注入することには慣れが必要です。
シリンジの挿入が浅すぎると精液が膣外に流れ出やすく、深すぎると痛みを感じたり膣粘膜を傷つけたりする可能性があります。また、精液の採取から挿入までの時間管理も重要で、時間がかかりすぎると精子の運動性が低下します。こうした技術的な課題を克服するには、正しい知識を学び、丁寧に手順を守ることが大切です。不安な場合は、医療機関で指導を受けることをおすすめします。
失敗しやすいケースと対策
シリンジ法がうまくいかないときに多い原因として、いくつかのケースがあります。特に多いのは、排卵日のタイミングがずれているケースです。基礎体温だけでは正確な排卵日を特定できないこともあるため、排卵検査薬を併用したり、婦人科で卵胞チェックを受けたりすることで精度を高められます。
精液の取り扱いミスも失敗の原因になります。採取から挿入までに時間がかかりすぎると、精子の運動性が低下します。また、精液を採取する容器に洗剤や消毒液が残っていたり、保管温度が適切でなかったりすると、精子にダメージを与えます。これらの失敗を防ぐには、正しい知識を持ち、丁寧に手順を守ることが大切です。

シリンジ法についてよくある質問
シリンジ法についてよくある質問と回答をまとめました。
- 痛みはありますか?
- 男性不妊でも効果がありますか?
- 何歳まで試せますか?
- 保険は適用されますか?
痛みはありますか?
シリンジ法は基本的に痛みを伴わない方法です。シリンジの先端は柔らかい素材でできており、腟内に挿入する際も通常は痛みを感じません。ただし、緊張していると腟の筋肉が硬くなり、挿入時に違和感や軽い痛みを感じることがあります。
痛みを軽減するためのポイントは以下のとおりです。
- リラックスした状態で行う
- シリンジを斜め上方向(お腹側)に向ける
- 無理なく入る範囲で挿入する
- 市販の潤滑ゼリー(精子に影響のないもの)を使用する
深呼吸をして体の力を抜き、ゆっくりと挿入してください。痛みを感じたら、無理に奥まで入れる必要はありません。子宮頸部の手前あたりまで入れば十分効果が期待できます。痛みが強かったり、挿入が難しかったりする場合は、腟の形状に問題がある可能性もあるため、婦人科で相談することをおすすめします。
男性不妊でも効果がありますか?
男性不妊の程度によって、シリンジ法の効果は異なります。軽度の不妊であれば、シリンジ法で妊娠の可能性はあります。シリンジ法では、精液を子宮頸部に近い位置まで直接届けることができるため、性交渉よりも精子が卵子に到達しやすくなります。
ただし、精子の数が極端に少なかったり、運動性がほとんどなかったり、奇形率が高いなどの場合は、シリンジ法だけでは妊娠が難しいことがあります。人工授精や体外受精、顕微授精などの高度な治療が必要な場合もあります。
まずは医療機関で精液検査を受け、精子の状態を正確に把握することがおすすめです。検査結果にもとづいて、シリンジ法が適しているか、他の治療法を選ぶべきかを医師と相談しましょう。男性側も、生活習慣の改善(禁煙、節酒、適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠など)によって精子の質が向上しやすくなるため、夫婦で協力して取り組むことが大切です。
何歳まで試せますか?
シリンジ法に年齢制限はありませんが、妊娠の可能性は女性の年齢に大きく影響されます。一般的に、女性の妊娠率は35歳頃から徐々に低下し、40歳を過ぎると急激に下がります。卵子の数や質が年齢とともに低下するためです。男性側も加齢により精子の質が低下しますが、女性ほど顕著ではありません。
年齢が高い場合は、早めに医療機関で検査を受け、必要に応じて人工授精や体外受精などを検討することが推奨されます。数か月試しても結果が出ない場合は、速やかに専門医に相談しましょう。年齢に関わらず、健康な生活習慣を意識したり、ストレスを減らしたりすることで、妊娠の可能性を高める効果が期待できます。
保険は適用されますか?
現時点では、シリンジ法には医療保険は適用されません。シリンジ法は自宅で行う自費での妊活方法であり、使用するキットの購入費用は全額自己負担となります。シリンジキットの価格は、1回分で数百円程度、複数回分のセット商品で数千円程度が一般的です。
ただし、医療機関で受ける検査(ホルモン検査、卵管造影検査、精液検査、超音波検査など)については、不妊症の診断や治療の一環として保険が適用される場合があります。排卵日を正確に把握するための卵胞チェック(超音波検査)なども、保険診療として受けられることがあります。医療機関で相談する際は、どの検査や診察が保険適用になるか確認することをおすすめします。
人工授精や体外受精については、2022年4月から保険適用の範囲が拡大されました。条件を満たせば保険が適用されるため、経済的負担が軽減されます。
不妊治療の保険適用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>不妊治療の保険適用を徹底解説!対象範囲・回数制限・メリット/デメリットまで
まとめ
シリンジ法は、自宅で手軽にできる妊活方法で、費用も抑えられます。性交渉が難しい夫婦や、精神的な負担を軽減したい夫婦にとって、大きなメリットです。妊娠率は自然妊娠と同程度で、感染リスクや技術的な課題も存在します。メリットとデメリットをしっかり理解し、パートナーとよく話し合ってから検討しましょう。
シリンジ法を試しても妊娠に至らない場合は、他の不妊治療も検討してみましょう。専門の医療機関に相談することで、あなたに合った最適な方法が見つかります。焦らず、前向きに取り組んでみましょう。

参考文献
- Ralf Dittrich, Laura Lotz. Fertility and fertility preservation in women. Dermatologie (Heidelb), 2023, 74(7), p.481-489
- Hiroshi Kaseki, Satoshi Kaseki, Makiko Shimizu, Ayako Hayashi, Nobuhiko Suganuma. Indication of intravaginal insemination for infertility treatment in couples with sexual dysfunction. Reprod Med Biol, 2021, 20(2), p.241-245
- Mohammad Ishraq Zafar, Kerry E Mills, Charles D Baird, Huahua Jiang, Honggang Li. Effectiveness of Nutritional Therapies in Male Factor Infertility Treatment: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Drugs, 2023, 83(6), p.531-546