ソフィアレディスクリニック

【医師監修】男性不妊になりやすい人の特徴とは?原因や治療法も解説

公開日:2024.10.31
更新日:2024.12.24

将来、パートナーとの間に可愛い我が子を…と夢見る方もいるでしょう。しかし、その夢を叶える「妊娠」は、決して当たり前のことではありません。実は、不妊の原因は男性側にあるケースも少なくないのです。

WHOが2017年に実施した調査の報告によると、男性側に何かしらの原因があって妊娠できない「男性不妊」の割合は約半数と言われています。この記事では、男性不妊を引き起こす可能性のある要因や、具体的な症状、そして検査方法から治療法まで、わかりやすく解説していきます。

不妊症について網羅的に知りたい方はぜひ以下の記事も合わせてご覧ください。
>>不妊症とは?定義やなりやすい人の特徴・割合についても解説

男性不妊になりやすい人の特徴5選

男性不妊になりやすい人の特徴として、以下の5つがあげられます。

睾丸(こうがん)の状態に異常がある

睾丸はキンタマと呼ばれる部位です。睾丸が小さい、柔らかい、または位置が高いなどの特徴がある場合、男性不妊のリスクが高くなります。特に以下の状態は注意が必要です。

  • 睾丸が思春期の頃より小さくなった
  • 睾丸を触ると柔らかく張りがない
  • 睾丸の位置が陰嚢内の上方や鼠径部にある
  • 陰嚢の表面に血管のコブ(精索静脈瘤)がある

特定の手術歴や病歴がある

以下のような手術歴や病歴がある場合、男性不妊のリスクが高まります。

  • 幼少期の鼠径ヘルニア手術
  • おたふく風邪後の精巣炎
  • 抗がん剤治療や放射線治療
  • 停留睾丸の手術

不健康な生活習慣がある

以下のような生活習慣は精子の質や量に悪影響を与え、男性不妊のリスクを高めます。

  • 喫煙
  • 過度のアルコール摂取
  • 肥満または痩せすぎ
  • 過度のストレス
  • 睡眠不足

高温環境に頻繁にさらされる

精子は高温に弱いため、以下のような状況は男性不妊のリスクを高めます。

  • サウナや長風呂の常用
  • タイトな下着やズボンの着用
  • 膝上でのパソコン使用
  • 長時間の自動車、自転車、バイクの運転

造精機能障害がある

造精機能とは男性が精子を作る機能です。造精機能障害は男性不妊の約80%を占める主要な原因です。以下のような特徴があります。

  • 精子の数が少ない
  • 精子の運動性が悪い
  • 奇形精子が多い

これらの特徴に当てはまる場合、男性不妊のリスクが高くなる可能性があります。ただし、これらの特徴があるからといって必ず不妊になるわけではありません。心配な場合は、専門医に相談し、適切な検査や治療を受けましょう。

男性不妊の原因と検査方法

男性不妊の原因と検査方法について、具体的な例を交えながらわかりやすく解説していきます。

精子に関する問題

男性不妊の原因として最も多いのは、精子に関する問題です。健康な精子とは数多く存在し、活発に運動し、そして正しい形をしていることが重要です。しかし、さまざまな要因によって、精子の数、運動能力、形態に異常が生じることがあります。

精子の数が少ない状態を「乏精子症」といいます。これは、精液1mlあたりの精子の数が、基準値である1500万個を下回っている状態です。精子の数が少ないと、卵子にたどり着くこと自体が難しくなり、妊娠の可能性が低くなってしまいます。

また、「精子無力症」は、精子が十分に運動できない状態を指します。精子は、卵子と出会うために、勢いよく泳いでいかなければなりません。しかし、精子の運動能力が低い場合、なかなか卵子にたどり着くことができず、妊娠しにくくなる場合があります。

さらに、「精子奇形率」は、精子の形態に異常がある状態です。健康な精子は、頭と尻尾がはっきりとした形をしていますが、中には頭が丸かったり、尻尾が2本あったりと、形が異常な精子も存在します。このような精子は、卵子にうまくたどり着くことや、受精すること自体が難しくなります。これらの問題は、単独で起こることもあれば、複合的に起こることもあります。

精路の通過障害

精子は、精巣で作られた後、精路と呼ばれる細い管を通って、体外へ排出されます。しかし、この精路のどこかが詰まっていると、精子は体外に排出されず、男性不妊の原因となることがあります。

「精管閉塞」は、精路の中でも特に精管と呼ばれる部分が詰まっている状態です。精管閉塞があると、精子は精巣から尿道まで到達することができず、射精された精液中に精子が含まれない状態(無精子症)を引き起こすことがあります。

ホルモン異常

精子の産生には、さまざまなホルモンが関与していますが、特に重要なのが、男性ホルモンであるテストステロンです。テストステロンは、精巣から分泌され、精子の産生を促す役割を担っています。しかし、ストレスや加齢、生活習慣の乱れなどによって、テストステロンの分泌量が減少し、精子の産生が阻害されることがあります。テストステロンの分泌量が低下すると、精子の数が減ったり、運動能力が低下したりするなど、精子の質が低下し、男性不妊に繋がることがあります。

免疫学的因子

私たちの体は、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために、免疫システムを備えています。免疫システムは、体にとって異物となるものを攻撃し、排除する働きを持っています。通常、精子は自分の体にとって異物ではありません。しかし、何らかの原因で、免疫システムが精子を異物と認識し、攻撃してしまうことがあります。これが、「免疫学的因子による男性不妊」です。

このような状態になると、精子は免疫細胞によって攻撃され、数が減ったり、動きが悪くなったり、受精能力が低下したりすることで、男性不妊を引き起こす可能性があります。

精液検査の方法と内容

男性不妊の検査では、まず「精液検査」を行います。これは、採取した精液を顕微鏡で観察し、精子の数、動き、形などを調べる検査です。精液量、精子濃度、精子運動率、精子形態、pH、白血球数などを調べます。精液検査の結果は、WHO(世界保健機関)が定めた基準値と比較して評価されます。基準値を下回っている場合は、男性不妊の可能性があります。

男性不妊の治療法

男性不妊は決して珍しいものではありません。ご自身の状況や希望に合わせた治療法を選択することで、妊娠の可能性が期待できます。

薬物療法

薬物療法は、医師の診断のもと、男性ホルモンの分泌を促す薬などを用いて、精子の状態を改善するための治療法です。薬の種類や服用方法は患者さん一人ひとりで異なり、例えば、男性ホルモンの分泌が少ない場合には、医師の診断に基づいて男性ホルモン補充療法を行います。注射や塗り薬、内服薬などさまざまな方法がありますが、最近では、男性ホルモンの分泌を促す効果のある薬を服用するケースも増えています。

比較的身体への負担が少なく、治療を希望しやすい方法と言えますが、効果が出るまでに時間がかかる場合もあり、根気強く治療を続けることが大切です。

人工授精

人工授精は、採取した精子を濃縮・調整して、排卵のタイミングに合わせて子宮内に直接注入する方法です。タイミング法などの一般不妊治療でなかなか妊娠に至らない場合に検討されます。人工授精は、体外受精に比べると身体的な負担が少なく、費用も抑えられるというメリットがあります。

体外受精・顕微授精

体外受精は、卵子と精子を体外に取り出して受精させ、できた受精卵を子宮内に戻す方法です。顕微授精は、運動能力の低い精子や精子数が極端に少ない場合に、顕微鏡下で1つの精子を卵子に直接注入する方法です。

これらの治療法は、他の治療法で効果が得られない場合や、男性不妊の原因が重い場合に有効な治療法です。

治療費用の目安

治療にかかる費用は治療方法や検査によって異なります。主な費用の目安は以下の通りです。

検査費用

  • 精液検査: 約9,000〜11,000円
  • 内分泌(ホルモン)検査: 約9,900〜22,000円
  • 染色体検査: 約40,000円

手術費用

  • 精索静脈瘤手術: 約165,000〜275,000円
  • 精巣内精子回収術(TESE): 約275,000〜385,000円

その他の費用

  • 精子凍結保存: 33,000〜132,000円
  • 凍結保管料(6か月分): 33,000円

保険適用について

2022年4月から、男性不妊治療の多くに保険が適用されるようになりました。ただし、スクリーニング検査は自由診療のままとなります。保険適用となる主な治療には、以下のものが含まれます。

  • 精液の状態改善を目的とした薬物療法
  • 勃起障害(ED)向けの薬剤
  • 無精子症や射精障害に対する精巣からの精子採取手術

助成制度

自治体によっては、男性不妊治療に対する助成制度も利用可能です。例えば、千葉県では1回の治療につき最大30万円の助成、船橋市では1回の申請につき自己負担額の1/2(上限5万円)の助成が受けられます。最新の情報については各自治体の公式サイトをご確認ください。

まとめ

男性不妊は、さまざまな要因が絡み合って引き起こされるため、治療には専門的なアプローチが必要です。睾丸の状態や生活習慣、過去の病歴などによりリスクが高まることがあり、精子の状態やホルモンバランスも重要な要素です。

要因を把握するために、精液検査やホルモン検査が行われ、適切な治療法が選択されます。薬物療法や手術療法、人工授精や体外受精など、個々の状態に応じた治療法を選択することで妊娠の可能性が期待できます。

2022年4月から保険適用が広がり、自治体による助成制度も利用可能になっています。専門医に相談し、最適な治療法やサポート制度を活用していきましょう。

神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、不妊治療に強みを持つクリニックです。不妊治療を検討している状況でも、専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。

参考文献

AIボット
診療予約