ソフィアレディスクリニック

精液検査の基準値とは?正常値と異常値の判断基準

公開日:2024.11.22
更新日:2024.12.12

あなたは、将来子供を持つことを夢見ていますか? あるいは、すでに妊活を始めていて、道のりが予想以上に険しいと感じていますか?

精液検査」という言葉に、不安や抵抗感を覚える方もいます。しかし、精液検査は男性不妊の原因を探るための、まさに羅針盤のような役割を果たします。実は、不妊の原因の約半分は男性側にあると言われています。WHO(世界保健機関)の調査によると、14カ国以上4500人以上の男性のデータを分析した結果、妊娠に影響する精子の基準値が明確になりました。

WHOの基準値を上回っていても必ず妊娠できるとは限りません。しかし、下回ると妊娠の可能性が低くなる重要な指標です。この記事では、精液検査で何がわかるのか、検査はどこで受けられるのか、費用はいくらかかるのかを解説します。さらに、検査を受ける手順なども不妊治療に携わってきた医師の視点からわかりやすく解説します。

未来の家族計画をスムーズに進めるためにも、記事を通して精液検査への理解を深めましょう。

神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、不妊治療に強みを持つクリニックです。男性不妊に関するお悩みにも、専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。

精液検査の基準値と結果の見方

精液検査の結果を待つ間は、期待と不安が入り混じる複雑な心境になる方も多いです。特に不妊治療を検討している方にとっては、検査結果が大きな意味を持つため、なおさらです。

中には、「基準値を下回っているからもう父親にはなれない…」と絶望してしまう方もいます。しかし、精液検査はあくまでも不妊症検査の一部であり、結果だけですべてが決まるわけではありません。基準値は一つの目安に過ぎません。

精液検査の基準値(正常値)とは?

精液検査の基準値とは、世界保健機関(WHO)が定めた、自然妊娠した男性の精液の所見にもとづいたものです。重要なのは、WHOの基準値は「妊娠しやすい数値」ではなく、「妊娠の可能性が低い数値の下限」を示している点です。基準値をクリアしたからといって必ずしも妊娠しやすいとは限りませんが、基準値を下回ると妊娠の可能性は低くなります。

WHOの精液検査の基準値

WHO第6版の主な基準値は以下のとおりです。

項目基準値
精液量1.4ml以上
精子濃度1600万/ml以上
総精子数3900万以上
運動率42%以上
前進運動率30%以上
正常形態率4%以上

精子濃度が基準値ギリギリの1600万/mlだったとしても、運動率が60%と高ければ、自然妊娠の可能性は十分にあります。

WHOの研究では、可妊男性の精液の質は、一般集団や従来「正常」とされていた男性よりも優れていることが示されています。つまり、基準値をクリアするだけでなく、より高い数値を目指していくことが、妊娠への近道です

精液検査の各項目(量、濃度、運動率、奇形率など)の意味

精液検査ではさまざまな項目が測定されます。それぞれの項目が何を意味するのか、具体的に見ていきましょう。

  • 精液量
    一回の射精で出る精液の量です。精液が少ないと、精子が子宮頸管に届きにくくなってしまいます。1.4mlと聞くと少ないように感じますが、ティースプーン半分程度です。
  • 精子濃度
    1mlの精液の中にどれだけの精子がいるかを表します。精子濃度が低いと、当然ながら卵子と出会える精子の数が少なくなり、受精の確率は低下します。
  • 総精子数
    精液全体の精子の数です。精子濃度と精液量を掛け合わせて算出します。総精子数が少ないことは、卵子と出会えるチャンスが少ないことを意味します。
  • 運動率
    精子が動いている割合です。精子は自力で卵子まで泳いでいく必要があるため、動かない精子では受精できません。顕微鏡で見ると、精子は直線的に泳いだり、くるくると円を描いて泳いだり、さまざまな動き方をします。
  • 前進運動率
    特に重要なのが、前進運動している精子の割合です。卵子に向かって力強く泳いでいく精子の割合が高ければ、受精の可能性も高まります。
  • 正常形態率
    正常な形の精子の割合です。精子の形が異常だと、卵子の中に入ることが難しく、受精しにくくなります。基準値は4%以上ですが、実際には10%以上あるのが理想的です。

精液検査の結果の解釈と異常値の判断

精液検査の結果は、上記の基準値と比較して判断されます。一つでも基準値を下回る項目があれば「異常値」とされます。基準値はあくまで一つの目安です。基準値を少し下回っていたとしても、他の項目が良好であれば自然妊娠の可能性は十分にあります。

すべての項目が基準値を上回っていても、妊娠しないケースもあります。精液検査だけではわからない他の要因、例えば免疫学的要因卵子の質などが影響している可能性があるからです。

精液検査の結果への不安と相談先

精液検査の結果に不安を抱えるのは当然のことです。結果がどうであれ、一人で悩まずに、医師に相談をおすすめします。医師は、あなたの精液検査の結果だけでなく、他の検査結果やあなたの生活習慣、パートナーの状況などを総合的に判断し、最適なアドバイスをしてくれます。

精液検査を理解する5つのポイント

これから赤ちゃんを望むカップルにとって、精液検査は少し緊張する可能性があります。しかし、男性不妊の原因を探る大切な手がかりとなる検査であり、将来の家族計画をスムーズに進めるための一歩となります。

精液検査とは精液を顕微鏡などで詳しく調べる検査

精液検査とは、採取した精液を顕微鏡などで詳しく調べる検査です。精子の数、運動率、形などを調べ、男性不妊の原因を探る重要な手がかりとなります。見た目では健康そうに見える男性でも、精液検査で精子の数が少ない、動きが弱い、形が異常などの問題が見つかることがあります。

精液検査で男性不妊の原因を特定する手がかりを得られる

精液検査では、精液量精子濃度総精子数運動率前進運動率正常形態率などがわかります。精子濃度が基準値を下回る乏精子症、精子の運動率が低い精子無力症、精液中に精子が全く見つからない無精子症など、さまざまな状態がわかります。

以下の記事では、精子の運動率について解説しているのでチェックしてみてください。
>>精子の運動率とは?定義と生活習慣、必要な栄養素について解説

精液検査は泌尿器科や不妊治療専門のクリニックで受けられる

精液検査は、泌尿器科や不妊治療専門のクリニックで受けることができます。かかりつけの医師がいる場合は、まずは相談してみましょう。どの病院に行けば良いかわからない場合は、インターネットで近くの泌尿器科や不妊治療専門クリニックを探したり、地域の保健センターに相談したりするのも良いです。

ご自身の状況や希望に合わせて、適切な医療機関を選ぶことが大切です。すぐにでも子どもが欲しいと考えている場合は、不妊治療専門クリニックを受診しましょう。

精液検査は多くの場合保険適応になる

精液検査の費用は、医療機関によって異なりますが、一般的には5,000~10,000円程度です。多くの場合、保険適用となるため、自己負担額は3割負担の方で1,500~3,000円程度になります。ただし、検査項目によっては保険適用外となる場合もあるので、事前に医療機関に確認しておくと安心です。

費用面も医療機関選びの重要な要素です。検査費用だけでなく、もし不妊治療が必要となった場合の費用も、事前に確認しておきましょう。

精液検査を受ける手順

精液検査を受ける手順は、以下のとおりです。

  1. 禁欲期間を守る
    精子の状態を正確に把握するために通常は2~7日間程度の禁欲期間が必要です。禁欲期間が短すぎると精子の数が少なく、長すぎると運動率が低下する可能性があります。
  2. 採取方法の確認
    医療機関によって、専用の個室で採取する方法や自宅で採取して持参する方法などがあります。自宅で採取する場合は、温度変化や時間経過による精子の劣化を防ぐため、指定された方法に従うことが重要です。
  3. 採取後の注意点
    採取後は速やかに提出しましょう。特に、自宅で採取する場合は、時間や温度管理に注意が必要です。病院によっては、専用の容器や保温バッグを提供している場合もあります。
  4. 結果説明
    検査結果は、通常1~2週間後に説明を受けます。結果の説明を受ける際には、医師から今後の治療方針や生活習慣改善のアドバイスなどを受けることができます。

精液検査を受ける際には、医師や看護師から詳しい説明があるので、疑問や不安があれば遠慮なく質問しましょう。精液検査は、男性不妊の原因を探るための第一歩です。検査結果を基に、医師と相談しながら、今後の治療方針を決めていきましょう。

男性不妊と精液検査の関係

子どもを望んでいるのに、なかなか授からない…。そんなとき、不安や焦燥感で押しつぶされそうになることがあります。男性不妊は、多くのカップルが直面する問題です。不妊の原因の約半分は男性側に要因があると言われているため、男性も積極的に検査を受けることが大切です。

男性不妊の主な原因

男性不妊の主な原因は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

  • 精子の異常
    精子の数が少なかったり、運動能力が低かったり、形が異常である場合です。精巣での精子産生機能の低下や、精路の異常などが原因で起こります。例えば、乏精子症(精子濃度が低い)、精子無力症(精子の運動率が低い)、奇形精子症(正常な形態の精子が少ない)などが挙げられます。
  • 精路の閉塞
    精子は精巣で作られた後、さまざまな管を通って体外へ排出されます。精路が何らかの理由で閉塞していると、精子が外に出ることができず、不妊の原因となります。例えば、過去の感染症や手術の後遺症、先天的な異常などが原因となることがあります。
  • 性機能障害
    勃起障害や射精障害など、性行為に問題がある場合も不妊の原因となります。 精神的なストレスや、身体的な疾患が背景にあるケースもあります。

男性不妊の原因は単独で起こることもあれば、複数組み合わさって起こることもあります。生活習慣遺伝的要因過去の病気など、さまざまな要因が複雑に絡み合って男性不妊を引き起こします。

精液検査でわかる男性不妊の原因

精液検査でわかる男性不妊の原因で多いのは、精液の量や精子の数(濃度)、運動率や形態によるものです。

WHOの基準値は、妊娠の可能性が低い数値の下限を示すもので、基準値を下回ると妊娠の確率が低下する可能性が高まります。例えば、精子濃度が1600万/ml未満運動率が42%未満正常形態率が4%未満の場合です。

精液検査の結果が異常だった場合の対処法

精液検査の結果が基準値を下回っていたとしても、すぐに諦める必要はありません。原因によっては、生活習慣の改善薬物療法手術などによって改善が見込める場合もあります。

まず取り組むべきは生活習慣の改善です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙などは、精子の質を向上させるために重要です。生活習慣の改善を3か月ほど続け、再度検査を受けてみましょう。

改善が見られない場合は、薬物療法や手術療法などの治療法を検討します。例えば、ホルモンバランスの異常が原因の場合はホルモン剤を使用したり、精路の閉塞が原因の場合は手術で閉塞を取り除いたりするなどの治療を行います。

生活習慣改善のポイント

精子の質を向上させるためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。特に以下の5つのポイントに注意しましょう。

  • バランスの良い食事
    野菜、果物、魚、大豆製品などをバランス良く摂取しましょう。特に、抗酸化作用のあるビタミンC・Eや、精子を作るのに必要な亜鉛は積極的に摂りたい栄養素です。ジャンクフードやインスタント食品は控えめにしましょう。
  • 適度な運動
    適度な運動は血行を促進し、精巣への栄養供給を改善します。激しい運動は逆効果になる場合もあるので、ウォーキングやジョギングなどの軽い運動を週に数回行うのがおすすめです。
  • 十分な睡眠
    睡眠不足はホルモンバランスを崩し、精子の質を低下させる原因となります。毎日同じ時間に寝起きし、質の良い睡眠を心がけるようにしましょう。
  • 禁煙
    タバコに含まれる有害物質は、精子の数や運動率を低下させます。禁煙は精子の質の改善だけでなく、全身の健康にもつながります。
  • ストレス軽減
    ストレスは精子の質に悪影響を与えます。趣味やリラックスできる活動を見つけ、ストレスを上手に発散する工夫をしましょう。

治療法の種類と選び方

生活習慣の改善で効果が見られない場合は、薬物療法、手術療法、人工授精、体外受精などの治療法を検討します。どの治療法が適しているかは、患者さんの状態や原因によって異なります。

薬物療法は、ホルモンバランスの異常や感染症などが原因の場合に有効です。手術療法は、精路の閉塞や精索静脈瘤などが原因の場合に選択されます。人工授精や体外受精は、他の治療法で効果が見られない場合や、女性側に不妊の原因がある場合に検討されます。

どの治療法を選択するかは、医師とよく相談し、ご自身の状況に合った治療法を見つけることが大切です。

まとめ

精液検査は、精子の数、運動率、形などを調べ、男性不妊の原因を探る検査です。

WHOが定めた基準値は、妊娠の可能性が低い数値の下限を示すものであり、基準値を下回ると妊娠の確率が低下する可能性が高まります。基準値は、精液量1.4ml以上、精子濃度1600万/ml以上、総精子数3900万以上、運動率42%以上、前進運動率30%以上、正常形態率4%以上です。

検査結果が基準値を下回っていたとしても、生活習慣の改善や薬物療法、手術などで改善が見込める場合があります。生活習慣の改善では、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、ストレス軽減が重要です。

結果が異常だった場合は、医師と相談し、生活習慣の改善や薬物療法、手術療法、人工授精、体外受精などの治療法を検討しましょう。

以下の記事では、男性不妊になりやすい人の特徴についてまとめています。ご自身に当てはまらないか、心配な方はぜひチェックしてみてください。
>>男性不妊になりやすい人の特徴とは?原因や治療法も解説

参考文献

Cooper TG, Noonan E, von Eckardstein S, Auger J, Baker HW, Behre HM, Haugen TB, Kruger T, Wang C, Mbizvo MT and Vogelsong KM. “World Health Organization reference values for human semen characteristics.” Human reproduction update 16, no. 3 (2010): 231-45.

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