
子宮頸がんワクチンの副作用とは?接種前に知るべきリスクと適切な対処法
公開日:2025.07.24更新日:2025.10.28
子宮頸がんワクチンの接種を考えたとき、副作用について不安を感じる方は多くいらっしゃいます。ワクチン接種は、将来の自分を守るための大切な選択です。事前に正しい情報を知っておくことが、安心して接種を受けるために必要です。
本記事では、子宮頸がんワクチン接種による副作用や接種前の確認事項、副作用の対処法、相談先について詳しく解説します。ワクチンへの正しい知識を持ち、医師と相談する際の参考にしてください。
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子宮頸がんワクチンで起こりうる5つの副作用
子宮頸がんワクチンで起こりうる副作用について、以下の5つを解説します。
- 接種した場所の痛み・腫れ・赤み
- 発熱・頭痛・倦怠感などの全身症状
- 接種直後に起こる失神(血管迷走神経反射)
- アナフィラキシーなど重いアレルギー反応
- 長引く痛みやしびれなどの多様な症状
接種した場所の痛み・腫れ・赤み
接種した場所の痛みや腫れ、赤み、かゆみ、熱感は、接種した半数以上の方で起こる副作用です。症状は、身体の免疫システムが反応した正常な防衛反応といえます。通常、接種後数日間で自然に軽快します。痛みが気になる場合は、清潔な布でくるんだ保冷剤などで注射した部位を冷やす方法があります。
痛みが強いからといって、腕を強くもんだり、こすったりするのは避けましょう。何日も痛みが続く場合や腫れがひどくなる場合は、接種した病院に相談しましょう。
発熱・頭痛・倦怠感などの全身症状
接種した場所の症状の他に、全身の症状が見られることがあります。主な全身症状は、以下のとおりです。
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
- 筋肉痛・関節痛
- 腹痛・下痢・嘔吐
多くの場合、接種後数日で自然に回復します。症状がつらいときは、無理をせずゆっくり休み、水分をこまめに摂りましょう。高熱が続く場合や症状が重い場合は、我慢せず病院を受診することが大切です。
接種直後に起こる失神(血管迷走神経反射)
血管迷走神経反射(けっかんめいそうしんけいはんしゃ)は、注射に対する強い緊張や痛み、恐怖心などが関与する可能性があります。主な症状は、以下のとおりです。
- めまいがする
- 気分が悪くなる
- 顔が青白くなる
- 冷や汗をかく
- 意識を失う(失神)
ワクチンの成分によるアレルギー反応ではないので、両者を区別して対応することが重要です。血管迷走神経反射は、急に立ち上がったときに起こりやすく、転んでケガをする危険があります。ワクチン接種後は、すぐに帰宅したり立ち上がったりせず、少なくとも30分間は病院で安静に過ごしましょう。
気分が悪くなった場合は、近くのスタッフに声をかけ、横になるなど楽な姿勢をとりましょう。
アナフィラキシーなど重いアレルギー反応
アナフィラキシーは、ワクチンに含まれる成分に対して起こる重いアレルギー反応です。命に関わることもあるため、迅速な対応が必要となります。主な症状は、以下のとおりです。
- 全身のじんましん
- 呼吸困難
- 急な血圧の低下
- 意識の低下
アナフィラキシーはまれな副作用で、厚生労働省によると、頻度は約96万回の接種に1回とされています。アナフィラキシーは、接種直後(多くは30分以内)に起こることが多いため、接種後は病院で30分間待機しましょう。アナフィラキシーが起こっても、医師や看護師がすぐに対応できます。
医薬品や食品で重いアレルギー反応を起こしたことがある方は、接種前の問診で医師に伝えましょう。接種後に少しでも体調の異常を感じた場合は、すぐに病院に相談することが重要です。
長引く痛みやしびれなどの多様な症状
ワクチン接種後の副作用疑いとして報告されている多様な症状に、以下の5つがあります。
- 広い範囲にわたる持続的な痛み
- 手足のしびれ・感覚異常
- 手足の脱力・運動障害
- 不随意運動(自分の意思とは関係なく身体の一部が動くこと)
- 記憶力や集中力の低下
症状とワクチン接種との医学的な因果関係については、明確に証明されていません。専門家の間では、痛みなどをきっかけに脳が身体の機能をうまく調節できなくなる「機能性身体症状」という状態ではないかと考えられています。ワクチンを接種していない同じ年代の人にも、同じような症状を持つ人がいることがわかっています。
接種後に気になる症状が長く続く場合は、接種を受けた病院やかかりつけ医に相談しましょう。
接種前に確認すべき3つのポイント
接種前に確認してほしいポイントについて、以下の3つを解説します。
- ワクチンの種類と効果・費用を把握する
- 自分に接種が適しているかを確認する
- 接種当日の注意点を把握しておく(入浴・運動・飲酒など)
ワクチンの種類と効果・費用を把握する
公費で受けられる子宮頸がんワクチンの種類と対応するHPVの型は、以下のとおりです。
- 2価ワクチン(サーバリックス®):16型、18型
- 4価ワクチン(ガーダシル®):6型、11型、16型、18型
- 9価ワクチン(シルガード9®):6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型
「価」は、予防できるウイルスの種類(型)の数です。3種類のワクチンは、子宮頸がんの主な原因である「HPV16型」「HPV18型」に対応しています。原則、公費で接種できる対象者は、以下のとおりです。
- 小学校6年生〜高校1年生相当の女子(予防接種法にもとづく定期接種)
- 過去に接種の機会を逃した平成9〜20年度生まれで、令和4年4月1日〜令和7年3月31日までにHPVワクチンを1回以上受けた女性(令和8年3月31日までに残りの接種が可能)
詳しい接種方法は、市区町村のホームページや相談窓口で確認しましょう。
HPVに関連する病気として子宮頸がんがあり、予防には定期的な検診も重要です。以下の記事では、子宮頸がん検診の費用や保険適用の条件、無料で受けられるケースについて詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診の費用はいくら?保険適用・無料になる条件も解説
自分に接種が適しているかを確認する
子宮頸がんワクチンの接種は、健康状態によって注意が必要な場合があります。接種前に医師に伝えておくべき大切なポイントは、以下の5つです。
- 予防接種による体調不良の有無
- 医薬品や食品、ワクチンの成分による強いアレルギー反応(アナフィラキシーなど)の有無
- 心臓や腎臓、肝臓、血液の病気などの有無
- 妊娠しているまたは可能性の有無
- 発熱や風邪症状など体調不良の有無
接種前は、問診で自身の体調や体質を正確に伝えることが大切です。不安な点があれば、医師に相談しましょう。
接種当日の注意点を把握しておく(入浴・運動・飲酒など)
接種当日は、接種後の副作用に対応するために、接種前後でいくつかの注意点があります。接種前の注意点は、以下の3つです。
- 体調の確認:熱がある、体調がすぐれない場合は無理をしない
- 予診票の記入:身体の状態を伝える予診票は、正確に記入する
- 服装:注射部位(肩周辺)を出しやすい、ゆったりとした服装にする
接種後の注意点は、以下の4つです。
- 安静:接種直後は最低30分間安静にし、体調に変化がないか様子を見る
- 入浴:お風呂で注射した場所を強くこすらない
- 運動:水泳やマラソンなど激しい運動は控え、安静にする
- 飲酒:接種当日の飲酒は控える
接種した場所は清潔に保ち、接種後の生活でわからない点は、接種した病院に確認しましょう。
副作用が出たときの適切な対処法
副作用が出たときの適切な対処法について、以下の2つを解説します。
- 軽い副作用にはセルフケアを行う
- 重い症状が出たら病院を受診する
軽い副作用にはセルフケアを行う
症状は、数日で自然におさまっていくことがほとんどです。症状を軽くするために自宅でできるセルフケアは、以下の3つです。
- 安静にしてゆっくり休む
- 痛む場所を冷やす
- 市販の薬を上手に使う
接種当日は、身体が免疫を作るための大切な時間であり、激しい運動や飲酒は避け、リラックスして過ごしましょう。十分な睡眠と休息をとることをおすすめします。接種した場所の痛みや腫れ、発熱、だるさといった症状は、身体の免疫が働いている兆候と考えられます。
注射した腕の痛みや腫れ、熱感が気になる場合は、清潔なタオルでくるんだ保冷剤などで、優しく冷やしましょう。症状の軽減に役立つことがあります。痛みが強い、または熱がつらい場合は、市販の解熱鎮痛薬を使うことも一つの方法です。薬にアレルギーがある方や他に飲んでいる薬がある方は、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
重い症状が出たら病院を受診する
まれに早急な対応が必要となる症状があらわれます。早急に受診すべき症状は、以下の7つです。
- 息が苦しい、ゼーゼーする
- 顔やまぶた、唇、舌が急に腫れてきた
- 身体にじんましんが出てきた
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応がにぶい
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 注射した場所の痛みが異常に強く、悪化する
- 手足に力が入らない、しびれが続く
呼吸困難やじんましんは、アナフィラキシーという重いアレルギー反応による症状の可能性があります。命に関わることもあるため、迅速な対応が必要となります。手足のしびれや動かしにくさといった神経系の症状が続く場合も注意が必要です。ギラン・バレー症候群などの報告もありますが、発生頻度は低い副作用です。
帰宅後に症状が出た場合は、夜間や休日であっても、すぐに病院に連絡しましょう。
不安や症状が続くときの相談先
不安や症状が続くときの相談先は、以下のとおりです。
- かかりつけ医・産婦人科で相談する
- 自治体の予防接種相談窓口を利用する
- 厚生労働省の相談窓口を活用する
かかりつけ医・産婦人科で相談する
ワクチン接種後の不安や症状が続くときは、ワクチンを接種した病院やかかりつけ医に相談しましょう。子宮頸がんに詳しい産婦人科で相談するのも良い方法です。相談する際、状況をメモにまとめておくと医師に伝わりやすいです。伝えるポイントは、主に以下の4つです。
- 接種日、接種回数
- ワクチンの種類(2価、4価、9価)
- 発症日、症状の内容、変化
- 一番不安なこと
情報を整理しておくと、診察がスムーズに進み、良い対処法が見つかりやすくなります。異常を感じた場合は、病院に相談しましょう。子宮頸がん検診で「ひっかかった」と言われた場合でも、すぐにがんが確定するわけではありません。再検査や精密検査が必要となるケースが多くあります。
以下の記事では、検診で異常が見つかった場合の主な原因や、精密検査の種類、事前に知っておきたい対策について詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診でひっかかる原因とは?精密検査の方法や対策を解説
自治体の予防接種相談窓口を利用する
多くの市や区では、保健所や保健センターに「予防接種相談窓口」を設けています。電話をすると、看護師や保健師が相談にのってくれます。自治体の相談窓口でできることは、以下のとおりです。
- 副作用に関する一般的な質問
- 地域の協力医療機関の情報提供
- 国の補償制度についての案内
窓口では、症状への疑問や症状を詳しく診てくれる専門病院などの紹介、健康被害救済制度について教えてくれることがあります。お住まいの市区町村のホームページで検索してみましょう。地域によっては、子宮頸がん予防接種専門の相談窓口があります。病院に行くべきか迷ったときに活用しましょう。
厚生労働省の相談窓口を活用する
かかりつけ医に相談しても不安が残る場合や症状が長く続いて困っている場合は、国が設けている相談窓口があります。「感染症・予防接種相談窓口」は、より専門的な視点から相談に応じてくれます。
「健康被害救済制度」は、一定の要件下で救済給付が検討される制度です。予防接種が原因で病院での治療が必要になったり、生活に支障が出る障害が残ったりした場合に検討されます。厚生労働大臣より、健康被害が予防接種によって引き起こされたものと認定されると、医療費等の給付が行われることがあります。
手続きはやや複雑ですが、相談することが大切です。ワクチンと長引く痛みなどの症状との因果関係は、専門家の間でも見解がわかれるケースもあります。接種した病院や自治体の窓口、国の相談窓口が、手続きの相談にのってくれます。一人で抱え込まず、専門家を頼りましょう。
まとめ
ワクチン接種は、子宮頸がんを予防する選択肢の一つです。子宮頸がんワクチンの副作用は、多くの場合一時的な軽度なものです。まれに重い副作用が起こる場合があります。大切なことは、リスクを正しく理解することです。過度に怖がらず、冷静に対処できるように準備しておくことが大切です。
接種前後で不安なことや気になる症状があれば、一人で悩まず、接種した病院の医師やかかりつけ医に相談しましょう。自治体や国の相談窓口も、一般的な相談や制度に関する手続きの相談にのってくれます。専門家の相談窓口を活用しましょう。
子宮頸がんの早期発見には定期的な検診が重要です。以下の記事では、年齢別に適した検診の頻度やスケジュールについて詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診はどのくらいの頻度で受けるべき?推奨される間隔と年齢
参考文献
- 厚生労働省:HPVワクチンに関するQ&A(令和7年)
- KobayashiY et al. Human papillomavirus (HPV) vaccination in Japan: reports of diverse symptoms and the government’s suspension of recommendation. J Obstet Gynaecol Res, 2017, 43, 4, p.635-639
- 厚生労働省:感染症・予防接種相談窓口(令和7年)