
射精障害の原因とは?治すにはどうすべきか、改善方法や治療法を専門医が解説
公開日:2025.01.30更新日:2025.01.30
「射精障害」を抱え、密かに悩んでいる男性は少なくありません。射精障害には早漏や遅延射精、逆行性射精や無射精症などさまざまな症状があります。射精障害の原因は年齢や生活習慣、ストレスなど多岐にわたります。
この記事では、射精障害の種類や原因、具体的な治療法まで、専門医がわかりやすく解説します。自分だけでは解決できない悩みだからこそ、正しい知識を身につけましょう。
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射精障害の種類と症状
射精障害は、男性の性生活において大きな悩みとなる問題です。射精障害にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる症状が現れます。以下の4種類の射精障害の症状を解説します。
- 早漏
- 遅延射精
- 逆行性射精
- 無射精症
早漏:射精までの時間が短い
早漏は、性的刺激に対する射精のコントロールができず、望まないタイミングで射精してしまう状態を指します。膣挿入後1分以内に射精してしまうことが基準とされていますが、状況や個人差によって異なる場合があります。
「パートナーを満足させられないのではないか」「性行為を楽しめない」といった不安を抱える方も多く、精神的な負担も大きい問題です。
遅延射精:射精するまでに時間がかかる、または射精できない
遅延射精は、射精するまでに時間がかかる、あるいは射精できない状態です。射精までの時間が長すぎることで、性行為に支障をきたし、パートナーとの関係にも影響を及ぼす可能性があります。
逆行性射精:射精時に精液が膀胱に逆流する
逆行性射精は、射精時に精液が尿道ではなく膀胱に逆流してしまう状態です。「膀胱頸部(けいぶ)とは、膀胱の出口にあたる部分で、尿や精液の流れを調節する重要な役割があります。射精感はあっても精液が外に出ない、あるいはごく少量しか出ないため、不妊の原因になることもあります。
以下の記事では、男性不妊になりやすい人の特徴についてまとめています。ご自身に当てはまらないか、心配な方はぜひチェックしてみてください。
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無射精症:射精がない
無射精症は、射精がない状態です。性的刺激やオーガズムを感じても精液が外に出ることはなく、自然妊娠は不可能です。
無射精症の方は、性的興奮時や絶頂期に射精感を感じることはあっても、実際に精液が外に出ることはありません。

射精障害の原因
主な射精障害の原因は以下のとおりです。
- 糖尿病などの神経障害
- ホルモン異常
- 薬の副作用
- ストレスや不安などの心理的要因
- 生活習慣
- 加齢による変化
射精のメカニズムは複雑で、さまざまな要因が絡み合っているため、原因を特定することは容易ではありません。射精障害は決して恥ずかしいことではなく、適切な治療によって改善できる可能性があります。
糖尿病などの神経障害
糖尿病は、高血糖によって神経が損傷を受けることで、さまざまな合併症を引き起こします。合併症の一つとして、射精障害があります。
射精は、脳からの指令によってさまざまな筋肉が動くことで成り立つ現象です。神経が傷ついてしまうと、射精のメカニズムがうまく働かなくなり、射精障害が起こります。
ホルモン異常(テストステロン低下など)
男性ホルモンであるテストステロンは、性欲や勃起機能、射精など、男性の性機能全体に深く関わっています。テストステロンの分泌量の低下は、男性の性機能に悪影響を及ぼす要因です。
テストステロンは、性欲や筋力、体脂肪分布や骨密度、精子生成など、男性の活力を支える重要なホルモンです。テストステロンが不足すると、性欲が低下したり、勃起しにくくなったりするだけでなく、射精にも影響が出てきます。加齢とともにテストステロンの分泌量は自然に減少していきますが、過度なストレスや生活習慣の乱れなどもテストステロンの低下を招く可能性があります。
薬の副作用(抗うつ薬や高血圧治療薬など)
射精障害は、特定の薬の副作用として現れることもあります。抗うつ薬や高血圧治療薬の中には、射精障害を引き起こす可能性のあるものがあります。
抗うつ薬の中には、射精を遅らせたり、射精量を減らしたりする副作用を持つものがあるため、注意が必要です。高血圧治療薬の中には、逆行性射精を引き起こす可能性があるものもあります。
現在服用している薬で射精障害の症状が現れた場合は、自己判断で服薬を中止せず、必ず医師に相談してください。薬の種類を変更することで症状が改善する可能性があります。
ストレスや不安などの心理的要因
精神的なストレスは、身体のさまざまな機能に影響を及ぼします。射精機能も例外ではなく、過度なストレスは射精障害を引き起こす可能性があります。
過度なストレスを抱えている方は、自分に合うストレス発散法を見つけてみましょう。適度な運動やカウンセリング、友人との会話などがストレス発散に効果的です。
生活習慣(アルコールや喫煙など)
過度の飲酒や喫煙などの生活習慣も、射精障害の原因となる場合があります。アルコールは、一時的にはリラックス効果をもたらしますが、過剰に摂取すると神経機能を抑制し、射精機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させるため、射精に必要な血液供給が不足する原因です。健康的な食生活や適度な運動を心がけ、過度の飲酒や喫煙を避けることは、射精障害の予防だけでなく、全身の健康維持にもつながります。
加齢による変化
加齢は誰にも避けられない自然な現象ですが、加齢に伴い身体のさまざまな機能が衰えていくのも事実です。射精機能も例外ではなく、加齢とともに変化していく可能性があります。
加齢によって筋力が低下したり、血管が老化したりすることで、射精機能にも影響が出ることがあります。加齢とともに男性ホルモンの分泌量が減少することも、射精障害につながる可能性があります。
加齢による変化は自然な現象であり、必ずしも深刻な問題ではありません。適切な対策を講じることで、加齢による影響を最小限に抑えられます。
射精障害の治療法
射精障害は専門医に相談することで改善が期待できます。治療法は大きく分けて以下の4種類です。
- 薬物療法
- 心理療法
- 物理療法
- 生活習慣
患者さんの状況に合わせて、上記の治療法をそれぞれ単独または組み合わせて行われます。
薬物療法(ED治療薬やホルモン療法など)
薬物療法は、射精障害の原因に合わせた薬を用いる治療法です。勃起に問題がある場合は、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬が有効です。ED治療薬は血管を拡張させ、血流を改善することで勃起を促します。しっかりと勃起することで、射精もしやすくなる効果が期待できます。
男性ホルモンであるテストステロンの不足が原因の場合は、ホルモン補充療法がおすすめです。ホルモン補充療法によってテストステロンのレベルを正常化することで、性欲を高め、射精機能の改善が期待できます。
逆行性射精には、三環系抗うつ薬が用いられることがあります。三環系抗うつ薬は、膀胱頸部の筋肉の緊張を高め、精液が膀胱に逆流するのを防ぐ効果が期待できる薬です。
早漏には、医師の判断のもとでセロトニンに作用するSSRIや鎮痛剤が適応外で使用されることがあります。射精までの時間を遅らせる効果が期待できます。
心理療法(カウンセリングや行動療法など)
ストレスや不安、過去のトラウマなど、心理的な要因が射精障害の原因となっている場合は、心理療法が有効です。
カウンセリングでは、訓練を受けたカウンセラーと安心して話せる環境で、心の負担を軽減し、射精障害に対する不安や恐怖を取り除くことができます。行動療法では、射精のコントロールを学ぶトレーニングを行います。
「ストップ&スタート法」は、射精しそうになったら刺激を止め、感覚が落ち着いてから再開する練習を繰り返す方法です。トレーニングによって、射精のタイミングをコントロールするスキルを身につけることができます。
物理療法(骨盤底筋トレーニングなど)
射精に関わる筋肉を鍛えることで、射精機能を改善できる可能性があります。骨盤底筋トレーニングは、尿漏れ対策としても知られていますが、射精のコントロールにも効果的です。
骨盤底筋は、骨盤の底にある筋肉群で、排尿や排便、射精などをコントロールする役割を持っています。具体的なトレーニング方法としては、肛門を締めるように力を入れる運動や、尿を途中で止める運動などです。
運動を毎日続けることで、骨盤底筋が鍛えられ、射精障害の改善につながることが期待できます。
生活習慣の改善(食事・運動・禁煙など)
射精障害の改善には、健康的な生活習慣を心がけることも重要です。バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠は、心身の健康を保ち、性機能の維持にもつながります。
喫煙は血管を収縮させ、血流を悪くするため、射精障害を悪化させる可能性があります。禁煙は射精機能の回復だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす要因です。過度な飲酒も、神経を麻痺させ、射精機能に悪影響を及ぼす可能性があります。飲酒は適量を心がけましょう。
日常生活の中で、健康的な習慣を心がけることで、射精障害の改善だけでなく、将来的な健康リスクの軽減にもつながります。
まとめ
射精障害の種類や原因は多岐にわたりますが、適切な診断と治療によって改善が期待できます。精神的なものから身体的な疾患までさまざまですが、いずれも専門医の適切な診断と治療を受けることが重要です。
早漏や遅延射精、逆行性射精や無射精症など、射精に関する悩みを抱えている方は、一人で悩まず、医療機関に相談してください。早期発見・早期治療で、より快適な生活を取り戻しましょう。
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参考文献
Elizabeth Phillips, Christina Carpenter, Robert D Oates. Ejaculatory dysfunction. Urol Clin North Am, 2014, 41(1), p.115-128