子宮の位置はどこ?位置がずれたら治療が必要?子宮の位置の基本を医師が解説
公開日:2024.09.29更新日:2024.09.29
「子宮」は命を育む大切な臓器ですが、形や位置、役割について、具体的に知っている方は少ないです。子宮は骨盤内でハンモックのように支えられており、位置がずれてしまうことがあります。子宮後屈、子宮前屈、子宮下垂といった状態になると、月経痛や腰痛、排尿障害など、さまざまな不調が現れます。
この記事では、子宮の構造や役割といった基本情報を解説します。記事を読めば、位置異常の原因や症状、検査方法、治療法まで、不明点が解消できて子宮に詳しく慣れます。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、子宮に関する病気やお悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
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子宮ってどんな臓器?位置や役割、構造の基本を解説
「子宮」は妊娠すると赤ちゃんが10か月間も過ごす場所になる、命を育むための神秘的な臓器です。子宮の形や大きさ、体のどこにあるのか、詳しく知っている方は意外と少ないです。以下では、子宮の形や大きさ、重さ、どこにあるのかなど詳しく解説します。
子宮の形や大きさ、重さは?
子宮の形は「洋なしをさかさまにしたような形」と表現されることが多く、上部が広く、下に向かって細くなっています。大きさは鶏卵くらいで、重さは40~50グラムほどです。
握りこぶしよりも少し小さいぐらいです。小さな臓器の中に、新しい命が宿り、大きく成長していくので、とても神秘的と言えます。子宮の大きさは、妊娠経験の有無や年齢によって個人差があるのが特徴です。
子宮は骨盤で囲まれた空間にある
子宮は、おへその下あたりにある「骨盤」と呼ばれる骨で囲まれた空間の中にあります。骨盤は、体の中心となる骨格で、上半身と下半身をつなぐ重要な役割を担っています。
骨盤の中に、尿を貯めておく膀胱や、便を一時的に貯めておく直腸といった臓器と並んで、子宮も存在しています。子宮の位置を、周りの臓器との位置関係で説明すると、膀胱の後ろ、直腸の前の空間に位置しています。子宮は、いくつかの靭帯と呼ばれる組織によって支えられており、前後左右に少し動きます。
子宮の3つの層とそれぞれの働き
子宮の壁は、内側から順番に「子宮内膜」「子宮筋層」「漿膜(しょうまく)」と呼ばれる3つの層でできています。それぞれの層が異なる重要な役割を担っています。
子宮内膜
子宮の一番内側の層です。受精卵が着床し、赤ちゃんが育つための「命のゆりかご」と言える場所です。月経周期に合わせて厚くなったり、薄くなったりを繰り返しています。
妊娠しなかった場合は、子宮内膜が剥がれ落ちて、月経(生理)として体の外に排出されます。妊娠すると、受精卵が子宮内膜に潜り込むようにして着床し、胎盤と呼ばれる組織を作り始めます。胎盤は、お母さんから赤ちゃんへ栄養や酸素を送るための重要な役割を担います。
子宮筋層
子宮内膜の外側にある、筋肉でできた厚い層です。筋肉層は、妊娠中に子宮を大きくし、出産のときに赤ちゃんを押し出す力強い働きをします。収縮力は強く、陣痛の痛みは、子宮筋層の収縮によるものです。出産後には、子宮筋層が収縮することで、子宮は徐々に元の大きさに戻ります。
漿膜(しょうまく)
子宮の一番外側にある薄い膜です。漿膜は、子宮を外部の刺激から守る役割をしています。子宮だけでなく、腸などの臓器の表面も覆っており、臓器同士が摩擦を起こさないようにする役割もあります。
子宮の位置異常の種類や原因、症状について
子宮の位置異常とは、子宮の位置が正常な状態からずれてしまい、元の位置に戻ることができない状態のことを指します。ここでは、子宮の位置異常の種類や原因、症状について解説します。
子宮の位置異常は3種類
子宮の位置異常は、子宮が正常な位置よりも後ろに傾いている「子宮後屈」、前に傾いている「子宮前屈」、下に下がっている「子宮下垂」の3つの種類に分けられます。
- 子宮後屈
子宮が後ろ側に傾き、直腸の方へ曲がっている状態です。子宮後屈は比較的多く見られるタイプで、自覚症状がない場合も多いです。 - 子宮前屈
子宮が前に傾き、膀胱の方へ曲がっている状態です。子宮前屈も比較的多く、特に問題となることは少ないです。 - 子宮下垂
子宮が本来の位置よりも下に下がっている状態です。子宮下垂は、骨盤底筋の著しい低下や靭帯の損傷などが原因で起こり、程度によっては子宮が膣から出てきてしまうこともあります。
子宮の位置がずれることで、毎月の生理痛がひどくなったり、腰が痛くて家事がつらくなったりします。尿漏れが気になって外出をためらうこともあるでしょう。原因と症状を正しく理解し、適切な対処をしましょう。
子宮の位置異常の原因
子宮の位置異常の原因は、生まれつきのものである場合と、後天的なものがあります。以下の表で詳しく解説します。
原因 | 説明 |
骨盤底筋の衰え | 加齢や出産、肥満や運動不足などが原因で、骨盤底筋が衰えると子宮を支えきれなくなることがあります。出産経験のある方は、骨盤底筋がダメージを受けやすいため注意が必要です。 |
子宮筋腫 | 子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。子宮筋腫が大きくなると、子宮が正常な位置から押し出されてしまい、位置が変わってしまうことがあります。 |
子宮内膜症 | 子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所にできる病気です。子宮内膜症によって癒着が起こり、子宮の位置が引っ張られるようにして変わってしまう場合があります。 |
過去の妊娠・出産 | 妊娠・出産によって骨盤底筋や靭帯が伸びたり、傷ついたりすることで、子宮を支える力が弱くなり、位置異常が起こりやすくなります。 |
遺伝 | 体質的に子宮の位置異常になりやすい場合があります。 |
子宮の位置異常で起こる症状
子宮の位置異常があっても、自覚症状がない場合も少なくありません。症状が現れる場合は、以下のようなものがあります。
- 月経痛(生理痛)
子宮が正常な位置からずれて、周囲の神経や組織を圧迫することで、月経時に強い痛みを感じやすいです。子宮後屈の場合、月経血がスムーズに排出されず、強い痛みを伴うことがあります。 - 腰痛
子宮が周囲の神経や組織を圧迫することで、腰痛を引き起こします。子宮の位置異常だけでなく、腰痛はさまざまな原因で起こるため、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。 - 排尿障害
子宮が膀胱を圧迫することで、頻尿や尿漏れなどの症状が現れます。子宮前屈や子宮下垂の場合に起こりやすく、日常生活に支障をきたします。 - 便秘
子宮が直腸を圧迫することで、便秘になりやすいです。便秘は、食生活や運動不足なども大きく影響するため、生活習慣の見直しも検討しましょう。 - 性交痛
性交時に子宮が刺激されることで、痛みを感じることがあります。子宮後屈の場合に起こりやすく、パートナーとの関係に影響することもあります。
子宮の位置異常の検査と治療、セルフケアの方法
子宮の位置異常は、自覚症状がない場合も多いですが、生理痛や腰痛、排尿トラブルなど、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。子宮の位置異常の検査方法と治療法、自宅で出来るセルフケアも解説します。
子宮の位置異常の検査方法
子宮の位置異常は、婦人科を受診することで調べられます。検査では、問診で生理痛や性交痛、排尿に関する症状などを聞かれた後に内診を行います。内診では、膣に指を入れて子宮の大きさや形、位置などを確認します。
次に超音波検査を行います。超音波検査では、お腹や膣にプローブをあてて、子宮の位置や形、周囲の臓器との関係などを画像で確認します。検査結果にもとづいて、子宮の位置異常の種類や程度を診断します。
子宮の位置異常の治療法
子宮の位置異常の治療法は、症状の程度や原因、そして妊娠を希望するかどうかに合わせて、医師が適切な方法を判断します。
症状が軽度で妊娠を希望しない場合は、経過観察の場合もあります。症状が重い場合や妊娠を希望する場合は、骨盤底筋を鍛える体操や、子宮の位置を矯正する治療をすることもあります。骨盤底筋体操は、骨盤の底にある筋肉を鍛えることで、子宮を支える力を強化し、症状の改善や予防を目指すものです。
症状が重い場合や他の治療法で効果がない場合は、手術を行うこともあります。手術には、子宮の位置を修正する手術や、子宮を摘出する手術などがあります。
子宮の位置異常を予防・改善するセルフケア
子宮の位置異常を予防・改善するためには、日常生活の中でできるセルフケアも大切です。おすすめのセルフケアを以下で紹介します。
骨盤底筋を鍛える
骨盤底筋を鍛える体操が有効です。骨盤底筋は、子宮や膀胱、直腸などの臓器を支える筋肉なので、鍛えることで子宮の位置を安定させられます。
姿勢を正しく保つ
姿勢を正しく保つことも大切です。猫背などの悪い姿勢は、骨盤の歪みや子宮の位置異常を引き起こす可能性があります。日頃から背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識しましょう。
適度な運動をする
適度な運動も効果的です。運動不足は、骨盤底筋の衰えや血行不良などを招き、子宮の位置異常のリスクを高める可能性があります。ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
食生活を改善する
食生活の改善も大切です。バランスの取れた食事を心がけ、骨盤周りの筋肉や靭帯の働きを助ける栄養素を積極的に摂りましょう。カルシウムやタンパク質、ビタミンDなどがおすすめです。これらの栄養素は、骨や筋肉の健康維持に役立ちます。
他にも、重いものを持つときは注意が必要です。重いものを持ち上げる際は、腰に負担をかけないように、膝を曲げて持ち上げましょう。子宮の位置異常は、適切な治療やセルフケアによって改善できる可能性があります。
まとめ
「子宮」は妊娠すると赤ちゃんが10か月間も過ごす場所になる、命を育むための神秘的な臓器です。子宮は骨盤で囲まれた空間に位置します。子宮は骨盤内で靭帯によって支えられており、妊娠・出産において重要です。しかし、骨盤底筋の衰えや子宮筋腫などにより、子宮の位置異常が起こることがあります。
子宮の位置異常には、後屈、前屈、下垂の3種類があり、月経痛や腰痛、排尿障害などの症状が出ることがあります。子宮の位置異常がある場合は、自宅でもできるセルフケアによって改善することも可能です。
検査は問診や内診、超音波検査で行い、治療は症状や原因、妊娠希望の有無で異なります。一人で悩まずに、まずは医療機関を受信しましょう。
当院では、子宮鏡検査も行っています。どのタイミングで受けるべきか、検査の内容なども解説しているので、ぜひ以下の記事もご覧ください。
>>子宮鏡検査はいつ受ける?検査の内容や痛み、かかる費用を徹底解説
参考文献
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