PMSとPMDDの違いとは?セルフチェックや診断方法、治療法も解説
公開日:2024.09.29更新日:2024.09.29
「生理前になると、些細なことでイライラしたり、気分が落ち込んだりしませんか?」 月経のある女性の約70~80%が、月経前に心身に不調を感じるPMS(月経前症候群)を経験すると言われています。
PMSの中でも精神的な症状が強く、日常生活に大きな影響を及ぼすPMDD(月経前不快気分障害)に悩む方も少なくありません。もしかしたらPMS、PMDDかもしれません。 この記事では、PMSとPMDDの違いやセルフチェックの方法、症状を和らげる治療法や生活習慣の改善策まで詳しく解説します。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、PMSとPMDDにも強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
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PMSとPMDDの違いとは?症状の特徴と原因を解説
PMSとPMDD、どちらも月経前に起こる症状で「どっちなんだろう?」と疑問に思う方もいるかもしれません。PMSは月経前症候群、PMDDは月経前不快気分障害と言い、症状の重さや現れ方に違いがあります。PMSの精神的な症状が特に重い状態をPMDDと呼ぶ、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
それぞれの症状の特徴や原因を解説します。
PMSは月経前に起こる心身の不調
PMSは、月経が始まる約1~2週間前から、心身にさまざまな不調が現れる症状です。PMSで現れる症状はさまざまで、起こる症状の例は以下のとおりです。
身体的症状 | 精神的症状 |
頭痛 | イライラしやすくなる |
乳房の張りや痛み | 気分が落ち込む |
お腹の張り | 集中力の低下 |
便秘や下痢 | 食欲が増す |
眠気や不眠 | 普段より涙もろくなる |
むくみ | 不安感や緊張が高まる |
ニキビ | 普段楽しめていることに対して興味がなくなる |
症状は個人差が大きく、症状の出方も、軽い場合から重い場合までさまざまです。
PMDDは月経前不快気分障害
PMDDは、月経前不快気分障害と言い、PMSよりも「精神症状」が強く現れるのが特徴です。PMSの中でも、特に精神的な症状が重く、日常生活に大きな影響を及ぼす場合に、PMDDと診断されます。
普段ならそこまで落ち込まない出来事でも、必要以上に自分を責めたり、強い不安感や絶望感に襲われたりすることがあります。PMDDは、決して特別な病気ではありません。月経のある女性の約1.8~5.8%がPMDDに該当するとされており「重症のPMS」とみなされていた人たちの割合とほぼ一致しています。
PMDDでは、以下のような症状が現れることがあります。
- 強い不安感やイライラ感
- 気分の浮き沈みが激しくなる
- 怒りっぽくなる
- 自分を責めてしまう
- 興味や喜びを感じにくくなる
- 集中力が低下する
- 食欲の変化(過食や拒食)
- 睡眠障害(過眠や不眠)
- 極度の疲労感
これらの症状は、月経が始まると軽くなったり、消失したりすることが多いですが、中には症状が長引く場合もあります。
PMSとPMDDの原因|共通点と違い
PMSとPMDDの明確な原因はまだ解明されていません。しかし、月経周期における女性ホルモン(*エストロゲンとプロゲステロン)の変動が関わっていると考えられています。
*エストロゲンとプロゲステロンは、脳内の神経伝達物質にも影響を与えます。
PMSは身体的症状と精神的症状の両方が現れますが、PMDDは精神的症状が強く現れるのが特徴です。つらい症状がある場合は、一人で悩まず、医療機関に相談してみましょう。
自分の症状を確かめる|PMSとPMDDのセルフチェック
PMSやPMDDは、放っておくと日常生活に大きな影響を及ぼす可能性もあります。PMSとPMDDは症状が似ていますが、治療法が異なるため、まずはセルフチェックで自分の症状と向き合い、適切な対応をすることが重要です。
PMSの症状チェックリスト|当てはまるほどPMSの可能性が高い
PMSは、月経前症候群とも呼ばれ、生理が始まる約1週間前~数日間に、心身にさまざまな症状が現れることを言います。
PMSで現れやすい身体的症状は以下のとおりです。
- 頭痛や腹痛、腰痛、乳房の張り・痛み
- 便秘や下痢、むくみ
- めまい、立ちくらみ
- 食欲増加や特定の食べ物への渇望
- 眠気や不眠
PMSで現れやすい精神的症状は以下のとおりです。
- イライラしやすくなる
- 気分が落ち込みやすくなる
- 不安を感じやすくなる
- 集中力の低下
- いつもより涙もろくなる
食欲が増していつもよりたくさん食べてしまったり、逆に食欲が落ちてしまったりすることもあります。普段は気にならないようなことにイライラしたり、些細なことで落ち込んでしまったりすることもあります。
月経が始まると自然と軽くなって、症状が消えることが多いです。重要なのは「いつも通りの自分」ではないことに気づくことです。
PMDDの症状チェックリスト|精神的な症状が強く現れる
PMDDは、月経前不快気分障害とも呼ばれ、PMSよりも精神的な症状が強く現れるのが特徴です。PMDDで現れやすい精神的な症状は以下のとおりです。
- 強い抑うつ気分
- 無気力、興味や喜びの喪失
- 激しい怒りやイライラ
- 極度の緊張や不安
- 自我否定感、絶望感
- 自殺願望や自傷行為
これらの症状は、日常生活や仕事、人間関係にまで影響を及ぼすほど深刻な場合があります。出勤するのが困難になったり、家事や育児がおろそかになったり、周囲とのコミュニケーションもつらくなることがあります。
PMDDは「精神症状ばかりが強く出るPMS」ではありません。PMSよりも症状が重く、日常生活に大きな支障をきたす場合は、PMDDの可能性があります。
症状が重い場合は医療機関へ|専門医の診療が受けられる病院の探し方
PMSやPMDDかな?と感じたら、まずは婦人科を受診しましょう。PMSとPMDDは症状が似ていますが治療法が異なるため、自己判断せず、医師の診断を受けることが大切です。
PMDDは、症状が重く日常生活に支障をきたす場合もあるため、適切な治療が必要です。PMDDの治療には、抗うつ薬や低用量ピルなどが処方されることがあります。婦人科を受診する際は、いつ頃からどのような症状があるのかを伝えられるように、メモを用意しておきましょう。
具体的な症状や困っていることを伝えることで、医師はより的確な診断ができます。基礎体温表をつけている場合は、一緒に持参すると診断もスムーズです。
PMS・PMDDの治療法|薬物療法や生活習慣の改善
PMSやPMDDは、適切な治療や生活習慣の改善によって、症状をコントロールし、より快適な生活を送ることは十分可能です。PMS・PMDDで処方される薬や生活習慣の改善について解説します。
PMS・PMDDで処方される薬|低用量ピルや抗うつ薬
PMSやPMDDの治療薬として、低用量ピルや抗うつ薬などが処方されることがあります。処方される薬について、それぞれ紹介します。
低用量ピル
低用量ピルは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンとプロゲステロンを配合した薬です。低用量ピルを服用することで、脳からの排卵の指令を抑え、ホルモンバランスを整えることができます。
「ピル=避妊薬」というイメージが強い方もいるかもしれませんが、PMSやPMDDの症状緩和にも効果が期待できます。低用量ピルの効果は以下のとおりです。
- 月経周期が規則的になる
- 月経痛が軽くなる
- 月経血量が減る
- PMS・PMDDの症状緩和
抗うつ薬
抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きを高めることで、気分の落ち込みやイライラ感を改善します。PMDDの精神的な症状に効果があるとされています。PMSやPMDDの治療に用いられる抗うつ薬は、主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる種類です。
SSRIは、脳内のセロトニンの再吸収を阻害することで、セロトニンの濃度を高め、不安や抑うつなどの精神症状を改善します。抗うつ薬の効果は以下のとおりです。
- 気分の落ち込みの改善
- 不安感や緊張の軽減
- イライラしやすさの改善
- 睡眠障害の改善
- 集中力・意欲の向上
漢方薬
漢方薬は、心と体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで、PMSやPMDDの症状を改善します。患者さんの体質や症状に合わせて、さまざまな種類の漢方薬の中から最適なものが選択されます。漢方薬の効果は以下のとおりです。
- 体全体のバランス調整
- ホルモンバランスの調整
- ストレスへの抵抗力強化
- 自律神経の乱れを整える
薬物療法の注意点
低用量ピルや抗うつ薬などの薬物療法は、効果が高い一方で、副作用が現れる可能性もあります。主な副作用としては、吐き気や頭痛、眠気や体重増加などがあります。副作用が強く現れる場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談してください。
薬の効果や副作用の出方には個人差があります。自分に合った薬を見つけるためには、医師に相談しましょう。
生活習慣の改善|食事や運動で症状を和らげる
薬物療法に加えて、生活習慣の改善もPMSやPMDDの症状緩和に効果的です。
食生活
食生活の乱れは、ホルモンバランスの乱れにつながることがあります。PMSやPMDDの症状を悪化させないために、バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、以下の栄養素がおすすめです。
- ビタミンB6:神経伝達物質の合成に関与し、精神状態を安定させる
- マグネシウム:神経の興奮を抑え、精神を安定させる
- カルシウム:イライラ感を抑え、精神を安定させる
積極的に食事に取り入れるようにしましょう。一方でカフェインやアルコール、塩分は控えるようにしてください。カフェインやアルコールは、利尿作用があり、体内の水分バランスを崩しやすく、PMS・PMDDの症状を悪化させる可能性があります。
塩分の摂りすぎは、むくみの原因となり、PMS・PMDDの症状を悪化させる可能性があります。食事を抜いたり、不規則な時間に食事をしたりすると、血糖値が乱れやすく、PMS・PMDDの症状を悪化させる可能性が高いです。
運動
適度な運動は、ストレス解消効果や血行促進効果があり、PMS・PMDDの症状緩和に役立ちます。軽い運動を習慣的に行いましょう。おすすめの運動の種類は以下のとおりです。
- ウォーキング
- ヨガ
- ストレッチ
- 水泳
運動の頻度は週に3~5回程度、1回あたり30分程度は行いましょう。
睡眠
睡眠不足は、ホルモンバランスを乱し、PMS・PMDDの症状を悪化させる可能性があります。質の高い睡眠を十分に取るように心がけましょう。質の高い睡眠をとるためのポイントは以下のとおりです。
- 毎日決まった時間に寝起きする
- 寝る前にスマホやパソコンの画面を見ない
- 寝る前にリラックスする時間を作る
- 寝室の環境を整える(温度・湿度・照明など)
ストレス
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、PMS・PMDDの症状を悪化させる可能性があります。ストレスを溜め込まないように、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。ストレス解消法の例は以下のとおりです。
- 趣味を楽しむ
- 旅行に行く
- 音楽を聴く
- アロマテラピーをする
- 友人と話す
- ペットと触れ合う
専門機関への相談|一人で悩まず相談できる窓口を活用
PMSやPMDDの症状に悩んでいる場合、一人で抱え込まずに、専門機関に相談することが大切です。「我慢すれば治るはず」と一人で悩み続けると、症状が悪化したり、治療開始が遅れたりする可能性があります。
婦人科では、PMS・PMDDの診断や治療、生活習慣の改善指導などを受けられます。PMSやPMDDは、早期に適切な治療や生活習慣の改善を行えば、症状をコントロールし、快適な生活を送れます。我慢せずに、専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。
まとめ
PMSとPMDDは、どちらも月経前に起こる症状ですが、PMDDはPMSよりも精神的な症状が強く現れるのが特徴です。原因はどちらもはっきりとはわかっていませんが、月経周期における女性ホルモンの変動が関わっていると考えられています。
治療法としては、低用量ピルや抗うつ薬の処方、生活習慣の改善などがあります。PMSやPMDDはよくある症状なので一人で悩まず、症状が重い場合は婦人科を受診して、医師に相談してみましょう。
以下の記事では、PMSについて基礎知識を中心に解説しています。より網羅的に知りたい方はぜひご覧ください。
>>【医師監修】PMSとは?症状や対策など女性に知ってほしい基礎知識を解説
参考文献
- 産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023
- Ma S, Song SJ. Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome. The Cochrane database of systematic reviews 6, no. 6 (2023): CD006586.