
子宮筋腫の日帰り手術とは?費用や当日の流れ、術後の注意点まで解説
公開日:2024.09.29更新日:2025.10.28
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)と診断されて、手術が必要かどうか不安を感じていませんか?多くの女性が経験する子宮筋腫ですが、症状や治療法は人それぞれです。近年では、子宮筋腫の手術は日帰りでも行えるケースが増えています。
この記事では、日帰り手術が可能かどうか費用や当日の流れ、術後の注意点まで具体的に解説します。子宮筋腫と向き合い安心して治療を受けるための情報として、ぜひ最後まで読んでみてください。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、子宮筋腫の診療に強みを持つクリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
子宮筋腫とは子宮の筋肉組織(平滑筋)に発生する良性腫瘍
子宮筋腫とは、子宮の筋肉組織である平滑筋に発生する良性腫瘍です。女性ホルモンの影響を受けると考えられているため、妊娠可能な年齢の女性に多く見られます。30〜40代の女性で見つかることが多く、30代以上の女性のうち約20〜40%に見られるため、珍しい病気ではありません。
良性腫瘍であるため、がんのように他の臓器に転移することはありません。子宮筋腫の大きさや発生する位置によって月経の異常や痛みなどの症状を引き起こす可能性があります。
子宮筋腫の原因
子宮筋腫の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。女性ホルモンの1つであるエストロゲンが、子宮筋腫の発生や成長に深く関わっていると考えられています。思春期前に子宮筋腫が見つかることはほとんどなく、閉経後には縮小することが多いためです。
エストロゲンは、子宮内膜を増殖させる働きがありますが、子宮筋腫の細胞にも作用し、筋腫を大きくしてしまうと考えられます。
子宮筋腫の原因やピルとの関係について、詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
子宮筋腫の症状
子宮筋腫の症状は、筋腫の大きさや位置によって異なり、自覚症状がない場合も多くあります。筋腫が小さい場合は、症状が現れにくい傾向があります。子宮筋腫は、月経や周囲の臓器に影響を及ぼし、さまざまな症状を引き起こします。
下記の症状がある場合は子宮筋腫の可能性があります。
- 月経時の過多出血:レバー状の血の塊が出る、月経が10日以上続く
- 生理痛の増強:以前より痛みが強くなった、鎮痛薬が効きにくい
- 下腹部の張りや痛み
- 頻尿や便秘
- 不妊や流産のリスク増加
以上の症状がある場合は、我慢せずに婦人科を受診し、適切な診断を受けることが大切です。
子宮筋腫の検査方法
子宮筋腫の診断には、いくつかの検査を組み合わせて行い、筋腫の有無や状態を正確に把握します。筋腫の大きさ、個数、位置によって治療法が変わるため、詳しい検査が必要です。複数の検査を組み合わせることで、より正確な診断と適切な治療計画を立てることができます。主な検査方法には以下があります。
- 内診:医師が手で子宮の形や大きさを確認する
- 超音波検査:経腹的または経腟的に行い、筋腫の位置や大きさを確認する
- MRI検査:より詳細な画像で、筋腫の正確な位置や数、周囲の組織との関係を把握する
- 子宮鏡検査:子宮内腔の状態を直接観察する
早期発見と適切な治療により、症状の軽減や将来的なリスクの低減が可能です。気になる症状がある場合は、躊躇せずに婦人科を受診することをおすすめします。
子宮筋腫の治療法
子宮筋腫の治療法として、以下の2つを紹介します。
- 手術療法
- 薬物療法
手術療法
子宮筋腫の手術療法には、以下の2種類があります。
- 子宮を残す手術(子宮筋腫摘出術)
- 子宮を摘出する手術(子宮全摘術)
子宮を残す「子宮筋腫摘出術」は、筋腫だけを取り除く手術です。腹腔鏡下手術ではお腹に小さな穴を開けてカメラを使いながら筋腫を摘出し、傷が小さく回復も早いのが特徴です。
子宮鏡下手術は子宮の中に細いカメラを入れて筋腫を切除するため、お腹を切らずに行うことができます。妊娠を希望する方に向いていますが、再発の可能性がある点に注意が必要です。
子宮をすべて取る「子宮全摘術」は、再発リスクが低く、根本的な治療につながる方法です。お腹を切る腹式手術、腟から摘出する腟式手術、小さな穴を開けて行う腹腔鏡下手術などがあり、筋腫の大きさや位置に応じて選ばれます。妊娠はできなくなりますが、症状の改善が期待できます。
薬物療法
薬物療法は、手術を避けたい場合や手術前の筋腫縮小を目的として行われます。主な薬物療法は以下のとおりです。
- GnRHアゴニスト療法(偽閉経療法):一時的に閉経状態を作り出し、筋腫を縮小させる
- 低用量ピル:排卵を抑制し、月経量を減少させる
- 子宮内黄体ホルモン放出システム:子宮内に装着する器具で、筋腫の増大を抑制し症状を改善する
薬物療法のメリットは、以下のとおりです。
- 手術をせずに症状を改善できる
- 日常生活への影響が少ない
- 手術前に筋腫を小さくすることで、手術の負担を軽減できる
薬物療法のデメリットは、以下のとおりです。
- 筋腫を完全になくすことはできない
- 治療をやめると筋腫が再び大きくなることがある
- 更年期様症状(ほてり、発汗など)が現れることがある
- 長期間使用できる薬は限られている
薬物療法は症状の程度や年齢、今後の妊娠希望などを考慮して、医師と相談しながら選択します。
子宮筋腫の日帰り手術|費用・流れ・術後
子宮筋腫の日帰り手術について、以下の3つを解説します。
- 日帰り手術が可能なケース
- 日帰り手術の流れ
- 手術費用と保険適用
日帰り手術が可能なケース
子宮筋腫の日帰り手術は、患者さんの体への負担を軽減できる一方で、だれでも受けられるわけではありません。日帰り手術が可能かどうかは、筋腫の大きさや場所、患者さんの全身状態によって総合的に判断されます。下記が一般的な適応条件です。
- 筋腫の大きさが比較的小さい(一般的に5cm未満)
- 筋腫の数が少ない(3個以下が目安)
- 患者さんの全身状態が良好
- 重大な合併症がない
日帰り手術の流れ
子宮筋腫の日帰り手術を受けることが決まったら、どのような流れで当日を迎えるのか、具体的な流れは、以下のとおりです。
まずは事前に、術前検査と説明が行われます。
- 血液検査や心電図、胸部X線などの一般的な術前検査
- 医師による手術方法やリスク、術後の注意点の説明
手術当日の流れは以下のとおりです。
- 来院・手続き
- 手術前準備(着替え、点滴など)
- 手術(通常30分~2時間程度)
- 術後回復(麻酔からの覚醒、バイタルチェック)
- 帰宅(問題がなければ当日帰宅可能)
術後には以下のようなフォローアップもあります。
- 1〜2週間後の外来受診
- 傷の経過確認、体調チェック
手術費用と保険適用
子宮筋腫の日帰り手術は健康保険が適用されます。3割負担の場合、自己負担額の目安は以下のとおりです。
- 子宮鏡下手術:5~10万円
- 腹腔鏡下手術:10~20万円
使用する医療材料や入院の有無によって費用は変動します。高額療養費制度を利用することで、負担を軽減できる可能性があります。
術後の注意点
術後の注意点について、以下の3つを解説します。
- 日常生活への復帰時期
- 仕事復帰の目安
- 術後に避けるべき行動
日常生活への復帰時期
手術の方法によって異なりますが、約1〜4週間で軽い日常生活に戻ることができます。腹腔鏡手術は傷が小さく回復が早いですが、開腹手術は傷が大きいため、より長い回復期間が必要です。個人の体力や手術の内容によっても回復速度は異なります。
腹腔鏡での日帰り手術の場合、翌日から軽い家事や散歩は可能ですが、掃除機をかけるなどの動作は1週間程度待ちましょう。開腹手術の場合は、退院後も2週間程度は家でゆっくり過ごし、買い物などの外出は体調を見ながら少しずつ始めます。
日常生活への復帰は、体の回復状況を見ながら、無理のないペースで進めていきましょう。
仕事復帰の目安
デスクワークなら1〜2週間、体を使う仕事なら4〜6週間程度の休業が目安です。仕事の内容によって体への負担が大きく異なるため、復帰時期も変わります。デスクワークは比較的早く復帰できますが、立ち仕事や重いものを持つ仕事は、傷がしっかり治るまで待つ必要があります。
事務職の方は、腹腔鏡手術なら術後1週間程度で仕事に戻れることが多いですが、最初は短時間勤務から始めましょう。看護師や介護職など体を使う仕事の方は、開腹手術の場合は6週間程度の休業が必要になることもあります。職場との相談も含め、無理のない復帰計画を立てることが大切です。
術後に避けるべき行動
手術後は、重いものを持つ、激しい運動、長時間の入浴など、傷に負担がかかる行動を避ける必要があります。傷が完全に治る前に無理をすると、傷が開いたり出血したり、痛みが長引く可能性があります。感染症のリスクも高まります。
術後4〜6週間は、5㎏以上の重いものを持たない、腹筋を使う運動は控える、長時間の入浴は避ける(シャワーは許可が出てから)、自転車や車の運転は医師の許可が出てから、などの制限があります。これらの制限は、安全に回復するための大切なルールですので守りましょう。
子宮筋腫の日帰り手術でよくある質問
子宮筋腫の日帰り手術について、よくある質問として以下の4つを解説します。
- 日帰り手術でも保険は使える?
- 手術後、筋腫が再発することはある?
- 手術の痛みはどのくらい続く?
- 手術後の性生活はいつから可能?
日帰り手術でも保険は使える?
日帰り手術でも健康保険が適用されます。子宮筋腫の手術は、入院の有無にかかわらず、医学的に必要と判断された治療であれば健康保険の対象となります。日帰りか入院かは手術の方法や筋腫の状態によって決まりますが、どちらも同じように保険が使えます。
筋腫摘出術を日帰りで受けた場合、3割負担の方で自己負担額は約5~20万円となることが多いです。医療費が高額になった場合は、高額療養費制度を利用することで、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。所得に応じて自己負担の上限額が決まっているため、実際の負担額はさらに軽減されます。
日帰り手術でも保険適用されますので、費用面での心配は少なくなります。
手術後、筋腫が再発することはある?
子宮筋腫摘出術では、再発する可能性があります。手術では目に見える筋腫を取り除きますが、子宮の筋肉層には顕微鏡でしか見えないような小さな筋腫が残っていることがあります。手術後に新たな筋腫が発生することもあります。これらが時間をかけて大きくなると、再発として認識されます。
すべての方に再発が起こるわけではなく、再発率は手術の方法や筋腫の数、年齢などによって異なります。特に若い年齢で手術を受けた方や、もともと複数の筋腫があった方は、再発の可能性がやや高くなります。閉経が近い年齢で手術を受けた場合は、閉経後に女性ホルモンの分泌が減るため、再発のリスクは低くなります。
再発の可能性はありますが、定期的な検診で早期に発見し対応することができます。
手術の痛みはどのくらい続く?
手術の方法によって異なりますが、強い痛みは数日〜1週間程度で治まります。腹腔鏡手術は傷が小さいため、痛みが比較的軽く回復も早い傾向があります。開腹手術は傷が大きいため、痛みが強く長く続くことがあります。個人の痛みの感じ方や体質によっても差があります。
腹腔鏡手術の場合、手術直後〜翌日までは痛み止めの点滴や注射が必要なことが多いですが、2〜3日後には飲み薬の痛み止めで対応できるようになります。1週間もすれば日常生活の中で痛みを感じることは少なくなります。開腹手術の場合は、強い痛みが1週間程度続き、完全に痛みがなくなるまでに2〜4週間かかることもあります。
傷の部分に突っ張るような感じや違和感は、数か月残ることもあります。痛みは徐々に軽減しますので、痛み止めを適切に使いながら回復を待ちましょう。
手術後の性生活はいつから可能?
通常、術後4〜6週間は控え、医師の許可が出てから再開することが推奨されます。手術後は子宮や腟に傷があり、出血が続いていることもあります。性生活を早期に再開すると、傷が開いたり、感染症を起こしたりするリスクがあります。傷がしっかり治り出血が完全に止まってから再開することが、安全な回復のために重要です。
術後の診察で、医師が内診やエコー検査で傷の治り具合を確認し、問題がないことを確認してから許可が出ます。再開後も、痛みや出血があれば無理をせず、すぐに医師に相談してください。自己判断せず、必ず担当医の許可を得てから再開することが大切です。
子宮筋腫と診断された際の性生活や、手術前の日常生活で注意すべき点について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
>>子宮筋腫と診断されたらやってはいけないこと|性行為の影響も丁寧に解説
まとめ
子宮筋腫の日帰り手術について、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 適応条件:筋腫の大きさ、場所、患者さんの全身状態により判断
- 費用:健康保険適用、自己負担額は5~20万円程度
- 手術の流れ:術前検査、医師の説明、当日の手術、術後経過観察
- 術後の注意点:無理をせず、医師の指示に従ったうえでの日常生活
日帰り手術は体への負担が少なく、早期の社会復帰が可能です。ただし、個々の状況に応じて最適な治療法を選択することが重要です。医師とよく相談し、安心して治療に臨みましょう。
子宮筋腫は女性ホルモンの変化も大きく関わっています。ピルや性行為との関係についても解説しているのでぜひご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
参考文献
厚生労働省:「女性特有の疾病等が就労に及ぼす影響及びその治療と就労の両立に関する調査研究(平成28年度)」