着床しなかった時の症状、体の変化とは?妊娠失敗のサインを解説
公開日:2024.12.25更新日:2024.12.25
妊娠を望む方にとって、着床は待ち焦がれる瞬間です。しかし、着床までの道のりは必ずしもスムーズとは限りません。実は、受精卵が子宮内膜に着床する奇跡は、さまざまな要因が複雑に絡み合った、とてもデリケートなプロセスです。
着床しなかった時に現れる体の変化やサイン、原因を医学的根拠にもとづきながら詳しく解説します。月経の再開や基礎体温の変化、おりものの様子など見逃しがちなサインを見つけるヒントがわかります。
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着床しなかった時の体の変化とサイン5選
着床しなかった時の体の変化は、以下の5つから推測できます。
- 月経の再開
- 基礎体温の高温期短縮
- おりものの量や色の変化
- 妊娠検査薬の陰性反応
- ホルモンバランスの変化による症状
見逃しやすいサインもあるので、ぜひ参考にしてください。
月経の再開
着床しなかった場合、最もはっきりとしたサインは月経(生理)の再開です。受精卵が子宮内膜に着床できなかったため、妊娠が成立しなかったことを意味します。
通常、生理予定日から1~2週間後に出血が始まります。厚みを増して受精卵を迎える準備をしていた子宮内膜が、妊娠が成立しなかったことで剥がれ落ち、体外に排出される現象です。出血量や生理痛はいつもと同じ場合もあれば、いつもより重かったり、レバー状の血の塊が出たりする場合もあります。
症状は個人差が大きく、着床しなかった時だけでなく、ストレスや生活習慣の変化、他の婦人科系の疾患などによっても起こりうることなので、出血の程度や性状だけで着床の成否を判断することはできません。
基礎体温の高温期短縮
基礎体温は、着床の有無を推測するうえで重要な手がかりとなります。通常、排卵後から月経開始までは高温期が続きます。妊娠の維持に必要な黄体ホルモンが分泌されるためです。
着床しなかった場合は、黄体ホルモンの分泌が持続せず、高温期が約12~14日で終わり、低温期に移行します。高温期がいつもより短くなったら、着床しなかった可能性が高いと言えます。
普段の高温期が14日間ある方が、10日間で低温期に移行した場合、着床しなかった可能性が考えられます。基礎体温の変化も個人差があり、ストレスや睡眠不足などによっても影響を受けるため、一概には言えません。しかし、普段から基礎体温を記録しておき、自分の高温期の長さを把握しておくことは、自分の体のリズムを知るうえでとても大切です。
おりものの量や色の変化
おりものの変化も、着床しなかったサインの一つとして考えられます。妊娠が成立した場合、おりものの量が増えたり、色が変化したりすることがありますが、妊娠を維持するために子宮頸部から分泌される粘液が増加するためです。
着床しなかった場合は、おりものの変化は見られず、通常の月経前と同じようにおりものが減少していくことが多いです。ただし、おりものの変化も個人差が大きく、感染症など他の原因でも変化することがあるので、おりものの量や色の変化だけで着床の成否を判断するのは難しいです。
妊娠検査薬の陰性反応
妊娠検査薬は、尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを検出することで妊娠の有無を判定します。着床が成功すると、胎盤からhCGが分泌されるため、妊娠検査薬で陽性反応が出ます。
着床しなかった場合はhCGが分泌されないため、陰性反応となります。妊娠検査薬を使用する時期は、生理予定日の1週間後以降が推奨されています。着床からhCGが検出できるレベルに上昇するまでに時間がかかるためです。妊娠検査薬は、正しく使用すれば高い精度で妊娠の有無を判定できます。生理予定日直後など、検査時期が早すぎると正確な結果が得られない場合があるので、注意が必要です。
ホルモンバランスの変化による症状
着床しなかった場合、ホルモンバランス、特にプロゲステロン(黄体ホルモン)の減少によって、頭痛や倦怠感、軽い腹痛やイライラなどの症状が現れることがあります。月経前症候群(PMS)の症状と似ているため、着床しなかったサインと断定することは難しいです。
生理前にいつも頭痛がする方は、着床しなかった場合でも同じように頭痛が起こる可能性があります。症状は個人差が大きく、PMSの症状と区別が難しい場合も多いので、あまり気にしすぎないようにしましょう。あまりにも症状が強い場合や、いつもと違う症状が現れた場合は、医療機関への相談も検討してみてください。
着床しない原因
着床しない原因として考えられるのは以下のとおりです。
- 子宮内膜の状態
- 受精卵の質|染色体異常、発育不全など
- 着床障害などの免疫学的要因
- その他の要因|ストレス、生活習慣、年齢など
子宮内膜の状態
子宮内膜は、受精卵にとって最初のゆりかごです。ゆりかごが、ふかふかのベッドのように厚く、柔らかく、栄養豊富でなければ、受精卵はうまく根を張ることができません。子宮内膜の厚さは、月経周期とともに変化し、排卵期に最も厚くなります。理想的な厚さは10mm以上と言われていますが、薄すぎると着床が難しくなります。
子宮内膜が薄くなる原因はさまざまですが、ホルモンバランスの乱れ以外にも、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることもあります。近年では、子宮内膜の細菌バランスの異常も着床の妨げとなることがわかってきています。子宮内の細菌のバランスが崩れると、炎症性物質が増加し、成長因子が減少することで、着床しにくい環境が作られてしまいます。
受精卵の質|染色体異常、発育不全など
どんなに子宮内膜の状態が良くても、受精卵の質が低ければ妊娠は成立しません。受精卵の質は、卵子と精子の質、そして受精卵自身の発育状態によって決まります。受精卵に染色体異常があると、着床が難しく着床しても流産のリスクが高まります。染色体異常は、卵子や精子の老化とともに増加する傾向です。
受精卵の発育不全も着床失敗の原因です。卵子の老化や精子の運動率の低下は、受精卵の質に直接影響します。高齢出産を希望する患者さんの場合、卵子の老化によって染色体異常のリスクが高まるため、より綿密な検査と適切な治療が必要になります。
着床障害などの免疫学的要因
私たちの体は、外部から侵入してきた異物から身を守る免疫システムを備えています。受精卵は、母親にとっては半分が父親由来の遺伝子を持つ「異物」です。通常、妊娠時には免疫システムが抑制され、受精卵が排除されるのを防ぎます。しかし、免疫寛容がうまく機能しないと、免疫細胞が受精卵を排除するように働く場合があり、着床障害が起きてしまうことがあります。
着床障害に関わる免疫細胞として、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)などが知られています。免疫細胞は、通常は体を守る役割を果たしていますが、過剰に活性化すると免疫細胞が受精卵を排除するように働く場合があります。
その他の要因|ストレス、生活習慣、年齢など
着床には、さまざまな要因が影響します。ストレスはホルモンバランスを乱し、子宮内膜の状態を悪化させる可能性があります。喫煙や過度な飲酒、睡眠不足、栄養バランスの偏った食生活などは、卵子や精子の質を低下させ、着床を阻害する可能性があります。年齢も無視できない要因です。女性の年齢が上がるにつれて、卵子の質が低下し、染色体異常の確率も高くなるため、着床率が低下します。
ストレスや生活習慣、年齢などの要因は単独ではなく、複雑に絡み合って着床に影響を与えます。原因を特定し、適切な対策を立てることが重要です。妊娠を望んでいるにもかかわらず、なかなか授からない場合は、専門医に相談し、必要な検査や治療を受けてください。
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着床しなかった場合の対処法
着床しなかった場合の対処法は以下のとおりです。
- 生活習慣の改善|栄養バランス、運動、ストレス管理
- 基礎体温の記録と活用|排卵日の特定と着床のタイミング
- 専門医への相談|不妊治療の検討と適切な検査
- 精神的なケア|不安やストレスへの対処法
大切なのは、気持ちを前向きに切り替え、未来への希望を持つことです。まずはご自身の心と体を労わり、次のステップに向けて準備を始めましょう。
生活習慣の改善|栄養バランス、運動、ストレス管理
着床しやすい体づくりは、妊娠への第一歩です。バランスの取れた食事、適度な運動、そしてストレス管理が重要になります。
毎日の食事を見直してみましょう。朝食がパン1枚だけだった方は、野菜や果物、ヨーグルトなどを加えて栄養バランスを整えてみてください。コンビニで手軽に買えるサラダチキンやゆで卵も、タンパク質補給に役立ちます。鉄分や葉酸など、妊娠に不可欠な栄養素を意識的に摂ることも大切です。外食が多い方は、自炊の回数を増やし、栄養バランスをコントロールできるように心がけましょう。
適度な運動も、血行促進やホルモンバランスの調整に効果的です。ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられるものを選び、週に数回、1日30分程度行うだけでも良いです。激しい運動はかえって逆効果になる場合があるので、避けましょう。
ストレスは、心身に悪影響を及ぼすだけでなく、妊娠にも悪影響を与える可能性があります。ストレスをため込まないよう、リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむ、友人や家族と話すなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたりするのもおすすめです。
妊娠したいと考えている方は、普段からの食事や飲酒についても気をつける必要があります。以下では、妊活中に注意すべき食べ物やアルコール摂取に関して記載しているのでチェックしてみてください。
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基礎体温の記録と活用|排卵日の特定と着床のタイミング
基礎体温を毎日記録することは、自分の体のリズムを理解し、妊娠しやすい時期を把握するうえで役立ちます。基礎体温計はドラッグストアなどで手軽に購入できます。毎朝、目が覚めたらすぐに舌の下で体温を測り、記録しましょう。
基礎体温は、低温期と高温期の二相にわかれています。低温期は生理が始まる時期で、体温が比較的低くなります。排卵が起こると、黄体ホルモンの分泌によって体温が上昇し、高温期に入ります。高温期が12~14日続いた後に体温が下がった場合、着床に至らなかった可能性があると考えられます。
基礎体温表は、婦人科を受診する際にも重要な情報となるので、記録しておきましょう。過去の基礎体温表を分析することで、排卵日が予測できるようになり、妊娠に向けて自身の身体を理解する助けになります。
専門医への相談|不妊治療の検討と適切な検査
何度か妊娠を試みても着床しない場合、「反復着床不成功(RIF)」と呼ばれる状態の可能性があります。RIFは体外受精において複数の胚移植後も着床しない症状で、不妊治療を受けている方の約10%に影響します。原因は多岐にわたり、免疫学的要因、血栓症傾向、子宮内膜の受容能、子宮内膜の微生物叢の異常、解剖学的異常、男性側の要因、胚の染色体異常などが考えられます。
不妊治療専門クリニックを受診することで、子宮内膜の厚さやホルモンバランス、免疫状態など、さまざまな検査を受けることができます。検査結果にもとづいて、適切な治療法を提案してもらえます。子宮内膜が薄い場合は、ホルモン補充療法や子宮内膜を厚くする薬が処方されることがあります。免疫異常が原因の場合は、免疫抑制剤を用いた治療が行われることもあります。
精神的なケア|不安やストレスへの対処法
着床しなかった経験は、大きな精神的負担となります。妊娠へのプレッシャーや不安、周囲からのプレッシャーなど、さまざまなストレスを感じていることも多いです。まずは、パートナーや家族、信頼できる友人に話を聞いてもらい、気持ちを共有することで、心が軽くなることもあります。
不妊治療専門クリニックでは、カウンセリングを受けることも可能です。専門のカウンセラーが、あなたの気持ちに寄り添い、適切なアドバイスをくれます。地域の保健センターや自治体でも、不妊に関する相談窓口を設けている場合があるので、積極的に利用してみましょう。
焦らず、ご自身のペースで、妊娠に向けて進んでいきましょう。
まとめ
着床しなかった場合、以下の症状が現れることが多いです。
- 生理の再開
- 基礎体温の高温期短縮
- おりものの変化
- 妊娠検査薬の陰性反応
- ホルモンバランスの変化による症状
症状は個人差が大きく、他の要因でも起こりうるため、必ずしも着床しなかったと断定できるものではありません。
着床しない原因は、子宮内膜の状態、受精卵の質、免疫学的要因、そして生活習慣や年齢など、多岐にわたり、さまざまな要因が複雑に絡み合い、着床を阻害している可能性があります。着床しなかった場合は、まず生活習慣の改善から始めてみましょう。
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参考文献
Ma J, Gao W, Li D. Recurrent implantation failure: A comprehensive summary from etiology to treatment. Frontiers in endocrinology 13, (2022): 1061766.