
生理前の貧血症状はなぜ起こる?鉄分不足を防ぐ生活習慣のポイントを紹介
公開日:2025.05.18更新日:2025.05.30
生理前に、貧血に似ただるさや立ちくらみ、頭痛やめまいに悩まされていませんか? だるさなどの症状に悩む女性は多いです。生理前のホルモンバランスの変化が大きく関係しています。 本記事では、生理前に現れる貧血に似た症状の原因を解説します。鉄分不足を防ぐための生活習慣改善のポイントを5つと医療機関への受診目安も解説していきます。
当記事を読むことで、生理前の不調を軽減し快適に過ごすことが期待できます。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、生理の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
生理前に貧血のような症状が出る原因
生理前に貧血に似た症状が現れる原因は複雑で、主に以下の4つの要素が関係しています。
- ホルモンバランスの変化
- 血液量の増加
- 鉄分の需要増加
- 月経前症候群(PMS)との関連
ホルモンバランスの変化
生理周期に伴うホルモンバランスの変化は、貧血に似た症状を引き起こす要因の一つです。生理前は、妊娠の準備のために子宮内膜を厚くするプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増加します。プロゲステロンの作用について、以下の順に挙げられます。
- 体内に水分や塩分を貯留する作用がある
- 血液中の水分量が増え、血液が薄まった状態になる
- 赤血球の濃度が相対的に低下し、ヘモグロビン濃度も低くなる
ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割があるため、酸素供給が滞り、貧血に似た症状が現れます。プロゲステロンは血管を拡張させる作用があります。血管が拡張すると、血圧低下や立ちくらみ、めまいといった症状が現れやすいです。いずれも貧血の症状と似ているため、貧血と勘違いされることもあります。
当院では、子宮鏡検査も行っています。どのタイミングで受けるべきか、検査の内容なども解説しているので、ぜひ以下の記事もご覧ください。
>>子宮鏡検査はいつ受ける?検査の内容や痛み、かかる費用を徹底解説
血液量の増加
生理前は次の生理に備えて子宮内膜が厚くなります。子宮内膜を構築するために、体内の血液量も増加します。血液量が増えることは一見良く思えますが、血液中の赤血球の割合が薄まります。相対的に貧血の状態になりやすいのです。
一時的なものなので心配する必要はありません。しかし、めまいや立ちくらみがひどい場合は、横になる、水分を摂るなどして安静にするようにしてください。
鉄分の需要増加
生理中は経血として血液が体外に排出されます。血液中には鉄分が含まれているため、生理のたびに鉄分も失われてしまうのです。1回の生理で失われる鉄分の量は約20~30mgとされています。体は次の生理に備えて、あらかじめ鉄分を蓄えようとするため生理前には鉄分の需要が増加するのです。
普段から鉄分が不足していると、生理前に鉄分が足りなくなり、貧血に似た症状が現れる可能性があります。普段の食生活で意識的に鉄分を摂取することが重要です。鉄分を多く含む食品として、以下が挙げられます。
- レバー
- 赤身の肉
- 魚介類
- 海藻類
- ほうれん草
- 小松菜
バランスの良い食事を心がけ、不足しがちな鉄分を補うようにしましょう。
月経前症候群(PMS)との関連
月経前症候群(PMS)とは、生理の3~10日前に起こる心身の不調のことで、精神的な症状と身体的な症状があります。精神的な症状としては、以下が挙げられます。
- イライラ
- 怒りっぽい
- 情緒不安定
- 憂鬱
- 集中力の低下
身体的な症状としては、以下が挙げられます。
- 腹痛
- 頭痛
- 腰痛
- むくみ
- 乳房の張り
- 便秘
- 肌荒れ
- 過食
PMSの症状の中には、貧血に似た症状も含まれています。PMSの原因もホルモンバランスの変化が関係していると考えられています。生理前はホルモンバランスの乱れにより自律神経が不安定になり、PMSの症状が出やすい時期でもあります。
複数の臨床研究によれば、20~30代の女性の約70~80%がPMSを経験していると報告されていますが、症状の程度や現れ方には個人差があります。PMSの症状が重い場合は、日常生活に支障をきたすこともあります。症状がつらい場合は、婦人科を受診して相談するようにしてください。
PMSでは「眠気」に悩まされる女性も少なくありません。以下の記事では、PMSによる眠気の原因とその対処法について、専門医の視点から詳しく解説していますので、同じような悩みを抱えている方はぜひご覧ください。
>>PMSによる眠気に悩む女性必見!原因と解消法を専門医が解説
鉄分不足を防ぐ生活習慣5選
鉄分不足を防ぎ、生理前の不調を軽減する5つのポイントとして以下の内容を解説します。
- 食生活での鉄分摂取
- 鉄分の吸収を助ける栄養素の摂取
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- ストレスマネジメント
食生活での鉄分摂取
毎日の食事で意識的に鉄分を摂ることは、貧血予防の基本です。鉄分には、吸収率の高い「ヘム鉄」と、吸収率の低い「非ヘム鉄」の2種類があります。2種類の鉄分の違いを理解し、バランス良く摂取することで、効率的に鉄分を補給できます。ヘム鉄が多く含まれている食材は、以下のとおりです。
- レバー
- 赤身の肉
- 魚介類(カツオやマグロなど)
週に数回は食べるように心がけましょう。例えば、カツオの刺身100gで、成人女性の1日に必要な鉄分の約半分を摂取できると言われています。非ヘム鉄が多く含まれている食材は、以下のとおりです。
- ほうれん草
- 小松菜
- ひじき
- 大豆製品
非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率がアップします。ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける、ひじきの煮物にピーマンを添えるなどの工夫で、効率良く鉄分を吸収できます。鉄分は体内で作り出せないため、食品から摂取する必要があります。
毎日の献立に、ヘム鉄と非ヘム鉄を含む食品をバランス良く取り入れることを意識してみましょう。
鉄分の吸収を助ける栄養素の摂取
鉄分を効率的に吸収するためには、鉄分と一緒にビタミンCを摂ることがおすすめです。ビタミンCは、非ヘム鉄を吸収しやすい形に変えてくれる働きがあります。栄養学の研究によれば、ビタミンCを多く含む食品と組み合わせることで、非ヘム鉄の吸収率が高まる可能性があります。
吸収率が約1.5~3倍向上したという報告もあります。ビタミンCを豊富に含むものは、以下のとおりです。
- 果物:キウイフルーツ、いちご、オレンジ
- 野菜:ブロッコリー、ピーマン、パプリカ
小さな工夫で鉄分の吸収率を高め、貧血予防につなげましょう。
適度な運動
適度な運動は血液の循環を促進し、全身への酸素供給をサポートする効果が期待できます。ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなど、無理なく続けられる運動を習慣に取り入れましょう。週に2~3回、20分程度の有酸素運動がおすすめです。運動は鉄分の吸収や利用を促進する効果も期待できます。
研究によれば、適度な運動によって体内でエリスロポエチンというホルモンの分泌が促される可能性があります。エリスロポエチンは、骨髄での赤血球の産生を促す働きがあるため、貧血予防が期待できます。自分に合った運動を続けることが大切です。日常生活の中で、階段を使う、一駅分歩くなど、手軽に体を動かすことから始めましょう。
十分な睡眠
睡眠不足はホルモンバランスを崩し、自律神経の働きを乱す原因となります。毎日7時間程度の睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを心がけましょう。睡眠に関わる成長ホルモンとフェリチンの役割は、以下のとおりです。
- 成長ホルモン:赤血球の生成に必要なタンパク質の合成
- フェリチン:鉄分の貯蔵庫
質の良い睡眠を十分にとることで、成長ホルモンの分泌が促されます。成長ホルモンはフェリチンの合成に関わるため、良質な睡眠は鉄分の貯蔵にも役立ちます。
ストレスマネジメント
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、貧血症状を悪化させる原因となることがあります。ストレスを感じると、交感神経が優位になり、血管が収縮しやすくなると言われています。自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。具体的なストレス解消法については、以下のとおりです。
- リラックスできる音楽を聴く
- 好きな香りのアロマを焚く
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
- 趣味に没頭する
- 友人や家族と楽しい時間を過ごす
日常の中で、意識的にリラックスできる時間を取り入れることが、ストレスマネジメントの第一歩です。ストレスを軽減することで、自律神経のバランスを整え、貧血の予防・改善につなげることができます。
病院を受診する目安
病院を受診する目安は以下のとおりです。
- 軽い運動で息が切れる
- 食事での鉄分摂取で改善されない
- めまいがある
日常生活に支障が出るほどつらい場合は、我慢せずに医療機関への受診をおすすめします。
軽い運動で息が切れる
階段の上り下りや早歩きで息苦しくなる、動悸がするといった症状は、体内の酸素供給が不足している可能性があります。生理前は、プロゲステロンの影響で赤血球濃度が低下するので酸素供給が滞り、息切れや動悸などの症状が現れやすくなります。
子宮内膜が厚くなる時期でもあるため、鉄分の需要が増加します。鉄分はヘモグロビンを作るのに不可欠な栄養素であるため、鉄分が不足すると貧血が悪化し、息切れや動悸といった症状が顕著になる可能性があります。
食事での鉄分摂取で改善されない
食生活の改善を1か月以上続けても症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。自己判断でサプリメントなどで鉄分を過剰摂取すると、吐き気や便秘などの副作用が現れることもあるため、医師の指導のもとで適切な治療を受けることが重要です。
めまいがある
めまいは、貧血でよく見られる症状の一つです。生理前は、ホルモンバランスの変化や血液量の増加によってめまいが起こりやすくなります。貧血の場合、以下の症状が現れます。
- 立ちくらみ
- ふらつく
- 目の前が暗くなる
- 物が二重に見える
めまいが起こる主な流れは以下のとおりです。
- 生理前は黄体ホルモンの分泌が増加する
- 血管が拡張し、血圧が低下しやすくなる
- 脳への血流が一時的に減少しめまいが生じやすくなる
黄体ホルモンには血管を拡張させる作用があります。血管の拡張作用が血圧低下や脳血流の変動を引き起こし、立ちくらみやふらつき、めまいといった症状が現れることがあります。
まとめ
生理前はホルモンバランスの変化や鉄分の需要増加など、さまざまな要因が重なって貧血に似た症状が現れやすい時期です。めまいや立ちくらみだけでなく、イライラや気分の落ち込みなど、精神的な症状が現れる方もいます。ポイントは、バランスの良い食生活と質の良い睡眠、そして適度な運動です。
鉄分を多く含む食品を意識的に摂り、ビタミンCと組み合わせることで鉄分の吸収を促す可能性があります。リラックスできる時間を作ることも大切です。症状が重い場合や生活に支障が出る場合は、我慢せずに婦人科に相談してみましょう。専門家のアドバイスを受けることで、生理期間をより快適に過ごせる可能性があります。
生理前後の体調不良だけでなく、生理周期自体が乱れている場合も注意が必要です。以下の記事では、生理不順の主な原因や改善方法、放置することで起こりうるリスク、そして受診の目安について詳しく解説しています。
>>生理不順の原因と治し方とは?放置してはいけない理由や受診の目安も解説
参考文献
- Rod J Azadan, Nadia H Agha, Hawley E Kunz, Forrest L Baker, Preteesh L Mylabathula, Tracy A Ledoux, Daniel P O’Connor, Charles R Pedlar, Richard J Simpson. The effects of normoxic endurance exercise on erythropoietin (EPO) production and the impact of selective β1 and non-selective β1 + β2 adrenergic receptor blockade. Eur J Appl Physiol, 2021, 121, 5, p.1499-1511
- J D Cook, M B Reddy. Effect of ascorbic acid intake on nonheme-iron absorption from a complete diet. Am J Clin Nutr, 2001, 73, 1, p.93-98
- 日本産婦人科学会:月経前症候群(令和7年)