【医師監修】PMSとは?症状や対策など女性に知ってほしい基礎知識を解説
公開日:2024.08.29更新日:2024.08.29
生理前に感じる体の不調やイライラ、気分の落ち込みは「PMS(月経前症候群)」かもしれません。PMSは、女性ホルモンのバランスが乱れることで起こる、心身の不調です。日本産科婦人科学会によると、女性の約8~9割がPMSの症状を経験しています。
この記事ではPMSの定義や症状、原因や診断方法、治療法を医師監修のもと詳しく解説します。自分の症状と照らし合わせながら、ぜひ参考にしてください。
PMSの定義と主な症状5つ
PMSは多くの女性が経験するありふれた症状です。PMSの定義を改めて確認し、 PMSの代表的な症状を具体的に5つ解説していきます。
PMSとは生理が始まる約1~2週間前から現れる不調
PMSとは、生理が始まる約1~2週間前から心身にさまざまな不調が現れる症状です。不調の内容や程度は個人差が大きく、生理が始まると自然と症状が軽減したり消失したりする点が特徴です。
PMSによく見られる身体的症状
PMSの代表的な身体的症状として、下記のようなものが挙げられます。
- 腹痛や腰痛:生理痛に似た痛みが特徴です。鈍痛の場合もあれば、キリキリとした鋭い痛みの場合もあります。
- 頭痛:生理前に頭痛がひどくなったり、頻度が増えたりすることがあります。ズキンズキンと脈打つような痛みや、頭全体を締め付けられるような痛みなど、種類もさまざまです。
- 乳房の張りや痛み:胸が張って痛くなったり、触るとしこりを感じたりする場合があります。ブラジャーを着用すると、締め付けられて痛みが増す場合もあります。
- むくみ:手足や顔がむくむ症状です。夕方になると指輪がきつくなったり、靴が窮屈に感じたりする場合があります。
- 便秘や下痢:便秘や下痢を繰り返します。
PMSに伴う精神的症状
PMSは身体的な症状だけでなく、精神的な症状が現れることも少なくありません。
- イライラしやすくなる:些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりします。
- 憂鬱な気分になる:理由もなく気分が落ち込んだり、やる気が出なかったりします。何をするにも億劫に感じ、趣味を楽しむ気力も湧かない場合も多いです。
- 不安感や緊張感が強くなる:不安や緊張感が強くなり、落ち着かなくなります。普段は緊張しない場面でも、必要以上に緊張してしまうことがあります。
- 集中力の低下:集中力が続かず、ぼーっとしてしまう状態です。仕事や勉強に身が入らずミスが増えたり、作業効率が低下したりする場合があります。
- 情緒不安定:感情の起伏が激しくなり、急に泣きたくなったり、笑いたくなったりすることがあります。
上記はPMSの代表的な症状ですが、すべての人が経験するわけではありません。症状の程度や現れ方も人それぞれです。
PMSの原因とメカニズム4つ
PMSの主な原因とメカニズムを4つに分けて詳しく解説します。PMSから抜け出すためには、原因を知ることが重要です。
ホルモンバランスの変化
PMSの原因として最も有力視されているのが、女性ホルモンのバランスの変化です。女性の体の中では、生理周期(月経周期)に合わせて「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンの分泌量が上がったり下がったりしています。
エストロゲンは卵胞ホルモンと呼ばれ、卵巣から分泌されるホルモンです。子宮内膜の増殖を促したり、乳腺を発達させたりする働きがあります。プロゲステロンは、黄体ホルモンと呼ばれており、排卵後に卵巣から分泌されるのが特徴です。子宮内膜を妊娠に適した状態に変化させたり、体温を上昇させたりする働きがあります。
PMSは、生理が始まる約2週間前から、プロゲステロンの分泌量の急激な減少が原因です。プロゲステロンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心身の安定に深く関わっています。プロゲステロンの急減により、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れ、イライラしやすいなどの精神的な症状が現れます。
ストレスの影響
現代社会は、女性にとって多くのストレスに満ち溢れています。仕事や家事、育児など、ストレスの原因は枚挙にいとまがありません。ストレスこそがPMSの症状を悪化させる大きな要因の一つです。
ストレスを感じると、私たちの体の中ではコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは、身体を守るために必要なホルモンです。しかし、過剰に分泌されると自律神経のバランスを乱し、イライラや不安、頭痛や疲労感などの症状を引き起こします。
ストレスホルモンは女性ホルモンの分泌にも影響を与え、PMSの症状をさらに悪化させる可能性があります。仕事で大きなプレッシャーを感じているときや人間関係で悩んでいるときなどは、PMSの症状が強く出る方が少なくありません。
遺伝的要因と生活習慣
PMSは、遺伝的な要因も関係していると考えられています。家族にPMSの方がいる場合、PMSを発症するリスクが高いです。生活習慣もPMSの症状に大きく影響を与えます。以下の生活習慣はホルモンバランスを乱し、PMSの症状を悪化させる可能性が高くなります。
- 食生活の乱れ
- 睡眠不足
- 運動不足
- 喫煙
- 過剰なアルコール摂取
ファーストフードなどの栄養が偏った食事を続けていると、ビタミンやミネラルが不足し、ホルモンバランスが乱れやすいです。睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、ストレスホルモンの分泌を増加させるため、PMSの症状を悪化させる可能性があります。
適度な運動は、ストレス解消効果やホルモンバランスを整える効果があり、PMSの予防や改善に効果的です。逆に、運動不足はホルモンバランスを乱すため、PMSの症状を悪化させる可能性があります。
喫煙は血管を収縮させ、血行不良を引き起こすため、PMSの症状である頭痛や腹痛、冷え性を悪化させる要因です。過剰なアルコール摂取は、ホルモンバランスを乱し、PMSの症状を悪化させます。アルコールには利尿作用があるため、脱水症状を引き起こし、頭痛や疲労感を悪化させる可能性もあります。
栄養不足との関連
PMSの症状を和らげるためには、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。必要な栄養素が不足すると、体や心のバランスが崩れ、PMSの症状が出やすくなります。PMSの症状を和らげるために、以下の栄養素を積極的に摂取しましょう。
- ビタミンB6
- ビタミンE
- マグネシウム
- カルシウム
ビタミンB6は、神経伝達物質のセロトニンの合成に関与しており、精神的な安定に役立ちます。「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促すことで、イライラや憂鬱感を和らげ、心の安定を保つことが可能です。
ビタミンEは、ホルモンバランスを整える働きがあり、PMSに伴うイライラや憂鬱感を軽減する効果が期待できます。抗酸化作用も強く、ストレスから体を守る働きもあるため、PMS対策の強い味方です。
マグネシウムは筋肉の緊張を和らげ、頭痛や肩こり、腹痛などの症状の改善に効果があります。カルシウムは、精神的な安定に役立ち、イライラや不安感の軽減に効果的です。カルシウムは骨や歯を作るイメージが強いですが、実は神経の興奮を抑え、心を落ち着かせる働きもあります。
上記の栄養素を積極的に摂取することで、PMSの症状を和らげられます。バランスの取れた食事を心がけ、必要であればサプリメントなども活用しましょう。
PMSの診断方法と治療法
「もしかしてPMSかも?」と感じたら、一人で悩まず、婦人科を受診しましょう。PMSはよくある症状なので、恥ずかしく思う必要はありません。婦人科では、あなたの症状や悩みに寄り添いながら、適切な診断と治療法を一緒に考えます。
医師による診断基準
PMSは、問診や診察、過去の生理周期などを総合的に判断して診断されます。血液検査などを行う場合もありますが、他の病気を除外するためであり、PMSを診断する目的ではありません。PMSと診断する上での重要なポイントは下記の3つです。
- 症状が現れるタイミング:PMSの症状は、生理が始まる約1~2週間前から現れ始め、生理が始まるとともに軽快していくことが特徴です。
- 症状の程度:あなたの症状の程度や、日常生活への影響を把握することで、適切な治療法を検討します。
- 他の疾患との鑑別:「うつ病」「甲状腺疾患」「鉄欠乏性貧血」などは、PMSに似た症状が出る病気です。問診や診察、血液検査などを通して、PMS以外の病気が隠れていないかを確認します。
薬物療法と漢方薬
PMSの治療法は、症状の程度やライフスタイルに合わせて、さまざまな方法があります。薬物療法と漢方薬は、PMSの代表的な治療法です。
- 薬物療法:PMSの症状の改善には、低用量ピルや抗うつ薬などが効果的です。
- 漢方薬:PMSの症状に合わせて、さまざまな種類の漢方薬が用いられます。漢方薬は、体全体のバランスを整えながら、自然治癒力を高めることを目的とした治療法です。
自己管理と生活改善の方法
PMSの症状を和らげるためには、日常生活でできる自己管理や生活習慣の改善も重要です。
- 規則正しい生活:睡眠不足や不規則な食生活は、体のリズムを狂わせ、ホルモンバランスを崩してPMSの症状を悪化させる可能性があります。毎日決まった時間に起床し、3食きちんと食べるなど、規則正しい生活を心がけましょう。
- 適度な運動:適度な運動は、ストレスホルモンを減少させ、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促進する効果があります。血行促進効果も期待できるため、PMSの症状緩和につながると考えられています。軽いウォーキングやストレッチなど、無理なく続けられる運動習慣を身に付けましょう。
- リラックス:ストレスは、心身にさまざまな悪影響を及ぼすだけでなく、PMSの症状を悪化させる大きな要因の一つです。入浴やアロマ、ヨガや音楽鑑賞など、自分が「楽しい」「心地よい」と感じる時間を持ち、心身のリラックスを心がけましょう。
- カフェインやアルコールの摂取を控える:カフェインやアルコールは、自律神経のバランスを乱し、PMSの症状を悪化させる可能性があります。PMSの症状が強い時期は、コーヒーやアルコール飲料などの摂取量を減らしましょう。
上記の生活習慣の改善は、PMSの症状緩和だけでなく、健康全般の維持にもつながります。毎日の生活の中で、少しずつ実践することが大切です。
まとめ
PMSは、生理が始まる1〜2週間前から現れる心身の不調で、女性ホルモンのバランス変化が主な原因です。ストレスや遺伝、生活習慣も影響します。主に以下の不調を感じる方が多いです。
- 腹痛
- 頭痛
- 乳房の張り
- むくみ
- 便秘や下痢
- イライラ
- 憂鬱
- 不安感
- 集中力の低下
- 情緒不安定
PMSは、問診や診察で診断されます。薬物療法や漢方薬、生活改善などの治療をライフスタイルに合わせて行います。生理前の不調に悩んでいる方は、婦人科に相談して適切な治療を受けましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、PMSをはじめとした女性の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
参考文献
Dutta A, Sharma A. Prevalence of premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder in India: A systematic review and meta-analysis. Health promotion perspectives 11, no. 2 (2021): 161-170.