子宮内膜症ってどんな病気?原因や治療法、早期に発見するポイントも解説
公開日:2024.08.29更新日:2024.08.29
生理痛や不妊に悩んでいませんか?これらの症状は子宮内膜症が原因かもしれません。子宮内膜症は、女性の約10人に1人が経験していると言われています。放置すると、症状が悪化し、日常生活に支障が出るかもしれません。
この記事では、子宮内膜症の症状や原因、治療法について詳しく解説します。子宮内膜症は早期発見や早期治療が重要です。気になる症状がある方は、早めに婦人科を受診しましょう。
子宮内膜症の症状と特徴5つ
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の内側以外の場所で増殖し、炎症や痛みを引き起こす病気です。生理のある女性の約10人に1人が悩まされていると言われており、決して他人事ではありません。子宮内膜症の症状を理解し、当てはまる場合はすぐに婦人科に相談しましょう。
生理痛の症状と程度
「生理痛はみんなあるもの」と思って、毎月やってくる痛みに耐えている人も多いのではないでしょうか? もちろん、生理痛は多くの女性が経験する自然な症状です。しかし、子宮内膜症の生理痛は、子宮をギューッと握りつぶされるような強烈な痛みが特徴です。
子宮内膜症による生理痛は、子宮内膜が本来あるべき子宮の内側ではなく、卵巣や腹膜など子宮の外側にできてしまうために起こります。子宮の外の炎症や癒着が、耐えがたいほどの強い痛みを引き起こす原因です。以下のような生理痛が起こる場合は、子宮内膜症が疑われます。
- 市販の鎮痛剤では痛みが治まらない
- 生理の度に、日常生活に支障が出るほどの痛みがある
- 年齢を重ねるごとに痛みが強くなっている
- 生理が始まる数日前から痛む
- 生理が終わっても痛みが続く
上記の症状に当てはまる場合は、我慢せずに早めに婦人科を受診しましょう。
不妊症のリスクと関連性
子宮内膜症は、不妊症の原因の一つです。子宮内膜症の患者さんの約30~40%に、不妊症がみられるという報告もあります。子宮内膜症になると、子宮内膜に似た組織が子宮以外の子宮の周り、卵巣や卵管などにできてしまいます。すると卵管が狭く詰まった状態になり、卵子と精子がうまく出会えません。結果として、妊娠が難しくなってしまいます。
子宮内膜症は、卵巣の機能を低下させる場合もあります。卵巣は女性ホルモンを分泌し、排卵を促す大切な臓器です。卵巣の機能が低下すると、卵子の質が低下し、排卵が上手くいかなくなる場合があります。子宮内膜症は、女性の将来に大きな影響を与える可能性があるため、適切な治療が欠かせません。
性交時の痛みについて
子宮内膜症になると、性交時に痛みを感じる場合があります。病変が膣の入り口付近の「子宮頸部」や子宮と直腸の間にある「ダグラス窩」などにできると、性交時に痛みを感じやすいです。性交痛は、パートナーとの大切な時間を奪ってしまうだけではありません。「パートナーに嫌われたらどうしよう」という不安や恐怖心から、精神的なストレスを抱えてしまう場合もあります。
疲労感や消化不良などの全身症状
子宮内膜症は生理痛や性交痛以外にも、だるさや疲労感、吐き気、食欲不振などの全身症状が現れる場合もあります。子宮内膜症による体内の慢性的な炎症が原因と考えられています。「体が重だるい」「やる気が出ない」「体調が悪い日が続いている」などの症状に悩んでいる方は、子宮内膜症が原因かもしれません。
月経周期への影響と異常
子宮内膜症は、月経周期にも影響を及ぼす病気です。経血量は、子宮内膜が増殖する範囲が広いほど多くなる傾向があります。子宮内膜症になると、子宮内膜が増殖しやすくなるため、経血量が増えたり生理の期間が長引いたりします。子宮内膜症による子宮や卵巣の機能が低下は、生理不順の原因です。
子宮内膜症は放置すると症状が悪化する可能性もあるため、少しでも気になる症状があれば、早めに婦人科を受診しましょう。
子宮内膜症の原因とメカニズム4つ
子宮内膜症は、若い女性に多くみられ、20代後半〜30代の女性で発症するケースが多い傾向にあります。原因ははっきりとは解明されていませんが、要因が複数絡み合っていると考えられています。子宮内膜症を引き起こす4つの主な原因とメカニズムを詳しくみてみましょう。
エストロゲンの関与と発症メカニズム
子宮内膜症の発生には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが深く関わっていると考えられています。
エストロゲンの働きは、子宮内膜を増殖させることです。子宮内膜症の組織が子宮の外に存在している場合でも、エストロゲンの影響を受けて増殖や肥厚をしてしまいます。本来あるべきではない場所で、子宮内膜がエストロゲンの影響を受けて増殖してしまうことが、子宮内膜症の大きな特徴です。
病変が卵巣内で出血を繰り返す場合、卵巣の中に古い血液が溜まった「チョコレート嚢胞」という状態になる場合があります。チョコレート嚢胞は、放置すると卵巣の機能を低下させたり、不妊症のリスクを高めたりする可能性もあるため注意が必要です。
遺伝的要因と家族歴
子宮内膜症は、遺伝的な要因も関係していると考えられています。母親や姉妹など、血縁者に子宮内膜症の方がいる場合、発症するリスクが高くなるという研究結果があります。子宮内膜症になりやすい体質は遺伝する可能性があるのです。
しかし、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。遺伝的な要素に加えて、食生活やストレスなどの環境要因が影響を与える可能性も考慮する必要があります。
環境要因と生活習慣
子宮内膜症の発症には、環境要因や生活習慣も影響を与えている可能性が指摘されています。具体的には要因は以下のとおりです。
- ダイオキシン類などの環境ホルモンの影響
- 食生活の欧米化による動物性脂肪の過剰摂取
- ストレスの増加や睡眠不足
上記の要因が免疫システムやホルモンバランスを乱し、子宮内膜症のリスクを高めると考えられています。ファストフードやインスタント食品中心の食生活を続けていると、子宮内膜症のリスクを高める可能性があります。食品に含まれるトランス脂肪酸は、体内の炎症反応を促進し、子宮内膜症の増殖を促す可能性があるためです。
ストレスは自律神経のバランスを乱し、ホルモン分泌に影響を与えることで、子宮内膜症のリスクを高める可能性があります。
免疫システムの役割
免疫システムの異常により子宮内膜症が起こる場合もあります。免疫システムは、体内で発生した異常な細胞や組織を攻撃、排除する役割を担うものです。
子宮内膜症では、本来は子宮内にとどまっているべき子宮内膜細胞が、子宮以外の場所で増殖してしまいます。本来であれば、免疫システムが細胞を異物と認識して排除するはずです。しかし、何らかの原因で免疫システムが正常に機能せず、子宮内膜細胞が生き残ることで子宮内膜症が発症すると考えられています。
免疫システムの異常には遺伝やストレスなどが関係し、複数の要因が絡み合って子宮内膜症の原因になると考えられます。
子宮内膜症の治療法と選択肢3つ
子宮内膜症と診断されると「この先、どうなるんだろう」と不安な気持ちになる方もいるかもしれません。治療法にはどんなものがあるのか、それぞれどんなメリットやデメリットがあるのか、気になることも多いでしょう。子宮内膜症の治療法について、わかりやすく解説します。
薬物療法の種類と副作用
子宮内膜症の治療は、大きく分けて「薬物療法」「手術療法」「ライフスタイルの改善」の3つのアプローチがあります。薬物療法は、症状を抑え、子宮内膜症の進行を遅らせることが目的です。主に「痛み止め」「ホルモン剤」「GnRHアナログ」の3種類の薬が用いられます。
- 痛み止め(鎮痛剤)
生理痛の痛みを抑える薬です。 市販薬として手に入るものから、病院で処方されるものまで、痛みの程度に合わせて使い分けられます。痛みの原因物質の生成を抑えたり、神経に働きかけて痛みを感じにくくしたりする効果があります。 - ホルモン剤
エストロゲンの分泌を抑えることで、子宮内膜症の増殖を抑え、痛みなどの症状を和らげます。低用量ピルや黄体ホルモン製剤など、さまざまな種類があります。 - GnRHアナログ
脳の下垂体から分泌されるホルモンを抑えることで、卵巣の働きを一時的に休ませて閉経状態に似た状態にします。エストロゲンの分泌が抑えられることで、子宮内膜症の組織は縮小し、症状の改善が期待できます。
薬には副作用のリスクがあります。副作用が心配な方は、必ず医師に相談しましょう。
手術療法の方法と適応
薬物療法で効果が不十分な場合や、子宮内膜症の病巣が大きい場合などには、手術療法が検討されます。手術療法には「病巣の切除」と「子宮の摘出」の2つの方針があります。手術は以下の方法のどちらかを選択する場合が多いです。
- 腹腔鏡手術: お腹に小さな穴を数か所開け、そこから内視鏡や手術器具を挿入して行う手術です。傷が小さく、術後の回復も早いというメリットがあります。
- 開腹手術: お腹を大きく切開して行う手術です。病巣が大きく、腹腔鏡手術では対応が難しい場合に選択されます。
子宮の温存を希望される場合、子宮内膜症の病巣のみを切除する手術が一般的です。将来的な妊娠を希望されない場合や、子宮の温存が難しい場合には、子宮全摘出手術が選択される場合もあります。どの手術方法が適しているかは、患者さんの年齢や症状、妊娠の希望などを考慮して、医師とじっくり相談した上で決定します。
ライフスタイルの改善によるアプローチ
子宮内膜症は、毎月の生活習慣が大きく関わってくる病気です。原因の一つとして、ダイオキシン類などの環境ホルモンの影響や食生活の欧米化による動物性脂肪の過剰摂取などが挙げられます。規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜めないことが大切です。バランスの取れた食事を摂り、十分な睡眠を心がけましょう。適度な運動も、血行促進やストレス発散に効果的です。
ストレス発散のために、以下の項目に気をつけましょう。
- 毎朝決まった時間に起きる
- 栄養バランスを考えた食事を3食きちんと食べる
- 軽いストレッチやウォーキングなど、無理のない運動を習慣化する
- 趣味の時間を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を見つける
子宮内膜症は冷えによって症状が悪化しやすいため、体を冷やさないことも大切です。温かい服装を心がけたり、湯船にゆっくりと浸かったりして、体を温めましょう。
子宮内膜症は原因がはっきりと解明されていない病気であり、根本的な治療法は確立されていません。しかし、紹介した治療法やライフスタイルの改善によって、快適な生活は十分に可能です。自分に合った治療法を見つけ、前向きに病気と向き合っていきましょう。
まとめ
子宮内膜症は、子宮内膜と似た組織が子宮以外の場所で増殖する病気で、生理のある女性の約10人に1人が経験する可能性があります。主な症状には以下のようなものがあります。
- 生理痛
- 不妊症
- 性交痛
- 疲労感
- 月経周期の異常
子宮内膜症は、エストロゲンや遺伝的要因、環境要因や免疫システムの異常などが原因です。治療法には、薬物療法や手術療法、ライフスタイルの改善があります。子宮内膜症は、放置すると症状が悪化する可能性があるため、気になる症状がある場合は早めに婦人科を受診しましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、子宮内膜症に強みを持つクリニックです。子宮内膜症の治療を検討している状況でも、専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
参考文献
Davenport S, Smith D, Green DJ. Barriers to a Timely Diagnosis of Endometriosis: A Qualitative Systematic Review. Obstetrics and gynecology 142, no. 3 (2023): 571-583.