
卵巣腫瘍でお腹の出方は変わる?注意すべき症状と早期発見のポイント
公開日:2025.05.18更新日:2025.05.31
「お腹が張っている」「お腹に違和感がある」などお腹の出方に変化を感じることはありませんか?お腹の張りにはさまざまな原因が考えられますが、卵巣腫瘍のサインである可能性もあります。卵巣腫瘍は自覚症状が出にくく、気づかないうちに進行してしまうケースも多い病気です。
この記事では、卵巣腫瘍について以下の内容を解説します。
- 卵巣腫瘍でお腹の出方が変わる原因
- 卵巣腫瘍の初期症状
- 卵巣腫瘍の早期発見のポイント
- 卵巣腫瘍の検査と診断方法
- 卵巣腫瘍の治療法
早期発見できれば、より体に負担の少ない治療を選択できる可能性があります。具体的な初期症状を知ることで、ご自身の体と向き合い、いつもと違う変化に気づけるようにぜひチェックしてみてください。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、卵巣腫瘍の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
卵巣腫瘍でお腹の出方が変わる原因3選
卵巣腫瘍でお腹の出方が変わる原因として、以下の3つが考えられます。
- 腫瘍の増大による物理的な圧迫
- 腹水の貯留
- 腸管の圧迫による膨満感
腫瘍の増大による物理的な圧迫
卵巣腫瘍は、数cmから、まれに30cmを超える大きさになる場合もあります。健康な状態の卵巣の大きさは親指の先程度ですが、腫瘍によりバスケットボールほどの大きさになるケースもあるのです。腫瘍が大きくなると、周囲の臓器を圧迫し、お腹に違和感を覚えるようになります。
卵巣の近くには膀胱や直腸、リンパなどがあり、大きな腫瘍は周囲の臓器を圧迫することがあります。腫瘍が20cm以上になると、妊娠しているときのようにお腹が前に突き出て見えることもあります。自分の体型に変化がないか、定期的に鏡でチェックしてみてください。
腹水の貯留
卵巣腫瘍の中には、腹水と呼ばれる液体がお腹に溜まる場合があります。腹水とは、腹腔内に水分が溜まった状態のことです。卵巣腫瘍の場合、がん細胞が作る物質や炎症反応が原因で腹水が溜まりやすくなります。
卵巣腫瘍には悪性と良性があり、腹水の溜まりやすさに違いがあります。悪性と良性の腹水の違いについては以下のとおりです。
- 悪性腫瘍:大量の腹水が溜まりやすい
- 良性腫瘍:腹水が溜まることもあるが、量は少なめ
少量の腹水では自覚症状がない場合もありますが、腹水が増加すると、お腹の張りや圧迫感、呼吸困難などの症状が現れることがあります。
腸管の圧迫による膨満感
卵巣腫瘍が大きくなると、腸を圧迫することがあります。腸が圧迫されると、お腹が張り、膨満感を感じやすくなります。腸は通常、蠕動運動という動きで食べ物を消化し、便を肛門に向かって押し出しています。しかし腫瘍で腸が圧迫されると、動きが鈍くなり、ガスや便が溜まりやすくなります。
腸内環境が悪化すると、栄養の吸収を阻害したり、免疫機能が低下したりする可能性もあるため注意が必要です。
卵巣腫瘍の初期症状5選
卵巣腫瘍は、初期段階では自覚症状が現れにくい病気です。そのため、早期発見が難しく、症状が進行してから初めて気づくケースも多いです。しかし、中には初期症状が現れる場合もあり、サインを見逃さないことが早期発見・治療に重要です。卵巣腫瘍では以下の5つの症状が現れます。
- お腹の異常
- 排尿トラブル
- 排便異常
- 消化器系の変化
- 痛みを伴う苦痛
お腹の異常(下腹部の違和感、膨満感、張り)
健康な状態では下腹部は柔らかく、違和感や張りはありません。しかし、卵巣腫瘍ができると、腫瘍の増大による物理的な圧迫、腹水の貯留、腸管の圧迫などによって、下腹部に違和感や膨満感を感じることがあります。
排尿トラブル(頻尿、残尿感)
卵巣腫瘍が大きくなり膀胱が圧迫されると、以下の症状が現れることがあります。
- 頻尿:少量の尿でもすぐにトイレに行きたくなる
- 残尿感:排尿後も尿が残っているように感じる
- 夜間頻尿:夜にトイレに行く回数が増える
上記の症状は膀胱炎などの感染症のリスクを高める可能性もあります。
排便異常(便秘、排便困難)
直腸を圧迫することで生じる排便異常も卵巣腫瘍の症状の一つです。具体的には、便が出にくく、排便に時間がかかるといった症状が現れることがあります。便の形や排便回数に変化があった際も注意が必要です。便秘は、排便時に強い痛みを伴うこともあり、生活の質を低下させる原因となります。
消化器系の変化(食欲不振、吐き気)
腫瘍が大きくなると、胃や腸などの消化器系を圧迫し、食欲不振や吐き気を引き起こすことがあります。普段はおいしく感じる食事が急に食欲がなくなり、吐き気を感じる場合は注意が必要です。
進行した卵巣がんの場合、がん細胞が出す物質の影響で吐き気や嘔吐が起こることがあります。ただし、食欲不振や吐き気は、他の病気でも起こり得るため、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。
痛みを伴う症状(腰痛、下腹部痛)
初期の段階では痛みを感じない場合も多いですが、腫瘍が大きくなると腰痛や下腹部痛などの痛みが現れることがあります。大きくなった腫瘍が周囲の組織や神経を圧迫することが原因です。腫瘍が破裂したり、茎捻転(卵巣や卵管がねじれること)を起こしたりすると、激しい腹痛に襲われることもあります。
卵巣腫瘍の中でも比較的よく見られる「卵巣嚢腫」は、体質や生活習慣と関係があるとされており、日常の工夫で予防につながる場合もあります。以下の記事では、卵巣嚢腫になりやすい人の特徴や、発症リスクを減らすための生活習慣について詳しく解説しています。
>>卵巣嚢腫になりやすい人の特徴と予防法!体質や生活習慣との関連性
卵巣腫瘍の早期発見のポイント
卵巣腫瘍の早期発見に必要なポイントについて、以下の内容を解説します。
- お腹の張りや違和感に気づいたら受診
- 定期的な婦人科受診の重要性
- 家族歴やリスク要因を知っておく
早期発見できれば、より体に負担の少ない治療選択肢が増え、卵巣機能の温存にもつながる可能性があります。
お腹の張りや違和感に気づいたら受診を
お腹の張りや下腹部の違和感は、卵巣腫瘍の初期症状として現れることがあります。腫瘍が大きくなると、膀胱や直腸を圧迫して頻尿や便秘が起こったり、腹水が溜まってお腹が膨れたりすることもあります。他の病気でも見られるため、放置せず早めに婦人科を受診しましょう。
定期的な婦人科検診の重要性
卵巣腫瘍は、症状が現れにくい病気であるため、定期的な婦人科検診が早期発見の鍵となります。婦人科検診では、内診や経腟超音波検査などを行い、卵巣の状態をチェックします。特に、40歳以上の方は卵巣がんのリスクが高まるため、定期的な検診がより重要です。
早期発見のためには、1年に1回程度の婦人科検診を受けることをおすすめします。婦人科検診は、卵巣腫瘍だけでなく、子宮頸がんや子宮体がん、性感染症など、他の婦人科疾患の早期発見にもつながります。ご自身の健康を守るためにも、定期的な検診を習慣づけましょう。
当院では、子宮鏡検査も行っています。どのタイミングで受けるべきか、検査の内容なども解説しているので、ぜひ以下の記事もご覧ください。
>>子宮鏡検査はいつ受ける?検査の内容や痛み、かかる費用を徹底解説
家族歴やリスク要因を知っておく
卵巣腫瘍のリスクを高める要因として、以下があります。
- 家族歴:家族に卵巣がん、乳がん、大腸がんの人がいる場合
- 遺伝:特定の遺伝子変異がある場合
- ホルモン:初潮が早かった、閉経が遅かった、出産経験がない場合など
リスク要因に当てはまる場合、必ずしも卵巣腫瘍になるわけではありません。しかし、定期的な検診や体の変化に気を配ることが重要です。リスク要因を理解することで、早期発見の意識を高め、適切な行動ができます。
卵巣腫瘍の検査と診断方法
卵巣腫瘍は初期に自覚症状がほとんどないため、気づいたときには進行していることがあります。早期発見・早期治療は体への負担を軽減し、より良い治療結果へとつながる一歩です。婦人科で行われる以下の検査方法について詳しく解説します。
- 婦人科内診
- 経膣超音波検査
- 血液検査(腫瘍マーカー:CA125、HE4など)
- CT検査、MRI検査
- PET検査
婦人科内診
婦人科内診は、卵巣腫瘍の診断における最初のステップであり、重要な検査です。医師は内診台のうえで、清潔な手袋を着用し、指を使って膣や子宮、卵巣の状態を直接診察します。卵巣が腫れているかどうか、また腫瘍の大きさや硬さなどを確認するために行います。
内診は緊張を伴う検査です。痛みはほとんどありませんが、緊張すると不快に感じることがあります。リラックスして医師の指示に従うことで、検査をスムーズに進めることができます。
経腟超音波検査
経腟超音波検査では、プローブと呼ばれる細い棒状の機器を膣内に挿入し、超音波を使って卵巣の様子を画像で確認します。経腟超音波検査によって、卵巣の大きさや形、内部の状態を確認できます。検査時間は一般的に5分程度で、多くの場合、痛みはほとんどありません。
超音波検査は、卵巣腫瘍が良性か悪性かを判断する手がかりになります。腫瘍のタイプについて、以下の表にまとめています。
腫瘍のタイプ | 特徴 | 可能性 |
嚢胞状 | 腫瘍の内部に液体がたまる | 良性であることが多い |
充実性 | 腫瘍に塊の部分がある、または全体が密な組織でできている | 悪性や境界悪性の可能性が高い |
超音波検査は腫瘍の性質を判断する検査の一つとして、医師の診断をサポートする重要な役割を担っています。
血液検査(腫瘍マーカー:CA125、HE4など)
血液検査では、腫瘍マーカーと呼ばれる、がん細胞を作り出す特殊な物質の量を調べます。卵巣がんの場合は、CA125やHE4といった腫瘍マーカーがよく用いられます。数値が高い場合は卵巣がんの可能性が考えられます。
しかし、腫瘍マーカーの数値が高い場合でも、それだけで卵巣がんと断定することはできません。良性の腫瘍や炎症、子宮内膜症など他の病気でも上昇する可能性があるからです。他の検査と合わせて、総合的に判断することが大切です。
近年、卵巣がんの早期発見を目指し、アプタマーと呼ばれる人工の核酸分子の研究開発が盛んに行われています。アプタマーは、特定の分子に高い親和性を持ち、腫瘍マーカーをより正確に検出することが期待されています。
特に、FETバイオセンサー(電界効果トランジスタ)は、迅速で高感度な検査が可能な技術として、卵巣がんの早期発見に大きな期待が寄せられています。
卵巣出血を放置すると危険な症状を引き起こす可能性があります。症状の特徴や原因、注意が必要なサインについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>卵巣出血の症状と原因!放置すると注意が必要なサインと受診目安
CT検査、MRI検査
CT検査とMRI検査は、どちらも体内の様子を断面画像として映し出す検査ですが、仕組みは異なります。検査の特徴は以下のとおりです。
- CT検査:X線を用いて画像を作成
- MRI検査:磁気と電波を用いて画像を作成
CT検査やMRI検査によって、卵巣腫瘍の大きさや形、周囲の臓器への浸潤の有無などを詳細に調べることが可能です。
PET検査
PET検査は、がん細胞が正常細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む性質を利用した検査方法です。微量の放射性物質を含むブドウ糖を注射し、体内のブドウ糖の分布を特殊なカメラで撮影します。検査により、がん細胞が集まっている部分が明るく映し出され、がんの位置や大きさ、他の臓器への転移がわかります。
卵巣腫瘍の治療法4選
卵巣腫瘍と診断されると、今後の治療について不安や疑問を抱く方も多いです。卵巣腫瘍にはさまざまな種類があり、それぞれに適した治療法があります。卵巣腫瘍の主な治療法について、以下の4つを詳しく解説します。
- 経過観察
- 薬物療法
- 手術療法
- 緩和ケア
経過観察
すべての卵巣腫瘍がすぐに治療が必要となるわけではありません。腫瘍が小さく、良性である可能性が高い場合は、経過観察を選択することがあります。経過観察中は、定期的に超音波検査を行い、腫瘍の大きさや状態の変化を注意深く確認します。
万が一、腫瘍が大きくなったり、悪性の疑いが出てきたりする場合には、薬物療法や手術療法など、より積極的な治療法に切り替えることもあります。
薬物療法
薬物療法は、主に悪性腫瘍や進行した卵巣腫瘍に対して行われます。抗がん剤を用いた化学療法が中心となり、がん細胞の増殖を抑え、腫瘍を縮小させることを目的としています。
化学療法には、点滴で投与する方法と、内服薬として服用する方法があります。副作用として、吐き気や脱毛、倦怠感などが現れる場合があります。しかし、近年は副作用を軽減するための薬も進歩しており、以前と比べて安心して治療を受けられるようになっています。
卵巣がんの新しい治療薬として、抗体薬物複合体(ADC)が研究・開発されています。ADCは、がん細胞をピンポイントで攻撃することができる薬で、以下の3つの要素からできています。
- 抗体:がん細胞を特定して狙い撃ちする役割
- リンカー:抗体と強力な抗がん剤をつなぐ部分
- 細胞毒性薬:がん細胞を直接攻撃して殺す強力な薬
ADCは、がん細胞だけを標的にするため、正常な細胞への影響を最小限に抑えながら効果を発揮するといった特徴があります。白金製剤の効果がない卵巣がんの患者さんに対して、新しい治療法として「ミルべツキシマブ・ソラヴタンシン」が注目されています。
第III相臨床試験では、ミルべツキシマブ・ソラヴタンシンが化学療法に比べてより高い治療効果が確認されました。
手術療法
手術療法は、卵巣腫瘍の治療において重要な役割を担っています。手術方法は、腫瘍の種類、大きさ、進行度などによって異なります。腫瘍の種類による手術方法の違いについて、以下の表を参考にしてください。
腫瘍の種類 | 切除範囲 |
良性腫瘍 | 腫瘍のみ、卵巣の機能を温存することが多い |
境界悪性腫瘍 | 子宮、両側の卵巣・卵管、大網 |
悪性腫瘍 | 子宮、両側の卵巣・卵管、大網、リンパ節、場合よっては腸管や腹膜 |
がんの種類や進行度によっては、健常な卵巣・卵管や子宮を温存できる場合もあります。医師と十分に相談し、患者さんにとって最適な手術方法を選択することが大切です。
緩和ケア
緩和ケアは、がんに伴う身体的、精神的な苦痛を和らげ、生活の質を向上させるためのケアです。痛みや吐き気、倦怠感などの身体的症状をコントロールするだけでなく、不安や抑うつ、不眠といった精神的なつらさを軽減するためのサポートも行います。
緩和ケアは、がんと診断されたときから、治療中、そして治療後も継続して受けることができます。緩和ケアチームは、医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種で構成され、患者さんとご家族のさまざまなニーズに対応します。緩和ケアを受けることで、患者さんだけではなく、ご家族の心身の負担も軽減できます。
まとめ
卵巣腫瘍は早期発見が難しい病気ですが、お腹の出方や張り、頻尿、便秘などの症状に気をつけることで、早期発見の糸口をつかむことができます。これらの症状は他の病気でも起こり得るので、自己判断せず、少しでも異変を感じたら婦人科へ相談しましょう。
定期的な婦人科検診も早期発見に重要です。特に40歳以上の方は、卵巣がんのリスクが高まるため、定期的な検診を心がけましょう。卵巣腫瘍は早期発見・早期治療で身体への負担を軽減し、より良い治療結果へとつながります。ご自身の体と向き合い、健康を守りましょう。
「これって卵巣腫瘍かも?」と感じたとき、何を基準に判断すればいいのか不安な方も多いはずです。以下の記事では、卵巣腫瘍の初期症状をセルフチェックする方法や、婦人科を受診する目安についてわかりやすく解説しています。
>>【セルフチェック】卵巣腫瘍の見逃せない初期症状と受診の目安を解説
参考文献
- Ke Shen, Shuang Yuan, Ning Su, Furong Tang, Shamsnur Rehim, Han Wang, Huihui Guo, Yu Zhang, Yufeng Wu, Hongjing Wang. Monotherapy and combination therapy using antibody‑drug conjugates for platinum‑resistant ovarian cancer. Oncol Rep, 2025, 53, 6, p.68
- Johny Bajgai, Minsang Jun, Joon Hak Oh, Jong-Han Lee. A perspective on the potential use of aptamer-based field-effect transistor sensors as biosensors for ovarian cancer biomarkers CA125 and HE4. Talanta, 2025, 292, p.127954