
【医師監修】ピル服用時の排卵痛について|考えられる原因と適切な対処法
公開日:2025.05.18更新日:2025.05.31
ピルを飲んでいるのに、排卵痛のような痛みを感じたことはありませんか?ピルは排卵を抑える効果が期待できる薬ですが、正しく飲んでいてもさまざまな原因で痛みを感じる場合があります。排卵痛の原因は、ピルの飲み忘れや副作用、あるいは隠れた婦人科疾患の可能性もあります。
この記事では、ピル服用中の排卵痛の原因と対処法、生活習慣の改善策まで、医師監修のもと詳しく解説します。あなたの不安を解消し、快適な毎日を送るためのヒントになれば幸いです。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、排卵痛の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
ピル服用中に排卵痛が起こる原因3選
ピル服用中に排卵痛が起こる原因について、以下の3つを解説します。
- ピルの飲み忘れ
- ピルの副作用
- 子宮内膜症などの婦人科疾患
ピルの飲み忘れ
ピルは、毎日決まった時間に服用することで、排卵を抑制する効果を発揮する薬です。ピルの精密なメカニズムは、体内時計のように働くホルモンバランスの維持に支えられています。しかし、ピルを飲み忘れると、ホルモンバランスが乱れ、排卵抑制効果が弱まり、排卵が起きる可能性があります。
特に、ピルのシートの最初や最後、あるいは2錠以上続けて飲み忘れた場合は注意が必要です。ピルの種類によって異なりますが、一般的に排卵が起こるリスクが高まるとされています。ピルの飲み忘れに気づいたら、すぐに1錠服用し、次の服用時間には通常通り飲んでください。
飲み忘れた場合、2錠を同時に服用しても通常は問題ありませんが、ピルの種類によっては対応が異なる場合もあります。説明書をよく確認するか、医師または薬剤師に相談しましょう。
ピルを服用した後に嘔吐やひどい下痢があった場合も、ピルの成分が体内に十分に吸収されず、排卵抑制効果が弱まる可能性があります。嘔吐や下痢が服用後3時間以内に起こった場合、ピルの添付文書に従って対応することが推奨されています。
多くの場合、追加のピルを服用し、次のシートを開始するまでは、コンドームなどの他の避妊方法を併用することが勧められています。万が一の妊娠を防ぐためにも、緊急時の対応を覚えておくことが大切です。
ピルの副作用
ピルには、吐き気や頭痛、不正出血など、いくつかの副作用が知られています。腹痛や下腹部痛といった症状も副作用として現れることがあります。副作用の症状は、ピルの服用開始初期に起こりやすく、体がピルの成分に慣れてくると徐々に軽くなることが多いです。
ピルの副作用は服用開始から数か月続く場合もありますが、多くの場合、時間の経過とともに軽減していきます。しかし、ピルの副作用による痛みと排卵痛は症状が似ているため、どちらの痛みか自己判断するのは難しい場合があります。
ピルに含まれる女性ホルモンはホルモンバランスを変化させ、体にさまざまな影響を及ぼす可能性があるからです。ピルを服用していても下腹部痛が続く場合は、自己判断せず、一度婦人科を受診することをおすすめします。医師による適切な診断とアドバイスを受けることで、安心してピルを服用し続けられます。
子宮内膜症などの婦人科疾患
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症といった婦人科疾患も、排卵痛と似たような下腹部痛を引き起こすことがあります。子宮内膜症は、本来子宮の内側にある子宮内膜組織が、子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、子宮腺筋症は子宮内膜組織が子宮の筋肉層に入り込む病気です。
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患は、月経痛が重くなる、月経量が増える、性交痛があるなどの症状を伴うこともあります。ピルには子宮内膜症の症状を和らげる効果も期待できます。しかし、婦人科疾患が原因で下腹部痛が起こっている場合、ピルだけでは症状が改善しないこともあります。
ピルを服用していても下腹部痛が続く場合は、婦人科疾患の可能性も考慮し、早めに婦人科を受診して検査を受けることが大切です。早期発見・早期治療によって、症状の悪化を防ぎ、妊娠への影響も最小限に抑えられます。婦人科疾患の診断には、問診や内診、超音波検査などが行われます。
ピルと排卵痛の関係性
ピルと排卵痛の関係性については以下のとおりです。
- ピルの基本的な働きと排卵抑制の仕組み
- ピルの種類別の排卵痛への影響(低用量・中用量・高用量)
- ピル以外の避妊法との比較:排卵痛との関係性
ピルの基本的な働きと排卵抑制の仕組み
ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを含んでいます。エストロゲンとプロゲステロンは、私たちの体の中でも自然に分泌されており、月経周期や妊娠をコントロールするホルモンです。ピルに含まれるホルモンは、体内で自然に分泌されるホルモンと似た働きをして、脳が卵巣に排卵を促す指令を出すことを抑制します。
ピルを服用することで、脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑えられます。FSHとLHは卵巣を刺激して卵胞を成熟させ、排卵を誘発するホルモンです。FSHとLHの分泌が抑制されることで、卵胞の成熟と排卵が阻止され、結果として排卵痛も発生しなくなります。
排卵はホルモンバランスや体調に影響を与えることがあり、排卵日前後に体調不良を感じる人も少なくありません。排卵日にはどのような症状が現れるのか、また妊娠しやすい時期の目安について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>排卵日の症状とは?起こりうる体調不良や妊娠しやすい時期の目安を解説
ピルの種類別の排卵痛への影響(低用量・中用量・高用量)
ピルは、含まれるホルモンの量によって、低用量や中用量、高用量に分類されます。低用量ピルはホルモン含有量が少なく、副作用のリスクが比較的低いとされるため、現在広く処方されています。中用量ピル、高用量ピルは、特定の疾患の治療目的で使用される場合がありますが、避妊目的ではほとんど用いられていません。
低用量ピルであっても、正しく服用すれば排卵は抑制され、排卵痛は起こりません。中用量ピル、高用量ピルも同様に排卵を抑制しますが、ホルモン量が多い分、副作用のリスクも高まる可能性があります。
どの用量のピルを選択するかは、患者さんの状態や目的に合わせて医師が判断します。自己判断でピルの種類や用量を変更することは避け、必ず医師に相談してください。
ピルは便利な避妊法である一方、副作用についても正しく理解しておくことが大切です。ピルの副作用の種類やリスク、対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>低用量ピルの副作用を解説!知っておくべきリスクと対処法
ピル以外の避妊法との比較:排卵痛との関係性
ピル以外の避妊法には、以下のものがあります。
- コンドーム
- 子宮内避妊器具(IUD:子宮内に装着する小さな器具)
- 避妊リング(膣内に挿入するホルモン放出リング)
ピル以外の避妊法は、精子と卵子の出会いを阻害することで妊娠を防ぎますが、排卵そのものを抑制するわけではありません。ピル以外の避妊法を使用しても排卵は起こり、排卵痛も感じる可能性があります。
排卵痛が重い、月経不順で悩んでいる、月経量が多く貧血気味といった方は、ピルの服用を検討してみるのも一つの選択肢です。婦人科で相談すれば、あなたの体質や症状に合ったピルを選んでもらえますので、一人で悩まず、気軽に相談してみましょう。
ピル服用中に排卵痛がある場合の受診の判断ポイント
ピル服用時に排卵痛がある場合の受診の判断ポイントを、以下の項目に沿って解説します。
- 一時的な排卵が起きるケース
- 問題がないこともあるが、婦人科相談が推奨されるケース
一時的な排卵が起きるケース
ピルの服用開始直後は、体がピルのホルモンに慣れていないため、一時的に排卵が起こる場合があります。排卵が起こると、軽い排卵痛を感じる可能性があります。体が新しいホルモンバランスに適応するまでの期間は個人差があり、通常は数か月以内です。ピルを飲み忘れた場合も排卵が起こり、排卵痛を感じる可能性があります。
問題がないこともあるが、婦人科相談が推奨されるケース
ピルを正しく服用していても、ピルの副作用でまれに排卵痛に似た痛みを感じる場合があります。ピルの副作用には、吐き気や頭痛、不正出血などさまざまなものがありますが、下腹部痛も副作用の一つです。副作用による痛みは、服用開始初期に起こりやすく、多くの場合、体がピルに慣れてくると自然と治まっていくことが多いです。
ピルを服用していても、子宮内膜症などの婦人科系の病気が隠れている可能性は考えられます。子宮内膜症により、月経痛や排卵痛、性交痛などの痛み、月経不順などの症状が現れます。
ピルは子宮内膜症の治療薬としても使用されます。服用していても症状が改善しない場合や痛みが強い場合は、子宮内膜症の可能性も考えて婦人科を受診しましょう。子宮内膜症以外にも、子宮筋腫や卵巣嚢腫など、下腹部痛を引き起こす婦人科系の疾患は複数存在します。
自己判断はせず、少しでも気になる症状があれば、早めに婦人科を受診し、適切な検査を受けることが大切です。早期発見・早期治療は、症状の悪化を防ぎ、将来的な妊娠への影響も最小限に抑えることにつながります。
特に、不正出血はピルの副作用としてよく見られる症状の一つです。原因や適切な対処法、受診の目安について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>ピルの服用中の不正出血は副作用?原因や対処法、受診の目安を解説
ピル服用時の排卵痛への対処法5選
ピル服用時の排卵痛への対処法について、以下の5つを解説します。
- 婦人科を受診する
- 市販の鎮痛剤を服用する
- 低用量ピルへの変更を検討する
- ホルモンバランスを整える生活習慣を心がける
- 他の避妊方法を検討する
ピルの飲み忘れや個人差、他の病気が隠れているケースもあるため、自己判断せず、原因に合った適切な対処法を医師と相談して選ぶことが重要です。
婦人科を受診する
排卵痛のような痛みを感じたら、自己判断せず、婦人科を受診しましょう。ピルを飲み始めたばかりで体に合っていないだけの可能性や、他に原因がある可能性もあります。婦人科では、問診や内診、超音波検査などを通して痛みの原因を詳しく調べてもらえます。
子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性もあるので、早期治療のためにも婦人科を受診しましょう。痛みが続く場合は、ホルモン療法の種類の変更も検討できます。
閉経症状に悩む患者さんに対して行われた研究では、複数の療法の効果を測定しました。経口エストラジオールとメドロキシプロゲステロンの併用療法や、経口エストラジオールと一般的な健康指導を組み合わせた療法です。症状の重症度改善に効果が期待でき、吐き気や嘔吐、乳房痛といった副作用が少ない傾向があることが報告されています。
ピルにもさまざまな種類があり、ホルモンの種類や配合量が異なります。ご自身の状態に合った治療法を見つけるためにも、医師との相談が重要です。
市販の鎮痛剤を服用する
市販の鎮痛剤は、排卵痛の痛みを一時的に和らげるのに役立ちます。ドラッグストアなどで手軽に購入できる鎮痛剤はさまざまな種類があります。薬剤師に相談して自分に合った鎮痛剤を選ぶと安心です。
鎮痛剤はあくまで対症療法であり根本的な解決にはなりません。痛みが続く場合は、自己判断で服用を続けず、必ず婦人科を受診するようにしてください。
低用量ピルへの変更を検討する
ピルにはさまざまな種類があり、ホルモンの含有量が異なります。現在服用しているピルが体に合わず、副作用として排卵痛のような痛みが出ている場合は、低用量ピルへの変更を検討しましょう。
低用量ピルはホルモンの含有量が少なく、副作用も比較的少ない傾向があります。ピルの変更は必ず医師の指示に従って行うようにしてください。
ホルモンバランスを整える生活習慣を心がける
ホルモンバランスの乱れは、排卵痛だけでなくさまざまな不調を引き起こす可能性があります。以下のとおり、規則正しい生活を送り、ホルモンバランスを整えるように心がけましょう。
- バランスの良い食事を摂る
- 適度な運動をする
- 質の高い睡眠を確保する
- ストレスを溜め込まない
生活習慣を改善することで、排卵痛の緩和だけでなく全身の健康維持にもつながります。
他の避妊方法を検討する
ピルは避妊効果の高い方法ですが、飲み忘れがあると効果が薄れてしまい、排卵が起こり排卵痛につながる可能性があります。ピル以外の避妊方法として、コンドームや膣内リング(ホルモン放出子宮内避妊システム:IUS)などがあります。ピルと併用することで、より確実な避妊効果が期待できます。
自分に合った避妊方法を医師と相談しながら選択しましょう。ピル以外の避妊方法では排卵は起こり、排卵痛への直接的な予防策にはならないため注意が必要です。
まとめ
ピルを正しく飲んでいても、飲み忘れや副作用、婦人科疾患が隠れていると、排卵痛が起こる場合があります。排卵痛への対処法は、婦人科の受診、市販の鎮痛剤の服用、低用量ピルへの変更、生活習慣の改善などがあります。少しでも不安な痛みがあれば、自己判断せず婦人科を受診しましょう。
医師の診察で原因を特定し、適切な対処法を見つけることが大切です。ピルは排卵痛や月経に関する悩みを改善する有効な手段の一つです。自分に合ったピルを見つけるためにも、医師に相談し、安心してピルを服用できるようにしましょう。
当院では、子宮鏡検査も行っています。どのタイミングで受けるべきか、検査の内容なども解説しているので、ぜひ以下の記事もご覧ください。
>>子宮鏡検査はいつ受ける?検査の内容や痛み、かかる費用を徹底解説
参考文献
Liping Wang, Xinrui Luo, Mulan Ren, Yan Wang. Hormone therapy with different administration routes for patients with perimenopausal syndrome: a systematic review and network meta-analysis. Gynecol Endocrinol, 2025, 41, 1, p.2462067