
卵巣出血と性行為の関係性!原因と対処法、予防のポイント
公開日:2025.03.18更新日:2025.03.18
下腹部痛や出血を経験されたことはありますか?卵巣出血は、女性が経験する可能性のある症状の一つです。日本では、婦人科系の疾患に対する意識が低いと言われており、症状を我慢したり、放置したりするケースも少なくありません。この記事では、卵巣出血と性行為の関連性や原因と対処法、予防策まで、わかりやすく解説します。
正しい知識を持つことで、適切な対応ができるようになり、不安を軽減しながら自分の体を大切にすることができます。健康と安心のためにも、ぜひ最後までご覧ください。
卵巣の異常の中でも比較的多いのが卵巣嚢腫です。卵巣嚢腫は、多くの場合良性ですが、放置すると痛みや不正出血、卵巣のねじれ(卵巣捻転)などのリスクを伴うことがあります。卵巣嚢腫になりやすい人には、体質や生活習慣に共通する特徴があるといわれており、予防のための知識を持つことが大切です。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>卵巣嚢腫になりやすい人の特徴と予防法!体質や生活習慣との関連性
性行為と卵巣出血の関連性について
性行為自体が直接卵巣出血を引き起こすわけではありません。性行為中の物理的な刺激が卵巣に負担をかける可能性があります。物理的な刺激は以下のとおりです。
- 卵胞への刺激
排卵期前後に卵巣にできた卵胞はデリケートな状態です。卵胞は卵子を包む袋状の構造で、排卵期になると成熟し、破裂して卵子を放出します。卵胞が性行為による刺激で破裂すると、卵胞出血が起こることがあります。出血は少量であることが多いですが、大量出血につながる可能性もあります。 - 黄体への刺激
排卵後に形成される黄体もデリケートです。黄体は卵胞が変化したもので、妊娠を維持するホルモンを分泌する役割を担っています。黄体に出血が起こり、黄体の中に血液が溜まる状態を出血性黄体嚢胞と言います。性行為による刺激で破裂し、出血が悪化するリスクがあります。
性行為後1〜2日後に強い腹痛が生じるケースでは、出血性黄体嚢胞の破裂が原因の可能性があります。卵巣出血の原因はさまざまですが、外傷や内因性の要因(血液凝固異常など)も卵巣出血を引き起こすことがあります。
卵巣の健康は妊娠にも大きく関わります。不妊症の原因は女性側だけでなく、男性不妊の影響も考えられます。不妊症の原因や男女比について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>不妊症の原因について!女性のみならず男性不妊や男女比も合わせて解説
卵巣出血の主な原因3選
卵巣出血は、少量で自然に止まることが多いです。しかし、大量出血や激しい痛みを伴う場合もあるため、症状に応じた適切な対応が重要です。卵巣出血の原因として、以下の3つが考えられます。
- 排卵
- 排卵期の性行為
- その他の要因(激しい運動・抗凝固薬の服用など)
排卵
多くの女性は、月経周期に合わせて、卵巣から卵子が排出される排卵が起こります。卵巣の中には卵胞と呼ばれる小さな袋があり、袋の中に卵子が育ちます。排卵は、成熟した卵胞が破裂し、卵子が卵巣から飛び出す現象です。卵胞が破裂した部分の血管から少量の出血が起こることがあります。排卵出血と呼ばれるもので、生理が始まる約2週間前に起こることが多いです。
多くの場合、出血量は少量で、痛みもほとんどありません。おりものに少量の血が混じる程度で、気づかない方もいます。まれに大量出血や激しい痛みを伴うことがあり、注意が必要です。出血が続く、痛みが強いなどの症状がある場合は、婦人科を受診してください。超音波検査などで卵巣の状態を確認し、適切な処置を受けることができます。
排卵期の性行為
性行為も卵巣出血の原因となることがあります。性行為中の物理的な刺激や圧迫によって、卵巣や周辺の組織が傷つき、出血が起こる可能性があります。排卵期は卵巣が腫れているため、性行為による刺激で出血しやすくなります。排卵期以外にも、卵巣に腫瘍や嚢胞がある場合、性行為によって破裂し、出血を引き起こす可能性も考えられます。
性行為後に急激な下腹部痛や出血がある場合は、卵巣出血の可能性を疑い、速やかに医療機関を受診することが重要です。出血量が少ない場合は安静にして経過観察を行うことが一般的ですが、出血量が多い場合は輸血や手術による止血が必要となることもあります。
その他の要因(激しい運動・抗凝固薬の服用など)
排卵や性行為以外にも、以下のような行動は卵巣出血を招く原因です。
- 激しい運動や腹部への強い衝撃
卵巣出血のリスクを高める可能性があります。コンタクトスポーツや激しいトレーニングなどで腹部を強く打つと、卵巣が損傷し出血することがあります。交通事故などの外傷も原因となることがあります。 - 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の服用
出血しやすくなり、卵巣出血のリスクが高まります。抗凝固薬は、血栓症などの予防や治療に使用されますが、出血傾向が高まることがあります。抗凝固薬を服用している方は、医師の指示に従い、定期的な血液検査を受けるなど、注意が必要です。 - 子宮内膜症
子宮内膜症は、本来子宮の内側にある子宮内膜が、卵巣などの他の場所に発生する病気です。卵巣に発生した子宮内膜症は、月経周期に合わせて出血を繰り返すため、卵巣出血を引き起こすことがあります。 - 卵巣の腫瘍
良性・悪性に関わらず、出血を伴うことがあります。悪性腫瘍の場合、早期発見・早期治療が重要です。 - 血液凝固異常などの内因性の要因
血液が固まりにくい体質の方は、卵巣出血のリスクが高まるため、注意が必要です。
卵巣出血はさまざまな原因で起こりうるため、少しでも気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
卵巣出血を放置すると危険な症状を引き起こす可能性があります。症状の特徴や原因、注意が必要なサインについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>卵巣出血の症状と原因!放置すると注意が必要なサインと受診目安
卵巣出血時の適切な対処法
卵巣出血は、卵巣からの出血が腹腔内にたまる状態です。卵巣は、子宮の両脇にある、通常3〜5cmほどの大きさの臓器で、排卵や女性ホルモンの分泌を担っています。卵巣からの出血は、放置すると深刻な事態に陥る可能性もあるため、以下のような対処が重要です。
- すぐに安静にして、無理な動きを控えて体を休める
- 強い痛みや貧血症状がある場合は医療機関を受診する
- 病院での診察・治療を受ける
すぐに安静にして、無理な動きを控えて体を休める
卵巣出血が疑われる場合、最優先事項は「安静」です。卵巣は骨盤内に位置しており、下腹部痛や出血を伴うことがあります。激しい運動や重いものを持つなどの負荷は、出血を悪化させる可能性があります。安静にすることで、卵巣への負担を軽減し、出血量の増加を防げることができる場合があります。
楽な姿勢で横になり、体を休ませることが重要です。深呼吸やリラックスによって、痛みが和らぐことがあります。体を冷やさないようにすることが大切です。白湯やカフェインを含まない飲み物を選びましょう。カフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、控えることが望ましいです。
強い痛みや不安がある場合は、ためらわずに家族や友人に助けを求めましょう。周囲のサポートは、精神的な安定にもつながり、回復を早める助けとなります。
強い痛みや貧血症状がある場合は医療機関を受診する
安静にしていても、強い痛みや貧血症状(めまいや立ちくらみ、顔面蒼白、動悸、息切れなど)が現れた場合は、すぐに婦人科を受診してください。卵巣出血は、まれに大量出血を引き起こし、重篤な状態になる可能性があります。
出血が続いたり、痛みが強まったりする場合は、早急に医療機関に連絡し、指示を仰ぎましょう。救急車を呼ぶべきかどうかの判断も、医療従事者に相談することで適切な対応ができます。以下の症状が現れた場合は、緊急性が高いと考えられるため、迷わず救急車を要請してください。
- 意識がもうろうとする
- 冷や汗が止まらない
- 呼吸が苦しい
- 脈が速い、または弱い
病院での診察・治療を受ける
病院での診察は以下のとおりです。
- 問診
月経周期や性行為の有無、症状の経過などを確認 - 内診
子宮や卵巣の状態を直接確認し、出血の有無や量を評価 - 超音波検査
卵巣の状態を画像で確認し、腫瘍や嚢胞の有無、出血の範囲など検査 - 血液検査やMRI検査
必要に応じて検査
出血量別の治療は以下のとおりです。
- 出血量が少ない場合
安静と経過観察を行い、自然に止血するのを待ちます。鎮痛剤や止血剤を処方する場合もあります。 - 出血量が多い場合や、出血が止まらない場合
輸血や点滴、場合によっては手術が必要になることもあります。手術では、腹腔鏡手術や開腹手術を行い、出血部位を止血したり、損傷した卵巣を修復したりします。
卵巣出血の原因が黄体嚢胞の破裂だった場合、破裂した嚢胞が自然に吸収されるのを待ちます。子宮内膜症が原因の場合は、ホルモン療法や手術を行うこともあります。治療後も、医師の指示に従い、定期的に婦人科を受診し、経過観察を続けることが重要です。再出血の予防や、他の婦人科疾患の早期発見につながります。
日常生活における注意点や、性行為の再開時期についても医師に相談しましょう。
卵巣出血の予防策
卵巣出血は、誰にでも起こりうる症状です。突然の痛みや出血は不安に感じるものですが、以下の予防策を知ることで適切なケアでリスクを減らすことができます。
- 生活習慣を改善する
- ピルの使用について医師と相談する
- 定期的に婦人科を受診する
実践して、健やかな毎日を送りましょう。
生活習慣を改善する
卵巣の健康は、毎日の生活習慣と深く関わっています。バランスの良い食事や適度な運動、ストレスを上手に管理することは卵巣出血の予防につながります。卵巣の機能は、ホルモンバランスや血流と密接に関連しているため、良好に保つことが重要です。
- バランスの良い食事
栄養バランスの良い食事は、ホルモンバランスを整え、卵巣機能をサポートします。鉄分やビタミンC、ビタミンEなどの栄養素が重要です。鉄分は赤身の肉やほうれん草、ビタミンCは柑橘系の果物やブロッコリー、ビタミンEはナッツやアボカドに多く含まれています。貧血は卵巣出血の症状を悪化させる可能性があるため、鉄分の摂取は重要です。 - 適度な運動
適度な運動は、血行を促進し、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられる運動を選び、習慣化が大切です。激しい運動はかえって卵巣に負担をかける場合があるので、運動強度には注意が必要です。卵巣出血の既往がある方は、医師に相談しながら適切な運動の種類や強度を決めましょう。 - ストレス管理
ストレスはホルモンバランスに影響を与える可能性があり、体調管理の観点から注意が必要です。ストレスをため込まないよう、趣味やリラックスできる時間を持つ、睡眠時間をしっかり確保するなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、実践することが重要です。
ピルの使用について医師と相談する
ピル(低用量経口避妊薬)を服用することで、ホルモンバランスをコントロールし、排卵を抑えられます。排卵が原因で起こる卵巣出血の予防に効果的です。ピルは排卵そのものを抑制するため、排卵に関連した卵巣出血のリスクを減らすことができます。婦人科で相談し、自分に合ったピルを選びましょう。
医師とよく相談し、自分の体質やライフスタイルに合ったピルを選ぶことが大切です。ピルに含まれるプロゲステロン様成分(黄体ホルモン)は、卵巣機能だけでなく、全身にさまざまな影響を与える可能性があります。ピルの効果とともに起こりうる副作用についても医師と相談しましょう。
定期的に婦人科を受診する
卵巣出血に限らず、婦人科系の疾患は早期発見が重要です。年に一度は婦人科を受診することで、卵巣出血を含む婦人科系の病気の早期発見・治療につながります。卵巣の状態をチェックしてもらうことで、早期発見ができて症状の悪化を防げる可能性があります。結果的に、治療期間の短縮にもつながる場合があります。
まとめ
性行為は卵巣出血を直接引き起こすわけではありません。排卵期周辺のデリケートな時期には、性行為による物理的な刺激が卵巣に負担をかけ、出血を悪化させる可能性があります。卵巣出血時は安静を第一に、強い痛みや貧血症状があればすぐに病院を受診しましょう。
日頃からバランスの良い食事や適度な運動、ストレス管理を心がけ、ピルの服用や定期的な婦人科検診も予防策として有効です。ご自身の体と向き合い、健康的な生活を送りましょう。
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参考文献
- Eva Dreisler, Christian Seerup Frandsen, Lian Ulrich. Perimenopausal abnormal uterine bleeding. Maturitas, 2024, 184, 107944.
- Michaela Jewson, Prashant Purohit, Mary Ann Lumsden. Progesterone and abnormal uterine bleeding/menstrual disorders. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol, 2020, 69, p.62-73.