
ピルの飲み忘れで不正出血が起きる理由と正しい対応法
公開日:2025.03.18更新日:2025.03.18
ピルを飲み忘れた経験はありませんか?ピルはホルモンバランスを調整することで避妊効果を発揮しています。飲み忘れで、バランスが崩れることが不正出血の主な原因です。ホルモンの乱れは子宮内膜を不安定にし、出血を招いてしまいます。
この記事では、ピルの飲み忘れで不正出血が起こる理由や適切な対処法、飲み忘れを防ぐための対策を解説します。ピルを適切に使用するために、ぜひご一読ください。
不正出血にはさまざまな原因があり、ピルの影響だけでなく、婦人科系の疾患が関係している可能性もあります。生理との違いや受診の目安について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
>>不正出血を放置しないで!原因や生理との違い、受診の目安まで徹底解説
ピルの飲み忘れで不正出血が起こる理由
ピルの飲み忘れで不正出血が起こる理由として、以下のことが関係します。
- ホルモンバランスの乱れ
- 排卵
- 生理周期の不安定化
- 妊娠
ホルモンバランスの乱れ
ピルを飲み忘れると、ホルモンバランスが乱れ、子宮内膜の状態が不安定になります。ホルモンの血中濃度が急激に低下すると、子宮内膜が剥がれ落ち、不正出血が起こることがあります。
ピルには、体内で自然に分泌されるエストロゲンとプロゲスチンと似た働きをする成分が含まれています。毎日きちんと服用することで、ホルモンの血中濃度を一定に保ち、排卵を抑制する働きをしています。
プロゲスチン単独のピル(ミニピルなど)や、エストロゲンとプロゲスチンの両方を含むピル(配合ピル)などがあります。プロゲスチン単独のピルのほうが、ホルモンの血中濃度が変動しやすく、飲み忘れによる不正出血のリスクが比較的高いです。
配合ピルを服用している方でも、飲み忘れはホルモンバランスの乱れにつながりますので、注意が必要です。
排卵
ピルは排卵を抑えることで避妊効果を発揮しますが、飲み忘れで効果が弱まり、排卵が起こってしまうケースがあります。排卵が起こると、卵子が放出された後に卵巣の中に黄体ができます。黄体からはプロゲスチンが分泌され、子宮内膜を厚く保つ働きをします。
しかし、ピルの服用が中断されるとプロゲスチンの分泌が減少し、子宮内膜が剥がれ落ちて出血が起こることがあります。通常、ピルを正しく服用している場合は排卵は起こりませんが、飲み忘れによって排卵のリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。
ピルを服用していると排卵の仕組みが通常とは異なり、妊娠のリスクにも影響を与えます。ピル服用中の排卵日や妊娠の可能性について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>ピル服用中の排卵日はいつ?仕組みと妊娠リスクを解説
生理周期の不安定化
ピルの飲み忘れがあると、この安定した周期が乱れることがあります。通常、ピルを服用することで、生理周期は28日周期で安定します。ピルがホルモンバランスを一定に保つことで、子宮内膜の増殖と剥離をコントロールしているためです。
生理周期が乱れると、ホルモンバランスの乱れで子宮内膜の状態が不安定になり、不正出血が起こりやすくなります。
妊娠
ピルは正しく服用すれば高い避妊効果がありますが、飲み忘れがあると効果が低下し、妊娠する可能性があります。プロゲスチン単独避妊薬に関する論文でも、不正出血は不満足感や服用中止の主な原因となることが指摘されています。
不正出血はピルの服用継続の妨げとなる可能性も示唆されています。飲み忘れで妊娠のリスクが高まることを理解し、適切な対処法をとることが重要です。万が一、妊娠の可能性が懸念される場合は、速やかに医療機関に相談しましょう。
ピルを飲み忘れたときの正しい対処法
ピルを飲み忘れたときの正しい対処法は以下のとおりです。
- すぐに飲む
- 2錠分を同時に飲まない
- 追加の避妊法を使用する
- 医療機関に相談する
すぐに飲む
ピルを飲み忘れたことに気づいたら、すぐに1錠服用しましょう。思い出した時間が、いつもピルを飲む時間から12時間以内であれば、次のピルはいつもの時間に飲んでください。
12時間以上過ぎていた場合は、気づいたときにすぐに1錠飲み、次のピルもいつもの時間に飲みます。この場合、次のピルを飲むまでの間隔が短くなりますが、問題ありません。
2錠分を同時に飲まない
飲み忘れに気づいて焦る気持ちは分かりますが、2錠同時に飲んでしまうのは避けましょう。一度に多くのホルモンを摂取すると、吐き気や不正出血などの副作用が出やすくなる可能性があります。ピルは、毎日決まった時間に1錠飲むことで効果を発揮する薬です。2錠同時に飲んでも、効果が2倍になるわけではありません。
低用量ピルは正しく服用すれば避妊効果が高いですが、副作用が出ることもあります。副作用の種類や対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>低用量ピルの副作用を解説!知っておくべきリスクと対処法
追加の避妊法を使用する
ピルを飲み忘れると、ホルモンバランスが乱れ、避妊効果が低下する可能性があります。そのため、飲み忘れに気づいた日から7日間は、コンドームなどの追加の避妊法を使用することをおすすめします。飲み忘れが2日以上続いた場合は、追加の避妊を必ず行ってください。
ピルを7日間連続で飲むことで、ホルモンバランスが整い、避妊効果が安定するためです。
医療機関に相談する
不正出血が続く、あるいは他に気になる症状がある場合は、ためらわずに医療機関に相談しましょう。自己判断で対処するのではなく、専門家のアドバイスを受けることが大切です。医師に相談することで、あなたの状況に合った適切な対応法を知ることができます。
ピルにはさまざまな種類があり、飲み忘れ時の対応もそれぞれ異なる場合があります。不正出血の原因がピルの飲み忘れ以外の可能性もあります。
ピルの飲み忘れを防ぐ工夫4選
ピルは、正しく服用することで避妊効果が得られ、生理周期の安定も期待できる薬です。ピルの飲み忘れを防ぐための具体的な方法として、以下の4つを解説します。
- 服用するタイミングを決めておく
- アラームを設定しておく
- 目につきやすい場所に置く
- ピルケースやアプリを活用する
ピルをより安心して、効果的に服用できるように参考にしましょう。
服用するタイミングを決めておく
ピルの服用は、毎日のルーティンに組み込むことが忘れないための秘訣です。毎日同じ時間に服用することで、習慣化され、飲み忘れのリスクを減らすことができます。毎朝の歯磨き後や朝食後、あるいは就寝前など、毎日必ず行う行動とセットにするのがおすすめです。
曖昧な時間設定ではなく「午前8時」「午後10時」など時間を決めることで、より確実に服用できます。服用記録をつけることも有効です。手帳やカレンダー、専用のアプリを活用して、服用の有無を記録することで、飲み忘れの確認ができます。不正出血などの症状が現れた際に、医師に伝えるべき情報を整理するのにも役立ちます。
アラームを設定しておく
スマートフォンのアラーム機能は、ピルの飲み忘れ防止に役立ちます。ピルを飲む時間をセットしておけば、毎日アラームが鳴り、服用を促してくれます。単に時間を設定するだけでなく、アラーム音やスヌーズ機能などを工夫することで、より効果的に活用できます。
気づきやすいように大きな音や特徴的なメロディーを設定し、慣れてきたら好きな音楽に変更するなど、最適な設定を見つけましょう。うっかりアラームを止めてしまった場合に備えて、スヌーズ機能を設定しておくと安心です。スヌーズの間隔も、自分の生活リズムに合わせて調整しましょう。
服用時間の少し前にもアラームを設定しておくと、より確実に飲み忘れを防ぐことができます。服用時間の30分前と15分前にアラームを設定しておけば、時間に余裕を持って準備ができます。
目につきやすい場所に置く
ピルを置く場所は、飲み忘れ防止に直結する重要なポイントです。毎日必ず目にする場所に置いておくことで、視覚的に服用を促すことができます。洗面台や化粧ポーチ、寝室のベッドサイドテーブルなど、自分が毎日必ず確認する場所に置いておきましょう。
ピルケースやアプリを活用する
ピルケースを使うのもおすすめです。飲み忘れを防ぐ工夫を凝らし、正しく服用することで、効果を最大限に活かすことができます。万が一、飲み忘れてしまった場合は、自己判断せずに、速やかに医師に相談しましょう。
ピルの飲み忘れに関するよくある質問
ピルを飲み忘れるとホルモンバランスが崩れ、一時的に不正出血が起こることがありますが、通常は数日で落ち着きます。もし不正出血が長く続いたり、体調に異変を感じたりする場合は、注意が必要です。ピルの飲み忘れに関して、以下のよくある質問を解説します。
- 何日以上続くと危険ですか?
- 受診が必要な症状は何ですか?
何日以上続くと危険?
ピルの飲み忘れによる不正出血は、通常プロゲスチン数日〜1週間以内には落ち着きます。1週間以上長引く場合や、出血量が異常に多い場合は注意が必要です。3日〜5日程度の少量の出血であれば、ホルモンの乱れによる一時的なものであり、そこまで心配する必要はありません。しかし、以下の場合は危険信号です。
- 1週間以上、不正出血が止まらない:子宮内膜が不安定な状態が続いている可能性がある
- ナプキンが1時間に何度も必要なほど大量に出血する:ホルモンの乱れが強く、貧血のリスクがある
- 生理のような出血が何度も起こる:飲み忘れを繰り返していると、生理周期が乱れ、子宮内膜が不安定になることがある
突然強い腹痛を伴う出血の場合は、子宮外妊娠などの可能性もゼロではないため、すぐに医師の診察を受けるべきです。不正出血が続くと、体がだるくなったり、貧血になったりすることもあるので、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
特に、不正出血はピルの副作用の一つとしてよく見られます。原因や対処法、受診のタイミングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>ピルの服用中の不正出血は副作用?原因や対処法、受診の目安を解説
受診が必要な症状
不正出血に加えて、以下の症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 出血が多すぎる
生理よりも多く、ナプキンを1時間に何度も交換するようなら要注意です。ホルモンの異常や別の病気が疑われます。 - 強い腹痛や下腹部の違和感
- キリキリ・ズキズキと強い痛みを伴う場合、子宮や卵巣の異常の可能性があります。子宮外妊娠のリスクもあるため、早めの受診が必要です。
- 貧血症状(めまい・ふらつき・息切れ)
出血が続くと血液が不足し、立ちくらみや動悸、息切れが起こることもあります。ひどい場合は早めに相談しましょう。 - 1週間以上出血が続く
通常、不正出血は数日でおさまります。1週間以上続く場合、ホルモンバランスが乱れたままの可能性があるため、医師に相談しましょう。
発熱や体調不良が伴う場合も注意が必要です。38℃以上の発熱や寒気、だるさがある場合は、子宮や卵巣の炎症(子宮内膜炎など)の可能性があります。少しでも違和感がある際は、医師へ相談しましょう。
まとめ
ピルの飲み忘れは不正出血だけでなく、避妊効果の低下にもつながるため、注意が必要です。飲み忘れを防ぐには、服用時間をルーティン化したり、アラームを設定したり、目に付きやすい場所に保管するなどの工夫が有効です。
万が一飲み忘れた場合は、すぐに1錠服用し、必要に応じて追加の避妊法を使用しましょう。心配な症状が現れたり、飲み忘れへの対応に不安を感じたりしたら、自己判断せずに医療機関に相談することが大切です。ピルとうまく付き合うために、正しい知識と適切な行動を心がけましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、ピルに関するご相談から、あらゆる婦人科疾患の悩みまで、幅広く対応しているクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
参考文献
RachelE Zigler, Colleen McNicholas. Unscheduled vaginal bleeding with progestin-only contraceptive use. Am J Obstet Gynecol, 2017 May;216(5):443-450.