
生理と不正出血の違いとは?見分け方と受診が必要なケース
公開日:2025.03.18更新日:2025.03.18
不正出血は多くの女性が経験する症状です。不正出血の原因はさまざまです。ホルモンバランスの乱れや子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)などの良性のものから、がんなどの病気が隠れている可能性もあります。
不正出血は、10代の若い女性から更年期を迎えた女性まで、どの世代でも起こる可能性があります。この記事では、生理と不正出血の違いと見分け方、不正出血の原因と受診が必要なケースについて解説します。不正出血に対する理解を深め、ご自身の状況に応じた適切な対応を検討するためにお役立てください。
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生理と不正出血の違い・見分け方
生理は、妊娠していない女性の体で約1か月周期で起こる正常な出血です。子宮の内側にある子宮内膜(しきゅうないまく)は、受精卵が着床しやすいように厚みを増します。妊娠しなかった場合は、内膜が剥がれ落ちて血液とともに排出されます。生理周期には個人差があり、25〜38日周期で4〜7日間続くのが一般的です。
不正出血は、生理以外の時期や閉経後に起こる性器からの出血を指します。思春期や更年期の女性は、ホルモンバランス(体内の調節機能)が変動しやすいため注意が必要です。見分け方のポイントは、出血タイミングや出血量、血液の状態の3つがあります。
出血タイミングは、普段の生理予定日より早い出血や高温期(基礎体温が上昇する期間)中に出血がある場合は、不正出血の可能性が高くなります。出血量では、夜用ナプキンでも漏れるほどの大量出血や、おりものに少量の血が混じる状態が続く場合は危険信号です。血液の状態では、鮮やかな赤色だけでなく茶色や黒っぽい色、レバー状の塊や水っぽい出血が特徴です。
原因は、ホルモンバランスの乱れから子宮筋腫や子宮頸がんなどの疾患まで多岐にわたります。症状が続く場合は自己判断せず、速やかに婦人科を受診しましょう。
不正出血の種類
不正出血の種類は、以下のとおりです。
- 器質性出血
- 機能性出血
- 中間出血(排卵期出血)
- その他の出血
器質性出血
器質性出血(きしつせいしゅっけつ)とは、子宮や卵巣、膣(ちつ)などの性器に疾患がある場合に起こる出血です。以下の原因疾患が挙げられます。
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 子宮頸がん
- 子宮体がん
- ポリープ
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性腫瘍で、30〜40代の女性に多く見られます。月経量の増加や強い生理痛に加え、不正出血を引き起こすことが特徴です。大きさが5cm以上になると、頻尿や腰痛などの症状が現れる場合があります。
子宮内膜症は、子宮内腔(しきゅうないくう)以外の場所に子宮内膜組織が発生する病気です。卵巣や腹膜(ふくまく)にできた場合、激しい月経痛や性交痛を伴う不正出血が特徴的です。20〜30代の女性に多く、不妊症の原因になる可能性があります。
子宮頸がんは子宮頸部(子宮の入り口)に発生するがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因です。初期症状が少ないため、性交時出血や茶色いおりものが続く場合は注意が必要です。子宮体がんは子宮内膜から発生し、閉経後の女性に多く見られます。少量でも持続する不正出血が、早期発見につながるため注視しましょう。
ポリープは子宮内膜や頸管(けいかん)にできる良性腫瘍で、直径1cm未満でも出血を起こします。更年期前後の女性に多く、超音波検査で簡単に発見できる特徴があります。
機能性出血
機能性出血(きのうせいしゅっけつ)は、ホルモンバランスの乱れが原因で起こる不正出血です。思春期や更年期など、ホルモンバランスが大きく変化する時期に発生しやすい特徴があります。ストレスや過度なダイエット、睡眠不足、過労などもホルモンバランスを乱し、不正出血につながる可能性があります。
思春期の女の子は卵巣の働きが未熟で、ホルモンバランスが安定していないため、生理不順や不正出血がよく見られます。更年期を迎えた女性は、卵巣機能が低下し、ホルモン分泌量が減少してホルモンバランスが乱れることが、不正出血を引き起こす原因です。
ストレスは自律神経の調節機能(体のバランスを保つ働き)を崩し、ホルモン分泌に影響を与え、不正出血の原因になる可能性があります。過度なダイエットは栄養不足を招き、ホルモンバランスを乱す可能性があります。睡眠不足もホルモン分泌に悪影響を及ぼし、不正出血を誘発する原因です。
中間出血(排卵期出血)
中間出血(ちゅうかんしゅっけつ)は、生理と生理の中間時期の排卵期に起こる少量の出血現象です。原因は、排卵時のエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が一時的に減少し、子宮内膜の一部が剥がれることで発生します。特徴として、出血期間が1〜3日程度と短く、出血量もごく少量です。痛みや不快感を伴わないケースがほとんどです。
基礎体温表を作成している場合、低温期から高温期への移行時期に出血が起こるのが典型的なパターンです。この時期は排卵日と重なるため、妊娠を希望する方が排卵タイミングを把握する目安として活用できる場合があります。
中間出血は生理的な現象であり、治療を必要としないケースの可能性が高いです。出血が1週間以上続く場合や、出血量が増加する場合は、他の婦人科疾患との鑑別が必要になる可能性があります。基礎体温の記録と併せて、出血のパターンを観察することが大切です。
その他の出血
妊娠初期の着床出血や流産、子宮外妊娠なども不正出血の原因となる場合があります。着床出血(ちゃくしょうしゅっけつ)は、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる少量の出血です。妊娠の可能性がある場合、出血があったとしても安易に不正出血と判断せず、妊娠検査薬を使用するか医療機関を受診することが重要です。
低用量ピル(経口避妊薬)などのホルモン剤を服用している場合、薬剤の影響で服用開始後の数か月間、不正出血が見られることがあります。多くの場合、時間の経過とともに症状は落ち着きます。出血が長期間続く場合や量が増える場合は、性感染症や膣内の外傷など他の原因も考えられるため、医師に相談することをおすすめします。
低用量ピルは正しく服用すれば避妊効果が高いですが、副作用が出ることもあります。副作用の種類や対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>低用量ピルの副作用を解説!知っておくべきリスクと対処法
不正出血の原因
不正出血の原因は、以下のとおりです。
- ホルモンバランスの乱れ
- 子宮筋腫や子宮内膜症、子宮がんなどの婦人科疾患
- ストレス、過度なダイエット
- 薬の副作用
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、不正出血の最も一般的な原因の一つです。女性の体内では、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの相互作用によって月経周期が調整されています。
思春期や更年期など、ライフステージの変化に伴うホルモン分泌の増減が、不正出血を引き起こす可能性があります。ストレスや過労による自律神経の乱れ、極端なダイエットによる栄養不足、睡眠不足や不規則な食生活などが要因となって、子宮内膜を不安定にし、不正出血につながる可能性があります。
子宮筋腫や子宮内膜症、子宮頸がん等の婦人科疾患
不正出血の原因となる婦人科疾患は、以下のとおりです。
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 子宮頸がん
- 子宮体がん
子宮筋腫は、子宮の筋肉に発生する良性腫瘍です。不正出血以外にも、月経過多や貧血、頻尿、便秘などの症状を伴うことがあります。子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮以外の部位に発生する病気です。強い生理痛や性交痛、不正出血などの症状を引き起こします。
子宮頸がんは、子宮頸部に発生するがんで、早期発見が重要です。初期段階では自覚症状がない場合があり、進行すると不正出血や、おりものの異常が見られます。子宮体がんは、子宮内膜に発生するがんで、閉経後や閉経前後の女性に多く、不正出血が主な症状として現れます。
婦人科疾患は、早期発見と早期治療が重要です。不正出血などの症状を放置せず、早めに婦人科の受診を検討しましょう。婦人科では問診や内診、超音波検査(エコー)、子宮鏡検査、組織診などを通じて診断を行います。近年では画像診断技術の向上により、診断の正確性が高まっています。
ストレス・過度なダイエット
ストレスにより自律神経が乱れると、ホルモンバランスが崩れ、不正出血を引き起こす場合があります。過剰なストレスが心身に悪影響を及ぼす可能性があります。長期にわたるストレスは、視床下部(ししょうかぶ)や下垂体(かすいたい)、卵巣系の機能障害を招き、月経異常の原因となるため注意が必要です。
過度なダイエットも不正出血の要因となる可能性があります。栄養バランスの偏りは、ホルモン生成に必要なビタミンやミネラルの不足を招き、内分泌機能を低下させる可能性があります。
タンパク質や鉄分の摂取不足が、エストロゲン分泌を抑制し、月経周期の乱れを引き起こす要因です。無理な食事制限に加えて過度な運動を併用すると、リスクが高まることが指摘されています。
薬の副作用
薬の副作用で、不正出血を引き起こす可能性があります。以下の薬を服用している場合は、注意が必要です。
- 抗凝固薬(こうぎょうこやく):血液をサラサラにする薬
- 抗うつ薬
- ホルモン剤
- 抗炎症薬
- 一部の抗生物質
薬の服用後に不正出血が起きた場合は、自己判断で服用を中止せず、医師や薬剤師に相談しましょう。薬の種類を変更したり、服用量を調整したりすることで、不正出血が改善する可能性があります。
不正出血にはさまざまな原因があり、ピルの服用も影響を与えることがあります。 ピルを服用中の不正出血が副作用によるものなのか、また、どのように対処すればよいのか詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>ピルの服用中の不正出血は副作用?原因や対処法、受診の目安を解説
受診が必要なケース
不正出血の多くは一時的なものが多いですが、中には検査が必要なケースもあります。以下に当てはまる場合は、放置せずに早めに婦人科を受診しましょう。
- 出血量が多い
- 出血が長引いている
- 下腹部痛や発熱の症状がある
- 妊娠している
出血量が多い
出血量が多い場合、貧血や他の病気を引き起こす可能性があります。普段の生理と比べて明らかに出血量が多い場合や、以下の症状がある場合は注意が必要です。
- 生理用ナプキンが、1~2時間で吸収しきれなくなる
- 夜用ナプキンでも漏れてしまう
- レバー状の血の塊が多く見られる
大量出血は、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系疾患が原因である可能性があります。お風呂場で湯船が真っ赤に染まる、シャワーを浴びても出血が止まらないといった場合は、一刻も早く医療機関の受診をおすすめします。
めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、顔面蒼白など、貧血の症状が現れた場合も速やかに医療機関の受診を検討してください。出血が続く場合は、貧血の進行を防ぐためにも、迅速な対応が重要です。大量出血による貧血は、日常生活に支障をきたす可能性があり、重症化を防ぐためにも医師の診察を受けることが大切です。
出血が長引いている
出血が長引く場合は、貧血や他の疾患のリスクが高まる可能性があります。通常の生理期間は4〜7日程度ですが、10日以上続く場合は注意が必要です。長引く出血の主な原因は、以下のとおりです。
- ホルモンバランスの乱れ
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 子宮体がん
- 子宮頸がん
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮頸管ポリープ
出血の原因を特定するには、婦人科を受診し必要な検査を受けることが重要です。早期発見と早期治療により、症状の悪化や将来的な健康問題を防げる可能性があります。更年期に差し掛かるとホルモンバランスが大きく変動し、出血期間が長引くこともあります。
更年期だからといって、必ずしも出血が長引くわけではありません。いつもと異なる出血パターンが続く場合は、自己判断せず医師に相談することが大切です。
下腹部痛や発熱の症状がある
不正出血に加えて、下腹部痛や発熱がある場合は、子宮や卵巣の炎症や感染症の可能性があります。不正出血とともに起こりうる症状と原因は、以下のとおりです。
- 下腹部痛:子宮内膜症や卵管炎、骨盤腹膜炎が原因となり、軽い鈍痛から激しい痛みまで、痛みの症状はさまざまある
- 発熱:感染症が原因となる
- 痛み:ズキズキとした痛みや締め付けられるような痛みがある
- 発熱:微熱〜高熱まである
高熱や激しい痛みがある場合は、緊急性が高いため、直ちに医療機関を受診しましょう。症状を放置すると重症化する可能性があります。我慢せずに早めの受診を心がけることが大切です。
不正出血や下腹部の痛みが見られる場合、子宮筋腫が影響している可能性もあります。 子宮筋腫は、女性ホルモンの変化と深く関わっており、ピルや性行為が影響することもあります。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
妊娠している
妊娠の可能性がある場合や妊娠中に不正出血が見られる場合は、注意が必要です。妊娠中の不正出血の主な原因と特徴は、以下のとおりです。
- 着床出血:受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる少量の出血(通常は数日で治まる)
- 流産や子宮外妊娠:妊娠初期の出血で注意すべき危険な兆候
- 常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり):妊娠後期に鮮血が見られる場合に疑われる状態
妊娠初期はホルモンバランスが大きく変化するため、少量の出血が見られることもあります。持続的な出血や腹痛を伴う場合は、注意が必要です。妊娠後期の鮮血は重大な疾患の兆候である可能性があるため、速やかに医療機関の受診を検討しましょう。
妊娠中は普段以上に体の変化に気を配り、少しでも異常を感じた場合は自己判断せず、産婦人科に相談することが重要です。適切な診断と治療を受けることで、母体と胎児の健康を守ることにつながります。
まとめ
生理以外の出血は、不正出血の可能性があります。不正出血には、さまざまな原因があり、ホルモンバランスの乱れや子宮筋腫などの病気が隠れている可能性もあります。不正出血は、早期発見・早期治療が大切です。
出血のタイミングや量、色、状態などを普段の生理と比較して、少しでも異変を感じたら、医療機関への受診をおすすめします。出血量が多い場合や出血が長引く場合、腹痛や発熱を伴う場合は放置せずに早めに相談することが重要です。
不正出血の原因や生理との違い、受診の目安について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>不正出血を放置しないで!原因や生理との違い、受診の目安まで徹底解説
参考文献
Whitaker L, Critchley HOD. Abnormal uterine bleeding. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol, 2016 Jul;34:54-65.