
高齢出産のリスクと心構え!年代別の妊娠・出産データから読み解く
公開日:2025.02.26更新日:2025.02.26
35歳以上の出産を「高齢出産」と呼びますが、晩婚化の影響で近年増加傾向にあります。厚生労働省の人口動態統計(2023年)によれば、第一子出産における35歳以上の割合は約21%と、5人に1人が高齢出産です。
高齢出産には、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの母体へのリスクやダウン症候群などの胎児へのリスクがあります。一方で、経済的・精神的な安定といったメリットも存在します。この記事では、高齢出産のリスクとメリット・デメリット、年代別の妊娠・出産データ、そして成功のためのポイントを詳しく解説します。
高齢出産を考えている方、既に妊娠している方は、ぜひこの記事を読んで、不安を解消し、安心して妊娠生活を送りましょう。
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高齢出産のリスク
高齢出産のリスクとして、以下の項目に分けて解説します。
- 母体へのリスク:妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病など
- 胎児へのリスク:ダウン症候群・先天性心疾患など
母体へのリスク:妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病など
高齢出産は母体への負担が増大し、リスクを伴います。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は、特に注意が必要な疾患と考えられています。妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降または産後12週までに高血圧や蛋白尿、むくみなどの症状が現れます。重症化すると、母体だけでなく胎児の生命にも危険が及ぶ可能性があります。
医学的データによれば、35歳以上の妊婦は、妊娠高血圧症候群の発症率が高くなる傾向があります。健診で血圧が高い、尿蛋白が出ていると指摘されたら、医師の指示をしっかり守り、自宅でも血圧測定や体重管理を徹底することが大切です。妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて診断される糖代謝異常のことを指します。
胎児の発育に影響を与え、巨大児や羊水過多、難産や帝王切開のリスクを高める可能性があります。母体にも高血圧や網膜症などの合併症を引き起こすリスクがあり、注意が必要です。高齢出産では早産流産や前置胎盤、常位胎盤早期剥離や産後出血、子宮の収縮不良などのリスクも高まります。
合併症は、年齢を重ねるごとにリスクが増加する傾向が報告されており、40歳以上の妊婦では、より慎重な健康管理が推奨されています。日本産科婦人科学会では、35歳以上での出産を「高年初産婦(こうねんしょさんぷ)」と定義しており、年齢に伴い一部の合併症リスクが上昇することが報告されています。
前置胎盤は、胎盤が子宮口を塞いでしまうことで、大量出血を引き起こす危険な状態です。
胎児へのリスク:ダウン症候群・先天性心疾患など
胎児へのリスクとしては、ダウン症候群などの染色体異常や先天性心疾患、早産、低出生体重児などのリスクが代表的です。染色体異常は、細胞分裂の過程で染色体の数が変化することで起こります。高齢出産では卵子の染色体異常の確率が高くなるため、ダウン症候群などのリスクが増加します。
ダウン症候群は、21番染色体が通常2本ではなく3本になる染色体異常で、発達の特性や特有の身体的特徴が見られることがあります。先天性心疾患は、心臓の構造に異常がある状態で生まれてくる疾患です。高齢出産は、胎児の先天性心疾患のリスクを高める要因の一つです。
代表的なものとして、心室中隔欠損やファロー四徴症などがあり、重症の場合、出生直後から手術が必要になることもあります。早産は妊娠37週未満で出産することを指し、低出生体重児は出生時の体重が2,500g未満であることを指します。
早産で生まれた赤ちゃんは、呼吸器や消化器などの機能が未熟なため、新生児集中治療室(NICU)での管理が必要となるケースもあります。
高齢出産のメリット・デメリット
高齢出産のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- メリット:子育て経験を活かせる・経済的安定など
- デメリット:体力的な負担・キャリアへの影響など
メリット:子育て経験を活かせる・経済的安定など
高齢出産にはリスクだけでなく、メリットも存在します。豊富な人生経験を活かし、落ち着いて子育てに臨めること、経済的に安定している場合が多いことなどが挙げられます。長年の社会経験や人間関係を通して、高齢出産の方はより広い視野と深い洞察力を持っている場合があります。子どもに対してより柔軟で多様な視点からの子育てができる可能性もあります。
経済的な基盤が安定していることで、子育てに必要な費用を負担しやすかったり、育児休暇を取得しやすかったりするメリットもあります。若い頃に比べて、自分の価値観や人生設計が明確になっていることが多く、子育てに対する不安や焦りが少ない傾向です。
デメリット:体力的な負担・キャリアへの影響など
高齢出産のデメリットは、体力的な負担やキャリアへの影響です。妊娠・出産は身体に大きな負担をかけるイベントです。高齢になるほど体力や回復力が低下するため、妊娠中や産後の体調管理に苦労する可能性があります。出産後、子育てと仕事の両立に悩む方もいます。
出産を機にキャリアを中断したり、変更したりする必要がある場合もあります。高齢出産の場合、キャリアの積み重ねが多いほど、影響が大きくなりやすいです。加齢に伴う卵子の老化と質の低下も懸念されます。妊娠率の低下や流産のリスク増加につながる可能性もあります。
年代別の妊娠率・出産率と成功するためのポイント
年代別の妊娠率・出産率と成功するためのポイントについて、以下のことを解説します。
- 30代前半の妊娠率・出産率と注意点
- 30代後半の妊娠率・出産率と注意点
- 40代前半の妊娠率・出産率と注意点
- 40代後半以降の妊娠率・出産率と注意点
30代前半の妊娠率・出産率と注意点
30代前半は、妊娠・出産を考える人が多い年代です。妊娠率も比較的高いですが、年齢とともに徐々に低下し始めます。この時期から、将来の妊娠を見据えた健康管理を意識することが大切です。妊娠しやすい身体づくりのためには、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠が大切です。
以下の記事では、妊娠しやすい時期を特定する方法や妊娠率を高める方法を解説していますので、あわせてご確認ください。
>>妊娠しやすい時期を徹底解説!月経周期から見る最適なタイミング選び
30代後半の妊娠率・出産率と注意点
30代後半になると、妊娠率は30代前半に比べて低下し始め、流産の確率も高くなります。この時期には、年齢によるリスクを正しく理解し、計画的に妊娠・出産に臨むことが大切です。定期的な婦人科検診は、卵子の状態や子宮の状態をチェックし、早期発見・早期治療につながるため、積極的に受診しましょう。
40代前半の妊娠率・出産率と注意点
40代前半になると、妊娠率はさらに低下し、流産や染色体異常などのリスクも高くなります。この時期の妊娠・出産は、母体にも胎児にも負担が大きいため、より慎重な管理が必要です。医師とよく相談し、必要な検査や治療を受け、適切な準備を進めることが重要です。
40代後半以降の妊娠率・出産率と注意点
40代後半以降の妊娠は、自然妊娠は難しくなり、高度生殖医療が必要となるケースがほとんどです。体外受精や卵子提供などの選択肢がありますが、医師とよく相談したうえで、治療方針を決定することが大切です。
高度生殖医療は、身体的にも精神的にも負担が大きいため、パートナーや家族、医療スタッフのサポートが不可欠です。治療の進め方やリスクについて、納得したうえで治療を進めましょう。
体外受精については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
>>体外受精の基礎知識を解説!対象となる方や流れ、成功率、実態までがわかります

高齢出産のための妊娠・出産準備
高齢出産のための妊娠・出産準備として必要なことは以下のとおりです。
- 妊娠前の健康管理と生活習慣の改善
- 妊娠中の注意点と生活上のアドバイス
- 産後のケアと育児支援
- パートナーや家族のサポートを得る方法
妊娠前の健康管理と生活習慣の改善
妊娠前から健康な体づくりを始めることは、高齢出産において重要です。加齢とともに妊娠しにくくなるだけでなく、妊娠合併症のリスクも高まるため、妊娠前から計画的に準備を始めましょう。妊娠前の健康管理において、大切なのは以下のとおりです。
- バランスの取れた食事
野菜や果物、たんぱく質、炭水化物をバランスよく摂取する。葉酸や鉄分、カルシウムなどの栄養素は意識的に摂り入れましょう。加工食品やインスタント食品や糖分の多い食品は控えめにすることが望ましいです。 - 適度な運動
ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。1日30分程度の軽い運動を週に数回行うだけでも、血行促進やホルモンバランスの調整に効果があります。ただし、激しい運動は避け、ご自身の体調に合わせて行うことが大切です。 - 十分な睡眠
毎日同じ時間に寝起きし、7時間程度の睡眠時間を確保しましょう。睡眠不足はホルモンバランスを崩し、妊娠しにくい体質を作る可能性があります。寝る前にカフェインを摂らない、リラックスできる環境を作るなど、質の良い睡眠を心がけることも重要です。 - 禁煙
妊娠を希望する場合はもちろん、パートナーも禁煙することが望ましいです。タバコは卵子の老化を促進し、流産や早産のリスクを高めることが知られています。 - その他
定期的な健康診断を受け、健康状態をチェックしましょう。持病がある場合は、医師と相談のうえ、妊娠を計画しましょう。子宮筋腫や子宮内膜症など、妊娠に影響を与える可能性のある疾患がないかを確認することも大切です。
妊娠前から生活習慣を改善することで、妊娠中のトラブルを減らし、健康な赤ちゃんを産む可能性を高めることができます。
子宮内膜症や子宮筋腫などは、不妊の原因となることがあります。子宮筋腫の原因・子宮内膜ポリープの手術について詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
>>子宮内膜ポリープは手術で治る?痛くない手術の実施方法や費用・保険適用有無について解説
妊娠中の注意点と生活上のアドバイス
高齢出産では、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などのリスクが高まるため、より注意深い健康管理が必要です。妊娠中は以下のポイントを意識しましょう。
- 定期的な妊婦健診
医師の指示に従い、定期的に妊婦健診(妊娠中の健康診査)を受けましょう。高齢出産の場合は、通常よりも頻回に健診を受ける必要がある場合があります。健診では、血圧や尿検査、超音波検査などを通して、母体と胎児の状態を細かくチェックします。 - 体重管理
急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクを高めます。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、適切な体重管理を行いましょう。妊娠中の体重増加は、つわりが落ち着いてくる妊娠中期頃から徐々に増えていきます。医師から適切な体重増加の目安を聞き、それを超えないように注意しましょう。 - 安静
疲れた時は無理せず、横になるなどして体を休めましょう。高齢出産では、身体への負担が大きいため、若い妊婦さん以上に休息を意識することが大切です。 - ストレス軽減
ストレスは体に悪影響を与えます。リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむなど、ストレスを軽減する方法を見つけましょう。マタニティヨガやアロマテラピーなども効果的です。 - 水分補給
こまめな水分補給を心がけましょう。脱水症状は、様々な体調不良を引き起こす可能性があります。 - 飲酒・喫煙は厳禁
胎児に悪影響を与えるため、飲酒・喫煙は絶対に避けましょう。
お酒が好きで日頃から嗜んでいるかたもいると思いますが、注意が必要です。以下の記事では、飲酒で増加するリスクや影響を解説していますので、あわせてご確認ください。
>>妊活中はお酒を飲んでも大丈夫?妊活中のお酒との向き合い方を徹底解説
産後のケアと育児支援
産後は、体力的にも精神的にも回復に時間がかかる場合があります。特に高齢出産では、その傾向が強いため、無理をせず休養を取ることが大切です。産後におすすめのサポート内容として、以下のことが挙げられます。
- 産後ケア施設の利用
専門スタッフによるケアを受けられる産後ケア施設を利用することで、心身ともに休養し、育児の不安を軽減することができます。 - 育児支援サービスの活用
家事代行サービスやベビーシッターなどを利用することで、育児の負担を軽減し、自分の時間を持つことができます。 - 地域の育児相談窓口への相談
育児に関する悩みや不安を相談できる地域の育児相談窓口や保健センターなどを利用しましょう。専門家からのアドバイスを受けることで、精神的な負担を軽減することができます。 - 周囲のサポート
周囲のサポートを活用することも大切です。家事や育児を手伝ってもらうことで、身体の負担を軽減し、休息時間を確保することができます。
パートナーや家族のサポートを得る方法
高齢出産では、パートナーや家族のサポートが不可欠です。高齢出産の際は、以下のことを心がけましょう。
- 妊娠・出産・育児に関する情報を共有する
パートナーや家族に、高齢出産のリスクや注意点、あなたの不安や希望を伝えましょう。お互いの理解を深めることが、協力体制を築く第一歩です。 - 家事や育児の分担について話し合う
妊娠中から、家事や育児の分担について具体的に話し合い、協力体制を築きましょう。役割分担を明確にすることで、産後の混乱を防ぐことができます。 - 定期的にコミュニケーションを取る
妊娠中や産後を通して、パートナーや家族と定期的にコミュニケーションを取り、お互いの気持ちを理解し合うことが大切です。些細なことでも話し合うことで、ストレスを溜め込まずに済みます。 - 感謝の気持ちを伝える
サポートしてくれるパートナーや家族に、感謝の気持ちを伝えることで、より良い関係を築き、協力しやすい環境を作ることができます。
高齢出産はリスクも伴いますが、適切な準備とサポート体制を整えることで、安心して妊娠・出産・育児を迎えることができます。
まとめ
高齢出産にはリスクが伴うため、メリット・デメリットを理解することが大切です。そして妊娠・出産・育児に向けた具体的なサポート体制を準備することで、不安を軽減し、自信を持って赤ちゃんを迎えることができます。大切なのは、正しい情報を得て、ご自身の状況に合った対策を講じることです。
定期的な健康診断、バランスの取れた食事や適度な運動、パートナーや家族との協力は、安心して妊娠・出産を迎えるために重要です。不安や疑問があれば、ためらわずに医師や専門家に相談しましょう。周囲のサポートを積極的に活用しながら、安心して妊娠・出産に臨めるよう、適切な準備を整えることが重要です。
参考文献
- 【Rosaly Correa-de-Araujo, Sung Sug Sarah Yoon.】Clinical Outcomes in High-Risk Pregnancies Due to Advanced Maternal Age. J Womens Health (Larchmt), 2021, 30(2), p.160-167.
- 産婦人科診療ガイドライン-産科編2023