
hCG注射はいつ打つべき?副作用や効果、排卵のタイミングを解説
公開日:2025.01.30更新日:2025.01.30
不妊治療でよく耳にするhCG注射は、排卵を促し、ベストなタイミングで行うことで治療の成功率を高める可能性があります。hCGはヒト絨毛性ゴナドトロピンと呼ばれるホルモンで、妊娠中に胎盤から分泌されるものとほぼ同じ働きをします。hCG注射は、タイミング法や人工授精、体外受精と、さまざまな不妊治療で活用されています。
この記事では、hCG注射の最適なタイミングや効果、副作用や他の治療法との比較について解説します。妊娠を目指す際の判断材料としてお役立てください。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、不妊治療に強みを持つクリニックです。不妊治療を検討している状況でも、専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
hCG注射のベストなタイミング
不妊治療において、hCG注射の効果を最大限に活かすためには、適切なタイミングで注射することが不可欠です。hCG注射のタイミングについて、以下の観点から解説します。
- 排卵までの時間
- 治療スケジュール
- 性交渉のタイミング
hCG注射後の排卵までの時間
hCG注射後、排卵が起こるまでの時間は一般的に24〜40時間とされています。個人差はありますが、平均的には36時間程度が目安となります。hCG注射が黄体形成ホルモン(LH)と似た働きを持ち、人工的に誘発することで排卵を促すためです。
卵胞の成熟度合いも、排卵までの時間に影響を与えます。卵胞の大きさが18~20mm以上になると、hCG注射による排卵誘発の効果が高まるとされています。卵胞の成長が遅い場合は、追加の排卵誘発剤を使用したり、注射のタイミングを調整したりするなどの対応が検討されます。
排卵誘発のための注射スケジュール
hCG注射は、以下のさまざまな不妊治療において排卵誘発のために用いられます。
- タイミング法
- 人工授精
- 体外受精
それぞれの治療法によって、hCG注射の役割や投与スケジュールは異なります。
タイミング法では、自然な性交渉のタイミングを調整するためにhCG注射が用いられます。卵胞が十分に発育した時点でhCG注射を行い、排卵のタイミングを予測することで、妊娠の確率を高めることを目指します。
人工授精では、精子を子宮内に直接注入するため、排卵のタイミングに合わせて人工授精を行う必要があります。そのため、hCG注射を投与し、排卵のタイミングをコントロールします。通常、hCG注射後24~36時間後を目安に人工授精を行います。
体外受精では、成熟した卵子を体外に取り出して精子と受精させるため、採卵のタイミングが重要です。hCG注射は、採卵の約36時間前に投与され、卵子の成熟を促すとともに採卵のタイミングを調整するために使用されます。
それぞれの治療法に応じて、hCG注射の投与量やスケジュールは異なります。医師は、患者さんの年齢や卵巣機能、過去の治療歴などを考慮しながら、最適な治療計画を立てます。治療を受ける際には、疑問や不安があれば、遠慮なく医師に相談しましょう。
人工授精と体外受精については、以下の記事で解説していますので、合わせて確認ください。
>>人工授精と体外受精の違いとは?特徴と成功率、費用を徹底比較
hCG注射後の性交渉のタイミング
hCG注射後の性交渉のタイミングは、妊娠の可能性を高めるうえで重要です。hCG注射後、約36時間後に排卵が起こるとされています。そのため、注射当日と翌日に性交渉を持つことが推奨されます。
しかし、排卵のタイミングには個人差があるため、医師の指示に従うことが大切です。医師は、卵胞の大きさや発育状況、ホルモン値などを総合的に判断し、患者さん一人ひとりに最適な性交渉のタイミングを指導します。
hCG注射の効果
hCG注射の効果は以下のとおりです。
- 卵胞の成熟を助ける効果
- 排卵タイミングをコントロール
- 黄体機能を補助する役割
卵胞の成熟を助ける効果
hCG注射は、卵胞の成熟を促す効果があります。卵胞は卵巣の中に存在し、卵子を包み込んでいる大切な器官です。卵胞が成熟しないと、質の良い卵子が育たず、妊娠の可能性が低くなってしまいます。hCG注射は、卵胞の成熟をサポートする重要な役割を担っています。
卵胞の大きさや発育状況は、エコー検査で細かく確認します。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適なタイミングでhCG注射を行うことが重要です。
排卵タイミングをコントロール
hCG注射は、排卵のタイミングをコントロールするのにも役立ちます。排卵は、成熟した卵子が卵胞から飛び出して、卵管に取り込まれる現象です。妊娠するためには、排卵のタイミングが重要になります。
hCG注射後、通常24〜40時間、平均的には36時間程度で排卵が起こります。患者さんによっては、排卵までの時間には個人差があります。個々の体質や状況によって排卵までの時間は微妙に変化するため、医師による綿密な診察と適切な指導が不可欠です。
排卵のタイミングを正確に把握することは、自然妊娠だけでなく、人工授精や体外受精などの不妊治療においても重要です。hCG注射によって排卵のタイミングをコントロールすることで、精子と卵子が出会う確率を高め、妊娠の可能性を高めることができます。
不妊症について網羅的に知りたい方はぜひ以下の記事も合わせてご覧ください。
>>不妊症とは?定義やなりやすい人の特徴・割合についても解説
黄体機能を補助する役割
hCG注射は、黄体機能を補助する役割も担っています。黄体は、排卵後に卵胞が変化したもので、妊娠初期を支えるために不可欠なプロゲステロンというホルモンを分泌します。hCG注射は、黄体の働きをサポートし、プロゲステロンの分泌を促す効果があります。
hCG注射は、黄体機能不全の患者さんにとって、妊娠を維持するために欠かせない治療法の一つです。黄体機能不全は、妊娠初期の流産の主な原因となるため、適切な治療が必要です。
hCG注射の副作用とリスク
hCG注射の副作用とリスクは以下のとおりです。
- 一般的な副作用
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
- 多胎妊娠の可能性
一般的な副作用
hCG注射後によく見られる副作用として、以下があります。
- 注射部位の痛み
- 腫れ
- 発赤
注射針による局所的な刺激が原因で、腫れや赤み、触れると痛むといった症状が現れることがあります。多くの場合、数日以内に治ります。ただし、症状が強い場合や長引く場合は、遠慮なく医師に相談してください。
hCG注射によって以下の全身症状が現れることもあります。
- 頭痛やめまい
- 吐き気
- 倦怠感
hCGホルモンの影響と考えられており、一時的なものが多いです。症状がつらい場合は、市販の鎮痛剤で対処することも可能です。しかし、症状が改善しない、または悪化する場合は、速やかに医師に相談しましょう。
アレルギー反応として発疹やかゆみが出る場合もあります。過去に薬剤でアレルギー症状が出たことがある方は、事前に医師に伝えておくことが重要です。アレルギー反応は、じんましんのような広範囲の発疹から、注射部位周辺の局所的な発疹まで、症状の程度はさまざまです。もし少しでも違和感を感じたら、すぐに医療機関に連絡してください。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
hCG注射の副作用として、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあります。OHSSは、hCG注射によって卵巣が過剰に刺激され、卵巣が腫れたりお腹に水が溜まったりする症状です。以下の方はOHSSになりやすい傾向があります。
- 35歳以下の若い方
- 痩せ型の方
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
体外受精などの排卵誘発を行う治療では、複数の卵胞が育つことでOHSSのリスクが高まる可能性があります。
OHSSの症状は重症化すると、呼吸困難や尿量の減少、急激な体重増加といった深刻な症状が現れることもあります。hCG注射後、お腹の張りや痛みや吐き気、息苦しさ、尿量の減少など、少しでも異変を感じたら、すぐに医師に相談してください。

多胎妊娠の可能性
hCG注射は排卵を促す作用があるため、複数の卵胞が成熟し、同時に排卵が起こることで、双子や三つ子などの多胎妊娠となる可能性があります。hCG注射単独で使用する場合よりも、クロミフェンなどの他の排卵誘発剤と併用した場合に、多胎妊娠のリスクは高くなります。
多胎妊娠は、以下のリスクが高まります。
- 早産
- 低出生体重児
- 妊娠高血圧症候群
多胎妊娠では、医師が慎重に治療を進めることでリスク管理を行います。不安がある場合は、医師にご相談ください。
hCG注射を受ける際には、多胎妊娠の可能性についても医師から説明を受け、メリットとデメリットを理解したうえで治療を受けることが大切です。多胎妊娠は喜ばしい反面、リスクも伴うことを十分に理解しておく必要があります。
hCG注射後の生活上の注意点
hCG注射を受けた後は、日常生活でいくつか注意すべき点があります。注射によって体内でホルモンバランスが大きく変化するため、いつも通りの生活ではなく、少し意識して過ごすことが大切です。
安静を心がける
注射を受けた後は、卵巣の状態に配慮が必要です。卵巣はhCG注射の影響で腫れやすくなっており、負担がかかりやすい状態です。激しい運動や重いものを持つと、卵巣に負担がかかり、痛みや出血のリスクが高まります。妊娠を望む皆さんにとって、卵巣は大切な器官です。hCG注射後は、卵巣をいたわるように安静を心がけましょう。
アルコールの摂取を控える
アルコールはホルモンバランスに影響を及ぼし、hCG注射の効果を弱める可能性があります。せっかく注射で排卵を促したり、黄体機能を補助したりしても、アルコールによって効果が妨げられてしまうのは避けましょう。
アルコールは胎児の発育にも悪影響を与える可能性があるため、妊娠の可能性がある場合は特に注意が必要です。
規則正しい生活習慣を送る
日常生活では、バランスの良い食事と十分な睡眠を心がけ、心身ともに健康な状態を維持することが重要です。ストレスはホルモンバランスを乱す原因となるため、リラックスできる時間を作ることも大切です。
鉄分や葉酸を多く含む食品を積極的に摂取することで、妊娠しやすい体づくりをサポートできます。また、適度な運動やヨガなどを取り入れて血流を良くし、体調を整えることもおすすめです。
妊娠検査薬の使用は注射から約2週間後に実施する
妊娠検査薬は、hCG注射後すぐに検査薬を使用しても、正確な結果は得られません。注射の影響で偽陽性反応が出てしまう可能性があるため、最後の注射から約2週間後に検査するようにしましょう。
注射直後は期待感から早めに検査をしたくなることもありますが、正確な判定を得るためには少し待つことが必要です。2週間待つ間も体調の変化や気になる症状があれば、担当医に相談しましょう。
他の治療法との比較や併用について
不妊治療は、一人ひとりの状況に合わせた最適な方法を選択することが重要です。hCG注射以外にもさまざまな治療法があり、それぞれに特徴があります。自分に合った治療法を見つけるために、他の治療法と比較しながらhCG注射の特徴を理解し、どのような場合にhCG注射が有効なのか、他の治療法との併用についても理解しましょう。
他の排卵誘発剤との比較
hCG注射以外にも、クロミフェン(飲み薬)や点鼻薬があります。hCG注射は、注射による投与が必要ですが、排卵日をコントロールしやすいです。卵胞が十分に育っているのに排卵しない場合や、体外受精の前に確実に排卵を促したい場合に有効です。
クロミフェンは飲み薬なので手軽に服用できますが、hCG注射に比べると排卵誘発効果は弱く、排卵しない場合もあります。子宮内膜が薄くなってしまう副作用にも注意が必要です。子宮内膜が薄くなると、受精卵が着床しにくくなり、妊娠の確率が低下する可能性があります。
点鼻薬は鼻から吸入するだけなので痛みはありませんが、効果の出方が人によって異なり、副作用として吐き気や頭痛が生じることもあります。
それぞれの排卵誘発剤にはメリットとデメリットがあるため、医師との相談が不可欠です。どの治療法が最適かは、患者さんの年齢や卵巣機能、過去の治療歴や治療に対する希望などを考慮して決定します。
人工授精や体外受精との併用
hCG注射は、人工授精や体外受精といった他の不妊治療と併用されることも多く、それぞれの治療において重要な役割を担っています。
- 人工授精
hCG注射によって排卵のタイミングをコントロールすることで、精子と卵子が出会う確率を高める - 体外受精
hCG注射を投与することで、卵胞を成熟させ、排卵を促す
hCG注射は他の不妊治療と組み合わせて使用されることで、妊娠の確率を高める効果が期待できます。どの治療法が最適かは、患者さんの状況で異なりますので、医師とよく相談して決めることが重要です。
以下の記事では自宅でもできる不妊治療「シリンジ法」について解説しています。医師の視点でメリット・デメリットを紹介していますのでぜひご覧ください。
>>シリンジ法とは?やり方やメリット・デメリット、妊娠率を解説
まとめ
hCG注射は、排卵を促し、妊娠の可能性を高めるための重要な治療法です。注射のタイミングは、排卵までの時間や治療スケジュールに合わせて調整されます。効果を高めるためには、医師の指示に従い、適切なタイミングで性交渉を持つことが重要です。
hCG注射は卵胞の成熟を助け、排卵のタイミングをコントロールするだけでなく、黄体機能を補助する役割も担っています。注射部位の痛みや腫れ、吐き気などの副作用や、卵巣過剰刺激症候群、多胎妊娠のリスクも存在します。
hCG注射は人工授精や体外受精と併用されることもあります。疑問や不安があれば、気軽に医師に相談し、安心して治療に臨んでください。
以下の記事では、hcGの基準値や妊娠週数ごとの変化などを解説していますので、合わせてご覧ください。
>>hCGの基準値とは?妊娠の週数ごとの変化や妊娠継続率、流産リスクとの関係性

参考文献
Kol S. False positive blood hCG test following Corifollitropin alfa injection. Human Reproduction (Oxford, England), 2018, 33, 1, p.177.