
GnRHアゴニスト完全ガイド|効果・副作用・治療期間をわかりやすく解説
公開日:2025.01.30更新日:2026.01.28
GnRHアゴニストは、体内のホルモンバランスを調整し、卵巣の働きをコントロールする薬です。排卵誘発剤として、妊娠の可能性を高めるだけでなく、過剰な女性ホルモンの分泌を抑え、子宮筋腫や子宮内膜症の症状緩和に寄与します。
今回の記事では、GnRHアゴニストの作用機序や治療における具体的な効果、起こりうる副作用などを解説します。治療に関する正しい知識を得るために、ぜひ読み進めてみてください。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、不妊治療の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。

GnRHアゴニストの基本と作用機序
GnRHアゴニストは、不妊治療や子宮筋腫、子宮内膜症といった婦人科系の疾患の治療でよく用いられる薬です。GnRHアゴニストがどんな薬で、どのように作用するのかを以下の項目に沿って解説します。
- GnRHアゴニストとは女性ホルモンの分泌を抑制する薬
- GnRHアゴニストの作用機序
- GnRHアゴニストとアンタゴニストの違い
GnRHアゴニストとは女性ホルモンの分泌を抑制する薬
GnRHアゴニストとは、女性ホルモンの分泌を抑制する薬です。脳の下にある下垂体という器官に働きかけ、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)という2つのホルモンを放出させます。FSHとLHは、卵巣で卵胞を育てたり、精巣で精子を作らせたりします。
女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)や男性ホルモン(テストステロン)の分泌をコントロールする役割を担っています。GnRHアゴニストは、GnRHの構造を模倣し、作用が持続するように作られた薬です。GnRHは体内で作られる自然なホルモンです。
GnRHアゴニストを使い続けると、下垂体が慣れてしまい、逆にFSHとLHの分泌を抑えるようになります。
GnRHアゴニストの作用機序
GnRHアゴニストは、体の中の「指令を受け取るアンテナ」のような役割を持つ「GnRH受容体」という場所に働きかけます。GnRH受容体は、細胞に信号を伝える「Gタンパク質共役型受容体」というグループの一員です。
GnRHアゴニストは「鍵」、GnRH受容体は「鍵穴」のようなものです。鍵(GnRHアゴニスト)が鍵穴(GnRH受容体)に差し込まれると、体の中でいろいろな反応が連鎖的に起こります。最終的に「FSH」や「LH」というホルモンがたくさん作られるようになります。
使い続けると、受容体(鍵穴)が疲れて反応しなくなり「ダウンレギュレーション」と呼ばれる状態が起こります。ダウンレギュレーションが起こると、FSHやLHというホルモンの分泌が少なくなるのです。
GnRHアゴニストを約3〜4週間使用すると、GnRH受容体の働きが低下し、ホルモンの分泌が抑えられる「ダウンレギュレーション」が起こります。これにより、FSHとLHの分泌は通常90〜95%程度まで抑制されると報告されています
GnRHアゴニストとアンタゴニストの違い
GnRHアゴニストと似た名前の薬に、GnRHアンタゴニストというものがあります。どちらもGnRH受容体に作用しますが、働き方が異なります。
GnRHアゴニストは、最初にFSHとLHの分泌を一時的に増やしてから、分泌を抑えるという2段階の作用を示します。GnRHアンタゴニストは、最初からFSHとLHの分泌を抑えます。
不妊治療では、GnRHアゴニストを用いて卵胞を十分に育てた後に採卵を行うことで、質の良い卵子を複数個採取できます。子宮筋腫の治療では、GnRHアゴニストまたはアンタゴニストを用いて女性ホルモンの分泌を抑えることで、筋腫を小さくできます。
GnRHアゴニストとアンタゴニストはそれぞれ異なる特徴を持つ薬なので、医師とよく相談して、自分に合った薬を選ぶことが大切です。
GnRHアゴニストを使用する前に知っておくべきこと
GnRHアゴニストの治療を始める前に、自分の体調や既往歴を正しく把握し、医師と相談することが重要です。GnRHアゴニストを使用する前に知っておくべきことを以下の項目に沿って解説します。
- 治療を始める前のチェックポイント
- 医師に相談すべき症状や既往歴
治療を始める前のチェックポイント
GnRHアゴニスト治療開始前には、血液検査や画像検査などの詳しい検査を受け、治療の適応があるかを確認します。GnRHアゴニストは強力にホルモンを調整するため、肝機能や腎機能、血液の状態を事前に把握しておく必要があります。治療の目的に応じて、卵巣の状態や子宮の状態も詳しく調べます。
不妊治療では卵巣機能検査(AMH、FSH値)や卵管造影検査、子宮筋腫治療ではMRI検査による筋腫の大きさや位置の確認が行われます。血液検査では肝機能(AST、ALT)や腎機能(クレアチニン)、血栓症のリスク評価なども実施します。検査結果をもとに、医師が個々の患者さんに最適な治療計画を立てていきます。
医師に相談すべき症状や既往歴
治療前には、過去の病気や現在服用している薬、アレルギーの有無を必ず医師に伝えましょう。GnRHアゴニストは多くの薬と相互作用を起こす可能性があり、既往歴によっては副作用のリスクが高まる場合があります。安全な治療を受けるためにも、正確な情報を伝えましょう。
血栓症や心疾患、肝疾患の既往がある方は、特に注意が必要です。抗凝固薬やホルモン剤を服用中の方、骨粗しょう症の治療を受けている方は薬の調整が必要な場合があります。食物アレルギーや薬物アレルギーの経験も必ず伝えてください。
GnRHアゴニストの治療活用法
GnRHアゴニストがどのように治療に活用されているのかを以下の項目に沿って解説します。
- 排卵誘発におけるGnRHアゴニストの効果
- 子宮筋腫・子宮内膜症治療におけるGnRHアゴニストの効果
- がん治療におけるGnRHアゴニストの役割
- その他の疾患への応用
排卵誘発におけるGnRHアゴニストの効果
不妊治療の中でも体外受精や顕微授精を行う際に、GnRHアゴニストは排卵誘発剤として重要な役割を担います。卵巣を刺激し、複数の卵子を育てることで、妊娠の可能性を高めることが目的です。GnRHアゴニストを使用することで、自然な排卵のタイミングをコントロールし、より多くの卵胞を成熟させることができます。
早発排卵を抑制する効果もあり、質の良い卵子を採取できるようサポートします。治療法には、以下の2種類があります。
- ロング法:月経周期の前周期からGnRHアゴニストを使用し排卵を抑制しながら卵胞を育てる
- ショート法:月経開始後に使用し短期間で卵胞を発育させる
ロング法は採卵日の調整が容易ですが、治療期間が長くなる傾向があります。ショート法は治療期間が短い反面、採卵日の調整が難しいケースもあります。

子宮筋腫・子宮内膜症治療におけるGnRHアゴニストの効果
子宮筋腫や子宮内膜症は、女性ホルモンの過剰分泌が原因の一つと考えられています。GnRHアゴニストは、女性ホルモンの分泌を抑えることで、筋腫や内膜症の縮小や症状の緩和を図ります。子宮筋腫や子宮内膜症に悩む女性は多く、生理痛の悪化や過多月経、貧血などの症状に悩まされている方も少なくありません。
GnRHアゴニストは、症状を改善するだけでなく、手術が必要な場合、術前の準備として病変を小さくする効果も期待できます。
子宮筋腫の治療法については以下の記事でも詳しく解説しています。気になる方はチェックしてみてください。
>>子宮筋腫の日帰り手術とは?費用や当日の流れ、術後の注意点まで解説
がん治療におけるGnRHアゴニストの役割
前立腺がんの中には、男性ホルモンの影響を受けて増殖するものがあります。GnRHアゴニストは、男性ホルモンの分泌を抑制することで、がんの増殖を遅らせ、進行を抑制する効果が期待できます。
閉経前の乳がんの治療にも用いられることもあります。乳がんの中には、女性ホルモンの影響を受けて増殖するものがあります。GnRHアゴニストによって女性ホルモンの分泌を抑えることで、がんの進行を抑制する効果が期待できます。
その他の疾患への応用
思春期早発症は、本来よりも早く思春期が始まる疾患です。GnRHアゴニストは、思春期の進行を一時的に抑制し、正常な成長を促すために用いられます。性同一性障害の治療の一環としても用いられます。ホルモン療法と併用することで、身体的特徴を心の性に近づける効果が期待できます。
GnRHアゴニストの治療を受ける際は、医師とよく相談し、ご自身の状況に合わせた最適な治療法を選択することが重要です。
GnRHアゴニストの種類と投与方法
GnRHアゴニストには注射薬と点鼻薬があり、患者さんの生活スタイルや治療目的に合わせて選択されます。GnRHアゴニストの種類と投与方法について、以下の項目に沿って解説します。
- 注射薬と点鼻薬の違い
- 投与スケジュールの立て方
注射薬と点鼻薬の違い
注射薬は効果が確実で投与回数が少ない一方、点鼻薬は自宅で手軽に使用できるという特徴があります。それぞれの薬剤には独特の利点があり、患者さんの状況や好みに応じて選択されます。効果の確実性を重視する場合と、利便性を重視する場合で最適な選択が変わります。
注射薬(リュープリン、ゾラデックスなど)は月1回の通院で済み、薬の血中濃度が安定します。一方、点鼻薬(スプレキュアなど)は毎日朝夕2回の使用が必要ですが、痛みがなく自宅で使用できます。ただし、鼻づまりや風邪のときは吸収が悪くなる可能性があります。どちらも同等の効果が期待できるため、ライフスタイルに合わせて選択します。
投与スケジュールの立て方
GnRHアゴニストの投与スケジュールは、治療目的と患者さんの月経周期に合わせて慎重に計画されます。薬の効果を最大限に発揮し、副作用を最小限に抑えるためには、適切なタイミングでの投与が不可欠です。不妊治療では、採卵のタイミングと密接に関係しています。
不妊治療のロング法では、前周期の黄体期(排卵後約1週間)から開始し、約2〜3週間継続します。ショート法では月経開始と同時に開始します。子宮筋腫治療では月経開始から5日以内に開始し、3〜6か月継続するのが一般的です。投与間隔は注射薬で4週間、点鼻薬は12時間おきが基本です。
GnRHアゴニストの副作用
GnRHアゴニストの副作用として考えられるのは以下のとおりです。
- 更年期障害に似た症状が出る
- フレア・アップが起こる(女性ホルモンの分泌が増加)
- OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を引き起こす可能性がある
副作用について正しく理解し、不安や疑問があれば、医師や看護師に相談しましょう。
更年期障害に似た症状が出る
GnRHアゴニストは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑制する働きがあります。エストロゲンは、女性の体にとってさまざまな役割を担っているホルモンです。分泌が抑制されると、更年期障害のような症状が現れることがあります。
更年期障害は、閉経に伴うエストロゲンの急激な減少で起こりますが、GnRHアゴニストの使用でも現れる可能性があります。更年期障害で代表的な症状は、以下のとおりです。
- ホットフラッシュ(のぼせ、発汗)
- 精神的な症状(イライラ、気分の落ち込み、不安感)
- 腟の乾燥
人によって感じ方が大きく異なります。日常生活に支障がない程度であれば、経過観察となる場合もあります。症状が強く日常生活に影響が出ている場合は、医師に相談し、適切な対応を検討してもらいましょう。
更年期障害についての症状や効果が期待できる対策については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
>>更年期障害とは?症状・原因・対策をわかりやすく解説
フレア・アップが起こる(女性ホルモンの分泌が増加)
GnRHアゴニストの投与開始後、数日〜数週間のうちに、一時的に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が増加する現象を「フレア・アップ」と言います。普段の生理より出血量が増え、貧血や生理痛の悪化が見られるケースがあります。フレア・アップは一時的なもので、通常は数週間以内に治まります。
症状が強い場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を引き起こす可能性がある
不妊治療でGnRHアゴニストを使用する場合、hMG製剤やFSH製剤との併用によって卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こる可能性があります。OHSSは、卵巣が腫れたり、お腹や胸に水が溜まったりする疾患です。
軽度の場合は、お腹が少し張る程度ですが、重症化すると、呼吸困難や血栓症といった深刻な合併症を引き起こす可能性があります。主な症状としては、以下のとおりです。
- お腹の張り
- 吐き気、嘔吐
- 体重増加
- 呼吸困難
- 胸痛
症状に気づいたら、すぐに医師に相談しましょう。息苦しさや胸の痛みを感じた場合は、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。不妊症について網羅的に知りたい方はぜひ以下の記事もあわせてご覧ください。
>>不妊症とは?原因・症状・検査・治療法まで妊娠のために知っておきたい基礎知識を解説
GnRHアゴニストの治療期間と費用
GnRHアゴニストを使った治療期間や費用は、症状や治療方針、使用する薬剤の種類によって大きく変わるため、一概には言えません。
費用についても、健康保険の適用状況や、併用する薬剤、治療回数によって変動します。3割負担の場合、1か月あたり数千円〜数万円程度が目安となりますが、詳しくは医療機関にお問い合わせください。
費用を抑える方法としては、医療機関での相談を通じて、ジェネリック医薬品の使用も検討できます。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同等の効果を持ちながら、価格が安価であるため、治療費の負担を軽減できます。
GnRHアゴニスト治療に関するよくある質問(FAQ)
GnRHアゴニスト治療に関して寄せられる以下の代表的な疑問にお答えします。
- 治療効果が現れるまでの期間は?
- GnRHは他の薬と併用してもいい?
- GnRH治療中断時の注意点は?
治療効果が現れるまでの期間は?
GnRHアゴニストの効果は通常、投与開始から2〜4週間で現れ始めますが、治療目的によって実感できる時期は異なります。薬がホルモンの分泌を抑制するまでに一定の時間が必要で、目的とする効果が段階的に現れるためです。個人差もあるため、効果の現れ方を理解しておくことが大切です。
不妊治療では投与開始から約2週間でホルモン抑制効果が現れ、排卵誘発に備えます。子宮筋腫治療では、月経が止まるのが1〜2か月後、筋腫の縮小実感は3か月頃からが一般的です。子宮内膜症では痛みの軽減が1〜2か月で感じられることが多いです。ただし、フレア・アップにより一時的に症状が悪化する場合もあります。
GnRHは他の薬と併用してもいい?
GnRHアゴニストは多くの薬と併用可能ですが、一部の薬剤では注意が必要なため、服用中の薬は必ず医師に報告しましょう。薬同士の相互作用により効果が変わったり、副作用が強くなったりする可能性があります。治療目的に応じて併用する薬剤も変わるため、専門医による管理が重要です。
血栓症予防の抗凝固薬(ワーファリンなど)は慎重な調整が必要です。骨粗しょう症治療薬(ビスフォスフォネート系薬剤)は併用が推奨される場合があります。漢方薬やサプリメントも相互作用の可能性があるため、すべて報告してください。不妊治療では排卵誘発剤(hMG、FSH製剤)との併用が一般的です。
GnRH治療中断時の注意点は?
GnRHアゴニスト治療の中断は、必ず医師と相談してから行い、急な中止は避けることが重要です。急に治療を中止すると、抑制されていたホルモンが急激に回復し、リバウンド現象や副作用の悪化が起こる可能性があります。治療効果が失われてしまう場合もあります。治療継続が困難な場合は、自己判断せず医師と相談して最適な方法を見つけましょう。
まとめ
GnRHアゴニストは、排卵誘発や子宮筋腫、子宮内膜症やがん治療など、さまざまな婦人科系疾患に用いられる薬です。GnRH受容体に作用することで性腺刺激ホルモンの分泌を抑制し、治療効果を発揮します。効果が高い反面、以下の副作用が現れる可能性があります。
- 更年期障害に似た症状
- フレア・アップ
- OHSS(卵巣過剰刺激症候群)
治療期間や費用は患者さんの状態や治療内容によって異なりますので、医師に相談しましょう。

参考文献
O Ortmann, J M Weiss, K Diedrich. Gonadotrophin-releasing hormone (GnRH) and GnRH agonists: mechanisms of action. Reprod Biomed Online, 2002, 5 Suppl 1, p.1-7.