
いつもより生理の量が多い原因は?考えられる病気と受診の目安を解説
公開日:2025.05.18更新日:2025.05.31
いつもの生理より量が多いとき、不安になる方は多いです。実は、多くの女性が生理の量の多さに悩んでおり、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。医学的には、ナプキンが2時間持たない、レバー状の血塊(2.5cm以上)が頻繁に見られる場合「過多月経」と診断される可能性があります。
過多月経の原因は、ホルモンバランスの乱れや子宮筋腫、子宮内膜症などさまざまです。子宮筋腫は30~40代女性に多く、自覚症状がない場合も多い一方、過多月経の約40%は子宮筋腫などの器質的疾患が原因というデータも存在します。
この記事では、生理の量が多くなる原因や考えられる病気、受診の目安を詳しく解説します。過多月経の背景にあるさまざまな要因を知ることで、不安を解消し、適切な対応につなげましょう。
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生理の量が多い原因や考えられる病気
生理の量が多くなる原因はさまざまです。代表的な原因と、過多月経につながるメカニズムを以下の項目に沿って詳しく解説します。
- ホルモンバランスの乱れ
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 子宮ポリープ
- 血液の病気
- その他の疾患(甲状腺疾患など)
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、生理の量に大きく影響します。体は、月経周期に合わせてエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌量が変化しています。バランスが崩れると、子宮内膜が異常に厚くなり、剥がれ落ちる際の出血量が増加します。ホルモンバランスの乱れは、以下のような要因で引き起こされます。
- ストレス
- 不規則な生活
- 過度なダイエット
- 急激な体重変化
- 更年期
思春期や更年期といったホルモンバランスが安定しにくい時期は、生理の量が多くなる場合があります。排卵が起こらない無排卵性月経の場合も、生理の量が増えることがあります。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の筋肉層にできる良性の腫瘍です。30〜40代の女性に多くみられ、子宮内膜の表面積を増やすことで生理の量を増加させることがあります。子宮筋腫の位置によっては、子宮の収縮を妨げ、出血が止まりにくくなることもあります。多くの場合自覚症状はありませんが、以下の症状が現れることもあります。
- 生理の量が多い
- 生理痛がひどい
- 貧血気味
不正出血や下腹部の痛みが見られる場合、子宮筋腫が影響している可能性もあります。 子宮筋腫は、女性ホルモンの変化と深く関わっており、ピルや性行為が影響することもあります。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
子宮内膜症
子宮内膜症は、本来は子宮の内側にある子宮内膜組織が、子宮以外の場所で増殖してしまう病気です。卵巣や腹膜などに発生することが多く、生理の周期に合わせて出血するため、以下のような症状が現れることがあります。
- 生理の量が多い
- 強い生理痛
- 性交痛
- 不妊
これらの症状に心当たりがある場合は、子宮内膜症の可能性も視野に入れておくことが大切です。
以下の記事では、子宮内膜症の詳しい原因や治療法、早期発見のポイントについてわかりやすく解説しています。
>>子宮内膜症ってどんな病気?原因や治療法、早期に発見するポイントも解説
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉層に入り込んで増殖する病気です。子宮が大きくなり、生理の量が増えたり、生理痛がひどくなったりします。子宮内膜症と合併することが多く、40〜50代の女性に多くみられます。
子宮ポリープ
子宮ポリープは、子宮内膜や子宮頸管にできる良性の腫瘍です。子宮内膜の表面積が増えるため、生理の量が増えたり、生理と生理の間に出血したりすることがあります。多くの場合自覚症状がありませんが、不正出血によって発見されることが多いです。
血液の病気
血液が固まりにくくなる病気も、生理の量が多くなる原因の一つです。血友病やフォン・ヴィレブランド病などの遺伝性の病気や、白血病などの後天性の病気があります。抗凝固薬などの薬を服用している場合も、生理の量が多くなる可能性があります。
その他の疾患(甲状腺疾患など)
甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症などの甲状腺疾患も、生理の量に影響を与える可能性があります。甲状腺ホルモンは女性ホルモンのバランス調整に関与しているため、甲状腺疾患によって生理不順や生理の量の増減が起こることがあります。
子宮頸がんや子宮体がんといった悪性腫瘍も、生理の量が多くなる原因となることがあります。生理の量が多いと感じたら、原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。自己判断せず、医療機関を受診して相談するようにしましょう。
生理不順の原因の一つとして、不正出血が発生することもあります。不正出血のある方は、以下の記事もチェックしておきましょう。
>>不正出血を放置しないで!原因や生理との違い、受診の目安まで徹底解説
生理の量が多いときの受診の目安
個人差はありますが、一般的に正常な生理の経血量は20〜80mLとされています。昼用ナプキンで約20~30mL吸収できるため、1日に3~4枚程度交換すれば足りる量に相当します。夜用ナプキンを使う場合でも、朝まで漏れることなく過ごせます。
夜用ナプキンでも漏れてしまう、経血量の多さから貧血を起こしてしまうなど、いつもと違う場合は医療機関への受診が必要です。具体的な受診目安は、以下のとおりです。
- 昼用ナプキンを2時間に1回以上交換する必要がある
- 夜用ナプキンでも漏れてしまう
- 経血に大きな血の塊(レバー状の塊が2.5cm以上)が頻繁に混じる
- 貧血の症状(立ちくらみ、めまい、動悸、息切れなど)がある
- 生理痛がひどく、日常生活に支障が出る
- 下腹部に腫れやしこりを感じる
- 妊娠の可能性があり、大量の出血がある
40代以降で生理の量や周期が変化した場合は、子宮体がんの可能性も考慮し、婦人科を受診することが重要です。生理の量が多い状態が続くと、貧血が悪化し、日常生活に大きな支障が出たり、重大な疾患の発見が遅れたりする可能性があります。少しでも不安を感じたら、早めに婦人科を受診して相談しましょう。
受診の際は、以下の項目をメモしておくと医師への説明がスムーズになります。
- 生理が始まった日
- 生理周期
- 生理の期間
- ナプキンの交換回数
- 経血の状態(色、血の塊の有無など)
生理の量が多いときの治療法
生理の量が多いときの治療法として、以下の2点について詳しく解説します。
- 薬物療法
- 手術療法
薬物療法
薬物療法は、薬を使って生理の量を調整したり、原因となっている病気を治療したりする方法です。手術に比べて体への負担が少ないため、多くの場合、最初に検討される治療法です。薬の種類は、生理の量が多くなる原因や症状に合わせてさまざまです。
子宮筋腫による過多月経の治療薬として、エラゴリックスという薬が用いられることがあります。医学論文のメタ分析によると、エラゴリックスはプラセボと比較して月経血量が80ml未満に減少する確率を4.81倍、ベースラインから50%以上減少する確率を4.87倍に高める可能性があると報告されています。
エラゴリックスには、ほてりや骨密度の減少といった副作用も報告されているため、医師の適切な指導のもとで服用する必要があります。エストラジオール/ノレチンドロン酢酸塩を併用することで副作用を軽減できる可能性があります。
生理中に過剰に作られるプラスミンという酵素の働きを抑え、出血量を減らすトラネキサム酸や、痛みや炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)なども用いられます。
低用量ピル(OC)や黄体ホルモン放出IUS(LNG-IUS)は子宮内膜を薄くすることで生理の量を減らす効果が期待できます。女性ホルモンの分泌を抑える効果が期待できるGnRHアゴニストは子宮筋腫や子宮内膜症の症状改善に用いられます。
薬物療法は、それぞれの薬によって効果や副作用が異なるため、医師とよく相談し、自分に合った薬を選ぶことが大切です。
ピルは便利な避妊法である一方、副作用についても正しく理解しておくことが大切です。ピルの副作用の種類やリスク、対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>低用量ピルの副作用を解説!知っておくべきリスクと対処法
手術療法
薬物療法で効果が不十分な場合や、子宮筋腫や子宮内膜症など、はっきりとした原因がある場合は、手術療法が検討されます。手術療法は、原因となっている病気を直接治療できるメリットがあります。
手術には、子宮をすべて摘出する子宮全摘術と、子宮を残す子宮温存手術があります。子宮温存手術には、子宮筋腫だけを取り除く筋腫核出術や、子宮内膜を焼く子宮内膜焼灼術など、さまざまな種類があります。手術の適応は、年齢や症状、将来妊娠を希望するかどうかなど、患者さん一人ひとりの状況によって異なります。
子宮筋腫が原因で生理の量が多い場合、筋腫核出術を行うことで生理の量を減らし、貧血などの症状を改善できることがあります。子宮内膜症が原因の場合は、病変を取り除く手術によって生理痛や過多月経などの症状を改善できる可能性があります。
手術療法は、体への負担が大きいため、入院が必要になる場合もあります。手術を受けるかどうかは、慎重に検討する必要があります。生理の量が多いと感じたら、自己判断せずに医療機関を受診し、相談することが大切です。
生理の量が多い場合の対処法
生理の量が多いと感じたときに、まずご自身でできる対処法を以下の3つの項目に沿ってご紹介します。
- 経血量やナプキンの交換枚数を記録する
- 鉄分を補給する
- アルコールやカフェインを控える
対処法を試しても改善が見られない場合や、症状が重い場合は、自己判断せずに医療機関への受診を検討しましょう。
経血量やナプキンの交換枚数を記録する
生理の量が多いと感じたときは、まず経血量やナプキンの交換枚数を記録しましょう。手帳やカレンダー、スマートフォンのアプリなどに、何枚のナプキンを使ったか、どんな種類のナプキンを使ったかを記録してください。使ったナプキンを写真に撮って記録する方法も効果的です。
記録を続けることで、生理の量の変化を客観的に把握できます。普段の生理と比べて、どのくらい量が多いのか、どのくらいの頻度でナプキンを交換しているのかがわかるだけでも、不安な気持ちが軽くなる場合があります。受診時に記録を医師に伝えると診断の助けになるため、日頃から記録をつける習慣を持ちましょう。
鉄分を補給する
生理の量が多いと、体内の鉄分が不足し、貧血になりやすくなります。貧血になると、以下の症状が現れることがあります。
- 立ちくらみ
- 動悸
- 息切れ
- 倦怠感
- 顔色が悪い
- 疲れやすい
- 集中力の低下
- 食欲不振
- 爪が割れやすい
鉄分不足を解消するためには、鉄分を多く含む食品を積極的に摂取することが役立つ場合があります。鉄分が豊富な食品には、レバーや赤身の肉、魚(カツオやマグロ、イワシなど)、ひじき、ほうれん草などがあります。バランスの良い食事を心がけましょう。
鉄分の吸収を助けるビタミンCを一緒に摂ることも意識してみてください。ビタミンCは、ブロッコリーやレモン、イチゴなどに多く含まれています。食品から十分な鉄分を摂取することが難しい場合は、鉄剤などのサプリメントで補うことも検討しましょう。
市販の鉄剤を服用する場合は、用法・用量を守り、医師や薬剤師に相談のうえで服用するようにしてください。血液検査でヘモグロビン値が12g/dL未満であれば貧血傾向なので、医療機関の受診も検討しましょう。
アルコールやカフェインを控える
アルコールやカフェインには、血管を拡張させる作用があります。アルコールやカフェインを過剰に摂取すると、生理の量が増える可能性があります。生理中は、アルコールやカフェインの摂取量を控えめにするか、控えるように心がけましょう。特に、生理の量が多いと感じる場合は、注意が必要です。
アルコールには利尿作用もあるため、脱水症状を引き起こし、貧血を悪化させる可能性もあります。水分補給をしっかり行い、体調管理に気をつけましょう。カフェインはコーヒーや紅茶だけでなく、緑茶やココア、コーラなどにも含まれていますので、摂取量に気をつけましょう。
まとめ
生理の量が多い原因として、ホルモンバランスの乱れや子宮筋腫、子宮内膜症などさまざまな原因が考えられます。夜用ナプキンでも漏れてしまう、貧血気味などの症状がある場合は、過多月経の可能性もあります。気になる症状があれば、婦人科に相談しましょう。
受診の際は、生理が始まった日や周期、ナプキンの交換回数などをメモしておくとスムーズです。普段の生理との違いを把握するためにも、日頃から経血量やナプキンの種類を記録しておくのもおすすめです。鉄分を多く含む食品やビタミンCを積極的に摂取するなど、食生活にも気を配りましょう。
過多月経の可能性がある場合、できることから始めてみて、改善しない場合は、専門医への相談を検討しましょう。
当院では、子宮鏡検査も行っています。どのタイミングで受けるべきか、検査の内容なども解説しているので、ぜひ以下の記事もご覧ください。
>>子宮鏡検査はいつ受ける?検査の内容や痛み、かかる費用を徹底解説
参考文献
Muhammad J, Yusof Y, Ahmad I, Norhayati MN. Elagolix treatment in women with heavy menstrual bleeding associated with uterine fibroid: a systematic review and meta-analysis. BMC Womens Health, 2022, 22(1), p.14