
細菌性膣炎の市販薬はある?治療法と受診の判断ポイントを解説
公開日:2025.05.18更新日:2025.05.31
デリケートゾーンのかゆみ、おりものの異変に不安を感じていませんか。もしかしたら、細菌性膣炎の可能性があります。日本では多くの女性が細菌性膣炎に悩まされているにも関わらず、正しい知識を持つ人は少ないのが現状です。
この記事では、細菌性膣炎の一般的な治療法や、婦人科を受診する際の目安、再発予防のためのセルフケアなどについて解説します。ご自身の状態と照らし合わせながら、適切な対処法を見つけて、快適な毎日を目指しましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、細菌性腟炎やおりものの悩みに強みを持つクリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
市販薬は細菌性膣炎の根本解決にはならない
細菌性膣炎は、膣内の細菌のバランスが乱れることで発症すると考えられている感染症です。性行為や過度の洗浄など、さまざまな要因でバランスが崩れると、ガードネレラ菌が増殖し、細菌性膣炎を引き起こします。
おりものの増加や独特の臭い、かゆみなどの症状が現れたら、ドラッグストアで市販薬を探す人もいます。ドラッグストアで購入できる膣洗浄液やデリケートゾーン用のソープなどは、一時的に症状を和らげたり、再発を予防する効果が期待できたりしますが、細菌性膣炎の根本的な治療は難しいとされています。
細菌性膣炎の治療は、婦人科を受診し、検査と治療を受けることが重要です。医師によって、細菌性膣炎なのか、他の感染症や病気が隠れていないかを正確に診断できます。
治療には、メトロニダゾールやクリンダマイシンといった抗菌薬が用いられる場合があります。薬は医療用医薬品であり、医師の診察と処方箋が必要です。症状に合った薬を処方してもらうことで、適切な治療を受けられ、改善が期待できます。
妊娠中の方は、細菌性膣炎が早産のリスクを高める可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。そのためにも、細菌性膣炎の兆候を正しく見極めることが大切です。
以下の記事では、細菌性膣炎によるおりものの特徴や原因、正常なおりものとの違い、そして適切な対処法について詳しく解説しています。
>>細菌性膣炎のおりものの特徴と原因を解説!正常との違いと対処法
細菌性膣炎の治療法
効果的な治療のためには、医療機関を受診し、適切な処方薬の使用が重要です。自己判断で市販薬を使用しても、根本的な解決には至らず、症状が長引いたり、再発を繰り返したりする可能性があります。以下の治療法について解説します。
- メトロニダゾールの内服・膣錠
- クリンダマイシンの内服・膣錠
- 膣洗浄
メトロニダゾールの内服・膣錠
メトロニダゾールは、細菌性膣炎の治療に用いられる抗菌薬です。内服薬と膣錠の2種類の投与方法があり、患者さんの状態や生活スタイルなどに合わせて選択できます。内服薬や膣錠などの投与方法や期間については、医師の指示に沿った使用が重要です。
メトロニダゾールは多くの場合効果が期待できますが、まれに吐き気や下痢の副作用が現れる可能性があります。研究では、薬疹などの皮膚症状が出現する症例も報告されているため注意が必要です。治療中の注意点については、医師や薬剤師から説明をよく聞き、指示に従いましょう。
妊娠中の使用に関しては、妊娠12週以降であれば内服も可能ですが、膣錠が優先的に使用されます。治療中に何らかの症状や体調の変化を感じた場合は、自己判断せず医師への相談が重要です。
クリンダマイシンの内服・膣錠
クリンダマイシンも、細菌性膣炎の治療に用いられる抗菌薬です。メトロニダゾールと同様に、内服薬と膣錠があります。治療法や期間は、症状や状態によって異なるため、処方された場合は医師の指示に従って使用することが重要です。
治療薬の選択は、医師が患者さんの状態に合わせて判断します。どの治療法にも利点と注意点があります。治療中の避妊方法を含む生活上の注意点については、医師に相談しましょう。
膣洗浄
細菌性膣炎を発症すると、おりものの増加や不快な臭いなどの症状から、膣洗浄を行いたくなる方もいらっしゃるでしょう。膣洗浄は細菌性膣炎の治療には一般的に推奨されていません。膣洗浄は、膣内に常在する善玉菌までも洗い流してしまい、症状が悪化したり、再発しやすくなったりする可能性があります。
細菌性膣炎は、膣内の細菌叢のバランスが崩れることで引き起こされるため、過度な洗浄は逆効果になる可能性があります。デリケートゾーンを清潔に保つためには、低刺激性の石鹸を使用し、優しく洗うように心がけましょう。
白いおりものが見られたとき、正常なものなのか異常のサインなのかを見極めることが大切です。以下の記事では、白いおりものの正体と、健康な状態とそうでない状態の違いについて詳しく解説していますので、参考にしてください。
>>白いおりものの正体とは?健康な状態と異常サインの違い
病院を受診する判断ポイント
デリケートゾーンの不調は、誰しもが経験する可能性があります。おりものの変化や不快感を感じたときの医療機関への受診が必要な場合について、以下のポイントに沿って詳しく解説します。
- 魚臭いおりものが出る
- かゆみが続く
- 月経前後に悪化を繰り返す
- パートナーに性感染症が疑われる
- 市販の薬で改善しない
魚臭いおりものが出る
おりものに魚の生臭いにおいがするのは、細菌性膣炎の典型的な症状のひとつです。においは、性行為後や月経中に強くなる場合があります。細菌性膣炎では、ガードネレラ菌によって産生されるトリメチルアミンという物質が、特徴的なにおいの原因と考えられています。
おりものの色や状態にも変化が見られる人もいます。灰白色や黄緑色で、水っぽい、もしくは泡状のおりものが出る場合もあります。
「おりもののにおいがいつもと違う」「量や性状に変化がある」と感じたら、細菌性膣炎の可能性を考え、婦人科を受診しましょう。自己判断で放置すると、症状が悪化したり、他の病気を併発したりするリスクがあります。
以下の記事では、茶色のおりものが出る原因や考えられる疾患、受診の目安について詳しく解説しています。気になる症状がある方はぜひチェックしてみてください。
>>茶色のおりものが出る原因と対処法!受診の目安と注意点
かゆみが続く
外陰部にかゆみが続く場合は、細菌性膣炎の可能性があります。かゆみは、炎症によって引き起こされます。細菌性膣炎では、膣内のpHバランスが崩れ、炎症が起こりやすくなるのです。外陰部のヒリヒリ感や痛みを感じる人もいます。
かゆみが強く、陰部を掻きむしると皮膚が傷つき、症状の悪化や他の感染症を引き起こす可能性があります。かゆみが続く場合は、婦人科を受診し、原因の特定が重要です。
月経前後に悪化を繰り返す
細菌性膣炎の症状が月経前後に悪化しやすいのは、ホルモンバランスの変化が関係しています。月経周期によって、膣内の環境も変化し、細菌性膣炎の症状が出やすくなるのです。
月経血は細菌にとって栄養豊富な培地となります。月経が終わっても、経血が完全に排出されず膣内に残っていると、細菌性膣炎の症状が悪化する場合があります。
月経前後に症状が悪化する場合は、基礎疾患の有無や生活習慣なども含めて医師に相談し、適切な治療と生活指導を受けましょう。
パートナーに性感染症が疑われる
パートナーに性感染症が疑われる場合、自身も感染している可能性があるため注意が必要です。細菌性膣炎は性感染症ではありませんが、性感染症と合併して発症する場合があります。
クラミジア感染症や淋菌感染症などの性感染症は、膣内の炎症を引き起こし、細菌性膣炎のリスクを高めることが知られています。細菌性膣炎があると、腟の粘膜が傷つきやすいため、他の性感染症にも感染しやすくなる可能性があります。
パートナーに性感染症の症状がある場合は、一緒に婦人科を受診し、検査を受けるようにしてください。
市販の薬で改善しない
市販の膣ケア用品やカンジダ膣炎の治療薬を使用しても症状が改善しない場合は、自己判断で治療を続けるのは危険です。細菌性膣炎は、市販薬では効果が得られず、症状を悪化させる可能性があります。
市販薬では、細菌性膣炎の原因菌であるガードネレラ菌を直接退治できません。自己判断で市販薬を使用し続けると、適切な治療の開始が遅れ、症状の長期化や重症化につながるリスクがあります。医療機関で適切な検査と診断にもとづいた治療を受けることで、早期の症状改善と再発予防が期待できます。
細菌性膣炎の再発を予防するセルフケア
細菌性膣炎は、再発しやすい病気です。再発を繰り返すと、日常生活にも支障をきたし、精神的な負担も大きくなってしまいます。正しいセルフケアを継続することで、再発のリスクを減らし、健康な状態の維持につながる可能性があります。以下のセルフケアを今日から実践しましょう。
- デリケートゾーンを正しく洗う
- コンドームを使用する
- 禁煙する
- 生活習慣を見直す
- 定期的に婦人科で検診を受ける
デリケートゾーンを正しく洗う
デリケートゾーンは、乳酸桿菌により弱酸性に保つことで、雑菌の繁殖を防いでいます。洗浄力の強い石鹸やボディソープでゴシゴシ洗うと、必要な乳酸桿菌までも洗い流してしまい、膣内の常在菌のバランスが崩れ、細菌性膣炎を引き起こしやすくなります。
正しい洗い方は、デリケートゾーン専用の弱酸性ソープを使用し、優しく洗いましょう。強くこすったり、洗浄液を膣内まで入れて洗浄したりする必要はありません。膣内を洗浄するビデの使用も、善玉菌を洗い流してしまうため、再発予防に逆効果となる可能性があります。外陰部を清潔に保つことが重要です。
コンドームを使用する
性行為は、細菌性膣炎の原因菌が膣内に侵入するリスクを高める要因のひとつです。コンドームは性感染症の予防だけでなく、細菌性膣炎の予防にも効果的です。
細菌性膣炎は性感染症ではありませんが、性行為によって膣内の細菌叢のバランスが乱れやすくなり、発症リスクが高まります。パートナーが細菌性膣炎かわからない場合でも、コンドームを使用することで感染のリスクを抑える可能性があります。
クリンダマイシンを内服して治療している場合は、ラテックス製のコンドームは破れやすくなるため、使用を控えましょう。ポリウレタン製のコンドームなど、代替となる避妊方法について医師に相談しましょう。
禁煙する
喫煙は、体内の免疫力を低下させ、細菌性膣炎を含むさまざまな感染症のリスクを高める可能性があります。免疫力が低下すると、膣内環境の悪化につながり、細菌性膣炎の原因菌が増殖しやすくなります。
喫煙は膣内の善玉菌である乳酸桿菌を減少させるため、細菌性膣炎になりやすい環境を作ってしまいます。細菌性膣炎の再発を防ぐためにも、禁煙を検討しましょう。禁煙が難しい場合は、医師や専門機関に相談してみましょう。
生活習慣を見直す
バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠などは、免疫力を維持・向上させ、細菌性膣炎の再発予防に役立つ可能性があります。免疫力が高ければ、原因菌の増殖を抑え、健康な膣内環境の維持を目指せます。
糖質の過剰摂取は、膣内のグリコーゲンを増やし、原因菌の増殖を促進する可能性があるため注意が必要です。ストレスも免疫力を低下させる要因となるため、ストレスを溜め込まないストレス解消法を見つけることも大切です。規則正しい生活習慣を心がけ、細菌性膣炎の再発リスクを低減させましょう。
定期的に婦人科で検診を受ける
細菌性膣炎は、自覚症状がない場合もあります。無症状のまま放置していると、将来的に他の病気を併発するリスクも高まるため、定期的な婦人科検診を受け、早期発見・早期治療を目指しましょう。
早期発見し適切な治療を受けることで、重症化や慢性化を防げます。医師に相談することで、自分にあった再発予防策が見つかります。婦人科を受診するのは少し勇気がいる方もいますが、あなたの健康を守るためには、とても大切です。定期的な検診を習慣づけましょう。
まとめ
細菌性膣炎は、膣内環境の乱れに関連すると考えられている感染症です。おりものの変化やかゆみ、独特の臭いなどの症状が現れたら、市販薬を使うのではなく、婦人科を受診しましょう。専門機関で適切な検査と診断を受けることが早期治療に大切です。
薬剤療法は、メトロニダゾールやクリンダマイシンなどの抗菌薬が処方される場合が一般的です。医師の指示に従って内服しましょう。再発を防ぐためには、以下の内容を意識することが重要です。
- 正しい洗浄方法
- コンドームの使用
- 禁煙
- 生活習慣の見直し
- 定期的な婦人科検診
心身ともに健康的な日常生活を過ごし、デリケートゾーンの健康を守りましょう。
おりものの変化は妊娠初期にも見られることがあります。妊娠の可能性がある方は、色や量の特徴を知っておくことも大切です。以下の記事では、妊娠初期に見られるおりものの特徴や、生理前のおりものとの違いについて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
>>妊娠初期のおりものの色や量などを解説|生理前のおりものとの違いも紹介
参考文献
Shifa Taj, Mohammed Zuber, Vidhyashree Ballagere Hanumanthaiah, Rajesh Venkataraman, Sathish Kumar Puttegowda, Syed Afrid, Sai Kiran. Metronidazole Induced Cutaneous Adverse Drug Reaction- A Systematic Review of Descriptive Studies. Curr Rev Clin Exp Pharmacol, 2024, 19, 3, p.269-284