
無月経の原因と治療アプローチ!放置せず専門医に相談を
公開日:2025.04.20更新日:2025.04.20
「生理が来ない」そんな不安を抱えていませんか?実は「無月経」は多くの女性が経験する可能性があります。無月経とは、文字通り生理が来ない状態のことです。妊娠や授乳といった自然な原因以外で起こる無月経は「病的無月経」と呼ばれます。
一般的に18歳になっても初経がない「原発性無月経」と、生理が3か月以上止まる「続発性無月経」の2種類があります。初経の遅れは卵巣機能の低下と関連があると報告されています。過度なダイエットやストレスもホルモンバランスを乱し、無月経を招く大きな要因です。
この記事では、無月経のさまざまな原因や検査方法、そして将来の妊娠への影響について詳しく解説します。将来の健康のために、まずは無月経の正しい知識を身につけましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、無月経の症状をはじめとした、あらゆる婦人科疾患の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
無月経の原因4選
無月経にはさまざまな原因があり、適切な対処法も異なってきます。考えられる原因は以下の4つです。
- ホルモンバランスの乱れ
- ストレスや過度のダイエット
- 甲状腺疾患や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 先天的な異常や子宮の病気
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、無月経の最も一般的な原因の一つです。体内では、さまざまなホルモンが協調して働いています。月経周期は、脳の視床下部や下垂体、卵巣から成り立っています。
視床下部は、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)を分泌することで、下垂体に指示を出します。下垂体は、指示を受けて、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)という2つのゴナドトロピンを分泌します。ゴナドトロピンは、卵巣に働きかけて、卵胞を成熟させ、排卵を促し、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の分泌を調節します。
ストレスや過度なダイエット、病気などによって乱れると、ホルモンの分泌に異常が生じ、月経周期が乱れて無月経になることがあります。高プロラクチン血症では、母乳を作るホルモンであるプロラクチンが過剰に分泌されることで、ゴナドトロピンの分泌が抑制され、排卵が阻害されます。
ストレスは視床下部からのGnRH分泌を減少させることが報告されており、月経周期の乱れにつながることがあります。月経周期の黄体期と卵胞期でコルチゾール(ストレスホルモン)反応性に違いが見られることも示唆されています。
ストレスや過度なダイエット
現代社会では、仕事や人間関係、将来への不安など、さまざまなストレスにさらされています。過剰なストレスは、心身に悪影響を及ぼし、無月経の要因にもつながります。
過度なダイエットも無月経の大きな要因です。ダイエットによって栄養状態が悪化すると、体は生命維持を最優先し、エネルギー消費を抑えようとします。結果、生殖機能は後回しにされ、月経が止まってしまうのです。急激な体重減少や極端な食事制限は、ホルモンバランスを大きく乱す可能性があります。
甲状腺疾患や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
甲状腺は、喉仏の下にある小さな蝶に似た形をした器官で、甲状腺ホルモンを分泌して、体の代謝をコントロールしています。甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じると、全身の代謝が乱れ、さまざまな症状が現れます。無月経も甲状腺ホルモンに関連する症状の一つです。
甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、代謝が異常に亢進し、月経量が少なくなる傾向があります。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンが不足するため、代謝が低下し、無月経になることがあります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣に多数の小さな嚢胞(卵胞)ができる病気です。PCOSでは、男性ホルモンが過剰に分泌されるため、排卵が起こりにくくなり、無月経や月経不順などの症状が現れます。
排卵がうまく起きない状態の一つに「無排卵月経」があります。以下の記事では、無排卵月経の原因や放置によるリスク、そして改善に向けた治療法について医師監修のもと詳しく解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
>>【医師監修】無排卵月経の原因と治療法!放置リスクと改善への道筋
先天的な異常や子宮の病気
無月経の原因として、まれに生まれつき子宮や膣に異常がある場合もあります。子宮がない、あるいは膣が閉鎖しているケースです。子宮関連の先天的な異常は、思春期になっても月経が来ないことで発見されることが多いです。
後天的に子宮に異常が生じる場合もあります。子宮内膜に炎症が起きたり、子宮に腫瘍ができていたりする場合も、無月経となることがあります。子宮内膜の炎症は、感染症や手術などが原因で起こることがあります。子宮の腫瘍には、良性と悪性があり、無月経以外にもさまざまな症状が現れることがあります。
無月経の検査と診断方法
無月経の検査と診断方法について、以下の5つを解説します。
- 基礎体温測定と月経周期記録
- 血液検査:ホルモン値の測定
- 画像検査:超音波検査、MRI検査など
- 遺伝子検査
- 必要に応じて実施するその他の検査
基礎体温測定と月経周期記録
基礎体温測定は、毎朝起きたときに舌の下で体温を測り、変化を記録する方法です。基礎体温は、健康な女性であれば月経周期と連動して変化します。低温期と高温期がはっきりと二相に分かれていれば、排卵が起こっている可能性が高いと考えられます。
基礎体温が全体的に低温期のままで推移している場合や、高温期が短い場合は、排卵が起こっていない可能性があります。たとえ月経が来ていなくても、基礎体温を毎日記録することで、ホルモンバランスの状態や排卵の有無をある程度推測できます。
基礎体温表は医師の診断にも役立ちますので、毎日忘れずに記録するようにしましょう。スマートフォンアプリを利用すると記録が簡単になります。
血液検査:ホルモン値の測定
血液検査では、月経周期に関わるさまざまなホルモンの値を測定します。卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどです。
それぞれの値を調べることで、卵巣、脳下垂体、甲状腺などの機能に異常がないかを確認できます。FSHの値が高い場合は卵巣機能の低下が疑われます。卵巣がFSHからの刺激に反応しにくくなっているため、脳下垂体がより多くのFSHを分泌しようとするためです。FSHの値が低い場合は、視床下部や脳下垂体の機能低下が疑われます。
視床下部や脳下垂体からの刺激が不足しているため、卵巣が十分に機能しないのです。それぞれのホルモン値から無月経の原因となっている病気を特定し、適切な治療方針を決めるために血液検査は重要な検査です。プロラクチンの過剰分泌が原因で無月経になっている場合は、プロラクチンの値を測定して診断できます。
画像検査:超音波検査、MRI検査など
画像検査は、子宮や卵巣などの形や大きさ、異常な腫瘍の有無などを確認する検査です。子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症、子宮奇形などの病気が無月経の原因となっているかを調べられます。
超音波検査では、ゼリーを塗ったプローブをお腹に当てて超音波を送ります。子宮や卵巣で反射した超音波を画像化し、臓器の大きさや内部構造をリアルタイムで観察します。検査時間は5~10分程度で、痛みもほとんどありません。
MRI検査は、強力な磁場と電波を使って体の断面画像を撮影する検査です。超音波検査よりも詳しい画像を得られるため、小さな病変や子宮内膜の状態なども詳しく調べられます。検査時間は30分~1時間程度で、狭い空間に長時間入る必要があるため、閉所恐怖症の方は事前に医師に相談しましょう。
遺伝子検査
無月経の原因として、まれに染色体異常などが関係している場合があります。ターナー症候群は女性に特有の染色体異常で、低身長や卵巣機能不全などを引き起こし、無月経の症状が現れることがあります。
遺伝子検査は、血液や唾液などのサンプルからDNAを抽出し、特定の遺伝子の変異や染色体異常の有無を調べる検査です。ターナー症候群は、原発性無月経、つまり18歳になっても初経がない場合に疑われます。
必要に応じて実施するその他の検査
無月経の原因を特定するために、必要に応じて追加の検査を行います。プロゲステロン負荷試験は、子宮内膜に問題がないかを調べる検査です。プロゲステロンを投与した後、子宮内膜が正常に機能していれば少量の出血(消退出血)が見られます。出血があるかどうかを確認し、子宮内膜が正常に機能しているかを判断します。
子宮鏡検査は、細いカメラを子宮内に入れて直接観察する検査です。子宮内膜ポリープや子宮内膜癒着などの病気を発見できます。医師は、患者さんの症状やこれまでの検査結果に合わせて、最適な検査方法を選択しますので、わからないことがあれば、気軽に相談しましょう。
子宮に関連する病気の中には「子宮筋腫」もあり、その発症には女性ホルモンの変化が深く関わっているとされています。以下の記事では、子宮筋腫の原因や、ピル・性行為との関係についてもわかりやすく解説していますので、あわせてご確認ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
無月経の治療:ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、不足しているホルモンを薬で補う治療法です。ホルモンが不足している状態を、外から補うことでバランスを整えます。思春期を迎えても初経が来ない場合、医師の判断でホルモン補充療法が選択されることがあります。研究では、初経がない状態と早発卵巣機能不全との関連性が報告されています。
ホルモン補充療法には、飲み薬や貼り薬、注射などさまざまな方法があります。患者さんのライフスタイルや症状に合わせて、最適な方法を選択します。副作用として、吐き気や頭痛、不正出血などが報告されていますが、個人差があり、症状の経過もさまざまです。治療中に気になる症状があれば、必ず医師に相談しましょう。
無月経の3つの改善策
無月経の治療は医療機関での適切な診断と治療が基本ですが、日常生活でのセルフケアも重要です。無月経の改善に役立つ可能性のある3つの生活習慣は、以下のとおりです。
- 食生活改善
- 適度な運動
- ストレスマネジメント
食生活改善
食生活の改善は、健康を取り戻すための第1歩です。3食きちんと食べることはもちろん、炭水化物とタンパク質、脂質のバランスを意識することも大切です。ご飯やパンなどの炭水化物はエネルギー源となり、肉や魚、大豆製品などのタンパク質は体の組織を作るのに必要です。
魚やナッツ、植物油に含まれる脂質は、ホルモンの材料となります。ビタミンやミネラルは体の機能を調節する役割を果たします。各栄養素は、野菜、果物、海藻などに豊富に含まれています。重要なのは、必要な栄養素をバランス良く摂取することです。過度な食事制限や特定の栄養素に偏った食事は避け、多様な食品を食べるように心がけましょう。
適度な運動
適度な運動は、血行を促進し、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。ウォーキングやジョギング、ヨガ、水泳など、無理なく続けられる運動を見つけ、習慣的に行いましょう。
過度な運動は、かえってストレスホルモンの分泌を増加させ、ホルモンバランスを崩す原因になる場合があります。運動の種類や強度、頻度などは、個々の体力や生活習慣に合わせて調整することが大切です。疲れたら休む、無理をしないなどをできる限り守るようにしましょう。
ストレスマネジメント
ストレスをため込まないためには、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。好きな音楽を聴く、映画を観る、友人と話す、趣味に没頭するなど、自分がリラックスできる方法を見つけ、実践してみましょう。
質の高い睡眠を確保することも、ストレスマネジメントの一環です。睡眠不足はストレスを増大させるだけでなく、ホルモンバランスにも悪影響を及ぼす可能性があります。規則正しい生活を送り、十分な睡眠時間を確保するように心がけましょう。自分一人で抱え込まずに、家族や友人、専門家への相談も、ストレス軽減につながります。
まとめ
無月経にはさまざまな原因があり、それぞれに適した治療法があります。ホルモンバランスの乱れやストレス、過度なダイエット、甲状腺の病気、先天的な異常など、多岐にわたる可能性を理解しておくことが大切です。
適切な検査で原因を特定し、あなたに合った治療法を見つけることが、月経の再開、そして将来の妊娠の可能性を高める第1歩です。1人で悩まず、専門家のサポートを受けて、健やかな体を取り戻しましょう。
無月経と並んで注意が必要なのが「不正出血」です。生理との違いが分かりづらく、不安を感じる方も多いですが、原因によっては治療が必要なケースもあります。以下の記事では、不正出血の原因や見分け方、受診の目安について詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
>>不正出血を放置しないで!原因や生理との違い、受診の目安まで徹底解説
参考文献
Svetlana A Yatsenko, Selma F Witchel, Catherine M Gordon. Primary Amenorrhea and Premature Ovarian Insufficiency. Endocrinol Metab Clin North Am, 2024, 53(2), p.293-305