精子の運動率とは?定義と生活習慣、必要な栄養素について解説
公開日:2024.11.22更新日:2024.12.12
「子どもが欲しいのに、なかなか授かれない…」そんな悩みを抱えているご夫婦は多いです。実は、原因の一つに男性の精子の運動率の低下があります。精子の運動率とは、元気に泳ぐ精子の割合を示す重要な指標です。
この記事では、精子の運動率を上げるための具体的な方法を、生活習慣の改善から栄養摂取まで詳しく解説します。適切な対策を講じることで、精子の質を向上させ、妊娠の可能性を高められます。
以下の記事では、男性不妊になりやすい人の特徴についてまとめています。ご自身に当てはまらないか、心配な方はぜひチェックしてみてください。
>>男性不妊になりやすい人の特徴とは?原因や治療法も解説
精子の運動率の定義と検査方法
妊娠を望む方にとって、精子の運動率は重要な要素の一つです。精子の運動率についてわかりやすく解説します。精子の運動率が低くても、改善できる可能性があるので、確認しましょう。
精子の運動率の定義と重要性
精子の運動率とは、精液中の精子のうち、活発に動いている精子の割合を示す数値です。精子の運動率は、以下のように妊娠に大きく影響します。
- 運動率が高い:卵子に到達し受精する確率が高くなる
- 運動率が低い:卵子に到達する精子が少なくなり、妊娠しにくくなる可能性がある
精子の運動率の測定は、顕微鏡を使用して行われます。精子の動きは以下の3種類に分類されます。
- 前進運動(直進する)
- 非前進運動(円を描くなど)
- 不動
前進運動している精子の割合が精子の運動率として計算されます。
精子の運動率の正常値と低値の影響
世界保健機関(WHO)の2021年の基準では、精子の運動率の正常値は42%以上とされています。ただし、検査機関によって基準値が異なる場合があるため、結果の解釈は医師に相談することが重要です。
精子の運動率が低い場合、自然妊娠が難しくなる可能性があります。低い運動率の原因にはさまざまなものがありますが、主なものとしては以下が挙げられます。
- 加齢
- 生活習慣の乱れ
- ストレス
- 病気
- 肥満
肥満は精液量や総精子数、運動率や正常形態の精子の減少と関連していることがわかっています。
精子の運動率が低いと診断された場合でも、生活習慣の改善や治療によって改善する可能性があります。クロミフェンシトラートという薬は、ホルモン合成と精子生成を刺激することで精液の質を改善する効果が期待できます。
クロミフェンシトラートは、医師の指導のもとで使用される医療用医薬品であり、自己判断での使用は避ける必要があります。
精子の運動率の検査方法
精子の運動率は精液検査によって調べられます。精液検査は泌尿器科や不妊治療専門クリニックで受けることができます。検査の流れは以下のとおりです。
- 採取した精液を医療機関に提出
- 顕微鏡で精子の動きを観察
- 結果の分析と説明
検査費用は医療機関によって異なりますが、一般的に5,000~10,000円程度です。
検査を受ける際の注意点があります。
- 禁欲期間を2~7日間設ける必要がある
- 禁欲期間が短すぎると精液量が少なくなり、長すぎると精子の運動率が低下する可能性がある
- 検査結果が出るまでには通常1週間程度かかる
精液検査では、精子の運動率以外にも以下の項目が評価されます。
- 精液量
- 精子濃度
- 精子形態
上記の項目も妊娠に重要な要素であるため、総合的に判断する必要があります。例えば、精子の数が少なくても運動率が高ければ妊娠の可能性はあります。逆に、数が多くても運動率が低ければ妊娠は難しくなる可能性があります。
検査結果を踏まえ、医師と相談しながら今後の治療方針を決めていくことが大切です。精子の運動率の改善には時間がかかる場合もありますが、適切な対策を講じることで妊娠の可能性を高めることができます。
精子の運動率を上げるための生活習慣改善
精子の運動率は、日々の生活習慣と密接に関連しており、適切な改善策を講じることで向上させられます。精子の運動率を改善するための生活習慣の具体的な方法を解説します。
適度な運動の実施
適度な運動は、精子の運動率の向上に効果的です。運動には以下の利点があります。
- 肥満の解消:肥満は精子の運動率の低下と関連があるため、適切な体重管理が重要です。
- 血行促進:精巣への血流が改善され、酸素や栄養素の供給が増加します。
- ストレス軽減:運動によるストレス解消は、ホルモンバランスの改善につながります。
推奨される運動の例は以下のとおりです。
- ウォーキング:毎日30分程度
- ジョギング:週3〜4回、30分程度
- 水泳:週2〜3回、30分程度
運動強度は個人の体力に合わせて調整し、無理のない範囲で継続することが重要です。
十分な睡眠の確保
質の高い睡眠は、ホルモンバランスの調整とストレス軽減に重要な役割を果たします。以下の点に注意して、良質な睡眠を心がけましょう。
- 規則正しい就寝・起床時間を維持する
- 寝る前のカフェイン摂取を避ける
- 就寝前のブルーライト(スマートフォン、パソコンなど)の使用を控える
- 寝室の環境を整える(適切な温度、湿度、静かさを保つ)
成人の推奨睡眠時間は7〜9時間とされていますが、個人差があるため、自分に適した睡眠時間を見つけることが大切です。
禁煙
喫煙は精子の質に深刻な悪影響を与えます。タバコに含まれる有害物質は以下のような影響を及ぼす可能性があります。
- 精子のDNA損傷
- 精子の運動率の低下
- 精子数の減少
- 精液量の減少
禁煙は精子の質を向上させるだけでなく、全身の健康にも良い影響を与えます。禁煙が困難な場合は、医師に相談し、禁煙補助薬や禁煙外来の利用を検討しましょう。
アルコール摂取の制限
過度のアルコール摂取は、精子の生成と運動に悪影響を与える可能性があります。以下のような影響が報告されています。
- 精子数の減少
- 精子の運動率の低下
- 精子の形態異常
アルコールを完全に避けることが難しい場合は、適量を心がけましょう。一般的に、1日あたりのアルコール摂取量は、純アルコールで20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス2杯程度)が目安です。
ストレス管理
慢性的なストレスは、ホルモンバランスを乱し、精子の運動率の低下につながる可能性があります。以下のようなストレス管理法を取り入れてみましょう。
- 趣味の時間を楽しむ
- 瞑想やヨガを実践する
- 自然の中でリラックスする時間を作る
- 友人や家族との交流を大切にする
- 必要に応じて専門家(心理カウンセラーなど)に相談する
上記の方法を組み合わせ、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。
精子の運動率の改善は、生活習慣の見直しによって可能な場合が多くあります。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、アルコール摂取の制限、ストレス管理など、総合的なアプローチが効果的です。
個人差があるため、改善策を実践しても効果が見られない場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。精子の運動率の改善には時間がかかる場合もあるため、焦らず継続的に取り組むことが大切です。
精子の運動率改善のための栄養とサプリメント
精子の運動率の向上に効果的な栄養素と、サプリメント選びの注意点について解説します。
精子の運動率の改善に効果的な栄養素
特に効果的な栄養素は以下のとおりです。
- 亜鉛
- セレン
- コエンザイムQ10
- L-カルニチン
- アルギニン
上記の栄養素は、精子の生成、保護、エネルギー産生、運動性向上に重要な役割を果たします。
亜鉛
亜鉛は精子の生成に不可欠なミネラルです。
亜鉛を多く含む食品は以下のとおりです。
- 牡蠣
- 牛肉
- 豚レバー
- 卵
- チーズ
1日の推奨摂取量は約10mgです。細胞分裂に深く関わり、亜鉛不足は精子数の減少と運動率の低下につながる可能性があります。
セレン
セレンは抗酸化作用を持つミネラルで、活性酸素から精子を保護します。
セレンを多く含む食品は以下のとおりです。
- マグロ
- カツオ
- いわし
- 牛肉
- 豚肉
- 鶏
- 鶏肉
- 卵
- ナッツ類
1日の推奨摂取量は約50μgです。活性酸素によるダメージは精子の運動率低下につながる可能性があるため、セレンは必要な栄養素の一つだといえます。
コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、細胞内のミトコンドリアでエネルギー産生に関わる補酵素です。コエンザイムQ10を多く含む食品は以下のとおりです。
- 牛肉
- 豚肉
- 鶏肉
- いわし
- サバ
- さんま
1日の推奨摂取量は、一般的に100~300mg程度(明確な基準はなし)です。精子の運動エネルギー源であるATPの産生に重要な役割を果たすことで、精子の産生をサポートします。
L-カルニチン
L-カルニチンは、脂肪酸をミトコンドリアに運搬し、エネルギー産生を助ける役割があります。
L-カルニチンを多く含む食品は以下のとおりです。
- 羊肉
- 牛肉
- 鶏肉
1日の推奨摂取量は、一般的に500~2000mg程度(明確な基準はなし)です。精子は主に脂肪酸をエネルギー源として利用するため、L-カルニチンは精子の運動性向上に重要です。
アルギニン
アルギニンはアミノ酸の一種で、精液の主成分である精漿の生成に関与しています。
アルギニンを多く含む食品は以下のとおりです。
- 大豆
- 落花生
- くるみ
- 鶏肉
- 豚肉
1日の推奨摂取量は、一般的に数グラム程度(明確な基準はなし)です。アルギニン摂取により精液量が増加し、結果的に精子数の増加につながる可能性があります。
栄養素の摂取量は個人差があり、明確な基準がない栄養素に関しては、栄養士や医師に相談することを推奨します。精子の運動率を上げるには、食生活の改善を含む総合的なアプローチが重要です。
サプリメント選びの注意点と医師への相談
精子の運動率改善のためにサプリメントを利用する場合は、以下の点に注意が必要です。
- 成分表示の確認:信頼できるメーカーの製品を選ぶ
- 推奨摂取量の遵守:過剰摂取は体に悪影響を及ぼす可能性がある
- 総合的なアプローチ:サプリメントは生活習慣の改善や食生活の見直しと並行して利用する
サプリメントの使用に不安がある場合は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。個々の状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。
精子の運動率の改善には、バランスの取れた食事と適切な栄養摂取が重要です。亜鉛、セレン、コエンザイムQ10、L-カルニチン、アルギニンなどの栄養素は、精子の生成、保護、エネルギー産生、運動性向上に重要な役割を果たします。
上記の栄養素は、日々の食事から摂取することが基本ですが、必要に応じてサプリメントの利用も検討できます。ただし、サプリメントの使用には注意が必要なので、不安な方は専門家へ相談しましょう。
まとめ
精子の運動率の改善は、妊娠の可能性を高める重要な要素です。以下のポイントを意識して取り組みましょう。
- バランスの良い食事と適切な栄養摂取
- 適度な運動と十分な睡眠
- 禁煙とアルコール摂取の制限
- ストレス管理
亜鉛やセレン、コエンザイムQ10などの栄養素は効果的です。必要に応じてサプリメントの利用も検討してください。過剰摂取には注意が必要です。生活習慣の改善と適切な栄養管理を継続することで、精子の運動率の向上が期待できます。
精子の運動率の低下や改善方法について不安がある場合は、泌尿器科や不妊治療専門の医療機関に相談し、専門的なアドバイスを受けましょう。
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参考文献
- Garolla A, Mereu S, Pizzol D, Yon DK, Rahmati M, Soysal P, Ilie PC, Bertoldo A, Trott M, Smith L. “Papillomavirus infection and male infertility: A systematic review and meta-analysis.” Health science reports 7, no. 9 (2024): e70048.
- 男性不妊治療のためのクロミフェンシトラート:系統的レビューとメタアナリシス
- 体格指数と精液質の関係:系統的レビューとメタ分析