
PMSによる眠気に悩む女性必見!原因と解消法を専門医が解説
公開日:2025.04.20更新日:2025.04.20
毎月の生理前に強い眠気を感じたり、集中力が低下したりすることがあります。女性の約7割がPMS(月経前症候群)によって体に不調を感じるという研究があり、代表的な症状の一つが「眠気」です。
仕事や家事、勉強に集中できず、日常生活に支障をきたすほど深刻な場合もあります。ホルモンバランスや自律神経の乱れ、ストレスなど、原因はさまざまです。この記事では、PMSによる眠気のメカニズムと解消法を解説します。生理前の強い眠気から解放され、快適な毎日への一歩を踏み出しましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、PMSをはじめとした、あらゆる婦人科疾患の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
PMSとは月経前に現れる心身の不調
PMSは月経(生理)が始まる3〜10日前から現れる不調の総称です。眠気以外にも心身に以下のようなさまざまな不調が現れることがあります。
- 感情の浮き沈みが激しくなる
- イライラしやすくなる
- 理由もなく不安になる
- お腹に張りや痛みを感じる
- 頭が痛くなる
- 乳房に張りや痛みを感じる
- 全身にだるさを感じる
PMSは月経が始まると軽くなったり、消えたりする場合があります。症状は人それぞれで、軽い方もいれば日常生活に支障が出るほど重い方もいます。症状が現れるタイミングもさまざまです。
PMSの症状は多岐にわたり、個人差も大きいため、正しい知識を持つことがとても大切です。以下の記事では、PMSの基本的な仕組みから主な症状、日常でできる対策までを医師監修のもとで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>【医師監修】PMSとは?症状や対策など女性に知ってほしい基礎知識を解説
PMSによる眠気の原因3選
PMSの症状の一つとして、強い眠気を訴える女性は多いです。仕事や家事、学業に集中できず、日常生活に支障をきたす場合もあります。PMSによって引き起こされる強い眠気は、複数の原因が影響している可能性があります。主な原因を以下の3点に絞って解説します。
- ホルモンバランスの乱れ
- 自律神経の乱れ
- ストレスによる影響
ホルモンバランスの乱れ
PMSの時期には、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のバランスが大きく変動します。排卵後から月経までの期間は、プロゲステロンの分泌が増加します。プロゲステロンは妊娠を維持するために子宮内膜を厚くしたり、体温を上昇させたりする作用があるホルモンです。
プロゲステロンは体温を上げ眠気を促す作用があり、PMSの時期は日中も眠気を感じやすくなります。プロゲステロンの増加は、セロトニンの分泌に影響を与えると考えられています。セロトニンの分泌が減少すると質の良い睡眠がとりにくくなり、日中の眠気が強くなる可能性があるため注意が必要です。
自律神経の乱れ
ホルモンバランスの乱れは、自律神経に影響を及ぼすことがあります。自律神経は、呼吸や消化、体温調節など、生命維持に必要な機能を無意識のうちにコントロールしている神経です。
活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があり、バランスを取りながら働いています。PMSの時期はホルモンの変動によって交感神経が優位になりやすく、リラックスしにくくなるため日中の眠気を引き起こす可能性があります。
以下の記事では、PMSによる体温の変化に注目し、基礎体温との関係や対策法について詳しく解説しています。体調管理に役立てたい方はぜひ参考にしてみてください。
>>PMSによる体温変化のメカニズム!基礎体温との関係性と対策法
ストレスによる影響
現代社会はさまざまなストレス要因に満ち溢れています。仕事や人間関係、将来への不安など、心身に負担がかかりやすい状況です。ストレスを感じると、ホルモンや自律神経のバランスが崩れ、PMSの時期の眠気がさらに強くなる可能性があります。
心と体は密接につながっているため、ストレスを上手に管理することも、PMSの眠気を軽減するために重要です。強いストレスを感じている方は、心療内科や精神科を受診することをおすすめします。適切な治療や生活習慣の改善によって、PMSの症状を和らげましょう。
PMSの眠気の解消法5選
PMSによる眠気は、セルフケアによって緩和できる可能性があります。以下の方法を参考に、つらい時期を乗り越えましょう。
- 規則正しい生活習慣
- 食生活の改善
- 適度な運動
- リラックス
- カフェインの摂取
規則正しい生活習慣
体内時計は、24時間周期のリズムで体をコントロールしています。睡眠と覚醒のタイミングを調整しており、リズムが乱れると自律神経のバランスが崩れ、PMSの眠気が悪化する場合があります。
夜更かしや不規則な睡眠時間は、体内時計を狂わせるため避けましょう。規則正しい生活リズムを維持することは、自律神経のバランスを整えPMSの眠気を軽減する効果が期待できます。
就寝前にカフェインやアルコールを摂取すると、睡眠の質を低下させることがあります。就寝前のパソコンやスマートフォンの使用も、脳が興奮し睡眠を妨げる可能性があります。寝室は暗く静かに保ち、昼寝は短時間にとどめ深い睡眠に入らないことが大切です。
食生活の改善
糖分の多い食品や加工食品の摂りすぎは、血糖値を乱高下させ眠気を強める可能性があります。バランスの取れた食事を摂ることは、PMSの症状を軽減するために重要です。神経の働きを正常に保つ効果が期待されるため、以下の栄養素を積極的に摂取することをおすすめします。
- ビタミンB6:バナナや鶏むね肉に多く含まれる
- マグネシウム:アーモンドやほうれん草に多く含まれる
- カルシウム:牛乳やヨーグルトに多く含まれる
適度な運動
軽い運動は血行を促進し、ストレスの軽減が期待できます。PMSによって乱れた自律神経のバランスを整えるためにも、ウォーキングやヨガなどがおすすめです。激しい運動はストレスを高める可能性があるため、適度な運動を心がけましょう。
リラックス
リラックスする時間を作ることは、PMSによる心身の不調を和らげる効果が期待できます。以下を参考に、自分なりのリラックス方法を見つけてみましょう。
- 好きな音楽を聴く
- 好きな香りのアロマを焚く
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
腹式呼吸や瞑想も心身をリラックスさせる効果的な方法です。深くゆっくりとした呼吸を繰り返すことで自律神経のバランスを整え、心身の緊張を和らげる効果が期待できます。
カフェインの摂取
カフェインは眠気を覚ます効果が期待できますが、過剰に摂取すると睡眠の質が低下し、PMSの眠気を悪化させる可能性があります。摂取するときは午後以降は避け、午前中に控えめにするよう心がけましょう。カフェインの効果や副作用には個人差があります。自分の体質に合った、適切な量と摂取時間を把握しましょう。
婦人科を受診する目安
セルフケアを試しても眠気が改善しない場合は、専門家のサポートを検討しましょう。日常生活で以下の不安を感じたことがある方は、婦人科の受診をおすすめします。
- 仕事や学業に集中できない
- 家事や育児がつらい
- 運転に不安を感じる
婦人科では問診や検査を通して原因を特定し、適切な治療を目指します。専門家の治療を受けることで他の病気が隠れていないか確かめ、患者さんに合った治療法を検討することが期待できます。
PMSの治療法には、さまざまな選択肢があります。症状や体質、生活スタイルなどを考慮して、最適な治療法を選ぶことが大切です。専門家のアドバイスにもとづいた治療を受けることで、安全で効果の高い治療が期待できます。
PMSの症状の重さや現れ方には、個人差があります。症状が重い場合は、PMDD(月経前不快気分障害)の可能性があります。PMDDの症状は以下のとおりです。
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 不安
- 集中力の低下
- 頭痛
- 腹痛
- 乳房の張り
PMSは比較的軽い症状が多い一方、PMDDは重い症状が現れ日常生活に支障をきたすことが特徴です。症状と上手に付き合っていくためには、正しい知識と適切なケアが欠かせません。専門家のサポートを受けて、心身ともに健康な毎日を目指しましょう。
PMSの治療法
PMSは適切な治療法によって症状の改善が期待できます。自分に合った治療法を見つけ、快適な日々を目指しましょう。治療に用いられる薬には、以下の種類があります。
- 低用量ピル
- 黄体ホルモン製剤
- 漢方薬
低用量ピル
低用量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを配合した薬です。服用することでホルモンバランスが整い、排卵が抑制されるため避妊効果も期待できます。眠気だけでなく、以下の症状を改善できる可能性があります。
- 月経痛
- 月経不順
- ニキビ
- 多毛症
低用量ピルにはさまざまな種類があり、エストロゲンとプロゲステロンの配合量や種類によって効果や副作用が異なります。2024年に発表された研究では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が、PMSやPMDDの治療に有効とされています。
低用量ピルは毎日決まった時間に服用する必要があり、まれに血栓症などの副作用が起こる可能性もあります。医師と相談しながら、自分の状態に合ったピルを選びましょう。
黄体ホルモン製剤
PMSでプロゲステロンの分泌量が減少すると、眠気を含むさまざまな症状が現れることがあります。黄体ホルモン製剤は、プロゲステロンを補うことでPMSの症状緩和を目指す治療法です。代表的な種類は以下のとおりです。
- 飲み薬
- 注射
- 腟座薬
月経周期の後半のみ使用するものや、周期中は毎日使用するものなどがあり、以下の副作用が現れる場合があります。
- 不正出血
- 吐き気
- 乳房の張り
使用の際は医師と相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
PMSの代表的な症状の一つである「吐き気」に悩む方も少なくありません。以下の記事では、PMSによる吐き気の原因や、症状を和らげるための具体的な対処法について、専門的な視点から詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
>>PMSによる吐き気の原因と対処法!症状を和らげる効果的な方法
漢方薬
PMSによる眠気に漢方薬が有効な場合があります。漢方薬は自然由来の生薬を組み合わせて作られた薬です。西洋薬とは異なるメカニズムで体に働きかけ、体全体のバランスを整えることで症状の改善が期待できます。
漢方薬は一人ひとりの体質や症状に合わせて処方されます。同じPMSの眠気でも、人によって適した漢方薬は異なります。イライラや不安、のぼせには加味逍遙散(かみしょうようさん)、冷え性や貧血には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が用いられる場合があります。自分の体質や症状に合った漢方薬を、医師に相談してみましょう。
まとめ
PMSによる強い眠気で悩んでいる女性は多いです。PMSによる眠気には、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、ストレスなどの原因が、複雑に絡み合っている可能性があります。
規則正しい生活習慣を心がけ、バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を取り入れることが大切です。リラックスする時間を作り、カフェインの摂取を控えることも、PMSの症状を和らげる効果が期待できます。
セルフケアを試しても改善が見られない場合や、日常生活に支障が出るほどの強い眠気に悩んでいる場合は、婦人科を受診しましょう。低用量ピルや黄体ホルモン製剤、漢方薬などの処方により、PMSの症状を緩和させることが期待できます。一人で悩まず専門家のサポートを活用しながら、心身ともに健康な毎日を送りましょう。
「どの診療科に行けば良いかわからない」という方も多いPMSですが、受診すべきタイミングや婦人科での診察内容について知っておくと安心です。以下の記事では、PMSに関して医療機関を受診する際の目安や具体的な診療内容について、わかりやすく解説していますので参考にしてください。
>>PMSは何科に行けばよい?受診の目安や婦人科での診察内容を丁寧に解説
参考文献
Jespersen C, Lauritsen MP, Frokjaer VG, Schroll JB. Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. The Cochrane Database of Systematic Reviews, 2024, 8, 8, p.CD001396.