
PMSによる体温変化のメカニズム!基礎体温との関係性と対策法
公開日:2025.04.20更新日:2025.04.20
PMS(月経前症候群)は、月経の約2週間前から始まる心身の不調のことで、症状の出方や強さは人それぞれです。体温の変化も症状の一つです。PMSの時期には、プロゲステロンという女性ホルモンの影響で基礎体温が上昇します。
ある研究では0.3〜0.7℃程度の上昇が見られますが、個人差があり、研究によっては最大1℃程度の上昇が報告されています。PMSによる体温変化のメカニズムや基礎体温との関係を詳しく解説します。
日常生活でできる具体的な対策や病院へ行く目安も紹介するので、PMSによる体温変化や心身の不調でお困りの方の参考になれば幸いです。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、PMSをはじめとした、あらゆる婦人科疾患の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
PMSと体温の関係性
PMSと体温の関係について、以下の項目に沿って解説します。
- ホルモンによる体温の変化
- 基礎体温の変化と高温期
- メラトニンの分泌と体温調節の関係
- PMSによる体温上昇と発熱の違い
- 倦怠感や関節痛の有無
ホルモンによる体温の変化
体温は、さまざまなホルモンの影響を受けて変化しています。女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、体温調節に密接に関わっています。
女性の体のサイクルは、以下のように4つの時期に分けられます。
- 月経期(生理)
- 卵胞期(低温期):エストロゲン優位(体温:低め)
- 排卵
- 黄体期(高温期・PMS期):プロゲステロン優位(体温:0.5℃程度上昇)
黄体期から月経期に戻り、サイクルを繰り返します。体温の上昇やPMSの症状は、プロゲステロンの分泌がピークに達する時期に強くなる傾向があります。日々の体温変化を記録しておくと、ご自身のPMSの波を把握するのに役立ちます。
基礎体温の変化と高温期
基礎体温とは、起床後すぐの安静時に測る体温のことです。基礎体温を毎日測定し記録することで、ホルモンバランスの変化や排卵のタイミングを推測できます。基礎体温は低温期と高温期の二相性に分かれています。低温期は生理が始まってから排卵するまで続き、高温期は排卵後から次の生理が始まるまで続きます。
高温期の長さは個人差がありますが、一般的には約12〜16日間です。PMSの時期は、プロゲステロンの分泌により体温が上昇する高温期と重なります。高温期が16日以上続く場合は、妊娠の可能性も考慮する必要があります。婦人科を受診する際、基礎体温表はホルモンバランスの乱れや排卵障害などの診断に役立ちます。
メラトニンの分泌と体温調節の関係
メラトニンは、松果体から分泌される睡眠と覚醒のリズムを調整するホルモンです。夜になると分泌量が増え、体温を下げる働きがあります。メラトニンは日中の光刺激によって分泌が抑制され、暗くなると分泌が促進されるという特徴があります。
近年の研究では、PMSやPMDD(月経前不快気分障害)の女性は、メラトニンの分泌量が少なく、夜間の体温が高い傾向にあることが報告されています。PMSに伴う睡眠障害や体温調節異常の一因となっている可能性があります。
以下の記事では、PMSによって引き起こされる眠気の原因や、効果が期待できる対処法を専門医の視点から詳しく解説しています。毎日の生活に役立てたい方はぜひご覧ください。
>>PMSによる眠気に悩む女性必見!原因と解消法を専門医が解説
PMSによる体温上昇と発熱の違い
PMSによる体温上昇は、風邪などの感染症による発熱とはメカニズムが異なります。一般的には、PMSによる体温上昇は通常0.5℃程度で、37℃を超えることは比較的少ないとされています。感染症による発熱は37.5℃以上になることが多く、倦怠感や関節痛、咳、鼻水などの症状を伴うことがあります。
倦怠感や関節痛の有無
PMSでは、だるさや軽い頭痛、腹痛、腰痛などを訴えることはありますが、高熱時のように強い倦怠感や関節痛を感じることはまれです。強い倦怠感や関節痛がある場合は、他の病気を疑う必要があり、速やかに医療機関を受診することが重要です。
自己判断で市販薬を服用するのではなく、医師の診察を受けて適切な治療を受けるようにしてください。
PMSで起こる体温変化への対策
PMSで起こる体温変化に対する対策は、以下のとおりです。
- 生活習慣の改善
- ストレスマネジメント
- 体温変化を緩和するリラクゼーション法
- サプリメント
- 漢方薬
- 西洋医学による薬物療法
生活習慣の改善
PMSの時期の体温変化や不快症状を改善するために、以下の生活習慣を見直すことが大切です。
- 睡眠
- 食事
- 運動
- 冷え対策
規則正しい生活リズムを維持し、質の良い睡眠を十分に確保するようにしましょう。睡眠不足はホルモンバランスを崩し、PMSの症状を悪化させる可能性があります。毎日同じ時間に寝起きすることで、体内リズムが整い、睡眠の質も向上します。
バランスの良い食事を摂ることは、PMSの症状緩和につながります。ビタミンやミネラルはホルモンバランスの調整に重要な役割を果たしています。カフェインやアルコールの摂りすぎは、PMSの症状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。
適度な運動は、心身のストレスを軽減し、ホルモンバランスを整える効果があります。軽いウォーキングやストレッチ、ヨガなどの習慣をつけましょう。冷えはPMSの症状を悪化させる要因の一つです。入浴は、全身の血行が促進され、リラックス効果も得られます。
ストレスマネジメント
ストレスはPMSの症状を悪化させる大きな要因です。PMSの時期は、ホルモンバランスの変動によって、普段よりもストレスを感じやすくなっています。意識的にストレスを管理し、軽減する工夫が重要です。
- リフレッシュ方法
- 呼吸法
- 相談
好きな音楽や映画、読書、アロマなど、自分がリラックスできる方法を見つけることが大切です。深呼吸や瞑想は、自律神経のバランスを整え心を落ち着かせる効果が期待できます。深くゆっくりとした呼吸を繰り返すことで、心拍数が安定しリラックス状態へと導かれます。
PMSの症状がつらいときは、一人で悩まず家族や友人、専門機関に相談してみましょう。PMSは多くの女性が経験する症状です。必要に応じて、医療機関やカウンセリングサービスを利用することも検討しましょう。
体温変化を緩和するリラクゼーション法
PMSによる体温上昇は、適切なリラクゼーション法によって緩和できることが研究で示されています。ある研究では、ラベンダーアロマセラピーがPMS症状を持つ女性の自律神経バランスを改善し、体温調節に良い影響を与えることが示されています。
自律神経のバランスを整える深呼吸法が有効です。交感神経の働きを抑え、副交感神経を活性化することで、体温調節機能を正常化するためです。
「4-7-8呼吸法」は、4秒間かけて鼻から吸い込み、7秒間息を止め、8秒間かけて口からゆっくり吐き出します。このサイクルを5回ずつ、1日3回実践することが推奨されています。4-7-8呼吸法を就寝前に行うことで、体温の過度な上昇を抑え、入眠しやすくなる可能性があります。
漸進的筋弛緩法は、全身の筋肉を順番に緊張させてから弛緩させることで、体の緊張を解き、不快感の軽減が期待できます。
サプリメント
PMSの症状緩和のために、サプリメントを摂取するのも一つの方法です。過剰摂取は体に悪影響を与える可能性があるので、用法・用量を守って正しく摂取しましょう。医師や薬剤師に相談の上、自分に合ったサプリメントを選ぶことが大切です。
ビタミンB6には、ホルモンバランスを整える効果があり、PMSの精神的な症状の緩和に役立つと言われています。マグネシウムは、精神を安定させる効果があり、イライラや落ち込み、神経過敏などを軽減する効果が期待できます。
漢方薬
PMSの症状には、漢方薬が効果的な場合もあります。漢方薬は、体全体のバランスを整えることで、PMSのさまざまな症状にアプローチします。西洋薬とは異なり、体質に合わせた漢方薬を選ぶことが重要です。自己判断での服用は避け、医師や薬剤師に相談しましょう。
加味逍遙散は、イライラや不安感、不眠、肩こり、頭痛などPMSにみられる精神的な症状や体の症状に効果が期待されています。当帰芍薬散は、冷え症や貧血、むくみ、めまい、疲労感など、血行不良や水分代謝の乱れに起因するPMSの症状に効果があるとされています。ただし、自己判断での服用は避け、医師や薬剤師に相談しましょう。
西洋医学による薬物療法
PMSによる体温変化が著しく生活に支障をきたす場合、西洋医学による薬物療法も選択肢の一つです。低用量ピルは卵巣からのホルモン分泌を調整し、PMSに伴う体温変動を安定させる効果があります。人工的に一定のホルモンレベルを維持することで、自然な周期による変動を抑えます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、炎症反応に関わるプロスタグランジンの生成を抑制することで、体温上昇や痛みを緩和する効果が期待できます。
薬物療法は副作用のリスクもあるため、必ず医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。個人の症状や体質に合わせた薬物療法の選択が、効果的なPMS管理につながります。
PMSで病院へ行く目安
生理前に「だるさ」や「微熱感」を感じることがあります。生理前の不快症状は、PMS(月経前症候群)のサインである可能性があります。PMSは、月経の約2週間前から始まる心身のさまざまな症状のことです。
体温が37.5℃以上、強い痛みが続くなど、いつもと違う症状が現れる場合は、すぐに受診する必要があります。PMS以外の病気が隠れているかもしれないためです。自己判断せずに、医療機関を受診するようにしましょう。
PMSを疑う場合、基礎体温を毎日記録しましょう。生理周期のリズムとPMSの症状との関係もみえてきます。基礎体温は、起床後すぐ、まだ体を動かしていないときに、舌の下に体温計を入れて測ります。高温期が16日以上続く場合は、妊娠の可能性もありますので、産婦人科を受診しましょう。
PMSの症状は人それぞれです。体温の変化以外にも、イライラやだるさ、不眠、腹痛など、さまざまな症状があります。症状がひどくて日常生活に支障が出る場合もあります。PMSの症状を疑う場合、自己判断せずに早めに婦人科で相談するのが大切です。
以下の記事では、PMSの症状で受診すべき診療科や、婦人科での診察内容、受診の目安について詳しく解説しています。医療機関を選ぶ際の参考になります。
>>PMSは何科に行けばよい?受診の目安や婦人科での診察内容を丁寧に解説
まとめ
PMSによる体温上昇は、プロゲステロンの影響によるもので、通常0.5℃程度の上昇です。基礎体温を記録することで、ご自身のPMS周期の把握に役立ちます。37.5℃を超える発熱や強い倦怠感、関節痛がある場合は、PMS以外の病気が隠れている可能性があります。自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
PMSの症状緩和には、規則正しい生活リズム、バランスの良い食事、適度な運動、冷え対策が重要です。ストレスを軽減するリフレッシュ方法を見つけることも大切です。サプリメントや漢方薬の活用も選択肢の一つですが、必ず医師や薬剤師に相談の上、使用してください。
気になる症状があれば、我慢せずに婦人科へ相談してみましょう。PMSは多くの女性が経験する症状です。一人で悩まず、専門家のサポートを受けて、快適な日々を送れるようにしましょう。
PMSの中でも特に「吐き気」がつらいという方は少なくありません。以下の記事では、PMSによる吐き気の原因や、症状を和らげるための具体的な対処法について詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
>>PMSによる吐き気の原因と対処法!症状を和らげる効果的な方法
参考文献
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