ピルで生理不順は改善できる?ホルモンバランスの整え方
公開日:2024.11.22更新日:2024.12.12
毎月きちんと来ない生理、痛みで日常生活に支障が出る生理痛で悩んでいませんか?生理不順に悩む女性は多いです。実は、ピルが悩みを解決する鍵になります。ピルは避妊だけでなく、ホルモンバランスを整えることで生理周期を安定させ、生理痛や出血量を軽減する効果があります。
この記事では、ピルの種類や効果、服用方法やホルモンバランスを整えるための生活習慣などの具体的な方法を解説します。正しい知識を身につけて、快適な毎日を手に入れましょう。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、生理の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
ピルで生理不順が改善するメカニズム
ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを含みます。女性ホルモンが体内でどのように作用するかによって生理不順が改善します。以下では、ピルのホルモンがどのように排卵を抑制し、月経周期を安定させるのか、さらに生理痛の軽減について解説します。
ホルモンの働きと排卵抑制
ピルに含まれるエストロゲンとプロゲステロンは、脳の視床下部や下垂体に作用します。体は十分なホルモンが分泌されていると認識し、卵巣からの排卵を抑制します。通常、排卵が行われると、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌され、子宮内膜が厚くなりますが、ピルを服用することで阻害されます。
結果、卵子が成熟せず、排卵が起こらないため、月経周期が安定して生理不順が改善されるのです。ホルモンバランスが整い、規則正しい月経が促進されます。
出血量の減少と生理痛の軽減
ピルを服用することで、子宮内膜が厚くならないため、生理の際の出血量が減少します。通常の月経では、子宮内膜が剥がれ落ちる際に出血が起こりますが、ピルによって内膜の発育が抑えられるため、出血が少なくなります。ホルモンのバランスが整えば、月経痛も軽減されることが多いです。
生理痛は、子宮が収縮する際にプロスタグランジンという物質が分泌されることが原因ですが、ピルで分泌が抑えられるため、痛みが和らぎます。結果、ピルは生理不順だけでなく、月経に伴う不快な症状の軽減にもつながります。
生理不順の種類とピルの効果
生理不順にはさまざまな種類があります。具体的には次のような種類があります。
- 頻発月経:24日未満の周期
- 希発月経:39日以上の周期
- 過長月経:8日以上の出血
- 過短月経:2日以内の出血
- 無月経:3か月以上生理がない状態
他にもさまざまなパターンの生理不順が存在し、2か月に1回しか生理が来ない方や、逆に月に2回生理が来てしまう方、生理のたびに貧血を起こすほど出血量が多い場合もあります。
生理不順で悩んでいる場合、ピルが効果的なことがあります。ピルに含まれる女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が、体内のホルモンバランスを整えることで、生理周期を安定させる効果があります。 具体的には、以下の効果が期待できます。
- 生理周期の安定化
- 生理痛の軽減
- 月経量の減少
ある研究では、ピル使用者の約70〜80%で生理痛の改善が見られ、月経量も平均30〜50%減少したことが報告されています。ただし、ピルの効果には個人差があり、また副作用のリスクもあるため、使用を検討する際は必ず医師に相談し、自分に適したピルを選択することが重要です。
生理不順の原因の一つとして、不正出血が発生することもあります。不正出血のある方は、以下の記事もチェックしておきましょう。
>>不正出血を放置しないで!原因や生理との違い、受診の目安まで徹底解説
ピルの種類と生理不順への効果の違い
ピルには大きく分けて、「低用量ピル」と「中用量ピル」の2種類があります。それぞれの効果の違いを以下で解説します。
低用量ピル
低用量ピルは、ホルモンの含有量が少ないため、副作用が比較的少ないのが特徴です。初めてピルを使用する方も安心して始めやすいです。低用量ピルは、月経周期を整える効果があり、避妊効果も高いことから、多くの女性に利用されています。ホルモンの量が少ないため、体への負担が軽く、特に10代の若者には、体の成長や変化に配慮した安全な選択肢です。
中用量ピル
中用量ピルは、低用量ピルに比べてホルモンの含有量が多く、生理不順の改善効果がより強い傾向があります。特に生理不順や重い月経痛に悩む女性にとっては、効果的な治療法となることがあります。中用量ピルは、ホルモンバランスを整えることで、月経周期を安定させるだけでなく、避妊効果も高いです。
10代の若者には低用量ピルが推奨されることが多いですが、症状や体質によっては中用量ピルが適している場合もあります。個々の体質や健康状態によっては、他の選択肢が適している場合もあるため、医師との相談が重要です。
生理不順以外のピルの効果・効能(PMS、避妊など)
ピルは生理不順の改善以外にもさまざまな効果があります。生理前にイライラしたり、お腹が張ったりするPMS(月経前症候群)の症状を軽くする効果も期待できます。ピルには高い避妊効果もありますが、すべての性感染症を防げるわけではありません。
ピルが、PMSや肌の調子を整える効果が期待される場合もありますが、医師と相談のうえで使用することが推奨されます。
ピルの服用方法と注意点
ピルは、正しく服用することで効果を最大限に発揮し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。ピルの服用方法や注意点について解説します。
ピルの服用開始時期と期間
ピルの服用開始時期は、低用量ピルと中用量ピルで若干異なります。低用量ピルは生理が始まった日(1日目)から服用を始めます。生理開始5日目までに服用を開始すれば避妊効果が期待できるとされていますが、飲み忘れを防ぐためにも1日目からの服用をおすすめします。中用量ピルは、生理5日目から服用を開始します。
服用期間は、基本的に医師の指示に従います。生理不順の改善を目的とする場合は、少なくとも3か月以上、症状が改善するまで継続して服用することが多いです。避妊を目的とする場合は、妊娠を希望するまで継続して服用できます。ピルの種類によって服用方法や期間が異なる場合があるので、必ず医師や薬剤師の指示に従いましょう。
ピルの服用方法と飲み忘れの対処法
ピルは、毎日1錠、決まった時間に服用しましょう。毎日同じ時刻に服用することで、血中ホルモン濃度を一定に保ち、効果を安定させられます。毎晩寝る前に服用するなど生活リズムに合わせた服用時間を決めましょう。旅行などで時差が生じる場合は、なるべく普段の服用時間に近づけるように調整してください。
飲み忘れた場合は、気づいた時点で1錠をすぐに服用し、次の服用は通常通り行います。12時間以内の飲み忘れであれば、避妊効果は維持されると言われています。しかし、12時間を超えて飲み忘れた場合は、避妊効果が低下する可能性があります。2錠以上飲み忘れた場合は、医師または薬剤師に相談しましょう。
ピルの副作用とリスク
ピルには、吐き気や頭痛、不正出血や乳房の張り、体重増加などの副作用が現れる場合があります。多くの場合、服用開始から数か月で軽快します。血栓症のリスクが高まる場合もあります。特に喫煙者や肥満、高血圧、糖尿病などの持病がある人は、リスクが高まる可能性があるので注意が必要です。
血栓症は、血管の中に血の塊ができる病気で、放置すると肺塞栓症や脳梗塞などを引き起こす可能性があります。持病がある場合や副作用が心配な方は、医師に相談の上、ピルの服用を検討しましょう。
ピルの費用は500〜3,000円程度
ピルの費用は、保険適用されるかどうかで大きく変わります。避妊目的の場合は保険適用外となり、1シート(21~28錠)あたり2,000~3,000円程度が相場です。生理不順や月経困難症などの治療目的でピルを服用する場合は、保険適用となる場合があります。保険適用されると、1シートあたり500~1,000円程度まで費用が抑えられます。
保険適用の可否は、症状や医療機関によって異なるため、事前に確認しましょう。
ホルモンバランスの整え方
ホルモンバランスを整えることは、生理不順の改善だけでなく、心身の健康を取り戻すことにもつながります。PMS(月経前症候群:生理前に起こる心身の不調)の症状緩和や、将来の妊娠・出産にも良い影響を与える可能性があります。生活習慣とストレスマネジメントの2つの側面から、ホルモンバランスの整え方を紹介します。
生活習慣(食事、運動、睡眠)
ホルモンバランスを整えるためには、毎日の生活習慣を見直すことが大切です。食事・運動・睡眠はホルモンバランスに直結する重要な要素になります。
食事
バランスの良い食事は、ホルモンバランスを整えるための基本です。「バランスが良い」とは、炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素に加え、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素を適切に摂取することです。
外食やお弁当ばかりで野菜不足になっていたり、ダイエットで特定の栄養素を極端に制限したりすると、ホルモンバランスが乱れやすくなります。
特に、女性ホルモンのバランスを整えるために重要な栄養素を意識して摂取するようにしましょう。
- ビタミンB6
女性ホルモンのバランスを整えるだけでなく、神経伝達物質の合成にも関与し、生理前のイライラや気分の落ち込みを軽減する効果も期待できます。マグロ、カツオ、バナナ、鶏むね肉などに豊富に含まれています。 - ビタミンE
ホルモンの分泌を調整する働きがあり、血行を促進し、冷え性の改善にも効果的です。アーモンド、アボカド、ほうれん草、かぼちゃなどに多く含まれています。 - 鉄分
月経で失われた血液を作るのに必要な栄養素です。レバー、ひじき、小松菜、あさりなどに豊富に含まれています。鉄分が不足すると貧血になり、疲れやすくなったり、めまいがしたりすることがあります。 - 大豆イソフラボン
女性ホルモンと似た働きをする成分で、更年期障害の症状緩和にも効果が期待されています。大豆、納豆、豆腐、味噌などの大豆製品に多く含まれています。
運動
適度な運動は、ホルモンバランスを整えるだけでなく、ストレス発散や生活習慣病の予防にも効果的です。「適度な運動」とは、息が少し弾む程度の運動を指します。ウォーキングやヨガ、軽いジョギング、水泳などが挙げられます。
激しい運動はかえってストレスホルモンの分泌を促し、ホルモンバランスを乱す可能性があるので注意が必要です。週に3回程度、30分〜1時間程度の運動を継続的に行うのが理想的です。
睡眠
睡眠不足は、成長ホルモンの分泌を抑制し、ホルモンバランスを乱す大きな原因となります。成長ホルモンは、体の成長や修復だけでなく、代謝や免疫機能の調節にも関わっています。睡眠不足が続くと、疲労や免疫力の低下、肌荒れだけでなく生理不順にもつながることがあります。
質の良い睡眠をしっかりとることは、心身の健康を維持するために重要です。毎日同じ時間に寝起きすることで体内時計が整い、睡眠の質を高めることができます。寝る直前にスマートフォンやパソコンを使用すると、ブルーライトによって睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されるため、避けるようにしましょう。
ストレスマネジメント
ストレスをため込まないよう自分なりのストレス解消法を見つけることは、ホルモンバランスを整えるうえで重要です。ストレスが過剰になると、自律神経のバランスが乱れ、ホルモン分泌にも影響を及ぼします。
ストレス解消法は人それぞれです。気になったものをぜひ取り入れてみてください。
- 趣味を楽しむ
映画鑑賞、読書、音楽鑑賞、ガーデニング、スポーツなど、自分が夢中になれる趣味を見つけることは、ストレス発散に効果的です。 - リラックスする
好きな香りのアロマを焚いたり、ゆったりとしたバスタイムを楽しんだり、瞑想やヨガなどで心身のリラックスを意識してみましょう。 - 誰かに話す
家族や友人、パートナーなど、信頼できる人に自分の気持ちを話すだけでも、気持ちが楽になることがあります。話すのが苦手な方は、日記に書き出しましょう。 - 自然に触れる
公園を散歩したり、森林浴をしたり、自然に触れることで心が落ち着き、ストレス軽減につながります。 - プロのカウンセリングを受ける
どうしても自分だけではストレスを解消できない場合は、専門家の力を借りることも有効です。
自分に合ったストレス解消法を見つけて、ストレスと上手に付き合っていくことが、ホルモンバランスの改善、ひいては生理不順の改善につながります。
ストレスも生理不順に深く関わっています。以下の記事では、ストレスと生理不順の関係性を解説しているのでチェックしてみてください。
>>ストレスと生理不順の関係性|セルフケアと治療法を解説
まとめ
ピルは女性ホルモンを含み、生理周期を安定させる効果があります。生理不順の種類に応じて、医師の指示に従って適切なピルを選びます。ピルには生理痛やPMSの緩和、避妊効果などもあります。
副作用として吐き気や頭痛などがありますが、多くは数か月で軽快します。血栓症のリスクに注意が必要です。費用は目的によって異なります。
ホルモンバランスを整えるには、バランスの良い食事、適度な運動、質の良い睡眠が大切です。ビタミンB6・E、鉄分、大豆イソフラボンなどの栄養素を摂りましょう。ストレス解消法を見つけることも重要です。
生理不順について網羅的に知りたい方は以下の記事をぜひご覧ください。
>>生理不順の原因と治し方とは?放置してはいけない理由や受診の目安も解説
参考文献
- Powell A. “Choosing the Right Oral Contraceptive Pill for Teens.” Pediatric clinics of North America 64, no. 2 (2017):343-358.
- Wong CL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009
- 生理不順の治療ガイドライン