黄体機能不全とは?原因や症状、改善方法をわかりやすく解説
公開日:2024.12.25更新日:2024.12.25
月経不順や不正出血、基礎体温の高温期が短い、妊娠しづらい、流産しやすいといった症状に悩まされていませんか?実は、黄体機能不全のサインの可能性があります。黄体機能不全とは、妊娠に不可欠な黄体ホルモンの分泌が不足する疾患で、多くの女性が潜在的に該当する可能性があると考えられています。
黄体機能不全の症状や原因、具体的な改善策までを網羅的に解説します。記事を読めば黄体機能を回復させるポイントもわかるため、体調を改善するきっかけになる可能性があります。
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黄体機能不全の症状3選
黄体機能不全は、月経周期や妊娠に影響を与える女性特有の疾患です。自覚症状がない場合も多いですが、実は多くの女性が潜在的に抱えている可能性も否定できません。ご自身の身体の状態を正しく理解するためにも、代表的な症状を把握しておきましょう。
月経不順や不正出血
健康な状態では、月経周期は25~38日程度で安定しており、出血期間も3~7日程度です。しかし、黄体機能不全になると、リズムが崩れ、月経不順や不正出血といった症状が現れることがあります。
黄体機能不全では、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が不足するため、子宮内膜が不安定になり、月経周期が乱れるのです。24日未満の短い周期で生理が来てしまう「頻発月経」、逆に38日以上と長くなってしまう「稀発月経」など、さまざまなケースがあります。
生理の出血量が少なく、おりものシートで済んでしまう「過少月経」、逆に7日以上も出血が続く「過長月経」といった症状を訴える患者さんもいらっしゃいます。
生理期間以外に出血が起こる「不正出血」も、黄体機能不全の特徴的な症状です。少量の出血が続く、あるいはだらだらとした出血が続くなど、出血のパターンもさまざまです。
基礎体温の高温期が短い
基礎体温は、女性の健康状態を把握するための重要な指標です。基礎体温を毎日記録することで、排卵の有無や黄体機能の状態を知ることができます。
通常、女性の基礎体温は低温期と高温期の二相に分かれており、排卵が起こると黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きで体温が上昇し、高温期が12~16日間続きます。しかし、黄体機能不全の場合、高温期が10日間未満と短くなってしまうのが特徴です。
普段は高温期が14日間続いている人が、ある月は10日間未満しか高温期が続かない場合、黄体機能不全の可能性を疑う必要があります。高温期に移行するのに時間がかかる場合や、高温期と低温期の体温差が小さい場合も、黄体機能不全のサインの可能性があります。
基礎体温表は、婦人科での診察においても重要な情報源となります。基礎体温をつけている方は、医師に基礎体温表を持参することで、より正確な診断に役立てることができます。
妊娠しにくい、または流産しやすい
黄体機能不全は、妊娠にも大きな影響を及ぼします。妊娠のしにくさだけでなく、流産のリスクも高まります。「タイミングを合わせているのに妊娠しない」、「妊娠検査薬で陽性反応が出た後、生理が来てしまう」、「繰り返し流産を経験する」といった場合、黄体機能不全の可能性を検討する必要があります。原因不明の不妊や反復性流産を経験している場合は、一度検査を受けてみることをおすすめします。
黄体機能不全の原因
黄体機能不全は、さまざまな要因が複雑に絡み合っており、大きく分けてホルモン異常、生活習慣の乱れ、そして疾患や身体的要因の3つが考えられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
プロラクチン分泌過多などのホルモン異常
プロラクチンは母乳を作るために必要なホルモンですが、過剰に分泌されると、排卵に必要なホルモンの働きを阻害してしまいます。プロラクチン分泌過多が原因で黄体機能不全を起こす可能性があります。
プロラクチン分泌過多以外にも、甲状腺ホルモンの異常も黄体機能不全の原因となります。甲状腺ホルモンは、体の代謝をコントロールする重要なホルモンです。甲状腺ホルモンの分泌が過剰あるいは不足すると、ホルモンバランス全体が乱れ、黄体機能にも影響を及ぼします。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)も黄体機能不全を引き起こす疾患の一つです。PCOSは、卵巣に多数の小さな卵胞(卵子の入った袋)ができる病気です。排卵がうまくいかず、黄体機能不全につながることがあります。
ストレスや過度なダイエットなどの生活習慣の乱れ
現代社会はストレス社会とも言われ、多くの人がさまざまなストレスにさらされています。ストレスを感じると、体はコルチゾールというホルモンを分泌します。コルチゾールは、緊急事態に備えて身体を守るホルモンですが、過剰に分泌されると、他のホルモンのバランスを崩し、黄体機能不全を招く可能性があります。
過度なダイエットや偏った食事も、黄体機能不全の原因となります。人間の体は、ホルモンを作るにもさまざまな栄養素を必要とします。栄養が不足すると、必要なホルモンが十分に作られず、黄体機能不全につながるのです。
睡眠不足もホルモンバランスを崩す大きな要因です。睡眠中は、ヒト成長ホルモン(hGH)をはじめ、さまざまなホルモンが分泌され、体の機能を調整しています。睡眠不足は、ホルモン分泌のリズムを乱し、黄体機能不全のリスクを高めます。
黄体機能不全は、不妊や流産の原因となる可能性があるため、生活習慣を見直し、改善に努めることが重要です。
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黄体機能不全の治療法
黄体機能不全は多くの場合、適切な治療によって症状の改善が期待できる場合があります。治療は、主に不足している黄体ホルモン(プロゲステロン)を補う、あるいは排卵そのものを促すことを目的として行われます。それぞれ詳しく解説していきます。
ホルモン補充療法
ホルモン補充療法とは、薬を用いて不足している黄体ホルモン(プロゲステロン)を補う治療法です。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くふかふかにする役割を担っています。黄体ホルモン(プロゲステロン)が不足すると、子宮内膜が薄いままで受精卵が着床しにくくなってしまいます。
ホルモン補充療法によって黄体ホルモン(プロゲステロン)を補うことで、子宮内膜を厚くふかふかにして、妊娠しやすい状態に整えたり、流産のリスクを減らしたりすることが期待できます。ホルモン補充療法で用いる薬には、以下があります。
- 飲み薬
- 注射薬
- 膣座薬
- 膣用クリーム
飲み薬は手軽に服用できますが、副作用として吐き気や眠気などが現れる方もいます。注射は効果が高い一方、通院が必要で痛みを伴うというデメリットもあります。膣座薬や膣用クリームは子宮に直接作用するため効果が高いですが、使用感に抵抗がある方も少なくありません。
それぞれの薬の特徴を理解したうえで、医師と相談しながら自分に合った薬を選択することが重要です。
排卵誘発剤
排卵誘発剤は、排卵を促す薬です。黄体機能不全の中には、そもそも排卵がうまく起こっていないケースがあります。排卵がうまく起こっていないケースでは、排卵誘発剤を用いて排卵を促すことで、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌を促し、子宮内膜の状態を改善していきます。
排卵誘発剤にも、飲み薬や注射などさまざまな種類があります。飲み薬としてよく用いられるクロミフェンは、脳の視床下部に働きかけて、排卵を促すホルモンの分泌を促します。注射薬のヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)製剤や卵細胞刺激ホルモン(FSH)製剤は、卵巣に直接働きかけて卵胞を成熟させ、排卵を促します。
排卵誘発剤を使用する際は、超音波検査などで卵胞の成長を慎重に確認しながら、適切なタイミングで排卵を促すことが重要です。正しく使用すれば妊娠の可能性を高める効果が期待できますが、副作用として卵巣が腫れたり、多胎妊娠(双子、三つ子など)のリスクが高まったりする可能性もゼロではありません。
黄体機能不全の治療は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
黄体機能を回復するための日常生活の見直しポイント
黄体機能不全は、ホルモンバランスの乱れが大きく関わっている疾患です。以下の生活習慣を見直すことでホルモンバランスの改善、黄体機能の回復につながる場合があります。
- ストレス軽減
- バランスの取れた食事
- 適度な運動
- 質の高い睡眠
日常生活の中で、具体的にどのような点に注意すれば良いのか、詳しく解説していきます。
ストレス軽減
ストレスは、自律神経の乱れを引き起こし、排卵や黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌に悪影響を及ぼす可能性があります。ストレスをため込まないよう、自分に合った方法で発散することが大切です。具体的なストレス軽減方法としては以下が挙げられます。
- 好きな音楽を聴く
- 好きな香りのアロマを焚く
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
- 趣味の時間を楽しむ
- 自然の中でリラックスする
自分が心地良いと感じる方法を見つけて、実践してみましょう。
睡眠不足もホルモンバランスを乱し、黄体機能不全の大きな要因となります。睡眠中は、ヒト成長ホルモン(hGH)や女性ホルモンの分泌が活発になるため、質の良い睡眠を十分に確保することが重要です。
十分な睡眠
質の高い睡眠を得る方法として以下の工夫が挙げられます。
- 毎日同じ時間に寝起きする
- 寝る前にカフェインを摂らない
- 寝る前はスマホやパソコンの画面を見ない
- 寝室を暗く静かに保つ
毎日7~8時間程度の睡眠時間を目指しましょう。
バランスの取れた食事
栄養バランスの取れた食事は、ホルモンバランスを整え、黄体機能を正常に保つために重要です。
特に、ビタミンEは、ホルモンの生成やバランスを調整する働きがあるため、積極的に摂取するようにしましょう。ビタミンEを多く含む食品には、アーモンド、ひまわりの種、アボカド、うなぎ、たらこなどがあります。
脂質の代謝も子宮内膜の受容性に影響を与えるため、バランスの良い脂質摂取を心がけましょう。例えば、過剰な飽和脂肪酸の摂取は避け、魚に含まれる良質な不飽和脂肪酸(DHA、EPAなど)を積極的に摂りましょう。
妊娠したいと考えている方は、普段からの食事や飲酒についても気をつける必要があります。以下では、妊活中に注意すべき食べ物やアルコール摂取に関して記載しているのでチェックしてみてください。
>>妊活中に注意すべき食べ物は?妊活で摂りたい栄養素やおすすめレシピも紹介
>>妊活中はお酒を飲んでも大丈夫?妊活中のお酒との向き合い方を徹底解説
適度な運動
適度な運動も、ホルモンバランスの改善に効果的です。ウォーキングやヨガなど、軽い運動を習慣的に行うことで、血行が促進され、ホルモン分泌がスムーズになります。激しい運動はかえってホルモンバランスを崩す可能性があるので、無理のない範囲で行いましょう。
禁煙とアルコール摂取の制限
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、血流を悪くするため、ホルモンバランスを乱す原因となります。卵巣への血流も悪くなり、卵巣機能の低下にもつながるため、妊娠を希望する方はもちろん、そうでない方も禁煙をおすすめします。
アルコールも、過剰に摂取するとホルモンバランスを崩し、黄体機能に悪影響を及ぼす可能性があります。少量であれば問題ありませんが、毎日大量に飲む習慣がある方は、摂取量を控えるようにしましょう。
生活習慣の改善は、ただ単に黄体機能不全の改善に役立つだけでなく、全身の健康増進にもつながります。健康維持は、妊娠しやすい体づくりにもつながります。
まとめ
月経不順や不正出血、基礎体温の高温期が短い、妊娠しにくい、または流産しやすいといった症状に心当たりのある方は、黄体機能不全の可能性があります。原因はホルモン異常、生活習慣の乱れ、疾患などさまざまです。
治療法としてはホルモン補充療法や排卵誘発剤などがあり、医師と相談のうえ、自分に合った方法を選びましょう。日常生活では、ストレス軽減、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙とアルコール摂取の制限を心がけることで、症状改善が期待できます。日常生活の改善は、妊娠しやすい体づくりにもつながります。まずはできることから始めてみましょう。
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参考文献
Yang T, Zhao J, Liu F, Li Y. “Lipid metabolism and endometrial receptivity.” Human reproduction update 28, no. 6 (2022): 858-889.