
卵巣嚢腫になりやすい人の特徴と予防法!体質や生活習慣との関連性
公開日:2025.03.18更新日:2025.03.18
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)は、卵巣にできる腫瘍で、多くの女性が経験する可能性のある疾患です。初期段階では自覚症状がないことも多いですが、放っておくと、激しい腹痛や卵巣嚢腫の捻転や破裂が起こる場合もあります。
本記事では、卵巣嚢腫になりやすい人の5つの特徴や予防のための6つの生活習慣、早期発見や治療の重要性について解説します。 ご自身の体質や生活習慣と照らし合わせながら、卵巣嚢腫の予防や早期発見に役立ててください。
神奈川県相模原市 淵野辺駅から徒歩2分にあるソフィアレディスクリニックは、卵巣嚢腫をはじめとした、あらゆる婦人科疾患の悩みに強みを持つクリニックです。専門医が相談に乗りますのでお気軽に相談にいらしてください。
卵巣嚢腫になりやすい人の5つの特徴
卵巣嚢腫になりやすい人の特徴について、以下の5つを解説します。
- 年齢
- ホルモンバランスの乱れ
- 肥満
- 食生活の乱れ
- ストレス
年齢
卵巣嚢腫はさまざまな年齢の女性に見られますが、特定の種類の卵巣嚢腫は、20〜30代の女性に多く見られることがあります。卵巣が活発に機能している時期であるためと考えられています。卵巣は、排卵の準備のために卵胞を発達させ、ホルモンを分泌しています。
この活発な活動が、卵巣嚢腫の発生リスクを高める一因となる場合があります。卵巣嚢腫には種類がありますが、成熟嚢胞性奇形腫と呼ばれる卵巣嚢腫は、妊娠中の検査で偶然発見されることもあります。妊娠中はホルモンバランスが大きく変化するため、卵巣の状態も変化しやすくなります。
40代以降は、卵巣嚢腫が悪性化するリスクが高まるため、特に注意が必要です。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、卵巣嚢腫のリスクを高める要因の一つです。月経不順や子宮内膜症といった症状を抱えている女性は、卵巣嚢腫を発症するリスクが高い傾向にあります。
子宮内膜症は、本来子宮の内側にある子宮内膜組織が、子宮以外の場所で増殖する病気です。卵巣に子宮内膜組織が増殖すると、卵巣チョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞)と呼ばれる卵巣嚢腫の一種が発生することがあります。子宮内膜症は、月経痛や性交痛、不妊症などの原因となる場合もあります。
症状がある場合は、婦人科を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。ホルモンバランスの変化は子宮筋腫の発生にも影響を与えると考えられています。ピルの使用や性行為との関連についても詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>子宮筋腫の原因は女性ホルモンの変化?ピルや性行為との関係についてもわかりやすく解説
肥満
肥満も、卵巣嚢腫のリスクを高める可能性があります。脂肪細胞は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンを産生します。肥満により脂肪細胞が増加すると、エストロゲンの分泌量も増加することがあり、卵巣嚢腫の形成リスクと関連している可能性があります。
健康的な体重を維持することは、卵巣嚢腫だけでなく、さまざまな病気の予防にもつながります。
食生活の乱れ
食生活の乱れも、卵巣嚢腫のリスクに影響を与える可能性があります。高脂肪食や加工食品に含まれる添加物などは、体内の炎症反応と関連する可能性があり、卵巣機能に影響を与える可能性があります。
高脂肪食は肥満の一因にもなります。肥満は、卵巣嚢腫のリスクに影響を与える可能性があるため、食生活の乱れは間接的にその発症に影響を与えていると考えられます。野菜や果物、全粒穀物など、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。
ストレス
ストレスは、体にさまざまな影響を与えます。卵巣嚢腫に関しても、ストレスがホルモンバランスを乱し、発症リスクを高める可能性があります。慢性的なストレスは、免疫機能の低下にもつながり、さまざまな病気のリスクを高める場合があります。
ストレスをうまく管理し、心身ともに健康な状態を保つことが重要です。ホルモンバランスの乱れは不妊のリスクにも関係するとされています。不妊症の定義やなりやすい人の特徴、実際の割合について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>不妊症とは?定義やなりやすい人の特徴・割合についても解説
卵巣嚢腫を予防するための6つの生活習慣
卵巣嚢腫を予防するための生活習慣について、以下の6つを解説します。
- バランスの良い食生活
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- ストレス管理
- 禁煙
- 飲酒の制限
バランスの良い食生活
バランスの良い食生活は、卵巣の健康維持に重要と考えられています。食物繊維とビタミンを積極的に摂取することで、卵巣機能の維持やホルモンバランスの調整に役立つ可能性があります。
食物繊維は、腸内環境を整え、老廃物の排出を促進する効果が知られています。便通が良くなることで、体内の老廃物が排出されやすくなり、全身の健康維持に役立つ可能性があります。食物繊維は、野菜や果物、海藻、きのこ類などに多く含まれています。
朝食に野菜ジュースやフルーツ、ヨーグルトを加えたり、昼食や夕食にサラダや海藻の味噌汁を加えたりしましょう。ビタミンは、細胞の成長や修復、ホルモンの合成など、体内のさまざまな機能に関与しています。卵巣の健康維持には、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEなどが重要で、それぞれ以下の効果が期待できます。
- ビタミンA:粘膜組織の健康維持に関与する
- ビタミンC:抗酸化作用のある、細胞の酸化ストレスを軽減する
- ビタミンE:ホルモンバランスとの関連が研究されており、女性の健康維持に役立つ可能性がある
緑黄色野菜やナッツ類、柑橘系の果物などに多く含まれていますので、積極的に摂取しましょう。
適度な運動
適度な運動は、血行促進やホルモンバランスの調整に効果があり、卵巣機能の維持につながる可能性があります。ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられる運動を習慣化することが大切です。ウォーキングは、手軽に始められる有酸素運動です。
1日30分程度を目安に、週に数回行うだけでも、全身の血流改善やホルモンバランスの調整に役立つ可能性があります。近所の公園を散歩したり、通勤経路の一部を歩いたりするだけでも十分な運動になります。
ヨガは、深い呼吸をしながらさまざまなポーズをとることで、心身のリラックスをもたらし、ストレス軽減にも効果的です。ストレスはホルモンバランスを乱す原因となるため、ヨガは間接的に卵巣の健康維持にも役立ちます。
十分な睡眠
睡眠不足は、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、卵巣機能にも影響を及ぼす可能性があります。質の良い睡眠を十分に取ることで、ホルモンバランスを整え、卵巣の健康を維持しましょう。
睡眠時間は、個人差がありますが、一般的には7〜8時間が適切とされています。毎日同じ時間に寝起きし、体内時計を整えることが重要です。寝る前にカフェインを摂取したり、スマートフォンやパソコンの画面を長時間見続けたりするのは避けましょう。リラックスできる環境を作るように心がけてください。
ストレス管理
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、ホルモン分泌にも影響を与える場合があります。過剰なストレスは卵巣機能の低下につながる可能性があるため、ストレスを溜め込まないよう、適切なストレス管理を行いましょう。
リラックスできる時間を作ったり、趣味を楽しんだり、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。アロマテラピーやマッサージ、瞑想なども効果的です。
禁煙
喫煙は、卵巣への血流を阻害し、卵巣機能の低下や卵巣嚢腫のリスクを高める可能性があります。卵巣の健康を守るためには、禁煙することが重要です。禁煙外来を受診したり、禁煙補助薬を使用したりするなど、さまざまなサポートがあります。
ご自身の状況に合った方法で、禁煙に挑戦してみましょう。
飲酒の制限
過剰な飲酒は、肝臓への負担だけでなく、ホルモンバランスにも影響を及ぼす可能性があります。アルコールの分解過程で生成されるアセトアルデヒドは、体のさまざまな機能に影響を与える可能性があります。そのため、飲酒は控えめにすることが推奨されています。
どうしてもお酒を飲みたい場合は、適量を守り、週に数回程度に留めるなど、コントロールすることが大切です。お酒を飲む際は、おつまみと一緒に食べたり、水分をこまめに摂ったりして、影響を軽減するための工夫も心がけましょう。
卵巣嚢腫の早期発見・治療の重要性
卵巣嚢腫は早期に発見し、適切な治療を行えば、健康への深刻な影響を防ぐことができます。早期発見と適切な治療のために、以下の3つを解説します。
- 定期的な婦人科検診
- 異常を感じたらすぐに受診
- 専門医の選び方
定期的な婦人科検診
卵巣嚢腫は、初期段階では自覚症状が現れにくい病気です。定期的な婦人科検診が早期発見につながります。超音波検査は卵巣の状態を確認できるため、卵巣嚢腫の発見に有効な場合があります。婦人科検診では、内診と超音波検査を組み合わせて行います。
内診では、医師が指で膣や子宮、卵巣の状態を直接確認します。腫瘍の有無や大きさ、硬さなどを大まかに把握するために重要です。超音波検査では、超音波を使って、形や内部の状態、子宮や卵巣の大きさなどを画像で確認します。痛みはなく、体に負担も少ない検査です。
定期的に検診を受けることで、早期治療につながる可能性があります。検診を受ける頻度は、年齢や既往歴、家族歴などを考慮して医師と相談しながら決めることをおすすめします。20〜30代の女性であれば、1年に1回程度の検診が推奨されています。40代以降は、より頻回な検診が必要な場合もあります。
異常を感じたらすぐに受診
卵巣嚢腫は、初期段階では自覚症状がないことも多いですが、少しでも異常を感じたら、婦人科を受診することをおすすめします。卵巣嚢腫が疑われる症状は、以下の7つが挙げられます。
- 下腹部痛
鈍痛やチクチクとした痛みなど、痛みの種類や強さはさまざまです。突然激痛に襲われた場合は、卵巣嚢腫の捻転や破裂が起きた可能性がありますので、注意が必要です。 - 腰痛
重い感じや鈍い痛みなどがあります。下腹部痛と同時に起こることもあります。 - 月経不順
周期が乱れたり、出血量が増減したりすることがあります。 - お腹の張り
ガスが溜まっているような感覚や、下腹部が膨らんでいるように感じることがあります。 - 頻尿
トイレが近くなったり、尿意を我慢するのが難しくなったりすることがあります。 - 発熱
卵巣嚢腫が炎症を起こしている場合、発熱を伴うことがあります。 - 嘔吐
卵巣嚢腫が捻転や破裂を起こすと、吐き気を伴う激しい腹痛が起こることがあります。
他の病気の可能性もありますが、自己判断せずに、医療機関に相談することが大切です。
専門医の選び方
卵巣嚢腫の治療は、婦人科の中でも、婦人科腫瘍学を専門とする医師に相談することをおすすめします。専門医は、豊富な知識と経験にもとづいて、患者さんの状態に合わせた適切な治療法を提案してくれます。
婦人科腫瘍学を専門とする医師は、大学病院や総合病院、婦人科クリニックなどに在籍しています。インターネットで検索したり、かかりつけの医師に紹介状を書いてもらったりして、専門医を探してみましょう。
セカンドオピニオンを活用することも有効です。セカンドオピニオンとは、現在治療を受けている医師とは別の医師に意見を求めることです。セカンドオピニオンを受けることで、より多くの情報を得て、治療方針の検討が可能な場合もあります。納得のいく治療を受けるためにも、セカンドオピニオンは積極的に活用しましょう。
まとめ
卵巣嚢腫は、自覚症状がない場合も多いですが、卵巣嚢腫になりやすい人の特徴や予防法を参考に、生活習慣や体質を見直すことをおすすめします。バランスの良い食生活や適度な運動、質の良い睡眠、ストレス管理、禁煙など、今日からできることから始めてみましょう。
定期的な婦人科検診も早期発見につながります。少しでも気になる症状があれば、早めに婦人科を受診し、専門医の診察を受けることをおすすめします。
不正出血が続く場合は、婦人科系の疾患が関係している可能性もあります。原因や生理との違い、受診の目安について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>不正出血を放置しないで!原因や生理との違い、受診の目安まで徹底解説
参考文献
- Ricardo Azziz. Polycystic Ovary Syndrome. Obstet Gynecol, 2018, 132(2), p.321-336.
- Helena J Teede, Chau Thien Tay, Joop J E Laven, Anuja Dokras, Lisa J Moran, Terhi T Piltonen, Michael F Costello, Jacky Boivin, Leanne M Redman, Jacqueline A Boyle, Robert J Norman, Aya Mousa, Anju E Joham. Recommendations From the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome. J Clin Endocrinol Metab, 2023, 108(10), p.2447-2469.