
性行為未経験でも子宮頸がん検診は必要?受けるべき理由と注意点
公開日:2025.06.19更新日:2025.06.20
性行為の経験がない女性も、20歳以上になったら2年に1度の子宮頸がん検診が推奨されています。子宮頸がんの主な原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)ですが、性行為以外でも感染する可能性があるため、定期的な検診が必要です。
本記事では、性行為未経験の女性が子宮頸がん検診を受けるべき理由や注意点、検査方法、子宮頸がん対策などを解説します。子宮頸がんの正しい知識を得て、将来の健康管理に役立てましょう。
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性行為未経験でも子宮頸がん検診を受けるべき理由
性行為未経験でも子宮頸がん検診を受けるべき理由については、以下のとおりです。
- HPV陰性の腺がんなども存在するため
- 将来の異常変化に早くに気づくため
HPV陰性の腺がんなども存在するため
子宮頸がんの主な原因は、HPVの感染です。HPVは主に性行為で感染するとされていますが、母子感染や皮膚接触、間接接触など性行為以外で感染する可能性もあります。性行為以外でのHPV感染は全体の1~2%程度とされていますが、HPV陰性の子宮頸腺がんなどのHPVが関与しない子宮頸がんも存在するため注意が必要です。
子宮頸がん検診では、子宮頸がんだけでなく、子宮筋腫や卵巣腫瘍などの婦人科系の病気が見つかることもあります。子宮筋腫は30歳以上の女性の20〜30%に見られる良性の腫瘍で、過多月経や月経痛、貧血などの症状を引き起こす場合があります。卵巣腫瘍は早期の自覚症状が少ないため、検診による早期発見が重要です。
性行為未経験でも、子宮頸がんやその他の婦人科疾患である可能性は存在します。婦人科検診は、婦人科疾患の早期発見や早期治療につながるため、定期的な検診を行いましょう。
子宮頸がん検診で「ひっかかった」と言われた場合でも、すぐにがんが確定するわけではありません。再検査や精密検査が必要となるケースが多くあります。以下の記事では、検診で異常が見つかった場合の主な原因や、精密検査の種類、事前に知っておきたい対策について詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診でひっかかる原因とは?精密検査の方法や対策を解説
将来の異常変化に早く気づくため
日本産科婦人科学会では、20歳以上の女性に対し、性経験の有無にかかわらず2年に1回の細胞診を推奨しています。将来的な行為によってHPVに感染するリスクが高まる前に、子宮の状態を把握しておくためです。20歳から定期的に検診を受けることで、将来HPVに感染した場合の変化を早期に発見できる可能性が高まります。
性行為未経験の若い時期から定期的に検診を受け、自分の体の状態を記録しておくことは、将来の健康管理において重要です。将来、HPVに感染したり、子宮頸部に何らかの変化が現れたりした場合、過去の検診結果と比較することで、変化の程度や速さを正確に把握できます。
性行為未経験の場合の検査方法
性行為未経験の場合の検査方法について、以下の3つを解説します。
- 超音波検査
- 腹部超音波検査
- 直腸超音波検査
超音波検査
超音波検査は、一般的に体への負担が少なく、多くの場合、痛みを伴わない検査方法です。性行為未経験の女性にも安心して受診いただけます。子宮頸がん検診では、経腟超音波検査がよく用いられます。経腟超音波検査は、腟内にプローブを挿入して行う検査です。
性行為未経験の女性は、抵抗感がある場合もあるため、事前に医師に相談しましょう。超音波検査は、子宮頸がんだけでなく、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの婦人科系の疾患の早期発見にも役立ちます。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は、痛みを伴わないため、初めて婦人科検診を受ける方や痛みに敏感な方も安心して受診できます。検査前に水分を多めに摂取する必要があります。検査時間は約5~10分です。検査中は、仰向けに寝た状態で、医師の指示に従って呼吸を止めたり、お腹を膨らませたりする必要があります。
検査結果はその場で確認でき、医師から説明を受けることができます。性行為未経験の場合、子宮頸部への直接的な検査ではなく、腹部超音波検査によって子宮や卵巣の状態を把握できる可能性があります。
直腸超音波検査
直腸超音波検査は、肛門からプローブを挿入して、直腸側から子宮や卵巣を観察する検査方法です。腹部超音波検査や経腟超音波検査では確認しにくい子宮の後方や直腸との位置関係などを調べることができ、子宮内膜症や子宮腺筋症などの診断に役立ちます。
性行為未経験の女性に対しては、通常は行われません。腹部超音波検査で異常が疑われる場合や他の検査で診断がつかない場合などに、医師の判断で実施される場合があります。検査時間は約10~15分で、多少の不快感を伴う場合はありますが、痛みはほとんどありません。
直腸超音波検査は、性行為未経験の女性にとって心理的な負担が大きい場合もあるため、医師に相談したうえで、判断することが大切です。検査を受ける際は、リラックスした状態で臨みましょう。
以下の記事では、子宮内膜症について、症状や原因、治療法、早期発見のポイントまで詳しく解説しています。検査の背景にある疾患を正しく理解するための参考にしてください。
>>子宮内膜症ってどんな病気?原因や治療法、早期に発見するポイントも解説
性行為未経験で子宮頸がん検診を受ける際の注意点
性行為未経験で子宮頸がん検診を受ける際の注意点は、以下のとおりです。
- 未経験であることを事前に伝える
- リラックスして検診を受ける
- 検査後はナプキンを当てる
未経験であることを事前に伝える
初めての子宮頸がん検診で大切なことは、自分が性行為未経験であることを医師に事前に伝えることです。伝えることで、医師は最適な検査方法を選択し、安心できる検査になるよう配慮できます。性行為の経験がない場合、通常の子宮頸がん検診で行われる細胞診は、必ずしも必要ではありません。
子宮頸がんの主な原因であるHPVへの感染経路は、性交渉が大半であるため、性行為未経験の場合、感染している可能性は低いです。検診を受けるうえで不安な気持ちもありますが、事前に相談することで、安心して検査を受けることができます。
リラックスして検診を受ける
子宮頸がん検診は、緊張すると体に力が入り、痛みを感じやすくなります。初めての検診は緊張しますが、リラックスして検診を受けることが大切です。検診を受ける前に、深呼吸をしたり、好きな音楽を聴いたりして、ご自身に合ったリラックス方法を見つけて、落ち着いて検診に臨みましょう。
検診中は、医師や看護師の指示に従い、自分の体の状態を伝えながら、検査を受けましょう。緊張が強い場合は、あらかじめ医師に相談してください。痛みを軽減するために、内診時に使用する器具を温めたり、ゼリーを多めに使用したりしてくれる場合もあります。必要に応じて鎮痛剤を使用することも可能です。
検診を受ける医療機関を選ぶ際は、リラックスできる環境かどうかを考慮しましょう。女性医師が在籍しているクリニックや院内が明るく清潔で、プライバシーに配慮したクリニックを選ぶのも一つの方法です。
以下の記事では、子宮頸がん検診を受ける際に気になる「費用」や「保険適用の条件」、「無料で受けられるケース」について詳しく解説しています。受診前に知っておきたい経済的なポイントを押さえておきましょう。
>>子宮頸がん検診の費用はいくら?保険適用・無料になる条件も解説
検査後はナプキンを当てる
子宮頸がん検診後、少量の出血が見られる場合があります。検査の際に子宮頸部をブラシでこすって細胞を採取する場合、多少の出血が起こるためです。通常は心配ありませんが、出血が長引く場合や出血量が多い場合は、速やかに医療機関に相談しましょう。
出血への対策として、検査後にはナプキンを当てるようにしましょう。タンポンは、腟内に傷をつけて感染症になる可能性があるので、使用を避けてください。検診後は、激しい運動は控えましょう。入浴は問題ありませんが、感染症予防のため、湯船に長時間浸かることは避け、シャワーで済ませるようにしてください。
性行為未経験のうちからできる子宮頸がん対策
性行為未経験のうちからできる子宮頸がん対策について、以下の4つを解説します。
- HPVワクチンを受ける
- 禁煙する
- 生活習慣を見直す
- 定期的に検診を受ける
HPVワクチンを受ける
HPVワクチンは、いくつかのHPV感染を予防するワクチンです。HPVは性行為で感染する場合が多いですが、性行為の経験がなくても、日常生活での接触感染の可能性はあります。
2025年に発表された研究では、ワクチン接種率が高く、定期的なワクチン接種プログラムを実施している国では、発がん性HPV型や高度子宮頸部病変、子宮頸がんの有病率が低下していることが判明しました。HPVワクチンは子宮頸がん予防に有効であると考えられます。
性行為の経験がなくても、将来的な感染リスクに備えて接種が推奨されています。ワクチンはHPVに感染する前に接種しましょう。
禁煙する
タバコは、子宮頸がんを含む多くのがんのリスクを高める場合があります。タバコに含まれる有害物質は、免疫機能を低下させ、HPVに対する抵抗力を弱める可能性があります。喫煙によって、子宮頸部の粘膜がダメージを受けやすくなり、HPVに感染し、増殖しやすい環境を作り出します。
禁煙は、健康を守るだけでなく、将来的に子宮頸がんになる可能性を減らすことにもつながります。若いから大丈夫などと安易に考えずに、禁煙をして、将来の健康を守りましょう。
生活習慣を見直す
健康的な生活習慣は、免疫機能を高め、HPV感染を含む病気になる可能性を下げるために重要です。バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠などを心がけましょう。免疫力が低下すると、HPVに感染しやすくなるだけでなく、感染後、子宮頸がんへと進行する場合もあります。
野菜や果物を積極的に摂り、加工食品や脂肪分の多い食事は控えめにしましょう。適度な運動は、血行を促進し、免疫細胞の働きを活性化させる場合があります。睡眠不足は免疫力の低下につながるため、十分な睡眠時間を確保することが大切です。規則正しい生活を送り、子宮頸がんを含むさまざまな病気になる可能性を軽減しましょう。
定期的に検診を受ける
子宮頸がん検診は、20歳を過ぎたら、性行為の有無に関わらず、2年に1度は受けることが推奨されています。HPV以外が原因で子宮頸がんが発生する可能性があるため、性行為が未経験でも定期的な検査が必要です。将来の性行為開始前に基準となる検査結果を持っておくことで、異常があった場合に早期発見につながります。子宮頸がんは早期発見によって、子宮を温存できる可能性も高まります。
以下の記事では、子宮頸がん検診をどのくらいの頻度で受ければ良いのか、年齢別に適したスケジュールを解説しています。検診を受けるタイミングに迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
>>子宮頸がん検診の頻度は何年ごとに受けるべき?年齢別の適切なスケジュール
まとめ
子宮頸がんは性行為で感染するHPVが主な原因ですが、性行為未経験でもHPVに感染する可能性があります。HPV以外の原因で子宮頸がんを発症する場合もあります。将来の感染に備え、20歳を過ぎたら2年に1度、子宮頸がん検診を受けましょう。
性行為未経験の場合、内診ではなく、お腹の上から超音波を当てる経腹超音波検査が可能です。検診前に未経験であることを伝えれば、医師は適切な検査方法を検討してくれます。検診は早期発見や早期治療のために重要ですので、ためらわずに受診しましょう。
以下の記事では、生理中に検診を受けることのリスクや、検査に適さないタイミング、予約時に気をつけたいポイントについて詳しく解説しています。検診を予定している方は、事前に確認しておくと安心です。
>>子宮頸がん検診は生理中でも受けていい?NGなタイミングと注意点を解説
参考文献
- Diane M Harper, José A Navarro-Alonso, F Xavier Bosch, Jorma Paavonen, Margaret Stanley, Peter Sasieni, María Yébenes, Néstor Martínez-Martínez, Ángela Rodriguez, Andrea García, Laura Martín-Gomez, Laura Vallejo-Aparicio, Helena Carrión, Yara Ruiz García.Impact of human papillomavirus vaccines in the reduction of infection, precursor lesions, and cervical cancer: A systematic literature review.Hum Vaccin Immunother,2025,21,1,p.2497608
- 日本産科婦人科学会:子宮頸がん予防についての正しい理解のために(2020年)