
精子の運動率とは|基準値・検査方法・改善のための生活習慣を解説
公開日:2024.11.22更新日:2026.01.29
「子どもが欲しいのに、なかなか授かれない」と、悩みを抱えているご夫婦は多いです。実は、原因の一つに男性の精子の運動率の低下があります。精子の運動率とは、元気に泳ぐ精子の割合を示す重要な指標です。
この記事では、精子の運動率を上げるための具体的な方法を、生活習慣の改善から栄養摂取まで詳しく解説します。適切な対策を講じることで、精子の質を向上させ、妊娠の可能性が高まることがあります。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、精子の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。

精子運動率とは男性の妊娠させる力を評価する指標
精子の運動率とは、男性の妊娠させる力を評価する重要な指標の一つです。妊娠を希望しているカップルにとって、精子の状態を理解することは大切な第一歩となります。精子運動率の役割や運動率が低下する原因について基礎知識を説明します。
精子運動率の役割
精子運動率とは、精子がどれくらい元気に動いているかを表す数字のことです。精子は卵子と出会って受精するために、膣から子宮を通り、卵管まで自分で泳いでいく必要があります。このとき、しっかり前に進める精子が多いほど、卵子にたどり着く可能性が高くなります。精子運動率の役割は次のとおりです。
- 精子がどれくらい前に進めるかを調べる
- 卵子まで泳ぎきる力があるかを判断する
- 男性が妊娠に関わる力を知るための目安になる
世界保健機関(WHO)の基準では、前に進む精子が全体の4割以上あれば「正常」とされています。もし動きが弱い精子が多くても、他の状態(精子の数や形など)が良ければ妊娠できることもあります。つまり、精子運動率は「元気に動く力」を見る大切なチェック項目です。
精子運動率が低下する原因
精子運動率が下がる原因は、生活習慣や体の状態などさまざまなことが関係しています。たばこやお酒の飲みすぎ、運動不足、睡眠不足、ストレスなどは精子の動きを悪くする原因になります。長時間座っている、サウナに頻繁に入る、きつい下着をつけるなどで精巣の温度が上がると、精子が動きにくくなることがあります。
精巣の血管が膨らむ「精索静脈瘤」や、感染症(精巣炎・前立腺炎など)にも影響します。薬の副作用や化学物質、年齢による変化も関係することがあります。精子の運動率が下がるのは一つの原因だけではなく、いくつかの要素が重なって起こることが多いのです。
生活を見直し、医師と一緒に対策を考えることが大切です。
精子運動率の検査
精子運動率を知るためには、精液検査を受ける必要があります。精子運動率の検査について、以下の内容を解説します。
- 精子の運動率の検査の流れ
- 検査を受けるタイミング
- 検査結果の見方
検査を受ける前に流れを理解しておくことで、スムーズに検査を受けることができます。
精子の運動率の検査の流れ
精子の運動率は、精液検査によって調べることができる基本的な検査項目です。検査は泌尿器科や不妊治療専門のクリニックで行われ、流れは次のようになります。
- 採取した精液を医療機関に提出する(自宅または院内で採取)
- 顕微鏡で精子の動きや数、形を観察する
- 結果を分析し、医師が説明と今後の治療方針を伝える
費用はおおよそ5,000〜10,000円程度で、結果が出るまでには数日から1週間ほどかかります。検査前には2〜7日間の禁欲期間を設ける必要があり、3〜5日が適切とされています。禁欲期間が短すぎると精子数が減り、長すぎると運動率が下がる場合があります。
精液検査では、運動率のほかにも精液量・精子濃度・精子の形態が評価されます。これらを総合的に判断することで、妊娠の可能性をより正確に把握できます。
検査を受けるタイミング
精液検査を受けるタイミングは、妊娠を希望してもなかなか結果が出ないときが目安です。避妊をせずに1年以上妊娠しない場合、または女性が35歳以上で半年経っても妊娠しない場合は、早めに検査を受けることがすすめられます。精液検査を受ける主なタイミングは以下のとおりです。
- 妊活を始めて1年以上妊娠の兆しがないとき
- 女性が35歳を超えて半年以上妊娠しないとき
- 性交や射精に違和感があるとき
- 生活習慣や体調の変化で精子への影響が心配なとき
男性側の検査は体への負担が少なく、短時間で行えます。早期に原因を確認することが、その後の治療方針を立てる第一歩となります。
検査結果の見方
精液検査の結果には、精液量・精子濃度・総精子数・運動率・正常形態率などが示され、これらを総合的に見て精子の状態を判断します。特に「運動率」は妊娠に関わる重要な指標で、WHOの基準では総運動率40%以上、前進運動率30%以上が正常とされています。
これを下回る場合は「精子無力症」と呼ばれることもありますが、基準を少し下回っても妊娠するケースは少なくありません。運動率だけで判断せず、他の項目とのバランスを見ることが大切です。結果に不安があっても、医師の説明をよく聞き、生活改善や治療で向上を目指すことが可能です。
必要に応じて、別の医療機関で意見を聞くのも一つの方法です。精液検査では、各項目の基準値や異常値を正しく理解することが大切です。以下の記事では、WHO基準にもとづいた正常値の目安や結果の見方について詳しく解説しています。
>>精液検査の基準値を徹底解説!正常値と異常値の見分け方

精子の運動率を上げるための生活習慣改善
精子の運動率は、日々の生活習慣と密接に関連しており、適切な改善策を講じることで向上させられます。精子の運動率を改善するための生活習慣の具体的な方法を解説します。
適度な運動の実施
適度な運動は、精子の運動率の向上に効果が期待できます。運動には以下のメリットがあります。
- 肥満の解消:肥満は精子の運動率の低下と関連があるため、適切な体重管理につながる可能性
- 血行促進:精巣への血流が改善され、酸素や栄養素の供給が増加する
- ストレス軽減:運動によるストレス解消は、ホルモンバランスの改善につながる
推奨される運動の例は以下のとおりです。
- ウォーキング:毎日30分程度
- ジョギング:週3〜4回、30分程度
- 水泳:週2〜3回、30分程度
運動強度は個人の体力に合わせて調整し、無理のない範囲で継続することが重要です。
十分な睡眠の確保
質の高い睡眠は、ホルモンバランスの調整とストレス軽減に重要な役割を果たします。以下の点に注意して、良質な睡眠を心がけましょう。
- 規則正しい就寝・起床時間を維持する
- 寝る前のカフェイン摂取を避ける
- 就寝前のブルーライト(スマートフォン、パソコンなど)の使用を控える
- 寝室の環境を整える(適切な温度、湿度、静かさを保つ)
成人の推奨睡眠時間は7〜9時間とされていますが、個人差があるため、自分に適した睡眠時間を見つけることが大切です。
睡眠は、精子の質やホルモン分泌にも深く関係しています。以下の記事では、精子の寿命や受精能力を高めるために重要な生活習慣や食事のポイントについて詳しく解説しています。
>>精子の質と量を向上させる生活習慣|寿命・受精能力・食べ物の関係を詳しく解説
禁煙
喫煙は精子の質に深刻な悪影響を与えます。タバコに含まれる有害物質は以下のような影響を及ぼす可能性があります。
- 精子のDNA損傷
- 精子の運動率の低下
- 精子数の減少
- 精液量の減少
禁煙は精子の質を向上させるだけでなく、全身の健康にも良い影響を与えます。禁煙が困難な場合は、医師に相談し、禁煙補助薬や禁煙外来の利用を検討しましょう。
アルコール摂取の制限
過度のアルコール摂取は、精子の生成と運動に悪影響を与える可能性があります。以下のような影響が報告されています。
- 精子数の減少
- 精子の運動率の低下
- 精子の形態異常
アルコールを完全に避けることが難しい場合は、適量を心がけましょう。一般的に、1日あたりのアルコール摂取量は、純アルコールで20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス2杯程度)が目安です。
ストレス管理
慢性的なストレスは、ホルモンバランスを乱し、精子の運動率の低下につながる可能性があります。以下のようなストレス管理法を取り入れてみましょう。
- 趣味の時間を楽しむ
- 瞑想やヨガを実践する
- 自然の中でリラックスする時間を作る
- 友人や家族との交流を大切にする
- 必要に応じて専門家(心理カウンセラーなど)に相談する
上記の方法を組み合わせ、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。
精子の運動率の改善は、生活習慣の見直しによって可能な場合が多くあります。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、アルコール摂取の制限、ストレス管理など、総合的なアプローチが推奨されます。
個人差があるため、改善策を実践しても効果が見られない場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。精子の運動率の改善には時間がかかる場合もあるため、焦らず継続的に取り組むことが大切です。
精子の運動率改善に役立つ栄養とサプリメント
精子の運動率の向上に役立つ栄養素と、サプリメント選びの注意点について解説します。
精子の運動率の改善に役立つ栄養素
精子の運動率を高めるには、精子の生成・保護・エネルギー産生に関わる栄養素をしっかり摂ることが大切です。主に次の5つが重要とされています。
- 亜鉛:精子の生成に不可欠なミネラルで、牡蠣や牛肉、卵などに多く含まれ、不足すると精子数や運動率が下がる可能性がある
- セレン:抗酸化作用を持つミネラルで、マグロやナッツ類などに多く含まれ、精子を活性酸素のダメージから守る働きがある
- コエンザイムQ10:エネルギーを作る働きを助ける補酵素で、いわしや豚肉などに多く含まれ、精子の運動力を支える役割がある
- L-カルニチン:脂肪酸をエネルギー源に変える栄養素で、牛肉や羊肉に多く含まれ、精子の動きを助ける働きがある
- アルギニン:精液の主成分を作るアミノ酸で、大豆やナッツ、鶏肉などに多く含まれ、精液量や精子数の増加に関わる
摂取量には個人差があり、過剰摂取は避けることが大切です。医師や栄養士に相談しながら、バランスの良い食事を意識することが精子の質向上につながります。
サプリメント利用時の注意点
サプリメントは、精子の運動率を高めるための補助的な手段として利用できますが、基本はバランスの良い食事から栄養を摂ることが大切です。サプリメントの効果には個人差があり、すべての人で改善が見られるわけではありません。過度な期待をせず、生活習慣の見直しと併せて取り入れることが望ましいです。
利用する際は、医師に相談してから始めることが原則です。特に持病がある方や薬を服用している方は、成分の相互作用や副作用に注意が必要です。亜鉛やセレンなどのミネラルは、摂りすぎると健康被害を引き起こす可能性があります。
表示された推奨量を守り、成分が重複しないよう確認して、信頼できる製品を選びましょう。

精子運動率に関するよくある質問
精子の運動率について、多くの方が疑問に思うこととして、以下の3つを解説します。
- 精子運動率が低いと妊娠できない?
- 年齢によって精子運動率は変わる?
- サプリメントは効果がある?
精子運動率が低いと妊娠できない?
精子の運動率が低くても、妊娠できる可能性はあります。運動率が下がると妊娠しにくくはなりますが、絶対に妊娠できないわけではありません。少し低い程度であれば、生活習慣を整えたり時間をかけたりすることで、自然妊娠することもあります。
運動率がかなり低い場合でも、人工授精や体外受精などの方法を使えば妊娠のチャンスを高めることができます。人工授精では元気な精子を選んで使うため、運動率が低くても問題ありません。体外受精や顕微授精なら、さらに受精を助けることができます。
大切なのは、落ち込まずに医師と相談し、自分たちに合った治療法を見つけることです。
年齢によって精子運動率は変わる?
はい、男性も年齢とともに精子の質が少しずつ低下します。一般的に35歳を過ぎると精子の動きや形の正常な割合が下がり、40歳を過ぎるとその傾向がよりはっきりしてきます。年齢が上がるとDNAの傷ついた精子が増え、運動率も下がりやすくなります。
変化の大きさには個人差があり、年齢が高くても健康的な生活をしていれば良い状態を保てる人もいます。食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えることで、精子の状態を保つことは十分に可能です。
妊娠を考えている場合は、年齢に関係なく早めに検査を受け、必要に応じて医師と相談しながら計画を立てることが大切です。
サプリメントは効果がある?
サプリメントは、精子の運動率や質をサポートする補助的な手段として注目されています。ただし、その効果には個人差があり、確実に改善が見られるわけではありません。サプリメントを利用する際は、次の点を意識することが大切です。
- 主な栄養素:亜鉛、セレン、コエンザイムQ10、L-カルニチン、アルギニンなどが精子の形成や動きに関係している
- 効果の条件:栄養不足を補う場合には役立つことがあるが、十分に摂取できている状態での過剰摂取は意味がない
- 使用時の注意:持病がある人や薬を服用している人は、医師に相談してから始めることが必要
- 基本の考え方:サプリメントはあくまでサポートであり、食事・運動・睡眠・ストレス管理など生活習慣の見直しが大切
サプリメントだけに頼らず、体全体の健康を整えることが精子の質向上につながります。
まとめ
精子の運動率の改善は、妊娠の可能性を高める重要な要素です。以下のポイントを意識して取り組みましょう。
- バランスの良い食事と適切な栄養摂取
- 適度な運動と十分な睡眠
- 禁煙とアルコール摂取の制限
- ストレス管理
亜鉛やセレン、コエンザイムQ10などの栄養素は効果的です。必要に応じてサプリメントの利用も検討してください。過剰摂取には注意が必要です。生活習慣の改善と適切な栄養管理を継続することで、精子の運動率の向上が期待できます。
精子の運動率の低下や改善方法について不安がある場合は、泌尿器科や不妊治療専門の医療機関に相談し、専門的なアドバイスを受けましょう。
以下の記事では、男性不妊になりやすい人の特徴についてまとめています。ご自身に当てはまらないか、心配な方はぜひチェックしてみてください。
>>【医師が解説】男性不妊になりやすい人とは?今すぐチェックしたい5つの特徴と対策

参考文献
- Notari T, Buttà M, Serra N, Sucato A, Rizzo G, Capra G, Bosco L. Human papillomavirus and male infertility correlation analysis following World Health Organization 2021 guidelines. Sci Rep, 2024, 14(1), 27422
- Donnelly GP, McClure N, Kennedy MS, Lewis SE. Direct effect of alcohol on the motility and morphology of human spermatozoa. Andrologia, 1999, 31(1), 43‑47