染色体異常の原因と種類一覧を紹介!男性・女性に共通するリスク要因とは?
公開日:2024.12.25更新日:2024.12.25
染色体異常の影響は軽微なものから重篤なものまでさまざまです。 流産の原因の約半数も染色体異常が関わっていると考えられています。染色体異常には、種類があり、リスク要因もさまざまです。この記事では染色体異常の基礎知識からリスク要因、検査方法まで、わかりやすく解説します。 記事を読めば、染色体異常が発生するメカニズムや普段から気をつけるべきことがわかります。
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染色体異常の基礎知識
染色体異常と聞くと、難しそうで不安になる方も少なくありません。染色体異常とは何か、種類や発生の仕組み、どのくらいの頻度で起こるのかをわかりやすく説明します。
染色体異常とは何か?染色体の数や構造に異常が起こること
染色体異常とは、染色体の数や構造に異常が起こることです。私たちの体は、小さな「細胞」という単位でできています。細胞の中には、「核」と呼ばれる部分があり、核の中に遺伝情報が詰まった「染色体」があります。染色体は、体を作るための設計図で、通常は46本(23対)あります。
染色体異常の種類|数的異常と構造異常
染色体異常には、大きく分けて「数的異常」と「構造異常」の2種類あります。数的異常は染色体の数が変化する異常で、構造異常は染色体の構造が変化する異常です。
数的異常
数的異常の染色体は、染色体の数が正常より多い場合や少ない場合があります。21番染色体が3本あるダウン症候群や、X染色体が1本しかないターナー症候群などがあります。染色体が1本多い場合は「トリソミー」、染色体が1本少ない場合は「モノソミー」と呼ばれます。
ダウン症候群は21トリソミー、ターナー症候群はXモノソミーと言います。
構造異常
構造異常の染色体は、染色体の一部が欠失したり、重複したり、逆位したり、転座したりする異常です。5番染色体の一部が欠けている猫鳴き症候群や、染色体の一部が他の染色体と入れ替わっている転座型ダウン症候群などがあります。猫鳴き症候群は、赤ちゃんの泣き声が猫の鳴き声に似ていることから名付けられました。
染色体異常が発生するメカニズム
染色体異常は、細胞分裂の過程で起こるエラーによって発生します。卵子や精子が作られる減数分裂という特殊な細胞分裂の際に、染色体が正しく分配されない「染色体不分離」が主な原因です。特に、卵子は加齢とともに染色体不分離を起こしやすくなるため、高齢出産では染色体異常のリスクが高まります。
その他、放射線や特定の化学物質への曝露、ウイルス感染なども染色体異常の原因となる可能性があります。親から染色体異常が遺伝することもあります。親の染色体の一部が転座している場合、子どもに転座が遺伝する可能性があります。
染色体異常の発生頻度
染色体異常は誰にでも発生する可能性があり、妊娠初期の流産の一因として知られています。妊娠初期の流産は染色体異常が原因であることが多いです。
染色体異常は、命に関わる重篤な疾患を引き起こすこともありますが、軽度の症状で日常生活に支障がない場合もあります。染色体異常にはさまざまな種類があり、それぞれの異常によって症状や重症度は異なります。
染色体異常のリスク要因
染色体異常は、誰にでも起こりうるものです。生まれてくる我が子に染色体異常があるかどうか、妊娠中に不安に思う方も少なくありません。染色体異常のリスク要因は多岐に渡り、以下が挙げられます。
- 加齢による卵子・精子の変化
- 環境要因
- 遺伝的要因
- 生活習慣
さまざまな要因が複雑に絡み合い、染色体異常の発生リスクに影響を与えています。
加齢による卵子・精子の変化
母親の年齢が上がるほど、染色体異常を持つ赤ちゃんが生まれる確率が高くなることは、多くの研究で示されています。主な原因として卵子の老化が考えられます。
卵子は、女性が生まれたときからすでに卵巣に存在し、年齢とともに老化していきます。老化した卵子は、染色体が正しく分裂しにくくなり、染色体異常、特に21トリソミー(ダウン症候群)や18トリソミー(エドワーズ症候群)などの数的異常が起こりやすくなってしまいます。35歳以上が高齢出産と言われるのは、卵子の老化が大きく関係しています。
父親の年齢も、染色体異常のリスクに影響を与える可能性があることが近年の研究で指摘されています。父親の加齢は、精子中のDNAに変化をもたらし、特定の遺伝子変異のリスクを高める可能性があると考えられています。
環境要因|放射線、化学物質、感染症など
放射線や特定の化学物質への過度の曝露は、細胞のDNAを傷つけ、染色体異常を引き起こす可能性があります。例えば、レントゲン検査などで使われるX線は、大量に浴びると染色体異常のリスクを高めると言われています。
妊娠中に風疹などのウイルスに感染すると、赤ちゃんに染色体異常が生じるリスクが高まる場合があります。風疹ウイルスは胎盤を通過して胎児に感染し、発育中の細胞に悪影響を与える可能性があるためです。
普段の生活で使っている日用品の中には、人体に有害な化学物質が含まれているものもあります。一部の塗料や接着剤、殺虫剤などに含まれる化学物質は、染色体異常のリスクを高める可能性が示唆されています。
染色体異常を引き起こす可能性のある環境要因から身を守るための対策としては、以下が挙げられます。
- 妊娠中はX線検査をなるべく避ける
- 風疹の予防接種を受ける
- 有害な化学物質を含む製品の使用を控える
正しい知識を持ち、適切な対策をとることが重要です。
遺伝的要因|家族歴など
染色体異常の中には、親から子へ遺伝するものがあります。親が特定の染色体異常の保因者(染色体異常の遺伝子を持っているが、症状が出ていない人)である場合、子どもに染色体異常が遺伝する可能性があります。
代表的な例として、ロバートソン転座と呼ばれる染色体異常が挙げられます。ロバートソン転座は、染色体の一部が別の染色体にくっついてしまう構造異常です。ロバートソン転座を持つ親は、染色体異常を持つ子どもを授かる可能性が高くなります。
家系内に染色体異常の既往歴がある場合も、遺伝的要因の影響を考慮する必要があります。家系内にダウン症候群やターナー症候群など、特定の染色体異常の患者さんがいる場合、染色体異常のリスクが高い可能性があるためです。家計内に染色体異常の患者さんがいる場合は、遺伝カウンセリングを受けることで、より詳しい情報を得ることができ、適切な対応策を検討できます。
生活習慣|喫煙、飲酒、栄養不足など
日々の生活習慣も、染色体異常のリスクに影響を与えます。喫煙は、体内の細胞を傷つけ、染色体異常のリスクを高めることが知られています。タバコの煙に含まれる有害物質は、DNAを損傷し、染色体の構造異常を引き起こす可能性があります。
過度の飲酒も細胞分裂に悪影響を与える可能性があります。アルコールは、細胞分裂の過程を阻害し、染色体異常のリスクを高める可能性があると考えられています。
バランスの取れた食事で、必要な栄養素をしっかり摂取することも、健康な細胞を維持し、染色体異常のリスクを低減するために重要です。特に、妊娠中は葉酸などの特定の栄養素を積極的に摂取することで、赤ちゃんに染色体異常、神経管閉鎖障害が起こるリスクを減らすことができると言われています。葉酸は、細胞分裂やDNA合成に不可欠な栄養素であり、妊娠初期の胎児の正常な発育に重要な役割を果たしています。
健康的なライフスタイルを維持することで、染色体異常のリスクを低減し、健康な妊娠・出産を目指しましょう。
妊娠したいと考えている方は、普段からの食事や飲酒についても気をつける必要があります。以下では、妊活中に注意すべき食べ物やアルコール摂取に関して記載しているのでチェックしてみてください。
>>妊活中に注意すべき食べ物は?妊活で摂りたい栄養素やおすすめレシピも紹介
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主な染色体異常の種類一覧
主な染色体異常の種類をまとめていきます。常染色体の染色体異常は以下のとおりです。
- 21トリソミー(ダウン症候群)
- 18トリソミー
- 13トリソミー
- 7、8、9、10、12、14、16、20、22トリソミー
性染色体の染色体異常は以下のとおりです。
- ターナー症候群
- トリプルX症候群
- クラインフェルター症候群
- XYY症候群
微小欠失症候群は以下のとおりです。
- 1p36欠失症候群
- 4p欠失症候群
- 5p欠失症候群
- 15q11.2欠失症候群(Prader-Willi症候群)
- 15q11.2欠失症候群(Angelman症候群)
- 22q11.2欠失症候群
染色体異常は、個人によって症状の程度や現れ方が異なる場合があります。今回まとめた一覧に含まれていない稀な染色体異常も存在します。
まとめ
染色体異常は、染色体の数や構造に異常が生じることで発生し、流産や先天性疾患の原因となることがあります。主な原因には、以下が挙げられます。
- 細胞分裂時のエラー
- 加齢
- 環境要因
- 遺伝的要因
正しい知識を持つことで不安を軽減し、適切な対策を講じることが可能です。不明点や不安なことがある方は、ぜひ当院へ気軽にご相談ください。
参考文献
Morin SJ, Eccles J, Iturriaga A, Zimmerman RS. “Translocations, inversions and other chromosome rearrangements.” Fertility and sterility 107, no. 1 (2017): 19-26.