
子宮頸がんワクチンの種類と効果の違い!選び方のポイントを解説
公開日:2025.07.24更新日:2025.07.24
子宮頸がんワクチンは、何を基準に選べば良いか迷っていませんか。現在、日本で接種できるワクチンは3種類あり、予防できるウイルスの数が異なります。子宮頸がんワクチンは女性だけでなく、男性にも病気の予防の効果が期待できます。
この記事では、ワクチンの効果の違いや、公費接種の条件、男性が接種するメリットを解説します。あなたと、あなたの大切なパートナーを守る最適な選択肢を一緒に見つけましょう。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、子宮の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。
子宮頸がんワクチンの主な種類と効果の違い
子宮頸がんワクチンの主な種類と効果の違いについて、以下の内容を解説します。
- 2価ワクチン(サーバリックス)の特徴
- 4価ワクチン(ガーダシル)の特徴
- 9価ワクチン(シルガード9)の特徴
- HPV型ごとの予防範囲と効果の違い
- 子宮頸がん以外の病気への予防効果
2価ワクチン(サーバリックス)の特徴
2価ワクチン(製品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの主な原因となる2種類のウイルス感染を防ぐワクチンです。2価ワクチンは、以下の2つのウイルス感染を防ぎます。
- HPV16型
- HPV18型
HPV16/18型は、子宮頸がんを引き起こす原因の約60~70%を占めていると報告されています。2価ワクチンを接種することで、将来、子宮頸がんになるリスクを減らす効果が期待できます。しかし、性感染症の一つである尖圭(せんけい)コンジローマという病気の原因であるウイルスは防げません。
4価ワクチン(ガーダシル)の特徴
4価ワクチン(製品名:ガーダシル)は、子宮頸がんに加え、尖圭コンジローマの原因となるウイルスも防ぐワクチンです。4価ワクチンは、以下の4つのウイルス感染を防ぎます。
- HPV16型
- HPV18型
- HPV6型
- HPV11型
4価ワクチンは、2価ワクチンと同じようにHPV16/18型を防ぐため、子宮頸がんの原因の約60~70%を予防する効果が期待できます。尖圭コンジローマの原因の約90%を占める、HPV6/11型にも対応しています。尖圭コンジローマは、性別に関わらずかかる病気です。4価ワクチンは男性も接種するメリットがあります。
9価ワクチン(シルガード9)の特徴
9価ワクチン(製品名:シルガード9)は、現在日本で接種できる中で、最も多くの種類のウイルスを防ぐワクチンです。9価ワクチンは、4価ワクチンで防げるウイルスに加えて、以下のウイルス感染を防ぎ、合計で9種類のウイルス感染を防ぐ効果が期待できます。
- HPV31型
- HPV33型
- HPV45型
- HPV52型
- HPV58型
9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるウイルスの約90%以上をカバーでき、子宮頸がんの予防効果も期待されています。ワクチン接種プログラムを積極的に進めている国々では、子宮頸がんの有病率が減少したという報告があります。
子宮頸がん以外の病気への予防効果
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がん以外の病気の原因になります。HPVワクチンは、以下の病気を予防する効果も期待できます。
- 尖圭コンジローマ
- 肛門がん
- 中咽頭がん
- 腟がん
- 外陰がん
- 陰茎がん
HPVに感染する機会が少ない若い世代でのワクチン接種は、将来的な発症リスクを下げる効果が期待されています。ワクチンを接種することは、ご自身の健康だけでなく、将来のパートナーのHPV感染も守ることにつながる、大切な選択です。
子宮頸がん検診で「ひっかかった」と言われた場合でも、すぐにがんが確定するわけではありません。再検査や精密検査が必要となるケースが多くあります。以下の記事では、検診で異常が見つかった場合の主な原因や、精密検査の種類、事前に知っておきたい対策について詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診でひっかかる原因とは?精密検査の方法や対策を解説
子宮頸がんワクチンの選び方の4つのポイント
子宮頸がんワクチンの選び方について、以下の4つのポイントを解説します。
- 公費接種の対象者を確認する
- 接種回数とスケジュールを確認する
- 男性が接種するメリットを知る
- 追加接種の可否(交互接種)を確認する
公費接種の対象者を確認する
子宮頸がんワクチンは、対象年齢の人が費用負担なしで受けられる「定期接種」という制度があります。定期接種は、国が推奨する予防接種を決められた期間に公費(無料)で受けられる制度です。対象者は小学校6年生〜高校1年生に相当する年齢の女性で、受けられるワクチンは2価や4価、9価ワクチンのいずれかです。
お住まいの市区町村のWebサイトやお知らせを確認し、ご自身が対象に含まれるか調べてみましょう。
HPVに関連する病気として子宮頸がんがあり、予防には定期的な検診も重要です。以下の記事では、子宮頸がん検診の費用や保険適用の条件、無料で受けられるケースについて詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診の費用はいくら?保険適用・無料になる条件も解説
接種回数とスケジュールを確認する
ワクチンの接種回数は、ワクチンの種類と、初めて接種するときの年齢によって異なります。2価ワクチンは、9歳以上で1回目の接種を始めると、1回目、1か月後、6か月後の合計3回です。4価ワクチンは、9歳以上で1回目の接種を始めると、1回目、2か月後、6か月後の合計3回です。
9価ワクチンは、15歳になる前に1回目の接種を始めると、合計2回で完了できます。接種スケジュールは、1回目の接種をしてから6か月後が目安です。15歳以上で1回目の接種を始めると、1回目、2か月後、6か月後の合計3回です。若い年代は免疫を獲得する力が高いため、接種回数が異なります。
接種回数が少ないと、通院の負担が減り、より早く予防効果を得られるというメリットがあります。3回接種の場合は完了までに約半年かかるため、計画的に進めることが大切です。ご自身の年齢や生活のスケジュールに合わせて、どのワクチンで接種計画を立てるか、医師に相談しましょう。
男性が接種するメリットを知る
子宮頸がんワクチンは、男性がかかる病気の原因であるヒトパピローマウイルスを防ぐため、男性も接種するメリットがあります。男性がHPVワクチンの接種をおすすめする理由は以下のとおりです。
- HPVが原因となる病気の予防
- 大切なパートナーへの感染予防
現在、日本で男性が接種できるのは、4価と9価のワクチンです。ただし、女性の定期接種とは異なり、男性の接種は自費(任意接種)です。自分自身と未来のパートナーの健康を守る一つの選択肢として、正しく理解しておきましょう。
追加接種の可否(交互接種)を確認する
1回目と2回目以降でワクチンの種類を変えることを交互接種と呼びます。原則として、最初に接種したワクチンと同じ種類で、規定の回数を完了することがすすめられています。同じワクチンで接種を完了した場合の有効性や安全性が、多くの研究で確認されているためです。
途中まで2価または4価ワクチンを接種した場合でも、残りの回数を9価ワクチンで接種することは可能です。ただし、交互接種の有効性や安全性に関するデータは限られています。自己判断ではなく、専門家である医師に相談することをおすすめします。
接種前に知っておくべき副反応
接種前に知っておくべき副反応は、以下のとおりです。
- 注射部位の痛みや腫れ
- 発熱・頭痛・倦怠感などの全身症状
- 失神やアナフィラキシーなどの重い症状
注射部位の痛みや腫れ
子宮頸がんワクチンを接種した部位によく見られるのが、痛みや赤み、腫れです。人によっては、注射部位にかゆみや熱感、硬くなる症状が現れます。ワクチンの成分に体の免疫システムが気づいて、体を守る活動を始めた正常な反応です。
ワクチンを接種した人の半数以上で症状が見られますが、ほとんどの場合は接種してから数日で自然におさまります。日常生活に大きな影響が出ることは少ないですが、痛みが気になるときの対処法は、以下のとおりです。
- 注射部位を冷やす
- 安静にする
- 市販薬を使う
腫れや痛みが何日も続いたり、ひどくなったりするときは、我慢せずワクチンを接種したクリニックや医師に相談しましょう。
発熱・頭痛・倦怠感などの全身症状
ワクチン接種後、以下の全身症状が出る場合があります。
- 発熱
- 頭痛
- 体のだるさ
- 筋肉痛や関節の痛み
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
全身症状は、ワクチンを接種した人の約1〜5割に見られます。多くは、接種した日や次の日に現れて、数日で自然に良くなります。注射後はこまめに水分をとり、ゆっくり休みましょう。熱や頭痛がつらい場合は解熱鎮痛薬で症状を和らげることができます。以下の症状の場合は、医療機関を受診してください。
- 38.5℃以上の高熱が2日以上続く場合
- 水分を飲むことも難しい場合
- 症状が3日以上続く場合
失神やアナフィラキシーなどの重い症状
注射の際に特に注意が必要な副反応に失神とアナフィラキシーがあります。失神は注射に対する強い緊張や恐怖、痛みなどが引き金となり、自律神経のバランスが一時的に崩れてしまうことで起こります。失神の症状は血圧が下がり、脳への血流が減少し、めまいやふらつき、冷や汗、吐き気などが現れ、意識を失うことが特徴です。
失神の対策は、接種後すぐに立ち上がったり、歩き回ったりせずにクリニックの中で安静に過ごすことです。気分が悪くなったら、近くの看護師や医師に声をかけ、しゃがむか、横になりましょう。アナフィラキシーは、ワクチンの成分に対して体が過剰に反応する急激で強いアレルギー反応です。以下の症状が現れることが特徴です。
- 体中のじんましん
- 息苦しさ
- 声のかすれ
- 急な血圧の低下
アナフィラキシーの対策として、接種後30分間の院内での待機がすすめられています。重い健康被害が起きた場合には、国による予防接種健康被害救済制度という仕組みがあります。
まとめ
現在、日本で接種できるワクチンは3種類あり、特に9価ワクチンは、子宮頸がんの原因の約90%以上を予防する効果が期待できます。公費で受けられる定期接種やキャッチアップ接種の制度もあるため、ご自身が対象か確認しましょう。男性の接種も、ご自身とパートナーを守る大切な選択肢となります。
副反応への不安や、どのワクチンが自分に合っているかなど、疑問に思うことは医師に相談しましょう。大切なのは、一人で抱え込まず、ご自身が納得できる選択をすることです。あなたとあなたの大切な人の未来を守るために、正しい情報をもとに行動していきましょう。
性行為の有無に関わらず、子宮頸がん検診は重要です。以下の記事では、性行為未経験の方にも検診をおすすめする理由や、注意すべきポイントについて詳しく解説しています。
>>性行為未経験でも子宮頸がん検診は必要?受けるべき理由と注意点
参考文献
- Kei Kawana. Human papillomavirus prophylactic vaccine. Uirusu, 2012, 62, 1, p.79-86
- Diane M Harper, José A Navarro-Alonso, F Xavier Bosch, Jorma Paavonen, Margaret Stanley, Peter Sasieni, María Yébenes, Néstor Martínez-Martínez, Ángela Rodriguez, Andrea García, Laura Martín-Gomez, Laura Vallejo-Aparicio, Helena Carrión, Yara Ruiz García. Impact of human papillomavirus vaccines in the reduction of infection, precursor lesions, and cervical cancer: A systematic literature review. Hum Vaccin Immunother, 2025, 21, 1, p.2497608
- WHO:Considerations for Human Papillomavirus (HPV) Vaccine product choice, second edition