ソフィアレディスクリニック

【医師監修】子宮頸がんワクチンを男性が接種する効果と必要性

公開日:2025.07.24
更新日:2025.10.28

子宮頸がんワクチンは女性だけのものと思われがちですが、男性にも関係があります。接種することで、男性の中咽頭がん等の発症リスクが低減される可能性があります。ご自身だけでなくパートナーも守ることが期待されます。

HPV(ヒトパピローマウイルス)はありふれたウイルスです。海外では性行為の経験がある女性の50〜80%が、生涯で一度はHPVに感染すると報告されています。諸外国では男性にも接種が広まっており、日本でも希望すれば接種することができます。

本記事では、男性へのHPVワクチン接種の必要性と効果、安全性、費用を医師監修のもと、わかりやすく解説します。ワクチンに関する正しい知識を身につけ、接種を検討する際の参考にしてください。

神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、子宮の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。

また、当院は橋本駅の長谷川レディースクリニックと密に連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズな治療体制を整えています。体外受精をご検討の方にも、きめ細かな診療と迅速な対応をご提供していますので、お悩みの方は当院へご相談ください。

男性がHPVワクチンを接種すべき理由

男性がHPVワクチンを接種すべき理由は以下の2つです。

  • HPVは男性も感染するウイルス
  • パートナーを守る「集団免疫」の役割

HPVは男性も感染するウイルス

HPVは、身近で一般的なウイルスです。主に性的接触により皮膚や粘膜を通して感染します。性交渉経験のある人の多くが、生涯に一度は感染すると言われていますHPVには200種類以上のタイプが存在します。ほとんどの場合、感染しても症状は現れず、免疫機能によって自然に排除されます。

一部のウイルスが体内に長期間留まった場合、男性でもがんなどの病気を引き起こす可能性があります。男性がHPV感染でかかる可能性のある病気は以下の4つです。

  • 中咽頭がん:のどの奥(舌の付け根や扁桃腺など)にできるがん
  • 肛門がん:肛門周囲にできるがん
  • 陰茎がん:男性器にできるがん
  • 尖圭コンジローマ:性器や性器周辺、肛門などにイボが形成される性感染症

HPVは男性の健康を脅かす可能性のあるウイルスです。ワクチン接種は、疾患にかかるリスクを軽減する有効な手段の一つと考えられています。

パートナーを守る「集団免疫」の役割

HPVは人から人へうつる病気です。ワクチンでHPVに感染しにくくなれば、他の人にウイルスを感染させる可能性も低くなります。性交渉によるパートナー間の感染は「ピンポン感染」と呼ばれ、お互いに感染させ合ってしまうことがあるため注意が必要です。

男性がワクチンで感染の輪を断ち切ることで、パートナーを子宮頸がんなどの病気から守ることにつながります。人口の多くが免疫を持てばウイルスは流行しにくくなり、ワクチンを接種できない人も守ることが可能です。人口全体で免疫を持つ仕組みを集団免疫と呼びます。

子宮頸がんは女性の主要な死亡原因の一つで近年、機械学習を用いた生存予測の研究も進んでいます。病気を予防することの重要性が、医学的にも注目されています。アメリカやイギリス、オーストラリアなど多くの国では、すでに男性も公費接種(国や自治体の費用補助がある接種)の対象です。

男性の接種は、自分と大切な人を守る選択肢と言えます。

男性がHPVワクチン接種で期待できる効果

男性がHPVワクチン接種で期待できる効果は以下のとおりです。

  • 中咽頭がん・肛門がん・陰茎がんのリスクを減らす
  • 尖圭コンジローマを防ぐ

中咽頭がん・肛門がん・陰茎がんのリスクを減らす

HPVが原因となる男性のがんは、主に中咽頭がん・肛門がん・陰茎がんの3つです。HPVワクチンはがんを直接治療する薬ではなく、がんの原因となる特定のHPVの感染を防ぐ目的で用いられます。ウイルスの侵入をブロックすることで、がんになるリスクを低減できる可能性があります。

尖圭コンジローマを防ぐ

HPVワクチンは尖圭(せんけい)コンジローマという性感染症の発症リスクを下げることも期待されています。尖圭コンジローマはHPVが原因で、性器や肛門周囲にイボができる疾患です。直接命を脅かすことは少ないものの生活の質を大きく損なう可能性があります。患者さんが感じる主な負担は次の3つです。

  • 心理的苦痛
  • 再発への不安
  • パートナーへの感染

イボができると、症状部位の見た目への悩みから自信を失い、温泉やプールを避けがちになります。尖圭コンジローマは治療後も再発しやすく「再び発症するかもしれない」という不安が続きます。性的接触でパートナーへ感染する恐れがあり、互いにうつし合う「ピンポン感染」によって関係にストレスが生じることもあります。

治療法には塗り薬や凍結療法などがありますが、完治まで長期管理が必要なことも多いです。ワクチン接種で原因ウイルスへの感染を防ぐことが、発症そのものを抑える有効な選択肢とされています。

接種前に知っておきたい基本情報

HPVワクチン接種前に知っておきたい5つのポイントを解説します。

  • 男性に推奨されるワクチンの種類
  • 推奨される接種の時期
  • 接種回数
  • 接種できる場所
  • 接種にかかる費用

男性に推奨されるワクチンの種類

日本で接種できるHPVワクチンは3種類ありますが、男性への接種が承認されているのは4価ワクチン(ガーダシル®)のみです。4価ワクチンは、子宮頸がんなどのがん関連型16型、18型に加え、尖圭コンジローマ原因型の6型、11型も防ぐ特徴があります。

HPV感染を予防し、中咽頭がんや肛門がんなどの発症リスク低減や尖圭コンジローマの予防が期待されます。HPV感染を防げばパートナーへのウイルス伝播も抑えられ、女性の子宮頸がん予防にもつながります。

一部のクリニックでは、任意接種(自費)扱いで男性も9価ワクチン(シルガード9®)の接種を受けられる場合があります。現時点では、公的承認前であり、救済制度(副反応時の保障など)は適用外となるため注意が必要です。

推奨される接種の時期

HPVワクチンは性交渉前の接種が最も効果が期待できるとされています。世界的に10代前半での接種が推奨されています。日本では、9歳以上の方に接種できます。性交渉の経験があっても、接種により未感染型のHPVを防ぐ効果が期待できます。

26歳までの方はワクチンの接種を前向きに検討することをおすすめします。27歳以上でも接種は可能ですが、HPVの既感染率が上がる可能性が高くなります。効果が限定的になる場合があるので、希望する際は医師と相談し、メリットと費用を確認してください。

性行為の有無に関わらず、子宮頸がん検診は重要です。以下の記事では、性行為未経験の方にも検診をおすすめする理由や、注意すべきポイントについて詳しく解説しています。
>>性行為未経験でも子宮頸がん検診は必要?受けるべき理由と注意点

接種回数

4価ワクチンは、9歳以上が接種可能で合計3回接種します。1年以内に3回の接種を終了することが推奨されています。途中で中断せず、最後まで完了することが大切です。1回目の接種から2か月後に2回目、さらに4か月後(1回目から6か月後)に3回目の接種が推奨されています。

標準的な接種間隔をとることができない場合でも、2回目は1回目から1か月以上、3回目は2回目から3か月以上空けば接種可能です。

接種できる場所

HPVワクチンは小児科や内科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科などで接種できます。接種可能か、かかりつけ医に相談してみましょう。接種できる医療機関が見つからない場合は、お住まいの自治体のWebサイトを確認してください。ワクチンを予約する際は以下の4点を確認すると安心です。

  • 男性のHPVワクチン接種が可能か
  • 接種費用はどの程度か
  • 当日の持ち物

接種にかかる費用

男性のHPVワクチン接種は任意接種のため費用は全額自己負担です。費用は医療機関によって異なりますが、4価ワクチンを3回接種した場合の総額の目安は5〜6万円です。現在、国の公費助成はありませんが、一部の自治体では男性の接種費用に対する独自助成を実施しています。

対象年齢や金額は自治体で異なるため、居住地のホームページや保健センターで確認してください。

HPVに関連する病気として子宮頸がんがあり、予防には定期的な検診も重要です。以下の記事では、子宮頸がん検診の費用や保険適用の条件、無料で受けられるケースについて詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診の費用はいくら?保険適用・無料になる条件も解説

副反応と安全性のポイント

副反応と安全性について、以下の3つのポイントを解説します。

  • 主な副反応の種類
  • 軽い症状へのセルフケア
  • 重い症状が出た場合の対応

主な副反応の種類

HPVワクチン後に現れる反応は、比較的よくみられる症状とまれな症状の2つに分類されます。比較的よく見られる症状は以下のとおりです。

  • 注射した部位の症状
  • 全身の症状

HPVワクチン接種後は、注射した部位に痛みや赤み、腫れ、かゆみが出ることがあります。免疫細胞が集まる過程で起こる反応で、10人に1人以上の割合でみられます。発熱や頭痛、倦怠感、筋肉や関節の痛み、吐き気、腹痛などの全身症状が現れることもあります。

免疫が活発に働くために生じ、100人中1人から10人程度の割合であらわれる症状です。多くの場合、症状は2〜3日で自然に軽快します。HPVワクチン接種後に、まれに起こる重い症状は以下のとおりです。

  • アナフィラキシー:呼吸困難や全身のじんましんなどのアレルギー反応
  • ギラン・バレー症候群:手足に力が入りにくいなどの症状
  • 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):頭痛や嘔吐、意識の低下などの症状

重い症状が起こる頻度は低いですが、知識として知っておくことが大切です。

軽い症状へのセルフケア

注射後に腕が痛んだり腫れたりしても慌てる必要はありません。無理に動かさず、接種部位を強くこすらないように注意してください。腫れや痛みが気になる際には清潔なタオルで包んだ保冷剤で軽く冷やすと、痛みや腫れが和らぎます。発熱や頭痛が出た場合は安静が最優先です。水分を補給しながら体を休めましょう。

アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販解熱鎮痛薬も効果が期待できます。薬のアレルギーがある方や他の薬を服用している方は、事前に医師または薬剤師へ相談しましょう。ほとんどの場合、数日で軽快しますが数日たっても改善しない、あるいは悪化する場合は接種を受けた医療機関へ相談してください。

重い症状が出た場合の対応

副反応の多くは軽症で数日以内に自然軽快しますが、まれにアナフィラキシーなど重い症状が生じることがあります。息苦しさやゼーゼーした呼吸、顔や唇、舌の腫れ、全身に広がるじんましん、意識がもうろうとするなどの症状が出たら、すぐに医療機関を受診するか、緊急の場合は、救急車を呼んでください。

接種後の不安や持続症状がある場合は、以下の窓口に相談することができます。

  • 接種を受けた医療機関
  • お住まいの市区町村の相談窓口
  • 厚生労働省感染症・予防接種相談窓口

予防接種で重い健康被害が生じた際は、国の「予防接種健康被害救済制度」により医療費などの給付を受けられる可能性があります。制度の利用を検討するときは、接種医または自治体の窓口へご相談ください。

まとめ

HPVワクチンは女性用のイメージがありますが、男性も中咽頭がんなどの発症リスクを下げる可能性があります。パートナーの子宮頸がん予防や集団免疫にも寄与します。ワクチンは性交渉前の接種が推奨されますが、性交渉の経験があっても未感染型のHPVを防ぐ効果が期待できます。26歳までの方はワクチンの接種を検討しましょう。

費用は自己負担が基本ですが、一部自治体では男性接種への助成制度も始まっています。副反応の多くは軽症で自然に軽快します。重い症状が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。「予防接種健康被害救済制度」を利用できる可能性があります。

費用や副反応が気になる場合は、かかりつけ医などで情報を得たうえで接種を検討しましょう。

子宮頸がんの早期発見には定期的な検診が重要です。以下の記事では、年齢別に適した検診の頻度やスケジュールについて詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診はどのくらいの頻度で受けるべき?推奨される間隔と年齢

参考文献

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