
子宮頸がんワクチンと妊活の関係|接種時期と妊娠への影響を解説
公開日:2025.07.24更新日:2025.07.24
将来の妊娠を考えた際に、子宮頸がんワクチンは気になる選択肢の一つです。妊活や妊娠、赤ちゃんに悪影響があるのではと不安になる方もいます。子宮頸がんワクチンが不妊の原因になる医学的根拠は、現在のところ報告されておらず、将来子宮頸がんのリスクを減らすことが期待されます。
現在主流の9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)型の約90%の感染予防が期待できます。この記事では、子宮頸がんワクチンの種類や接種スケジュール、ワクチン接種の適切なタイミングなどを解説します。正しい知識を持ち、安心して未来への一歩を踏み出しましょう。
神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックは、子宮の悩みに強みを持つ婦人科クリニックです。生理不順やPMSなどの女性特有のお悩みはもちろん、男性不妊の検査・治療にも対応し、ご夫婦のお悩みを専門医が丁寧にサポートします。
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子宮頸がんワクチンの基本情報
子宮頸がんワクチンの基本について、以下の4つを解説します。
- ワクチンの種類
- 公費助成
- 標準的な接種スケジュール
- 接種後に起こりうる副反応
子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんの主な原因であるHPVの感染を防ぎます。HPVの感染自体は珍しくありませんが、長期間感染し続けると、がんへと進行する可能性があります。
ワクチンの種類
現在、日本で接種できるワクチンは主に以下の3種類です。
- 9価ワクチン(シルガード®9):原因となるHPV型のうち、約80~90%をカバー
- 4価ワクチン(ガーダシル®):尖圭(せんけい)コンジローマの原因となる型を防ぎ、原因の約60~70%をカバー
- 2価ワクチン(サーバリックス®):原因として特に多い2つの型に絞って感染を防ぎ、原因の約50~70%をカバー
「価」という数字は、予防できるウイルスの種類の数を表します。数字が大きいほど、より多くの種類のHPV感染を防ぐことが期待できます。現在、公費で接種できるのは主に9価ワクチンです。どのワクチンを接種するかは、過去の接種歴などでも変わるため、医師と相談して決めましょう。
公費助成
日本では、子宮頸がんワクチンの重要性が認められており、国が費用を補助する公費助成の制度があります。公費助成制度の対象者は、小学6年生〜高校1年生に相当する年齢の女子です。対象となる方は無料でワクチンを接種することが可能です。子宮頸がんの原因であるHPVは、主に性交渉によって感染します。
初めての性交渉を経験する前にワクチンを接種し、免疫を獲得することが重要です。アジア諸国を対象とした研究では、調査した国の80%が、国の予防接種プログラムとしてHPVワクチン接種を導入していると報告されています。
ワクチン接種に加えて定期的な検診も欠かせません。以下の記事では、子宮頸がん検診の費用や保険適用の有無、無料で受けられる条件についてわかりやすく解説しています。
>>子宮頸がん検診の費用はいくら?保険適用・無料になる条件も解説
標準的な接種スケジュール
9価ワクチン(シルガード®9)に関して、15歳になるまでに1回目を受ける場合は、2回の接種で適切な免疫応答が期待できます。15歳になってから1回目を受ける場合は、3回接種します。接種スケジュールは以下のとおりです。
- 15歳になるまでに1回目を受ける場合:2回目は1回目から6か月後に接種する
- 15歳になってから1回目を受ける場合:2回目は1回目から2か月後、3回目は1回目から6か月後に接種する
子宮頸がんワクチンは、十分な効果を得るために、決められた回数と間隔で接種を完了することが大切です。病気や都合で接種間隔が空いても、最初からやり直す必要はありません。医師に相談し、状況に合わせて適切なスケジュールを再調整しましょう。
接種後に起こりうる副反応
ワクチン接種後に比較的よくみられる副反応は以下のとおりです。
- 接種した場所の症状:痛みや赤み、腫れ、かゆみ、熱っぽさ
- 全身の症状:発熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、だるさ
一時的な副反応は、ワクチンに対する正常な免疫応答の現れであるため、過度に心配する必要はありません。症状は、接種後数日以内に自然に軽減する場合が多いです。痛みが気になる場合は、接種した場所を冷やしたり、無理せず安静に過ごしたりしましょう。注意が必要な副反応は以下のとおりです。
- 強いアレルギー症状:じんましんや息苦しさ、急な血圧低下など(アナフィラキシー)
- 失神(迷走神経反射):注射への緊張や痛みが原因で、血圧が下がり、一時的に意識が遠のく
接種後30分程度は、接種した医療機関で座って安静にし、体調の変化に注意が必要です。帰宅後に普段と違う症状が出た場合は、接種した医療機関やかかりつけの医師に相談してください。予防接種によって重い健康被害が生じた場合は「予防接種健康被害救済制度」という公的な救済制度が利用できる可能性があります。
妊活・妊娠中の子宮頸がんワクチンで確認すべきこと
妊活や妊娠中に子宮頸がんワクチンを受ける場合は、以下を確認しましょう。
- ワクチン接種の適切なタイミング
- ワクチンが妊娠能力に与える影響
- 妊娠・授乳期への影響
- 妊娠が判明した場合の対応
- 不妊治療とワクチン接種の両立
ワクチン接種の適切なタイミング
子宮頸がんワクチンは、妊娠していない時期であれば、いつでも接種が可能です。性交渉の経験がある方でも、ワクチンを接種する意味は十分にあります。まだ感染していない型のHPVを防ぐことができるため、将来のリスクを軽減できる可能性があります。
将来の妊娠を考え始めたら、早めにワクチン接種の計画を立てると、妊活のスケジュールと重ならずにスムーズに進められます。接種期間中に妊娠の可能性が考えられる場合は、念のため妊娠中の接種は避けましょう。
ワクチンが妊娠能力に与える影響
子宮頸がんワクチンが不妊の原因になったり、妊よう性(妊娠する力)に悪影響を与えたりするという医学的根拠は、現在のところ報告されていません。米国の18〜33歳女性に行われた研究では、ワクチンを接種した人と接種していない人の間で、その後の妊娠率に差がないことが確認されています。
インターネットやSNSには、科学的な根拠が乏しい情報も見受けられます。不安を感じたときは、厚生労働省や専門学会などの信頼できる情報源を確認するか、かかりつけの医師に相談してください。
妊娠・授乳期への影響
妊娠中のワクチン接種は、安全を第一に考え、原則として避けましょう。赤ちゃんへの危険性が証明されたわけではありませんが、万が一を考えて取られている予防的な措置です。妊娠に気づかずにワクチンを接種した場合でも、過度に心配する必要はありません。
妊娠に気づかず接種したことが原因で、赤ちゃんに先天性異常が起きたり、流産や死産のリスクが高まったりしたという報告はありません。ワクチンの成分が母乳に移行して赤ちゃんに影響を及ぼす可能性は、極めて低いとされています。最終的な判断は、医師とよく相談して決めましょう。
妊娠が判明した場合の対応
接種期間中に妊娠がわかった場合は、ワクチン接種を一度中断します。妊娠判明後は、以下の順序でワクチン接種のスケジュールを組みます。
- 妊娠判明後、ワクチン接種を中断する
- 出産に専念する
- 出産後、体調が落ち着いたら、医師と相談して残りのワクチン接種を再開する
途中で接種を中断しても、今までに受けたワクチンの効果が無駄にはなりません。体には「免疫記憶」という仕組みがあり、再開すれば残りの免疫を作ることが可能とされています。自己判断で不安を抱えず、まずは医師に相談することが大切です。
不妊治療とワクチン接種の両立
不妊治療(体外受精や顕微授精など)とワクチン接種は両立が可能です。将来安心して妊娠・出産を迎えるために、事前に子宮頸がんの原因となるHPV感染を予防することは大切です。不妊治療中のワクチン接種の際は、以下のポイントを意識しましょう。
- ワクチンの副反応(発熱など)の可能性も考える
- 治療スケジュールに影響が少ない計画を立てる
- 不妊治療の担当医と、ワクチン接種を行う医師に予定を伝えておく
HPV感染が長く続き、子宮頸部の「前がん病変」が進行すると、子宮頸部の一部を切り取る手術(円錐切除術)が必要になる場合があります。手術は、将来の妊娠に影響し、早産のリスクを高める可能性が指摘されています。不妊治療中でもワクチンを諦める必要はありません。
専門家と協力しながら、ご自身の体と将来の人生設計に対して最善の方法を見つけましょう。
将来の妊娠・出産のために考えたいこと
将来の妊娠や出産に備えて、意識しておきたい2つのポイントを解説します。
- パートナーもHPVワクチン接種を検討する
- 子宮頸がん検診を定期的に受ける
パートナーもHPVワクチン接種を検討する
子宮頸がんワクチンは、パートナーである男性の接種も大切です。自分自身を守るだけでなく、大切なパートナーの健康を守ることにもつながります。男性が子宮頸がんワクチンを接種する理由は、以下のとおりです。
- パートナーへの感染予防になる
- 性感染症の一つである尖圭コンジローマを防ぐ
HPVは男性がかかる中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどの原因になるため、がんの予防効果が期待できます。
以下の記事では、男性が子宮頸がんワクチンを接種することで得られる具体的な効果や、その必要性について医師の監修のもとで詳しく解説しています。
>>【医師監修】子宮頸がんワクチンを男性が接種する効果と必要性
子宮頸がん検診を定期的に受ける
ワクチン接種と子宮頸がん検診は、がんから体を守るために、どちらも欠かせない対策です。子宮頸がん検診を受けるメリットは以下のとおりです。
- ワクチンでは防ぐことができないウイルスを発見できる
- 体への負担が少ない治療を選択できる可能性がある
子宮頸がん検診では、がんになる前の「前がん病変」で異常を見つけられる可能性があります。アジア諸国を対象とした研究では、子宮頸がん検診の制度はあっても、実際に受ける人の割合が低いことが課題だと報告されています。日本も同じ状況にあり、検診を受ける大切さがより一層高まっています。
ご自身の未来のために、20歳になったら2年に1度の子宮頸がん検診を受けましょう。
まとめ
ワクチンが不妊の原因になったり、将来の妊娠能力に悪影響を与えたりする医学的な根拠は、現在のところありません。安心して将来の妊娠・出産を迎えるためにも、妊活を始める前に接種を完了することが理想的です。ワクチン接種後も2年に1度の子宮頸がん検診を受けましょう。
パートナーも一緒に接種を検討することが、ご自身と未来の家族を守るために重要です。ワクチンだけでは防ぐことができないウイルスもあります。まずはかかりつけ医などに相談し、あなたと大切な人の未来のために、今できることから始めてみましょう。
検診を受けて引っかかると不安になる方も多いですが、必ずしもがんというわけではありません。以下の記事では、子宮頸がん検診でひっかかる原因や、精密検査の方法、事前にできる対策について詳しく解説しています。
>>子宮頸がん検診でひっかかる原因とは?精密検査の方法や対策を解説
参考文献
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- 厚生労働省:予防接種健康被害救済制度について(令和7年)