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プレコンセプションケアとは健やかな妊娠や出産のためのもの!具体例も交えてわかりやすく解説

公開日:2024.04.30
更新日:2024.04.30

プレコンセプションケアとは、将来の妊娠や出産に向けた健康管理を目的とした取り組みです。プレコンセプションケアに取り組まずに妊活を始めた場合、妊娠において感染症や赤ちゃんの障害などさまざまなリスクを抱える可能性があります。この記事では、プレコンセプションケアの詳しい内容や具体例について分かりやすく説明します。

プレコンセプションケアとは

プレコンセプションケアとは「妊娠する前のケア」を意味しています。「〜の前の」を意味するプレ(Pre)「妊娠・受精」を意味するコンセプション(Conception)が名前の由来です。プレコンセプションケアは現在の身体の状況を把握し、将来の妊娠や身体の変化に備えて男女共に健康について意識することを目標としています。

プレコンセプションケアは、2006年にアメリカの米国疾病管理予防センター(CDC)の政策として誕生し、その後世界保健機関(WHO)でも定義づけられました。日本でも2015年に国立成育医療研究センター内に「プレコンセプションケアセンター」が開設されました。各地で取組みが広まっており、近年日本でも注目された活動となっています。

「プレコンセプションケア」と「ブライダルチェック」の違い

ブライダルチェックとは今後結婚や妊娠を予定している女性への健康診断です。一方で、プレコンセプションケア結婚や妊娠の予定を問わず、将来の妊娠に備えた健康管理を促すための取り組みのことをいいます。

ブライダルチェックでは診察・検査のみ行われますが、プレコンセプションケアでは診察・検査に加え食事や生活習慣の指導、こころと身体のケアなども行われます。

プレコンセプションケアの体制が整備されることが国で決められた

令和3年2月9日、厚生労働省は「成育医療等基本方針」にて、プレコンセプションケアの体制整備を閣議決定しました。日本は健康に関する情報を理解して活用する能力である「ヘルスリテラシー」が他国と比べて低く、性と生殖に関する教育では国際標準に到達していません。

少子化対策や妊娠における健康を守るために、プレコンセプションケアは社会全体で取り組むべき問題です。厚生労働省を中心に体制の制度が進められるほど注目度が高く、今後重要になってくる内容です。

プレコンセプションケアはハイリスク妊娠を避けるために必要

プレコンセプションケアにより、低出生体重児や先天異常などのハイリスク妊娠を避けることが期待できます。

日本は妊婦や周産期の死亡率が減少傾向にある一方で、低出生体重児や先天異常などのハイリスク妊娠は増加傾向にあります。ハイリスク妊娠の要因は、やせや肥満、高齢、喫煙、持病などさまざまです。胎児の発達は早く、妊娠に気づいてから対策したとしても手遅れになる可能性があります。

母体や赤ちゃんの健康を守るためにも、プレコンセプションケアへ取り組むのは大切なことです。

簡単にできる女性のプレコンセプションケアの具体例

プレコンセプションケアは日常で取り組める簡単な方法がたくさんあります。具体的な内容は以下の通りです。

  • 適度な運動をする
  • 自分の適正体重を守る
  • 3食バランスよく食事をする
  • 睡眠を十分に確保し生活リズムを整える
  • 過度な飲酒や喫煙は控える
  • ストレスをためない生活が大事

基本的なことが多いと思ったかもしれませんが、生活環境を整えることが妊娠のための身体づくりにおいて重要なのです。

適度な運動をする

適度な運動によって血流が良くなり、妊娠しやすい状態に近づけることが可能です。その他にも、運動は冷えの改善や筋肉量の増加につながります。

プレコンセプションケアで推奨している運動量は一週間に合計150分です。普段運動する習慣がない方は、ヨガやストレッチ、通勤時に歩く時間を増やすなど、取り組めそうなことから始めてみましょう。

自分の適性体重を守る

やせすぎは貧血や骨粗鬆症、低出生体重児のリスクがありますし、肥満は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクがあります。日本肥満学会によると、適正体重はBMI18.5以上〜25未満とされています。BMIの計算式は以下の通りです。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

体型にもよりますが、妊娠中に体重は10kg前後増加します。やせすぎは早産、太りすぎは帝王切開のリスクもあるため、医師と相談しながら妊娠中も適正体重を維持できるようにしましょう。

3食バランスよく食事をする

栄養不足は貧血や肌荒れ、筋力の低下の原因につながります。胎児に栄養が行き届かず、低出生体重児となる可能性もあります。妊娠しやすい身体を作るためにも、厚生労働省が推奨する食品バランスガイドを参考にしながら、3食バランスの取れた食事を摂るようにしましょう。

とくに葉酸が不足すると胎児に「神経管閉鎖障害」と呼ばれる先天性異常が起こる可能性があるため、積極的に摂るように意識してください。

睡眠を十分に確保し生活リズムを整える

疲労や心身を回復させるためには、十分な睡眠時間が大切です。不規則な睡眠リズムも体調を崩す原因につながります。

良質な睡眠を取るためにも寝る時間帯を決めて、生活のリズムを整えるようにしましょう。寝つきが悪い方は、寝る前のスマホを控えたり、寝る2時間前までに入浴したりすると改善が期待できます。

過度な飲酒や喫煙は控える

飲酒は胎児の発育障害や脳障害などを引き起こすリスクがあるため注意が必要です。喫煙も流産や早産、周産期脂肪、低出生体重児といったリスクがあります。受動喫煙が母体や胎児に影響を及ぼすこともあるため、パートナーの協力も重要です。

飲酒や喫煙は母体や胎児に悪影響を及ぼします。妊娠してからではなく、妊娠する前から少しずつ取り組んでいきましょう。

ストレスをためない生活が大事

ストレスのためすぎは身体の不調やうつ病などの精神疾患を引き起こす原因になります。ストレスを減らすことで妊娠しやすい身体づくりにもつながります。ウォーキングやヨガなどの軽い運動、十分な睡眠時間を確保することを意識しましょう。妊活を始める前に、ストレスをためないような生活環境を作りましょう。

病院でできる女性のプレコンセプションケアの具体例

病院ではできるプレコンセプションケアは以下の内容があります。

  • ワクチンの接種
  • 子宮頸がん検診
  • 性感染症やHIV感染の検査
  • 生理痛のケア

このほかにも食事指導や生活習慣の確認、カウンセリングなど、妊娠におけるさまざまなリスクに対するケアをします。

ワクチンの接種

妊娠中に感染すると女性や赤ちゃんに命の危険がある病気には、ワクチン接種で予防できる病気もあります。ワクチン接種を勧める病気は以下の通りです。

  • 風疹
  • 水痘
  • おたふく風邪
  • 麻疹(はしか)

風疹に感染すると、胎児に「先天性風疹症候群」を引き起こす可能性があり危険です。免疫が不十分な時期である妊娠20週頃までに感染した場合、とくに発症する可能性が高くなります。先天性風疹症候群は先天性心疾患・白内障・難聴・精神運動発達遅延などさまざまな障害をもたらすおそれがある病気です。

水痘は感染した妊娠週数によって胎児への影響も変化します。妊娠初期〜中期だと「先天性水痘症候群」を発症し、皮膚障害や精神発達の遅延などを引き起こす可能性があります。分娩前後で発症した場合は死亡率が高い「新生児水痘」を発症する可能性があるため、出産後すぐに治療が必要です。

おたふく風邪は妊娠初期に感染すると流産するおそれがありますが、胎児への先天性の影響はないと考えられています。しかし、一部では低体重児となる可能性や心臓や免疫にかかわる病気を発症する可能性もあるというデータもあるので注意が必要です。

麻疹(はしか)は妊娠中に感染すると肺炎を起こしやすく、重症化するおそれがあります。麻疹には治療法がなく症状を和らげるための対症療法しかありません。妊娠中に感染して症状が重い場合、早産になる可能性もあります。

妊活を始める前に検査を行い、必要がある場合は予防接種を受けることをおすすめします。

子宮頸がん検診

子宮頸がん検診を受けていない方は、妊活する前に検査を受けてください。子宮頸がんは初期の段階であれば子宮を残した状態で治療できる場合もあります。しかし、病状が進行してしまうと、子宮を摘出して妊娠を諦めなければならない場合もあります。

日本は子宮頸がん検診が十分に実施されておらず、子宮頸がんになる女性の数は増加しています。子宮頸がんは検診とワクチンで予防が可能な病気です。安心した妊娠を迎えるためにも、妊活前に子宮頚がん検診を受けましょう。

性感染症やHIV感染の検査

性感染症やHIV感染の検査は定期的に受けましょう。性感染症やHIVは妊娠中に感染すると、妊娠経過や胎児にも悪影響を与える可能性があり危険です。

性感染症やHIVは感染しても症状に気づかず、いつのまにか症状が進行している場合もあります。性感染症やHIVは男性が原因となる場合もあります。女性だけでなく、パートナーと共に検査を受けるようにしましょう。

生理痛のケア

ひどい生理痛は不妊の原因につながることもあるため、早めのケアが重要です。生理痛がひどくなる原因の1つとして子宮内膜症があります。子宮内膜症とは、子宮以外の場所に子宮内膜ができる病気であり、性交時痛や生理のたびに強い痛みが起こります。

日本産婦人科医会では子宮内膜症の30〜50%は不妊症になると考えられています。最近では20〜30代の女性で子宮内膜症になる方が増加しています。子宮内膜症の原因の1つは生理の回数です。初経が早まったり、出産回数が減ったりして生理の回数が多くなると、子宮内膜症のリスクも高くなります。

生理痛が重いだけだと諦めて我慢せず、将来の不妊を予防するためにも早めに産婦人科へ相談しましょう。

男性に推奨されるプレコンセプションケア

男性もプレコンセプションケアへの取り組みが重要で、米国疾病予防管理センターや国立成育研究センターでその必要性が提唱されています。

健康な赤ちゃんを産めるようにパートナーを支えることはもちろん、男性自身の生活環境の改善や感染症の予防は大切です。

妊娠・出産の計画と準備をする

子どもをもちたいかどうか、何歳までに出産したいかなど、妊娠出産のためのライフプランを立てましょう。計画を立てることで準備がしやすくなり、パートナーと考えや価値観を共有することで互いに協力し合い、目標達成できる可能性も高くなります。

性感染症の予防・治療をする

妊娠中に性感染症を起こすと早産や流産、死産の可能性が高くなったり、先天性の障害をもったりする場合があります。不特定多数と性行為をしていなくても、過去のパートナーから感染している場合や、性行為以外で感染することもあります。

感染していることに気づかず、パートナーへ感染を広げてしまうおそれがあるため注意が必要です。性感染症は基本的に自然治癒しません。赤ちゃんの命を守るためにも、早い段階で検査を受け、治療や予防に取り組みましょう。

喫煙・薬物・過度な飲酒をやめる

喫煙・薬物・過度な飲酒は精子の機能が低下し、不妊の原因につながります。違法薬物はもちろん、AGA治療薬や前立腺肥大症治療薬など妊活に影響を及ぼす薬もあります。

男性の喫煙による副流煙は母体や赤ちゃんの早期死亡や低出生体重児の可能性を高めるため注意が必要です。

健康的な体重を維持する

肥満の男性は適正体重の男性と比べて不妊の可能性が高くなります。原因は陰茎の血流障害による勃起不全や男性ホルモンのバランスの乱れなどさまざまです。

肥満になると不妊だけでなく糖尿病や心臓病などさまざまな疾患のおそれもあります。食生活や運動習慣を見直し、適正体重を維持できるように取り組んでいきましょう。

家族の身体的・精神的な健康を保つ

過去の病気や経験が妊娠に悪影響を与える可能性があるため、家族の身体的・精神的な健康を保つことは大切です。仮に家庭内で暴力行為があった場合、身体的な後遺症を残すだけでなく、精神的な傷が残る可能性があります。生まれてくる子どもへの虐待にもつながってしまうかもしれません。

妊娠という身体の変化や、長引く不妊治療で精神的に苦しくなってしまう方もいます。良い精神状態を保つことは大切です。不安やストレスが原因で日常生活に支障をきたしていることがあれば、夫婦で話し合い、必要なら医師へ相談しましょう。

不妊症の予防・治療をする

不妊症の原因の半分は男性にあると考えられており、近年では男性不妊症の治療のために病院を受診する方も増加しています。

不妊症につながる原因は、喫煙や薬物、飲酒のほかにも糖尿病や有害物質、放射線治療や化学療法などさまざまです。精子の状態は生活習慣や周りの環境によって変化することもあります。妊活がうまくいっていない時は、女性だけでなく男性も医師に相談して検査するようにしましょう。

パートナーを支える

夫として女性パートナーを支えることも大切です。不妊治療を受ける場合、女性にかかる負担は精神的にも身体的にも大きくなります

妊娠や出産は女性だけが頑張るものではありません。パートナーが食生活に注意しているのであれば、あなたも一緒に取り組むなどパートナーを支える意識をもってください。

プレコンセプションケアの費用を助成している自治体もある

自治体によっては、医療機関でのプレコンセプションケアにかかった検査費用を助成しているところもあります。愛媛県松山市では対象者に対し、医療機関に支払った自己負担額の上限3万円までを1度だけ助成してくれます。

松山市以外にも助成している自治体は増えていますので、検査をする前にお住まいの自治体でおこなっているか調べてみましょう。

プレコンセプションケアの相談は産婦人科へ

より安心安全に妊娠や出産を迎えるためにも、プレコンセプションケアはとても重要です。準備や予防せずに妊活を始めた結果、パートナーや胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。プレコンセプションケアに取り組むことでさまざまなリスクへの予防が可能です。

プレコンセプションケアについてより詳しく知りたい方は、専門医である産婦人科へ相談しましょう。

>> 当院のプレコンセプションケアについて