重複子宮と膣中隔不全(34歳・女性)

公開日:2024.03.21
更新日:2024.03.21

不正出血があり、婦人科に行きました。黄体ホルモン不全で、高温期は10日もありません。 超音派で何度か診てもらううちに、重複子宮で膣中隔不全が分かり、年齢も若くないため、人工受精か膣中隔を切除する方法がいいと言われ、タイミング法で2回チャレンジしましたが妊娠しませんでした。 やはり、自然妊娠は難しいのでしょうか?

タイミングでは妊娠は難しいでしょう。また上手く妊娠できたとしても、流産を繰り返す不育症となることもあり、ケースによっては手術療法が必要となりますので不妊または不育専門医と相談しましょう。

子宮奇形は子宮の形態異常〔子宮の形が正常ではない〕を指します。 2つあるミュラー管という本来女性性器に発育すべき臓器(原基)が胎児発生の過程で左右の対照の管から発育しながら、次第に1つの臓器に癒合してゆき、最後に真中の中隔と呼ばれる部分が消えて、1つの袋のようなヒト子宮が出来上がります。 したがって哺乳動物の子宮とは元々2つの子宮から1つに出来上がるものですので、例えば癒合発育をしないマウスの子宮は2つの部分(重複子宮)に分かれているのが正常の形です。 子宮奇形の頻度は一般女性では4,3%、不妊症患者で3,4%、不育症患者で12,6%との報告があり決して珍しいものではありません。 またその形態学異常から分類してみた欧米のある報告では、もっとも軽度の異常である 弓状子宮(子宮底の部分が弓のようにやや膨らんでいる形)が15~18%、 双角子宮(子宮底が尖状)26~37%、および 中隔子宮(子宮癒合部分が一部残存)8.2~11.1%とこの3つが頻度が高く、 重複子宮(子宮が2つある)8,2%~11.1% 単角子宮(子宮と卵管が1つで片方が無い)(4.4=9.6%)と やや頻度が低くなります。 T型子宮というホルモン使用後に発生するタイプ もありますが、日本ではこのホルモン剤が使われなかったため存在しないと言われています。 一方日本では弓状子宮が最も頻度が高く次いで中隔子宮、双角子宮の順で見られ、欧米とはやや趣が異なっているますがその理由は不明です。 治療を考える場合にはタイプによって、治療方法が異なりますので正確な診断が必要です。 子宮卵管造影法(HSG)超音波検査、子宮鏡、MRI,腹腔鏡などにより確実な診断を行ったうえで、治療方針を決定します。 弓状子宮、重複子宮、T型子宮などは手術療法を選択せずに経過をみる場合が多いのですが、中隔子宮は流産率が高いので、積極的な手術療法がえらばれることが少なくありません。 この場合形成術といって、形に問題のある部分に対して、子宮鏡下中隔切除術が患者さんへの負荷が少なく好んで行われています。開腹して行われる手術も以前は行われましたが現在では少数派となっています。 いずれにしても重複子宮と膣中隔(膣部分まで分離が不完全)は明らかに不妊の原因と考えられますので不妊専門医への受診を一度考えましょう。