卵管造影の検査(25歳・男性)

公開日:2024.03.21
更新日:2024.03.21

不妊治療を半年前から始めたのですが、先日妻が卵管造影検査を受けた結果、卵管が詰まっているか閉じていると言われました。病院では自然妊娠は難しく、体外受精をすすめられましたがそれしか方法はありませんか?

一度の卵管造影検査では不十分の場合があります。再度行うか腹腔鏡検査をお勧めします。

卵管造影検査で閉塞しているとの事ですが、私たちの経験ではX線による卵管造影検査と直視下の腹腔鏡検査(ラパロと略)による通水で30%ぐらいの相違が見られました。 したがってすぐに体外受精を望まないときには腹腔鏡検査を受けることも一つの方法です。 婦人科の腹腔鏡検査はもっとも歴史が長く専門医制度(産婦人科内視鏡学会)もありますので安心して受けることが可能です。 不妊症で腹腔鏡を行う意義は目で直接病巣を観察できることにあるます。 そしてその所見から治療法を選択できることにあります。 特に骨盤内癒着とりわけ卵管癒着の上体や卵管采の状態をはっきりと把握し、さらに癒着剥離を行いことで術後に自然妊娠が可能か否かが判断されます。 そのほか子宮内膜症の有無や原因不明の長期不妊症例なども対象になります。 また最近では治療目的の腹腔鏡手術が多く行われるようになり、子宮筋腫核出術や多のう胞性卵巣症候群卵巣への楔形切除、ドリリング施行術なども積極的に行われています。 ラパロによる卵管の評価は、卵管周囲・卵管采の癒着状況、その範囲、片側または両側か?卵管のう腫の有無を見て、色素(インヂゴカルミン〕を卵管に通水して見て通過性を検討する。 次に洗浄液で卵管を浮かせて卵管采の内側を観察するという順序で行い、卵管周囲癒着を認めて癒着剥離をおこなった後の妊娠は26.2%と報告されています。 卵管采の癒着時には癒着剥離術で28%の術後妊娠率が得られると言われています。 卵管の末端部が閉じていて卵管のう腫となっていた場合には一般的に切除を行ってから体外受精胚移植をした方が良好な成績がえられると言われています。 癒着が少なく、のう胞壁が薄い場合には、開窓術が行われることもあり、卵管性不妊に体外受精を行う前に、ラパロ下の観察と手術療法は一度試みてもよいでしょう。 また卵管に閉塞を認めた場合には卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うことにより術後30%の妊娠率があったとの報告もあり卵管性不妊イコール体外受精とはならない事も知っておきましょう。その他子宮内膜症の診断・治療も可能なことよりラパロは婦人科領域では重要な手段ですが、全身麻酔下手術で入院を要しますのでやや患者負担が重くなります。