高プロラクチン血症(33歳・女性)

公開日:2024.03.21
更新日:2024.03.21

5才の子供がいます。二人目がほしいのですがなかなかできず1ヵ月前から不妊治療をはじめました。 血液検査の結果、高プロラクチン血症の診断を受け、1ヵ月テルロンを服用することになりました。 今度生理が来て10日以内に卵管造影検査をする予定です。 高プロラクチン血症の診断を受けた方で妊娠された方いらっしゃいますか?また治療からどれくらいの期間で妊娠にいたりましたか?

高プロラクチン血症を引き起こした原因は?それだけが不妊の原因でしょうか?

高プロラクチン血症とは血中のプロラクチン(PRL)値が高い場合(30~35ng/ml以上)をいいますが、不妊症との関係ではPRLが高値を示すにしたがって、黄体機能不全から無排卵症、更に無月経となる事です。 また男性不妊の原因(乏精子症や精子無力症)ともなりますので、不妊カップルにとってPRL測定は必ずスクーリニングで受けなければならない項目です。 女性の不妊症では高プロラクチン血が認められるのは10%弱ですが、この場合PRLがなぜ上昇したかの原因究明が非常に重要です。本人が授乳中でないのに単に乳頭からの乳汁分泌を訴えて来院した患者さんが高PRL血症であることもよく経験します(勿論乳腺の病気の可能性もあり、このような症状が見られる時は専門医と相談しましょう)。 これらの原因の中で、100ng/ml以上の高値を示した時にはPRL産生の下垂体腺腫や非分泌性の視床下部脳腫瘍(すなわち脳腫瘍の一種)が35%を占め、視野狭窄(両側耳側の視野が自覚的に見えにくい)にて気がつく事もあります。 このような原因が疑われた時には、頭蓋X線撮影や、MRIによる画像診断が必要ですし、脳神経外科受診の必要性がある場合もあります。 その他の原因としては甲状腺機能低下症や、薬物性(ある種の精神薬、抗ヒスタミン薬、ドグマチールなどの胃薬など)、慢性腎不全などがあり、不妊症で割合多い卵巣の排卵異常である多のう胞性卵巣症候群(PCO)に伴なうものも含まれ、これらが除外されて、なんらの原因が判明しない場合は原因不明の高PRL血症と診断されます。下垂体線種の小さいものや、原因不明例などでは、PRLを低下させる薬物(テルロン、パーロデルなど)の服用で速やかにPRLが正常化すれば、排卵は回復し妊娠は可能です。 5~7週の薬物服用でもPRL値の低下が見られない場合は更に増量するか、下垂体のPRL産生細胞腫瘍がないか検討が必要です。