体外受精や顕微しか方法はないの?(26歳・女性)

公開日:2024.03.21
更新日:2024.03.21

不妊治療で造影をした結果、両側の卵管采から造影剤が散ってないと言われました。 ショックを受け欝っぽくなり治療を辞めてしまったのですが妊娠経験のない私にはとても妊娠希望があります。 卵管采には手術も効果ないと聞きます、本当に体外などしか道はないのでしょうか?

方法はありますが、自然で経過を見るだけでは可能性は少ないでしょう。 もともと体外受精法は卵管に問題のある症例に開発された生殖技術ですので、主治医が体外受精を勧めたのも一理はあると思えます。

しかし以前、このような卵管性不妊症に対しては、体外受精が今日ほど広く一般化する前は、開腹して卵管の狭窄部分や、閉塞したところを切り取ったり癒着を剥がしたりして、良好の部分を縫い合わせて卵が通過できるような再生手術(卵管端端吻合術)が行われていました。 しかしその後腹腔鏡による手術が開発され、開腹をしないでも症例によっては、手術的に卵管機能を回復させることが出来るようになってきました。 特に卵管采の癒着や、卵管周囲の癒着の剥離は技術的にもそんなに困難ではない手技ですので、貴女も一度腹腔鏡の適応があるか否かを主治医と相談されたほうがよいでしょう。 しかし婦人科の腹腔鏡は2~3日の入院が必要ですし、全身麻酔下で行われるので、肉体的な負荷は体外受精の採卵術よりかなり大きいと考えておいてください。 したがって最近ではこの腹腔鏡を行わずに卵管性不妊では、すぐに採卵に入る施設が少なくないようです。 次に問題なのはなぜ卵管が癒着を起こしてしまったのかの原因についてです。 現在卵管性不妊の患者さんの50%ぐらいは、過去にクラミジア頚管炎から進行して、卵管炎や骨盤腹膜炎を起こした既往があることが判明しています。 クラミジアの後遺症と不妊の関係については別の項目でも延べてありますが、この感染が十分に治療されていない場合はさらに不妊治療を困難にする事もありますので、こちらの検査も同時に受けて、必要があれば、予防的に抗生剤による治療も考慮しておいたほうがよいでしょう。(血液検査のクラミジア抗体IG A,,IGGを調べる事によって簡単に判明します)。 いずれにしても、卵管に問題のある場合(卵管性不妊といいます)タイミング療法や、人工授精などの一般不妊治療では限界がある場合が少なくありません。しかも体外受精で最も妊娠しやすいのもこの卵管不妊ですので、不妊専門医とよく相談をしてステップアップも念頭に入れておくべきでしょう。