12月16日 日本産科婦人科学会倫理委員会「着床前診断シンポジウム」に参加して(院長コラム)
着床前診断(PGS)は欧米に習ってPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)と呼ばれるようになっていますが、その公開シンポジュウムが東京で行われ私も参加しました。今回はここ1年間で行われた学会によるパイロット試験の成績と、患者さんを含む倫理面を包括した議論が患者さんを含めて行われました。パイロット試験に参加したクリニック医師からは検討数は計80例強とまだ十分とは言えない症例ですが、欧米の報告と同じような妊娠率の増加、流産率の減少、従来の顕微鏡的グレード判定が必ずしも妊娠への良好卵と一致しない事などわれわれ専門家も納得するような結果が報告されました。また倫理の専門家よりは生命の選択につながるこのような生殖技術の使用には従来と同じような批判的な声が出ていました。会場には多くの不妊患者さんが参加しており、数人の方より早期のPGT-Aの開始を望む声と、すでにPGSを経験した方たちの経験談を含め切実な声が聞かれました。また現在PGDが認められている重症筋ジスの方からも、この生殖技術は差別と生存を否定されることだとの発言があり、問題の難しさが浮きぼりになりました。まとめとして委員長からは学会としては3月以降もこの臨床研究はさらに続行したいとの発言があり終会となりました。今年1月アメリカでかって在籍した大学でのPGSの現状を見てきた私には、村社会の掟に固執する日本と、個人の自己責任と決定を大切にするアメリカ社会の違いを見てるような気がしてならないというのが私の感想でした。またこの会が不妊悩む患者さんへの解決への1歩に繋がればとの思いで帰路につきました。